軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

桜花の侍姫①

よく晴れた日の昼下がり、俺はメモを片手にユグフレシスの街を歩いていた。今回の目的は、挨拶が終わっていない最後のひとり、界王配下幹部七姫のひとり桜花姫ブロッサムさんへの挨拶とお礼である。

そして現在俺はブロッサムさんの自宅を訪ねるために地図の書かれたメモを手に歩いていた。

どうしてそんなことになったかというと、数日前にリリウッドさんからブロッサムさんの都合がいい日の連絡を受けたのだが、その際にブロッサムさん側からの要望で是非自宅に来てほしいと言われた。

というのも、どうもブロッサムさんは異世界……俺の居た世界の桜をリリウッドさんが作り出し、そこから生まれた桜の精霊らしく、それが関係しているのかは分からないが俺の居た世界……それも日本文化に並々ならぬ関心があるとのことだ。

その関心は住まいにも表れていて、リリウッドさんの話ではかなり手間と時間をかけて日本風の家を作ってそこに住んでいるみたいで、おそらく本場の異世界人である俺にその家を見てもらいたいのではないかとのことだ。

日本風というブロッサムさんの家にも結構興味はあったし、こちらがお礼を言う側なのだからむしろ出向くのが当然だろうと了承して、こうしてブロッサムさんの家を目指して歩いているわけだ。

メモを見る限りそろそろのはず……少し高い位置に建っていて、リリウッドさんは近くに行けばすぐわかると言っていたが……もしかして、アレか?

視線の先丘というほどではないが、他より少し高くなっている場所に大きな家があった。本当に純和風の瓦造りの横長の家である。

イメージとしては武家屋敷に近い感じの建物だが……屋根の上に『金のしゃちほこ』があるのは、なんか変な違和感があるな。

なんか城とごっちゃになっているような、家の周囲を囲う塀も……正直城っぽい気がする。いや、まぁ、それでも純和風であることには間違いないし、武家屋敷と城の違いなんて細かくは俺も分からないので、まぁ気にしないでおこう。

とりあえず門の前まで近づいてみるが……呼び鈴とかはないのかな? もしかして、この門の前にぶら下げてる『鳴子』が呼び鈴変わりだったりするのか? 明らかに鳴子としては設置する位置が不自然だし、一個しかないし……。

いや、でもこの大きな屋敷の前で鳴子ひとつ鳴らしただけで、中に聞こえるのか? まぁ、とりあえず鳴らしてみよう。

鳴子を手に持って鳴らしてみると、重厚な音と共に門がゆっくりと開く。

「ようこそいらっしゃいました! ミヤマ殿!!」

「……うぉぉっ!?」

開きかけの門の先から大きな声が聞こえてきて驚きつつ視線を向けると、そこには160㎝後半程の身長の少し青みのある黒髪をポニーテールに纏め、桜の枝を簪のように差している女性がいた。

桜色の着物に似た上着に黒色の袴、背中には2mを越えるであろう大太刀を背負っており、スラッとした体に高めの身長、凛とした雰囲気も相まって女武者のような凄みがある。

「おっと失礼しました。驚かせてしまいましたね。ミヤマ殿にお会いできると思うと居てもたってもいられず、拙者『朝5時』から待機していたせいか、つい気が急いてしまいました」

「い、いえ……こっちこそ大きな声を出してすみません。初めまして、宮間快人です」

「拙者はブロッサムと申します。どうぞ、よろしくお願いします」

……聞き間違いかな? いまこの人朝5時から門の前に居た的なこと言わなかった? いま昼の1時なんだけど……。

「よろしくお願いします。えっと、ブロッサムさん? 約束の時間って……昼の2時でしたよね?」

「ええ、その通りですか?」

「えっと……朝5時から居たんですか?」

「はい! 待ち切れませんでした! しかし、こちらからお呼びしておいて、予定を変更して会いに向かうなど端で足かありません故、ぐっとこらえつつ待っていました!」

「……そ、そうなんですか」

「おっと、立ち話のままでは駄目ですね! ささ、ミヤマ殿こちらにどうぞ! 庭が一望できる部屋に案内しますので、是非拙者の自慢の庭を見てください!!」

「あ、はい」

押しが、強い……こっちがほぼ喋らなくても、どんどん話が進んでいくというか勢いが凄まじい。なるほど、ロズミエルさんが慣れるまで相当の時間が必要だったというのもよく分かった。明らかにロズミエルさんが苦手とするタイプの相手である。

「いやはや、本場の異世界人であるミヤマ殿に庭を見ていただけるのは、本当に嬉しく思います。あっ、ミヤマ殿は緑茶で大丈夫でしょうか? 念のために思い浮かぶ限りの飲み物は買ってありますか?」

「……緑茶で大丈夫です」

「茶請けは甘いものの方がよいでしょうか? 煎餅などもありますが、もし好みのものがあるのでしたら遠慮なく言ってください!」

「えっと、そうですね。では、甘いもので……」

「分かりました! 今回はいいワガシを仕入れることができたんです。なんでも水に拘っているらしく……」

めっちゃグイグイ来るタイプの方で、非常にテンションが高い。けど、基本的に一貫して全力でこちらをもてなそうとしてるあたり、カミリアさんの言う通りいい人なのは間違いないんだろう。