軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第97話 エドワードの情報攪乱

エドワードとベッファは、二人とも変装して情報収集を行っていた。

結局、ジーナを救うためにシルヴィアの名前を使うことになった。

万全を期すため、裁判で争い最終的に相手を牢屋にぶち込むところまで持っていき二度とジーナに手を出せないようにしたのだが……。

「正直、やりすぎた」

「ですね」

相手は、裁判も知らない平民だ。

司法官は『不敬にも公爵令嬢の侍女を貶めようとした平民を裁くため』というのがわかったからこそ裁判を行ってくれたが、本来は受けることはない。

平民同士の争いは、だいたいがそこの町を治めるメイヤーが間に入る。ひどいところなら金を渡して警備隊を買収し相手をいいようにする。

今回は、原告側の工房の連中は後者で片を付けようとしているのを察知したので裁判まで持っていったのだが、逆にこちらが警備隊とメイヤーを買収してジーナの叔父を救出し、工房の連中を捕まえてしまえば良かったのだ。

どうせフォルテへは出禁にする。ならばジーナを連れ戻すことなどできない。

連中の、町での評判は最悪だったし、こちらがある程度金を撒けばきついお灸を据えてもらえただろう。それも町ぐるみで。

シルヴィアの名前を使って裁判を起こすまでやることはなかったのだった。

そして、それをやってしまったからこそヒューズ公爵家がどのように動くかを探っていたのだ。

恐らくシルヴィアに城塞行きを命じた当主は、シルヴィアが生きてたどり着き、城塞都市を発展させているとなどとは夢にも思っていないだろう。

だから、生きていたとわかったときに、どんな対応をしてくるかわからない。

魔法契約されている契約書があるのでシルヴィアから城塞を取り上げることはないが、それ以外ならどんな命令もできる。

それこそ、法外な税金を納めろと言ってくる可能性もあるのだ。

なのでエドワードとベッファは情報の攪乱とヒューズ公爵家当主の動向をずっと追っていたのだが……。

「……うーん。さすがシルヴィア様を城塞へ送り込んだ親だけありますよね。端的に言えば当主の能力に欠けています」

「公爵領は豊かな上に、それぞれの町のメイヤーが有能なんだろ。放置しててもメイヤーが治めてくれているからうまくいってるんだな」

当主である公爵夫人はヒステリックでコロコロ命令が変わり、しかも命令したことを覚えていないという評判だった。

仕事をしていないわけではないが、手紙を受け取らないこともあるし読まずに捨ててしまうこともしょっちゅう。

そして、そのことに対して誰かが言及すると激怒するらしい。

それらの噂を集めたとき、エドワードもベッファも思った。

「シルヴィア様は、城塞行きになって良かったんだな」

「ですね。私の父親の上を行く毒親です」

シルヴィアの、「あんな親いらん」というスンとした態度がよく理解できたのだった。

ともあれ、根回しや情報の攪乱は終えたのでいったん帰途に就いた。

「あ、エドワードさんの怨敵の情報も集めておきましたよ」

「マジか」

ベッファの軽い一言にエドワードが驚く。

エドワード自身も集めていたが、表立った動きがないくらいの情報しか集まらなかったのだ。

「まず、エドワードさんの家からですね。こちらはエドワードさんの行方を捜しています。よけいなお世話だったかもしれませんが、公爵領から出て別の領へ仕官をしに向かったという偽の情報を流したので、今はそちらに目がいっているようです」

「マジか」

エドワードはベッファの気の利きっぷりに、同じ相づちしか打てない。

「で、近衛騎士団ですが。第三王子ともども評判が良くないですねー。エドワードさんがいなくなってから評価がガタ落ちです。エドワードさんを嵌めてその座についたジャコモという男ですが、何かに脅えているそうです。いや、何かじゃないですね、消えたエドワードさんが仕返しにくるんじゃないかって脅えているそうですよ」

それを聞いたエドワードは、暗い笑みを浮かべる。

「だろうな。俺も、そういうふうに噂を撒いているからな」

「ですよねー。そういった情報が集まったので、あ、コレ、エドワードさんがわざとやってるなってわかりました」

ベッファがうなずいた。

「ただ、やりすぎかもしれませんよ。追いつめられたドブネズミは反撃に出ますからね」

「枕を高くして寝てほしくないだけだよ。俺の影に脅えて暮らしてほしいね」

憎しみは消えたが許しはしないし、仕返ししないとも言ってない。

エドワード自身にも悪かった部分はある。

だが、冤罪を仕組んで嵌めたのだから、報いは受けてほしい。

一生、いつ訪れるかわからない影に脅えていろと思った。

「第三王子も、癇癪が増えているそうです。こちらは信頼していたエドワードさんが裏切ったと信じ込んでいるので、後釜に座った男に事あるごとに当たり散らしているのを見かけるそうですよ」

「信頼を裏切ったのは第三王子のほうなんだけどね。……ま、俺ではなくジャコモを信じたんだから癇癪を起こさず重用すればいい」

エドワードが鼻で笑った。