軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

白神祭を終えて④

クロが持ってきた新作のシャンプー、トリートメント、ボディソープは柑橘系の爽やかな香りで統一されているみたいで、洗い終わった後は非常にすっきりと気持ちよかった。

個人的にかなり好きな香りで……正直いま使ってるシャンプーより好きだったので、クロに商会の店舗を教えてもらって後ほど買いに行くことに決めた。

それはそれとして、交代してクロの背中を流し、ついでに要望があったのでシャンプーもやってみた。他人のシャンプーをするのなんて初めてなので、おっかなびっくりの感じだったが、クロは満足そうだったのでよかった。

それが終わった後は、いよいよ浴槽に入る。

「ふぅ、気持ちいいね~」

「お風呂ってのはほんとにいいよな」

「カイトくんは結構お風呂好きな感じがするよね」

「あ~たしかにそうかも、元の世界に居た頃も結構入浴剤とか買って使ってたし」

「ニュウヨクザイ? ……あ~なんかちょっと聞いたことがあるかも、お風呂に入れると色が変わるんだっけ?」

そう言えばこの世界で入浴剤って見たことがない気がする。貴族の家でハーブを詰めた香り袋を風呂に浮かべたり、薔薇などの花を用いた風呂というのはあるらしいが、リリアさんの屋敷の風呂にはそういうのは無かったので、あまり見たことはない。

「色もそうだけど、香りとか……温泉を再現したものとか、いろいろな種類があったよ」

興味があるらしいクロに、俺の知る入浴剤について説明していく。しばらく興味深そうに聞いていたクロだったが、少ししてなにやら考えるような表情を浮かべた。

「……なんか、経営者の顔になってる気がする」

「うん、ちょっと面白そうだし試しに作ってみようかなぁと思ってるんだけど……借りに作ったとしたら、どんな風に展開していこうかなぁって考えてた」

「普通に名湯の再現とか、そんな感じじゃダメなの?」

「う~ん、話を聞く限りさニュウヨクザイって基本的に一般層をターゲットにするものって考えた方がいいんだけど、温泉ってちょっとマイナーなんだよね。いや、好きな人は好きなんだけどね」

「……あっ、そっか」

つい日本人としての感覚で言ってしまったが、たしかに温泉って日本的な文化の側面が強い気がする。この世界の観光地をすべて知っているわけではないが、温泉を売りにしたようなものは無かった。

ただ、ちょっとマイナーってことはそう言う場所もあるにはあるのだろう。

「例えば、カイトくんの知り合いだとアイシスとかは温泉が好きだね。自分の家にも作っちゃうぐらいだし……まぁ、アイシスの場合は皆で入るお風呂っていうものに興味を惹かれたんだろうけどね。あとは、ノインもかなり温泉好きで、たまに魔界の辺境とかにある温泉に入りに行ったりしてるね」

魔界の辺境の温泉……ちょっと興味あるな。今度ノインさんに聞いてみよう。

「まぁ、そんなわけで温泉って好きな人は好きだけど、一般的にはあんまり馴染みが無くて、温泉を再現って売り出しても、あまりピンとこないだろうしね」

「なるほど、入浴剤自体この世界では定着していないものだから、まずは興味を引く売り文句が欲しいってことか」

「うん。まぁ、製作コストとかいろいろ考えることも多いし、その辺は一度作ってみて考えればいいかな」

そう言って笑うクロを見て、不意に俺は先ほど考えていたことを思い出した。

「なぁ、クロ……例えばなんだけど」

「うん?」

「貴族の入浴を再現とか、王宮風とか……そういう売り文句は? なんかチラッと、貴族は香り袋を浮かべたり、花を浮かべたりして入浴する人もいるって聞いたからさ……」

「なるほど! それはいいアイディアだよ。貴族ってワードは分かりやすいし、一般層の中には貴族ってものに憧れを持ってる人も多い。そういう方向性で行くのはありだね……あとは魔界の有名人とかに協力してもらって、『●●監修』とかそんなのにしてもいいかもね」

「あ~ソレは売れそうだ」

リリアさんが天竜モデルのペンを持ってたり、六王幹部級の有名人のグッズとかもあるみたいだし、そういう方向性もありだと思う。

「コストを抑えるなら材料は……おっと」

「クロ?」

「……うりゃっ!」

「ちょっ!? なんでいきなり抱き着いて!?」

真剣な表情を浮かべていたクロだが、突然なにかに気付いたような顔をしたかと思えば、ガバッと俺に飛びついてきた。

咄嗟のことに驚きつつ、つい反射的に抱き返してしまったが……タオルは巻いていても互いにほぼ裸の状態……密着度は尋常ではない。

「あはは、いや、せっかくカイトくんと一緒にお風呂入ってるんだから、そういう仕事関連のことはまたあとで考えようってそう思っただけだよ」

「それがっ、抱き着くのとなんの関係がっ……」

「カイトくんとの時間を大切にしたいな~って思ったら、カイトくんのことが好きだって気持ちがぐ~っと高まってきたから……嫌だった?」

「……そ、その聞き方はずる過ぎると思う」

「ふふふ、そうかも……大好きだよ、カイトくん」

「だからっ……そういうのは……卑怯だ」

幸せそうな笑顔で大好きだと告げてくるクロの顔はあまりにも可愛くて、もうこれ以上何も言い返せなくなってしまった。

というか、絶対いま俺の顔滅茶苦茶赤くなってる……なんというか、敵わないなぁ。