軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

188.似たもの同士

買い取り屋から久しぶりの我が家に帰ってきた。

日が暮れた直後の屋敷、エプロンを着けて、自分の背たけよりも高いホウキで掃除しているエミリーと目があった。

「エミリー」

「ヨーダさん! お帰りなのです!」

エミリーはホウキを投げ出して、俺に駆け寄ってきた。

残り数メートルの所で地面を蹴って飛び込んでくる。

抱きついてくるエミリーを受け止めようとぐっと踏みとどまったが――来なかった。

プロテクターから人間の姿に戻ったレイアが俺たちの間に立ち塞がって、エミリーを止めてしまったのだ。

「どちら様なのです?」

「マスター、この人は?」

二人同時に聞いてきた。

「新しい仲間だよエミリー、彼女にも部屋を頼むな」

「分かったなのです」

エミリーはバタバタと屋敷の中に駆け込んでいった。

「マスター」

「うん?」

「私はマスターの仲間なのですか?」

「俺はそのつもりだけど……いやか?」

「……いえ。私はマスターの道具ですから」

「道具は悲しいな、仲間になってくれよ」

彼女の魂が欠けているというのを知ってから、余計に「道具」とかそういうのを否定したくなった。

だから「仲間」の所を強調して、まっすぐレイアの目をのぞき込む。

「仲間は……」

「うん?」

「仲間は……マスターに抱きついてもいいのですか?」

今のエミリーの事か。

「別に構わない――」

と言おうとしたその時、横からにゅ、と手が伸びてきて、俺のおでこを叩いた。

横を向くと、そこにイヴの姿があった。

自前のうさ耳に、バニースーツ姿の女の子。

レイアばりの感情の乏しい表情で、イヴは二度、チョップをしてきた。

「痛い痛い、どうしたんだイヴ」

「低レベル嫌い」

「ちょっと懐かしいなそれ」

俺は笑いながらポケットの中からニンジンを一本取りだして、イヴに渡した。

さっき一千万を到達した稼ぎの中から、あらかじめ残しておいたニンジンだ。

新鮮な、ドロップSのニンジン。

イヴは微かに嬉しそうな表情をして、ニンジンを受け取った。

「久しぶりのニンジン」

「それはよかった」

「お預けが長い」

「結局チョップするのね」

ニンジンを受け取って、大分ご機嫌なイヴは最後のチョップの力を弱めてくれた。

そしてニンジンをガジガジとかじりながら、屋敷の中に戻っていく。

「相変わらずだなイヴは……ん? どうしたレイア、イヴがどうかしたのか?」

「あの人も、マスターの仲間?」

「ああ、そうだけど?」

「仲間は……チョップをする?」

「え? ああそういうことか。別にいいぞ、レイアは仲間なんだから、思った事を好きにしていい」

安請け合いかな? って一瞬思ったけど、俺の仲間は結構くせ者揃いだ。

喜怒哀楽の感情が結構激しい子ばかりだ。

レイアの口ぶりからしてそれを真似ようとしてるみたいだ。

それで少しは感情が取り戻せるのなら俺は何でも付き合うつもりだ。

アリスあたりはいい影響を与えそうだな、なんて思った。

「ご主人様ー!」

今度は庭の方からケルベロスがやってきた。

巨大な番犬、ケルベロス。

彼は猛ダッシュしてきて、俺の前で急ブレーキをして、キラキラした瞳で見つめてきた。

「お帰りなさいご主人様」

「ただいま」

「あのねご主人様。ぼく、ご主人様がいない間もちゃんと屋敷を守ったんだよ」

「そうかー」

まるっきりわんこの目、「ほめてほめて」オーラを出してくるケルベロス。

頭を撫でてやると、尻尾をはち切れんばかりに振ってきた。

図体はでかいけど、こういう所はやっぱりわんこだ。

「えへへー」

「……これもご主人様の仲間?」

「え? ああそうだな……うん、仲間だな」

「仲間……」

「ある意味レイアに一番近い立場かもな。ケルベロスは飼い犬兼仲間。レイアは道具兼仲間」

さっきの……フォローみたいな事を言ってみる。

道具を否定したのは俺の気持ちの押しつけだ。

レイアはもしかしたら「道具」というのにアイデンティティーを持ってるのかも知れない。

頭ごなしに否定してしまうのは、まだあまりよくないかも知れない。

俺に言われたあと、レイアはケルベロスをじっと見つめる。

一番近い立場って言われたケルベロスをじっと見た。

しばらくして今度はこっちに目を向けてきた。

心なしか、ケルベロスと同じような「ほめてほめて」オーラを出している。

でも言わない。レイアは言わない上、それを押し殺そうとしているように見える。

「レイア」

「はい」

「してほしい事は口に出していって良いぞ。遠慮することはない。」

「……マスター」

「うん」

言ってくるか? って思ったその時。

「ご主人様-」

ずっと頭をなで続けていたケルベロスが俺にタックルした。

セントバーナードの倍はある巨体にたまらず押し倒された。

俺を押し倒した後、ケルベロスはペロペロなめてきた。

犬の本能丸出しの愛情表現、顔中唾液まみれでベタベタするけど、悪い気はしない。

視線を感じた。

真横から俺を見下ろすレイアの視線。

ゾクッとした。

「ま、待てレイア、早まるな――」

気づいた時には時既に遅し。

俺はこの後。

レイアとケルベロスにめちゃくちゃペロペロされたのだった。