軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

189.新しい村

朝、おきて部屋を出た俺の前にエミリーが現われた。

「おはようエミリー」

「おはようなのです。ヨーダさんに手紙が来てたです」

「手紙? 珍しいな、誰からだろ」

「インドールの村長さんなのです」

「インドールの?」

俺は手紙を受けて、封を切って中を見た。

内容を読んでいくと、それは感謝の手紙だった。

サメチレンの元協会長、ライナスが失脚した情報をしったインドールの住民達が喜んでいるらしい。

インドールが俺に助けられて、シクロの傘下に加わった後も、サメチレンから細かい嫌がらせを受けていた。

元々インドールはサメチレンの傘下だ。

ダンジョンを持ってる街は、ダンジョンが生まれる時のために、開拓者のような形でなにもない所に村を作らせる事がある。

インドールはサメチレンの援助を受けて作られた開拓村だ。

それが色々あって、サメチレンから悪い扱いを受けていたところに、俺が介入して助けた。

村の住民達は俺の事を「恩人様」って呼んで感謝してる。

手紙は「ありがとう」を何度も繰り返した、それが逆に嫌がらせの度合いを表しているかのようだ。

「あれからも嫌がらせは続いてたのか」

「報告するほどじゃないです、って書いてあるです」

「地味な嫌がらせか……陰湿だな」

まあでもそれがなくなったのはいいことだ。

これからサメチレンの協会長はセルの息がかかったものになるから、嫌がらせは完全に止まるだろう。

俺が留守にしてる間ダンジョンに居続けたアウルムを夕方迎えに行くから、その時にインドールに寄って話をして、住民達を安心させてあげよう。

ニホニウム、地下七階。

レイアを装着して、火炎弾を中心に使って、電気をまとったマミーを倒す。

倒してドロップした精神の種をレイアはアームで拾おうとしたが、俺以外誰も触れないそれは当然の如くすり抜けてしまった。

「触れない、ごめんなさいマスター」

「気にするな、これは仕方ない。俺にしか触れないものだ」

「マスターだけ?」

「そう、世界でおれだけ」

俺は種を取った、種は俺の手のひらの上で消えて、精神を1アップした。

「世界で一人だけ……マスターすごい」

「だから気に病む必要はない。他でフォローしてくれればいい」

「わかった、じゃあこうする」

レイアはアームの一本を変形させた。

ただのアームなのが複雑に変形して、図案のようなものになった。

「これは?」

「この階層の地図、これがモンスターのいる場所」

レイアの説明通り、知ってる地形もあって、それは確かにこの階層の地図だった。

そしてレイアはいくつかの 点(、) を動かした。

モンスターはそこにいる、というのが分かる。

「こんなことも出来たのか」

「昨日練習した。この方がマスターわかりやすい」

「ああ、わかりやすい。助かるぞレイア」

「……」

レイアは無言だが、嬉しそうなのが伝わってきた。

ニホニウムダンジョンの種、レイアはやっぱり触れなかったが、代わりに別の技を編み出してくれた。

いつでも見られるマップはすごく便利で、効率は微上昇程度にとどまったが、ない時に比べて消耗が半分というか楽さが倍というか。

ものすごく便利な能力に助けられて、この日楽々と精神をBからAにあげた。

―――1/2―――

レベル:1/1

HP SS

MP SS

力 SS

体力 SS

知性 SS

精神 A

速さ SS

器用 F

運 F

―――――――――

昼、レイアを連れてインドールにやってきた。

村長にあって話をして、そこでまたメチャクチャ感謝された。

村をあげての大宴会をやらせてくれって言われたけど、大げさ過ぎるから丁重に断った。

そして今、レイアと一緒にインドールの村を散歩している。

黄金の村、インドール。

かつては何もない寒村だったが、今やアウルムダンジョンの産出する砂金で賑わっていた。

村に活気があり、建築ラッシュも続いている。

そろそろ村じゃなく、規模が街になりそうな感じだ。

少し街を回っただけでも、酒場やら娼館やら賭場やら、あぶく銭を大量に持った人間目当ての店がたくさん出来ていた。

「これがマスターの街……」

「名目上な、ダンジョン協会長としての仕事を何かしたわけじゃない」

「でもマスターの街、街をまるまる一つ持ってるマスターはすごい」

レイアの言葉がちょっとむずがゆかった。

そのまましばらく歩いてると、道ばたに一人の物乞いがいた。

ある意味似合っている。

村に人が増えて、あっちこっちにゴミが積み上がっている。

住民の増大に伴って、ゴミの処理が間に合ってない感じだ。

その横にいる物乞い……ロケーションとしてはものすごく自然に見える。

物乞いの前を通ると、何人かに一人は金を恵んだ。

俺が知ってる似たような光景に比べて大分高い頻度だ。

やっぱりゴールドラッシュでみんな懐が温まってる、施す事に躊躇がない感じだ。

ここでなら物乞いでもやっていけるだろう、と思ったその時。

「マスター」

「どうした」

「あれはモンスターです」

「え?」

「ハグレモノです」

レイアはいつも通りの、感情の乏しい表情で言った。

視線は物乞いを捕らえている。

「本当か」

レイアははっきりと頷いた。

「マスターの犬と同じタイプ」

「ケルベロスか……なるほど」

レイアはモンスターの気配をはっきりととらえる事ができる、その上屋敷に住んでる我が家の番犬・ケルベロスとも昨日あってその事を知っている。

俺は物乞いを見た。

どう見ても人間だけど、レイアが言うのなら間違いないだろう。

俺は物乞いに近づいていった。

今はばれてないが、ばれたら大変な事だ。

ケルベロスの様な、誰かの「持ち物」だと示す首輪とかがない。

ハグレモノだとばれたら討伐されかねない。

その前に保護しなきゃ。

「すこしいいか」

「な、なんだ」

物乞いは若干怯えた目で俺を見あげた。

見た目は中年で、服はボロボロ、髪はボサボサ。

どこからどう見てもホームレスか物乞いの風貌だが。

俺はレイアを信じた。

おもむろに拳銃を抜いて、回復弾の融合弾・睡眠弾をうった。

物乞いは一瞬で眠りにつき、俺は彼をポケットの中に詰めてこの場から離れた。

暴れられるとよくないから、じっくり話せる場所に連れて行く。

話はそれからだ。

インドールをひとまずでて、誰もいない野外にやってきた。

そこで物乞いをだして、目が醒めるのをまった。

しばらくして目を覚ました物乞いは周りをきょろきょろ見て、怯えた顔をした。

「怖がらなくていい、俺は敵じゃない」

「お、俺をどうする気だ」

「お前がハグレモノなのは知ってる」

「――っ!」

逃げようとする彼の手を掴んだ。

「は、離してくれ!」

「落ち着いてくれ、敵じゃないといった。敵なら眠らせて連れてこないで、その場で倒してる」

「あっ……」

物乞いは暴れるのをやめた、俺の言い分を理解したみたいだ。

「落ち着いたか、話を聞かせてくれないか?」

ケルベロスの事もあって、必要なら力になろうと思っている。

物乞いは少し考えて、静かにうなずいた。

「ど、どこから話せばいいのか……」

「まずお前がどういうモンスターなのか教えてくれ。どう見ても人間だけど」

「私はクレイマンっていうモンスターだ」

彼はそう言った後、いきなり体から色が消えた。

色が消えて、形が変わった。

ドロドロした、粘土の様な姿になった。

「なるほど、いろんなものに化けられるタイプのモンスターか」

「はい、そうです」

「それで物乞いっぽいかっこうをして、村の人から恵んでもらってたのか」

「はい……みんなの為にはこうするしかなかった。この黄金の街ほどリッチな所はほかにないから……」

「みんなのため?」

「他にも仲間がいるんです。でもみんな一目で分かるハグレモノだから、私がこうして働いてみんなを……」

そうなのか……。

「みんなって、多いのか?」

「全部で五十六 体(にん) だ」

「それは多い! 物乞いだと養えないんじゃないのか?」

「でも他にどうしようもない。私以外だとすぐにばれて殺されてしまう」

「……そうだよな」

ケルベロスの時もそうだった。

彼は犬に近い見た目で、街中のゴミ箱をあさって回って、人間から逃げていた。

何かのきっかけで人間に近い自意識をもったハグレモノは結局似たような事になってしまう。

場合によってはこのモンスターも屋敷で飼おうと思ったけど、五十七はちょっと多い。

物理的に屋敷に入りきらない。

俺が持ってる他のみっつの住まいでもまだ足りない。

どうにかするのなら、新しく借りるしかない。

それか建てるかだ。

寮みたいなのをつくって、そこにケルベロスやクレイマンのようなモンスターを住まわせる。

それ専門の場所を作った方がイイかもしれない。

「……あっ」

ふと、思い出した。

作る、と言う言葉で思い出した。

インドールの成り立ち、そして、俺の立場。

「ハグレモノの村を作ろう」

俺はクレイマンをまっすぐ見つめて、いった。

「えっ、む、村を?」

「そうだ。俺はあの村のダンジョン協会の協会長」

「えええええ!?」

「金をだして、開拓する意思のある人間に村を作らせることができる」

「ほ、本当ですか!?」

「ああ。協会の金を使うといざって時やっかいだから、俺のポケットマネーからだそう。今ならそれくらい出せる」

俺は色々話した、まだ半信半疑なクレイマンに実現の可能性を話した。

話しながら、現実的な所にプランを調整していく。

頑張れば一日で一千万ピロを稼げる俺、ダンジョン協会の協会長という立場。

出来る事は色々ある、手堅くやったとしても選択肢は複数残る。

それを話して、クレイマンを見た。

「どうだ、やるか」

「はい!」

クレイマンは人間の姿に戻って、俺の手を思いっきり掴んで。

「ありがとうございます!」

といった。

力強くつかまれた手がちょっといたくて、これまでの彼らの苦境を物語っているかのようだった。