軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第921話 レオニスの本領発揮

氷の女王が先頭に立ち、洞窟内部を粛々と歩いていくライト達。

当然のことながら、魔物は一匹も出てこない。

如何に雑魚魔物といえど、氷の洞窟の主たる氷の女王が率いる一行相手に無分別に襲いかかるほど愚かではないらしい。

そうして進んで行った先、いつも氷の女王がいる最奥の広間の手前で立ち止まった。

歩を止めた氷の女王に、レオニスが声をかける。

「ここか?」

『ああ。この壁の向こうに、何かがある気がする』

「そうか、分かった。ちょっと壁を見せてもらうぞ」

氷の女王の証言をもとに、レオニスが彼女が指した壁の前に進み出る。

レオニスはそのまま壁を上下左右隈なく眺め、直接手のひらを当てて触れてみたりしている。

そうしてしばらく眺めた後、首だけ横にして後側にいるライト達に向けて声をかけた。

「おーい、ラウル、お前もこっち来てちょっと見てくれー」

「はいよー」

レオニスからご指名を受けたラウル、素直に従い前に出てレオニスの横に並んだ。

横に来たラウルにレオニスが早速相談する。

「ここら辺では、俺は特にこれといった異変や違和感を感じないんだが……お前もちょっと探ってみてくれ」

「了解」

レオニスの依頼を快諾したラウルは、早速壁に向かって凝視する。

レオニスはラウルの邪魔をしないように、そこから五歩ほど後ろに後退しライト達と同じ位置に立つ。

ラウルは立っていた地点から右に二歩三歩動き、その後もとの位置に戻ってからさらに左に二歩三歩、広範囲で移動しながら壁を眺め手で触ったりしている。

左右だけでなく少し宙に浮いて壁の上の方を見て触ったり、入念に見入るラウル。その姿をライト達は後ろからずっと見ていた。

そうして一通り調べたラウル。

己の所見を伝えるべくライト達のもとに向かって歩きだす。

戻ってきたラウルに、レオニスが早速尋ねた。

「どうだった?」

「かなり微弱ではあるが、氷の女王が言っていた壁の奥に何かがある気配はした」

「そうか、お前がそう言うなら間違いないだろう。探知ご苦労さん」

「どういたしまして」

ラウルの働きを労うように、レオニスがラウルの肩に右手をポン、と置きつつ再び壁の前に進み出る。

レオニスがラウルに探知を託したのは、ラウルの魔力感知能力の高さ故だ。

自分では感知しきれないものでも、妖精であるラウルならばその能力で感じ取ることができるかもしれない、という期待があったからだった。

そしてラウルは、レオニスのその期待に見事応えてくれた。

目指す位置が特定できたからには、今度こそ 自分(レオニス) の出番である。

レオニスは再び後ろに振り返り、氷の女王に声をかける。

「氷の女王、今からこの壁を掘り崩すが、いいか?」

『もちろん。ただ、この氷の洞窟の壁は削ってもすぐに元通りになってしまうぞ?』

「ほう、この壁には自動修復機能があんのか。そりゃすげーな」

氷の女王の忠告に、レオニスが感心したように呟きながら壁を見上げる。

実際ラウル達も、かつて氷の洞窟入口で氷の採掘をしたことがあったが、その時もラウルがいくら氷を削り出しても洞窟の壁は間を置かずに直っていっていた。

今回の氷の女王の話は、それを裏付けるものだった。

『我も昨日ここを見つけた時に、その向こう側に何があるかを知るべく壁を叩いたり、氷魔法をぶつけてみたのだが……削っても削ってもすぐに元に戻ってしまってな……我一人の力ではどうにもならなんだ』

しょんもりとしながら語る氷の女王。

己の住処である氷の洞窟が頑強な防衛力を誇るのは、基本的にはすごく良いことだ。だが、今回に限ってはその防衛力の高さが仇となってしまっていた。

俯き加減でしょげる氷の女王に、レオニスが努めて明るい声で話しかける。

「そんなこと気にすんな。今日の俺達は氷の女王の手助けをするために来たんだし、何よりこういう時こそ俺の出番だ」

『……其方なら、この壁の向こう側に辿り着ける、のか……?』

「おう、任せとけ!」

不安そうな表情でレオニスの顔を見上げる氷の女王に、レオニスはニカッ!と爽やかに笑いかける。

その自信に満ち溢れた輝かんばかりの笑顔は、氷の女王の不安な気持ちを瞬時に溶かしていく。

「ラウル、お前にやったウォーハンマーをちょいと貸してくれるか」

「了解」

ラウルはレオニスの要請に応じ、すぐに空間魔法陣を開きウォーハンマーを取り出してレオニスに手渡した。

それは、ラウルが蟹殻や貝殻、魚骨を砕く時に愛用している片口型の戦鎚である。

「はいよ」

「ありがとよ」

「何、これだってもとはご主人様からいただいたもんだ。存分に使ってくれ」

「おう。俺は今からこの氷の壁を砕いていくから、ラウル、お前は壁が元通りにならないよう土魔法で岩を出して周囲を固めていってくれ」

「了解。そしたらライトはご主人様が砕いた氷を拾っていってくれるか?」

「うん、分かった!」

ラウル愛用の戦鎚を受け取ったレオニスが、ラウルに向けてテキパキと指示を出す。

そしてラウルはラウルで、採掘で出た氷を拾っておくようライトに頼んでいる。

こんな時でも、氷が拾えるチャンスとあらば決して見逃さないラウル。相変わらずちゃっかりとした妖精である。

「じゃ、今から始めるぞ。ライトもラウルも俺より少し後ろに下がっててくれ、ウォーハンマーを振り回すからな」

「はーい!」「おう」

それまで竹刀のように右肩に置いていたウォーハンマーを一旦下に下ろし、両手でしっかりと握り直すレオニス。

ウォーハンマーを水平に持ち、横に大きく振りかぶり戦鎚の平らな面の方を思いっきり壁に打ちつけた。

「ハァァァァッ!」

それはまるで野球のバットで銅鑼を叩くかのような、見事なフルスイング。レオニスの渾身の一撃により、氷の洞窟の壁に一気に多数の罅が入った。

レオニスはそのまま打ちつける点を少しづつずらしながら、何度か壁を全力で叩き続ける。

そして五回ほど叩いた後、戦鎚を素早く平らな面から嘴状の方を壁に向けて持ち替えた。

これまで何度も幻の鉱山での採掘をこなしてきたレオニス。

レオニスにツルハシ状のものを持たせたら、ただでさえ最強無敵のレオニスがますます最強無比を誇る怪物と化す。

「うおおおおぉぉぉぉッ!」という雄叫びを上げながら、四方八方縦横無尽にツルハシを振るい続けるレオニス。あまりにも猛烈な振るい方は、滅多斬りなんて言葉ですら生温い。

圧倒的な勢いでみるみるうちに壁に穴が空いていき、レオニスはガンガン前に掘り進んでいく。

「ぉぉ……すげーな……」

『ぁぁ……なぁ、ラウルよ、其方のご主人様というアレは、本当に人族なのか?』

「………………多分?」

目の前で繰り広げられる信じ難い光景に、ラウルと氷の女王はただただ唖然としている。

そんなラウルに、ライトが声をかける。

「ラウル、そろそろ岩で固めないと壁の氷が復活しちゃうよ?」

「お、おお、そうだな、ご主人様が生き埋めにならんよう急いで土魔法を出さなきゃな」

「ぼくも氷拾い頑張って、後でラウルにもたくさん分けてあげるから、ラウルも頑張ってね!」

「おう、任せとけ!」

ライトの声に我に返ったラウル、慌てて右手を前に翳して土魔法をかけ始める。

大まかではあるが、地面から岩を生やすような形で出現させて、アーチ型の門のようなトンネルを作っていく。

そして土魔法を駆使するラウルの周囲で、ライトが腹側に持ち替えたアイテムリュックに氷の塊をどんどん入れている。

こうした三人の華麗なるチームワークにより、洞窟の壁に臨時トンネルができていく。

暫定で作った即席のトンネルなので、高さや幅が一定ではなく多少デコボコな出来なのだが、洞窟の壁の復元を遮ることができれば良いので問題ない。

レオニスが壁を掘り始めてから、5メートル程進んだ頃。

壁が一気に崩れ、レオニスの前に壁とは違う別空間が出現した。

「……これは……」

壁を崩し終えたレオニスが、思わず息を呑む。

レオニスの眼前には、氷の女王がいつもいる最奥の広間よりも一周りは大きな空間が広がっていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

レオニスの後に続き、土魔法で岩壁のトンネルを作り終えたラウルが未知の空間に入ってきた。

それに少し遅れてライトが氷の塊を広いながら、新たな空間に入って周囲を見回した。

「うわぁー……やっぱり隠し部屋があったんだね!」

「ライトの推察通りだったな。ラウル、向こうで待っている氷の女王をこっちに連れてきてくれ」

「了解」

レオニスの指示に従い、ラウルがトンネル入口に戻っていく。

その間ライトとレオニスは、未知の空間内を見渡している。

二人の目に一番真っ先に飛び込んできたのは、高く聳え立つ白くて大きな祭壇。これまでに湖底神殿や暗黒神殿でも見てきた祭壇と、全く同じものである。

「レオ兄ちゃん、あの祭壇の上に卵があるのかなぁ?」

「今までの例でいくと、そうなるな」

「見に行こう!」

「よし、上に行くか」

レオニスは早速ライトを小脇に抱き抱え、祭壇上部に飛び乗った。

湖底神殿や暗黒神殿、炎の洞窟の例に倣うなら、この祭壇の上に守護神の卵があるはずだ。

しかし、これまでと違う点がある。下から見上げても、卵が見えないのだ。もしかしたら、卵がかなり小さいのかもしれない。

まずはそれを確かめるために、二人で上に飛んだのだ。

祭壇の上には、上部とほぼ同じ面積のふかふかの座布団?のようなものがあった。

だが、肝心の卵が見当たらないではないか。

これは一体どうしたことだ―――ライトもレオニスも、内心で焦り始める。

ずっとキョロキョロしていた二人だったが、座布団の真ん中あたりに何かがあることをライトが目敏く見つけて声を上げた。

「あッ!レオ兄ちゃん、あの座布団の真ん中ら辺に何かある!」

「何? ……ホントだ、何かあるな。よし、下りて見てみるか」

「うん!」

ライトの指差した先に何かがあることを、レオニスの目も捉えた。

早速その近くにレオニスがゆっくりと下りていき、小脇に抱えていたライトをそっと下ろした。

そしてライトが見つけた何かがある場所に、二人で近づいていく。

ふかふかの座布団で足場が覚束ないので、ライトは四つん這いでゆっくり進む。

そうしてようやく見つけたそれを、ライトは座布団に手のひらを埋めるようにして下から掬い上げた。

ライトが手に取ったそれは、ライトの小指の爪程しかない、本当に小さな球体状のものだった。