軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

403.高度なイチャイチャ

翌日、カーボンダンジョンの外。

救出された冒険者達があっちこっちに散らばっている。

昨日助けだした冒険者の半数があっちこっちに散らばって、半数がセレンに入っている。

カーボンからは全員、一次的に撤収している。

この世界の冒険者達は一つ、絶対に守る大原則がある。

ドロップ品を無事持って帰ることだ。

ダンジョンに潜るのは物を生産するのが目的だから、無事に戻る――つまり帰る方法が確保されているのは大前提で決して崩れることはない。

「安定して周回する」もそこから来ている。

カーボンが「帰れない」ダンジョンだと分かると、全員が様子見モードにはいった。

「君がここにいるからね」

通常ルートでここまでやってきたネプチューンがニコニコ顔で言った。

彼の後ろにはいつものようにランとリルがいて、こっちはセレストとバナジウムが一緒にいる。

「俺が?」

「お手並み拝見、って感じなのさ。みんなは」

「なるほど」

「でも、やっぱりすごいね君。僕が到着する前に解決しちゃったよ。まっ、そうなるんじゃないかって思ってたけど」

「……だから遅かったんだな」

苦笑いしてネプチューンを見る。

シクロからセレン・カーボンまでそんなに離れていない。

急行すれば、ネプチューンならすぐにたどり着けるはずだった。

それが、一晩かけてゆっくりきた。

「最初から、その先を見据えていたのね」

指摘するセレストをみた。

「その先?」

「閉じ込められた人間はリョータさんが助けると信じている。だから助けた先の事を考えていたのよ」

「そうか、結局ダンジョンの調査はしなきゃだもんな」

「そういうことね」

「あはは、どうなんだろうね」

相変わらずニコニコ顔をしているネプチューン、食えない男だ。

「でも、悪意をちょっと感じるね」

ネプチューンはそう言って、カーボンの入り口を見た。

俺とセレストもそっちに目を向けた。

カーボンダンジョン、その入り口は普通に開いている。

昨日やってきたときは入り口なんてどこにもなかった。

W追尾弾で無理やりこじ開けた後も、鉄壁弾の力技で開口の維持に苦労した。

それが、今は普通に空いている。

「悪意というか、まあ、誘ってるんだろうな」

ネプチューンと同じような印象を受けた。

冒険者を全員助け出した後、入り口は普通に開いたのだ。

まるで何事もなかったのように。

そこで再突入する冒険者はいなかった。

全員が☆持ちの高ランク冒険者、うちでいうとエミリーやセレスト、本気を出したイヴと同ランクだ。

この状況で「ヒャッハー入り口が開いたぜえ」って突っ込んでいくそそっかしい人はさすがにいなかった。

それもあいまって、ますますカーボンの入り口が「誘っている」ように見えてしまう。

「で、どうするの君は?」

「乗りかかった船だから、調べようと思う」

「じゃあ僕たちも行くよ」

「いいのか?」

「うん。久しぶりにランとリルの素敵な所も見たいしね」

「……ばか」

「私頑張るね」

いつもくっついていて、俺にはほとんど口を開いたところを見せない二人の女。

リルは嬉しそうに顔を赤らめて、ランは無邪気に意気込んだ。

「セレストはどうする?」

「私は一旦屋敷に戻るわ。開通させた方がいいし」

「そうだな。バナジウムは――まあそうだな」

「……(コクコク)」

幼げな精霊は俺のズボンの裾をぎゅって掴みながら連続で頷いた。

俺とバナジウム、ネプチューン、ランとリル。

この五人で、再びダンジョンに入る事にした。

セレストが屋敷に戻っていくのを見送ってから、一緒にダンジョンに入った。

切り出した石を積み上げたダンジョン、青白く光る壁や天井。

「不思議な感じの所だね」

「そうだな」

「モンスターはどういうの?」

「そういえば聞いてなかった。見てもいない」

「見てもいないの?」

「ニホニウムに頼んで止めてもらってたからな」

ファミリーの内情を比較的よく知っているネプチューン――というより一応俺リョータファミリーの傘下に入っている彼。

まわりくどい言い方はやめて、単刀直入に説明した。

「なるほどね――おっ」

前方に何かを見つけて、立ち止まるネプチューン。

俺も立ち止まって同じように見た。

そこに、真っ白いマネキンのような物があった。

人の形こそしているが、髪も顔もなく、服も着ていない。

のっぺりとしている、まさにマネキンのような見た目のヤツだ。

「これがモンスターかな?」

「そういうことだろうな」

頷き合った直後、マネキンは姿を変えた。

体型が徐々に変わって、髪も生えてきた。

それだけではなく体の一部が溶けて、服に変化した。

マネキンは一瞬で、リルそっくりに化けた。

リルの偽物は本物のような色気を放ちながら、ゆっくりとネプチューンに向かってくる。

「ふーん」

ネプチューンは薄い笑いを浮かべた――直後。

一瞬でリルの偽物に肉薄すると、突き出した右腕が相手の胸を貫通した。

ネプチューンはなんだか不機嫌そうに見えた。

なんでだろう、と思っていると。

「似てない偽物はやめてよね」

ニコニコ顔で、いつもの飄々とした口調のネプチューン。

その一方でリルは嬉しそうに顔がほころんで、ランは羨ましそうに唇に指を当てた。

「……?」

ズボンの裾を引っ張って、小首を傾げるバナジウム。

俺は微苦笑して。

「高度なイチャイチャだよ」

と、教えてあげたのだった。