軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜花の侍姫②

ブロッサムさんに案内された部屋は、庭の見える応接室のような広い畳の間だった。ブロッサムさんはお茶を用意すると一旦席を外したので、俺は部屋と庭に視線を向ける。

たしかに純和風の部屋で、広い畳の作りで、掛け軸や鎧、数本の日本刀や文字を書いた扇子などが飾ってある。

……庭の方は日本庭園をイメージしたのか、綺麗な砂利の庭で松っぽい木や、竹らしきもの、大きめな池にししおどしなども揃えてある。

……う~ん、なんだろう、凝ってるのは凄く伝わってくるんだが、なんかゴチャゴチャしてる気がする。

部屋にしても掛け軸に鎧に日本刀に扇子と、とりあえず思いついたものを統べて飾ってる感じがする。

掛け軸に関しては、まぁいいと思う。『待』……待つ、待機する。その一文字にどういう意味があるかは分からないが、漢字を模して書いたのだろう。

日本刀も、まぁ、いい。実際この世界でも日本刀は結構人気だったりする。それは、初代勇者が使用した武器として有名だからだ。

初代勇者の人気は凄いもので、以前メギドさんの一件であったシグマさんも、後の宴会の際に聞いた話では初代勇者の活躍に憧れて日本刀を使うようになったとのことだ。

まぁ、人間の身で伯爵級高位魔族を倒したというのは、特に戦王配下などの戦闘好きな者たちには人気の高いエピソードなのだろう。

ただ、鎧と扇子は……正直いらないと思う。特に鎧は大きいので、結構空間の圧迫感がある。

庭に関しても、本当になんというか……ごちゃごちゃしていてコンセプトが見えない感じである。いや、本当にかなり細かく手を入れている感じがあるし、拘って作ってるんだろうが……こう、なんというか、若干の偏見はあるかもしれないが『自称日本通の外国人が作った日本庭園』みたいな感じになってしまっている気がする。

まぁ、俺も別にそこまで詳しくないのだが……なんかコレジャナイ感を覚える。

例えばノインさんの部屋……アレはもうほぼ家だが、あそこはほぼ完璧と言ってよかった。部屋の中に庭があり縁側がある形なのだが、あの庭には余計なものはほとんどなくシンプルだった。

ノインさんの庭はなんというか、コンセプトがハッキリとしていた。アレは『ノインさんが縁側に座ってお茶を飲む』というコンセプトの元に調整されていた感じだ。

それに対してブロッサムさんの庭は……なんとなく知ってる日本の文化を全部乗せしたようなイメージだ。うん、本当に日本が好きなのは伝わってくるんだけど……。

「お待たせしました、ミヤマ殿。粗茶ですが!」

「あ、ありがとうございます」

そんな力強く粗茶と宣言するべきなのかは置いておいて、ブロッサムさんは楽し気な感じだ。

「いかがでしょう? 拙者の部屋と庭は?」

「ええ、いろいろ作り込んでいて……ブロッサムさんは日本……異世界に詳しいんですね」

「はい、拙者にとっては心の故郷と言える場所でもありますね」

「なるほど」

う~ん本当に異世界が好きみたいだ。なんだろう、桜の木の精霊だからなのかな? 結構強い拘りがあるみたいだけど……。

「……それにしても、部屋に飾っている刀の数が多いですね。4……いや、5本もありますし、ブロッサムさんは……」

「やはり、お気づきになりましたか!」

「……うん?」

「そう、ご推察の通り! 拙者は、『サムライ』なのです!!」

「……そう……ですか」

なんか、こっちの話を遮って突然訳の分からないこと言い始めたんだけど!? え? 俺はいま『ブロッサムさんは刀が好きなんですか?』って聞こうとしたのであって、侍云々は完全に初耳なのだが……。

「やはり、本場である異世界出身のミヤマ殿でもすぐにわかるほどですか! 拙者もサムライとして相応しくなってきたと、言えるのかもしれませんね!! もちろん、いまだ超一流には程遠いですが」

「そ、そうですね。たしかに、かなり侍っぽいかもしれませんね」

……本音を言わせてもらうと、見た目的に侍というよりは剣術小町とかそんな感じなんだけど……ノインさんと同じぐらいの年代の日本っぽい感じではあるが、この喜びようからして侍に対して強い拘りがあるみたいだ。

「ミヤマ殿から見ていかがでしょうか! 拙者が超一流のサムライとなるために、足りないものはなんでしょうか……もっと侍らしい言葉遣いなどがあるのでしょうか?」

「えっと、そうですね……」

本当にグイグイ来るなブロッサムさん……けど、正直俺も別に侍に造詣が深いわけでもない。言葉遣いとか言われても、強いて言うなら拙者は忍者っぽいイメージがあるとかそんな程度しか……。

しかし、このギラギラとした期待のまなざしを前にするとなにか言わなくちゃと思えてくる。えっと、とりあえず当たり障りのないことを言っておこう。

「あ、あまり口調とかは気にする必要はないんじゃないですかね? 形だけを真似たとしても、超一流とは呼べないでしょうし……あとはえっと、侍は口じゃなく刀で語るものとか、そんな感じだと……」

「ッ!?!?!?」

……滅茶苦茶衝撃受けたような顔してる。俺も人のことは言えないが、ブロッサムさんは感情の変化がモロ顔に出るので感応魔法使わなくても分かりやすすぎる。

「な、なんて、的確かつ深い言葉……」

「え? いや、別に深くは……」

「そ、そうか! そう言うことなのですね! 只人をリリウッド様があそこまで評価するはずもありませんし、ミヤマ殿には並々ならぬものがあるとは分かっていましたが……貴方は……『サムライマスター』なのでは!!」

「……違います」

なんか変な方向に話が進み始めたというか、こっちを置いてけぼりにして明後日の方向に全力ダッシュし始めてるんだけど!?

あと、いまでさえかなりいろいろな呼び方されてるのに、これ以上増やさないで欲しい……。