軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

190.機能特化村

シクロの、ダンジョン協会の建物、その会長室。

俺はセルに会いに来た。

「サトウ様のおかげでサメチレンを手に入れられた。もう感謝の言葉もない」

「開けっぴろげにいうんだな」

「余はサトウ様に隠し事はしたくない。それに感謝の気持ちはきちんと伝えなければならんと思っている」

「別にたいした事をしてないんだけど……だったら用意して欲しいものがある」

「何でもいってくれ」

「ハグレモノの飼い主を示す首輪。あれを200」

「承った」

セルは即答して、手元にあるベルをならして部下を呼んで、首輪を用意させた。

すぐに行動に移して部屋から出て行ったセルの部下、二人とも行動が早い。

「訳は聞かないのか」

「サトウ様のことだ。きっとまた困ってるものを助けるためなのだろう」

「困ってるもの、か」

「うむ。『困っているものがいる、助ける力をもったものがいる』」

セルと出会った時から言われ続けてきた言葉だ。

たしかにそれが俺のいつもの行動って言えばその通りだ。

「余がその詳細を聞く必要はない」

「そうか」

「一つだけ気になる事はある」

「気になる事?」

「サトウ様が相手を助ける力があるのは存じ上げている。しかしそれが甘やかしにつながらないか、それだけが気がかりだ」

「……肝に銘じておくよ」

シクロを出て、いったん屋敷に戻って、転送部屋を使ってアウルム経由でインドールにやってきた。

すっかり栄えて、人も物も増えて、賑やかさと乱雑さが増えた街の中を歩きながら考える。

甘やかしか。

そんな風にならない様に気をつけてはいるんだけどな。

だけど今回はそうなっちゃうかも知れないと思った。

ケルベロスの様な、意思の疎通が出来る様になったモンスターたち。

彼らは人間と普通にやりとりできるが、決定的な違いが一つある。

ダンジョンに入れない。

何がどうなったところで、モンスターがモンスターのままダンジョンに出入りすれば消滅する。

それはダンジョンの精霊であるアウルムのような存在も例外ではない。

モンスターをダンジョンから連れ出すには一度ドロップ品に戻して、もう一度孵す必要がある。

だから彼らはダンジョンに入れない。

そしてそれは、このダンジョンが全てをドロップする世界では致命的だ。

だから俺は最初の予定は昔のインドールにするつもりだった。

俺がダンジョン協会長の名目でポケットマネーを出して、村を作って援助する。

今の俺なら出来るが、セルの言うような甘やかしになるかもしれない。

クレイマン達の場合それは仕方ない事だが。

「仕方ないですましていいのかな……」

セルに言われて、俺は迷った。

迷ったせいで足元が不注意になって、前に比べて大分増えたゴミを踏んづけて、ずるっと滑ってしまった。

幸い能力は上げきってて、身体能力が高いから、とっさにバック転して、綺麗に一回転して着地する。

「「「おー」」」

周りの通行人が拍手する。

ちょっと恥ずかしい。俺は滑った原因になった、バナナの皮を拾って、その辺にあるゴミの山に放り投げた。

「……ああ!」

ゴミの山を見て、俺はある事を思い出した。

インドールから歩きで30分くらい離れた所。

待ち合わせの場所にやってきた俺が見たのは、クレイマンを中心に集まった数百体のモンスターだった。

種類様々のモンスターは集まっているが、殺気も敵意もない。

クレイマンやケルベロス同様、意思の疎通が出来る――理性と知性に目覚めたモンスター達だ。

モンスターたちはこっちを見て、にわかにどよめいた。

俺が近づいていくと、クレイマンが代表して向かってきた。

「さ、サトウさん」

「待たせたな」

「その……後ろの人たちは」

俺はちらっと背後を見る。

荷馬車が三台、それを操縦する人間が六人。

インドールの人たちだが、それは後だ。

「まずはこれを」

俺は持ってきた袋から首輪を取り出して、クレイマンに渡した。

「それを体のどこかにつけてくれ。これをつけてて人を襲わない限り攻撃討伐されない」

クレイマンは首輪を受け取って、少し戸惑った顔をした。

「に、人間に襲われるのは?」

「それは大丈夫」

ケルベロス同様、首輪は俺の飼いモンスターである証拠だ。

今の俺なら、不条理をしかけてくる人はそんなにはいないはず。

理由はいわなかったが、俺が自信を持って言い切ったから、クレイマンはそれで納得した。

首輪をもらって、他のモンスターに配る。

人型や動物型は普通に首輪としてつけたが、昆虫やスライムはつける場所に迷っていた。

ガスだか死霊だかのモンスターは、首輪を体の中に取り込んで、まるで「核」とかそういうのに見えてちょっと面白い。

首輪が全員に行き渡った後、俺は改めてクレイマンにいった。

「で、ここにお前達の村を作っていくんだけど、一つ仕事を頼みたい」

「仕事? お、俺たちにも出来る仕事があるんですか?」

「ああ」

俺は大きく頷き、馬車とついてきた人たちにジェスチャーした。

馬車の一台が前に出て、積んでいるものをドバッと下ろした。

ゴミだ。

インドールのあっちこっちで積み上げているゴミである。

「こ、これは?」

「これを破壊してくれ。手段は問わない」

「どういう事ですか?」

「人間の世界はゴミを処理する業者がいる、ほっとくとハグレモノになっちゃうからな。で、お前なら分かると思うけど、今インドールはあっちこっちがゴミだらけだ。人口が急速に増えて処理が追いついてない」

「あっ、確かに」

「俺たちにも出来る仕事があるのか、っていったけど、これなら出来るだろう?」

「――はい!」

クレイマンは大きく頷き、話を聞いていたモンスターから早速何体か前に出てきた。

荷馬車から下ろされたゴミを攻撃する。

元々攻撃が得意なモンスター達だ。

総掛かりで、ゴミの山はあっという間に消し飛ばされた。

俺は封筒にあらかじめ入れてた金をクレイマンに渡した。

「これが今の分のゴミを処理した場合の、相場の金だ」

相場の金。

あえて相場通りの額を渡した。

セルに言われてしまったのもあって、俺は、厳密に相場通りの額を渡した。

受け取ったクレイマンはそれを取り出す、モンスターたちがよってきて、それをみて息を漏らす。

ほぼ全員が――一部表情の分からない顔のないモンスターをのぞけば、全員が感極まった表情をしていた。

しばらくして、モンスターが揃って歓呼して、俺に「ありがとう!」と言ってきたのだった。