軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第98話 エピローグ

情報収集と攪乱を終えたエドワードとベッファが帰還した。

「何事もなく終わりました」

とエドワードが報告し、ベッファと一礼する。

「ん! ……でも、心配しすぎです。なんにもないです」

エドワードが苦笑する。

「そうかもしれませんが……。私も過去いろいろありましたので、シルヴィア様にご迷惑をかけないよう、注意を逸らすようにしてきたのもあります。 ま(・) た(・) 嵌められた場合、ジーナよりも大ごとになります。私を嵌める連中はこの国の貴族で、王族をも利用するような連中ですから」

エドワードがそう語ると、シルヴィアが珍しく表情に出した。

プクッとふくれる。

「……私のごえいきしです。第三王子なんかにあげません」

ベッファが深くうなずく。

「この都市にもシルヴィア様にもなくてはならない方ですので、私も多少の策を講じました。……動きがあれば随時お知らせし、何事もないように図ります」

シルヴィアはそれでふくれるのをやめた。

「ん! ベッファに任せるのです」

こう言われたベッファが感激し、号泣する。

「必ずやご期待に添う結果を出すよう励みます!」

「待って待って、ベッファ、ステイ。泣くのもやめろ。お前が本気を出すと怖いから。……シルヴィア様、大丈夫ですから。俺は騎士団から解雇されています。公爵令嬢で城塞の当主であるシルヴィア様に私設騎士団の騎士団長の任を命じられているのであれば、誰にもどうにもできません。第三王子にも、父である侯爵にもです。たとえ国王であっても、表立った功績がなくさらには金の力で握りつぶしたとはいえ第三王子殺害未遂で捕まったことのある男を引き抜くのは不可能です。ですので、安心してください」

エドワードは慌てて二人を諭した。

ジーナがエドワードとベッファに礼を言う。

「ありがとうございました!」

「無事に終わって何よりです」

「これでもう安心だろ。逃げなくて済むな」

ベッファとエドワードにそう返され、ジーナが微笑んだ。

「はい。――これからは心おきなくシルヴィア様のことだけを想い、シルヴィア様に尽くしていけます。みなさまのおかげです!」

笑顔で怖いことを告げるジーナ。

「あ、あぁ、そうなんだ?」

エドワードは若干引きながら相づちを打った。

ベッファは手放しで喜ぶ。

「そうですよね! 憂いがないと、仕事がはかどりますよね!」

と、わかっていない。

やっぱり、シルヴィア様の周囲にはまともな奴はいないんだなと、エドワードはしみじみと考えた。

ジーナと別れたエドワードとベッファは、歩きながら話す。

「……なぁベッファ。お前も潜在的に親兄弟が敵になっているだろ? どうする? 何か手を打つか?」

エドワードが尋ねると、ベッファはキョトンとした後明るく手を横に振る。

「こちらは気にしないでください。私を送り出したのが侯爵様となると、両親は絶対に口出しできません。迂闊な真似をして怪しまれたら外交モノですから、手紙すら送れないでしょう。アチラとしては、私という駒がいなくなっただけのことです。両親は侯爵様の覚えがめでたい私を粛清したいほど憎んでいましたし、いなくなったのを幸いに、侯爵様に取り入っているでしょう」

エドワードは困った顔で苦笑した。

「……そうだといいんだけどな。俺はそこまで楽観視できないんだよなぁ」

エドワードの父は、まだいいだろう。

公爵令嬢の私設騎士団の騎士団長の任についたと知れば、面目躍如だと考えるはずだ。

特に現在は城主代理でもある。

第三王子の近衛騎士よりも権力は上だ。

近衛騎士なんて、実際のところお守り兼雑用係兼肉盾だ。

侯爵家の次男、つまり貴族の嫡男でない者ならそこそこ良い地位だが、城主代理はもっといい。

近衛騎士は第三王子の代理任務など当然のことながらできないのだから。

……そう。

近衛騎士団を追い出され、城主代理にのし上がったエドワードを、近衛騎士団の連中はどう思うか。

そして、エドワードを嵌めたジャコモはどう思うか。

エドワードにはわからない。

ただ、喜ぶことはないのだけは確実だと思った。

「エドワードとベッファはいいのですか?」

後ろからそう声をかけられ、エドワードとベッファは飛び上がり振り向いた。

視線を同時に下に向けると、豚に乗ったシルヴィアが二人を見つめていた。

シルヴィアは、豚から下りると首をかしげて二人を見る。

「カロージェロとジーナは、スッキリした顔してます。悩んでないけど悩んでた、それがなくなったので楽になったって言ってました。二人は悩んでるのですか」

エドワードはなんと答えるべきかと迷っていたら、ベッファが泣きながら膝をついた。

「……シルヴィア様……! 私のような者を気に掛けてくださりありがとうございます! ですが、シルヴィア様が気に病まれるようなことはありません。いざとなったらナルチーゾ一族に頼み、暗殺いたしますので」

「……それ、あんまり良くない気がします」

ベッファにちょっと引きながらシルヴィアが答えた。

エドワードもうなずく。

「ベッファ、短絡的に考えるなって。……シルヴィア様。いつか頼ることがあるかもしれませんが、それは今ではないようです。今はまだ、この城塞を、この都市を発展させていきましょう。カロージェロとジーナは、降りかかった火の粉を払っただけのことです。もしも私とベッファに火の粉が降りかかってきたらシルヴィア様に火の粉を払う助力を求めるかもしれません。そのときはどうぞよろしくお願いいたします」

エドワードの口上に、シルヴィアはうなずいた。

「ん! いつでも助けるのです。わたしのぶかですから!」

それを聞いたエドワードも膝をついた。

「シルヴィア様。我が君。私は貴方の剣、貴方の盾。貴方は私たちを見捨てない。だから私たちは何があっても貴方を支え、尽くします。――そう、何があろうとも、貴方から離れないと、私たちは誓います」

エドワードのその言葉を聞き、ベッファは深くうなずいてエドワードと同時に頭を下げる。

シルヴィアは、ときどきこういうのが起きるのはなぜだろうと内心で首をかしげつつ――

「はげむのです!」

と、二人に声をかけた。