軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第96話 コスマ

エドワードとベッファはまだ何か後始末があるらしく、ジーナとカロージェロが先に帰ってきた。

今回、ジーナの後ろ盾には教会の神官長もいるということを示すためにカロージェロも同伴したのだが、カロージェロが城塞からいなくなるととたんにマヒするためできるだけ早く帰途に就いた。

そして、コスマもまたジーナとともに城塞へ向かった。

「ジーナが心酔している主君にお目通りしたい」

という建て前だが、ジーナが心配だからだ。

幼女だそうなので騙されている心配はなさそうだが、念のために確認しておきたかった。

ジーナとカロージェロは、コスマが呆れるほど足早にシルヴィアのもとへ急いだ。

「叔父さん! 置いていきますよ!」

「わ、わかった」

スタスタ歩くジーナとカロージェロにコスマがついていくと、かわいらしい幼女が豚に乗って現れる。

「あ、帰ってきたです!」

「「シルヴィア様!」」

豚に乗った幼女が、ジーナが心酔している主君か……。

騙されてなくて安心したが、思ったより威厳がなかったので肩すかしを喰らった気分でもある。

コスマは、もっと高飛車かもしくは近寄りがたい雰囲気を持っている令嬢だと想像していたのだ。

コスマは残念に思っていたが、二人は豚から降りて近寄ってきたシルヴィアにひざまずいて挨拶をしている。

「「シルヴィア様。戻ってまいりました」」

「ん! 良かったです」

それを見たコスマは、そうか、公爵令嬢だもんな、ジーナもちゃんと侍女としての振る舞いを身につけているんだなと感心した。

ジーナとカロージェロは口々に、

「ずっとシルヴィア様のことばかり考えていました」

「やはり私はシルヴィア様のそばで働くのが神から与えられた使命だと痛感いたしました」

と、何やら危ないことを言っている。

……コスマは別の意味で心配になってきた。

幼女はウンウンとうなずいているが、理解していない雰囲気だ。とりあえずうなずいておけ、という感じでうなずいている。

大丈夫なのかと不安に思っていると、ジーナがコスマを見て、紹介した。

「シルヴィア様、私の叔父です。住民としての面接をお願いいたします」

「ハイ!?」

住むなんて言ってないと思ったが、考え直した。

会わない間に、ジーナは思ったよりしっかりと意見が言えるようになっていたが、思ったよりも狂信的になっていた。

……いや、侍女を知らないので「侍女はこういうものだ」と言われても否定できないのだが、ちょっと危なっかしいのは確かだ。

公爵令嬢が危険人物ではないのは理解したが、ジーナとカロージェロを見て、むしろ祭り上げられている幼女が心配になってきた。

……コスマは商人のわりに、お人好しで心配性だった。

ジーナが笑顔で言う。

「叔父さん、シルヴィア様を否定していたら看破されますし、そうしたら出禁です。ちゃんと敬ってくださいね?」

「ジーナ……」

姪がちょっと怖い。

もう出禁になったほうがいいかもしれないと弱気になったら、シルヴィアが急に無表情になり、ステッキを掲げた。

『私が城主で、あなたの主です、【 支配(ドミナント) 】』

ステッキを床に打ちつけた。

「え……あ、はい」

コスマが戸惑いながら返事をすると、シルヴィアがちょっと小首をかしげて言う。

「……ん。だいじょぶみたいです。住めます」

「わぁ! よかったですね、叔父さん!」

「……よかったのかなあ?」

拍手するジーナに、疑問形で返事をした。

親族枠で住居は提供されるらしいし、長年ジーナを放置していたこともあり、コスマはこれを機に近くに住んで様子を見ようと決心した。

あちこちから仕入れて売ることはやめないが、そろそろ腰を据えてもいいかもしれないとも思ったのだ。

「私は、壊れた魔道具を修理して売っております。ガラクタが大半ですが、中には掘り出し物もあるんですよ。私のスキルは『 修繕(リペア) 』、属性魔術は聖魔術ですが……ごく簡単な【鑑定】しか出来ないため、商人の道を選びました」

ジーナほどではないが手先が器用で、昔からさまざまな道具を修理していたらこうなったという。

「完全に元に戻せなくても、用途を変えたり一部使えたりだけでも便利なものがあったりしますよ。店を開いたらぜひ覗きに来てくださいね」

引っ越すためにいったん借家に戻って用意してくると言い、別れた。

「では、メイヤーに頼んで場所の選定と、シルヴィア様に住居の建造をお願いしておきましょう」

カロージェロが手配し、サクッと場所を決めてシルヴィアが魔術で家を建てる。

周囲の家と同様、一階が店で二階が住居だ。

他の家は庭付きで畑や家畜を飼っているが、長く家を空けるのならむしろ倉庫を造ったほうがいいだろうと、倉庫を建てる。

……荷物を積んでやってきたコスマが倉庫付きの家に驚き、あんぐりと口を開けることになるのは、もう少し先だ。