軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

404.カーボンのエグさ

ネプチューンが貫いたリルの偽物が消えて、青いリンゴがドロップされた。

ネプチューンはそれを拾い上げて。

「カーボン一階はリンゴかな」

「そうらしいな。同じ階で違う物がドロップするパターンは?」

「レアモンスターなら」

「そっか、それもあったか」

全ての階にあるわけじゃないが、ダンジョンにはたまに、その階層のメインモンスターとは違うレアモンスターが現われる。

「レアだけなんだな、ドロップが変わるのって」

「そういうこと」

頷くネプチューンは苦笑いしていた。

「どうしたのよ、変な顔をして」

「ちょっとね。ここはエグいなって思って」

「エグい?」

リルは不思議そうな顔で、首を傾げた。

「エグいってどういう事? 強くなかったよね」

ランも同じように、不思議そうな顔でネプチューンに聞いた。

二人とも、今し方ネプチューンが偽物を瞬殺したのを見ている。

しかも三人が得意とするコンビネーションじゃなくて、ネプチューン個人で倒した。

強くはない、と判断するのは当たり前だ。

「すぐに分かるよ」

「「……?」」

互いを見て、首をかしげ合うランとリル。

どういう事なんだ? と思いつつ俺たちは再び歩き出す。

とりあえずもう少し地下一階を回ってみようと、青白く光るダンジョンの中を探索した。

しばらく歩くと、今度は複数のモンスターが出現。

そいつらはエンカウントするなり、ほぼノータイムで姿を変えた。

目の前に現われたのはエミリー、そしてセレストの偽物。

ちらっとネプチューンを見た、彼は両手の手のひらを上向きに突き出した。

どうぞどうぞ、って意味のジェスチャーか。

俺は銃を構えて、エミリーとセレストの偽物に向かっていった。

迎撃するエミリーの偽物、ハンマーを振りかぶってくる。

その背後でセレストの偽物が長い髪をなびかせながら呪文を詠唱する。

ハンマーを片手で受け止めて、成長弾を連射。

弾は真っ直ぐ二人を貫いて、それぞれ青いリンゴをドロップした。

それほど強くはない、本人の半分程度の力量って所だ。

ネプチューンがいうエグイという言葉の意味がやっぱり分からなかった――のは、そこまで。

銃を納め、振り向いた俺がぎょっとした。

そこに二人のバナジウムがいた。

並んでいる二人の少女。

外見、服装、そして表情に至るまで、全てがうり二つ――まったく同じ人物にしか見えない。

手が銃に伸びたが、抜けなかった。

「……エグい」

ネプチューンの言うことがわかった。

偽物に変化する基準は知らない。

それがこの場にいない人間なら問題はない――いやそれも実際の周回の時は気を付けなきゃならない事だが、少なくとも俺とネプチューンたちだけで調査に来てる今回は気にする必要はない。

が、ここにいる人間に化けたら話は違う。

まったく同じ見た目ならどっちを攻撃していいのか分からない。

「――いや」

意外と、問題はなかった。

二人いるバナジウム、片方はオロオロしてて、片方は俺に攻撃をしかけてきた。

俺はしかけて来た偽物のバナジウムを成長弾で打ち落とす。

一発で倒して、青リンゴをドロップ。

「と、言う訳なんだ」

「そっか、こういうことなんだ」

「なに、それってあんた、あたし達の見分けが付かないって事?」

「うたってくれたら分かるけどね。向こうがうたえたとしても、キミたちの歌は聞き分ける事ができる。見た目は自信ないね」

「……ふん」

さっきまで不満そうだったリルは、顔を背けつつも、まんざらでは無さそうな顔をした。

それが大事なのか、彼らの間では。

「それはいいんだけど、やっぱりエグいよねここ」

「どうしても一手遅れるな、攻撃してきた方を迎撃、で判別するとなると」

「ソロ推奨かな。入場するときに何かをつけてそれで識別してもらうのも手だけど」

「それは危険だ。少なくともエミリーのハンマーは最新モデルだった。装備品も真似られると見た方がいい」

「だよねー」

俺とネプチューン、二人でカーボン地下一階について討論を交わす。

「君はどうする?」

「俺個人なら100%で判別方法は一つある。ただし汎用性はゼロ」

「どういう事?」

「それは――」

そう言ってる間に、またしてもモンスターが現われた。

ネプチューンと話してて、バナジウムから目を離してたのをいいことに、今度は五人――バナジウムの集団になった。

「うわーお。こいつら学習してるね」

ネプチューンの言うとおりだった。

さっきは片方が襲ってきたから、それを迎撃するだけで良かった。

しかし今回、バナジウム計五人、全員がびっくりして、戸惑っていた。

「そっか、ここのモンスターは学習型か」

「学習型? そんなのがあるのか」

「たまにね。やっかいなタイプのダンジョンだよ」

「そうだよな」

「で、君の100%判別はこの状況でもいける?」

「ああ」

頷き、五人のバナジウムに手をかざして。

「リペティション」と唱えた。

バナジウムを倒したことはない、しかしカーボン一階のモンスターはさっき倒してる。

一度倒した相手を即死させるが、そうじゃない相手には何も効果が無い究極魔法。

五人のうち四人のバナジウムが一瞬で消えて、四つの青リンゴになった。

「こんな感じだ」

「すごいねえ。そっか、君にはその魔法があったね」

「とりあえずこの場はこれで凌げるけど、何かを考えないとダメだな」

「そうだねえ」

俺とネプチューンは、まだ一階だというのに、カーボンのエグさに苦笑いしたのだった。