軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第903話 ライトとミーナの共同作業

カタポレンの家から転職神殿に移動したライト達。

そこにはいつものように、ミーアとミーナがのんびりと過ごしていた。

ライト達の登場にいち早く気づいたミーナが、すぐに駆け寄ってきた。

『主様、ようこそいらっしゃい!……あッ、今日はフォルお姉様にウィカお兄様もいらっしゃってくださったのですね!』

「こんにちは、ミーナ!」

「クルルゥ♪」

『やぁやぁ、我が愛しの妹天使ちゃん!今日も元気そうで何よりだね☆』

嬉しそうな笑顔で駆け寄ってくるミーナに、ライトもフォルもウィカも笑顔になる。

ミーナはライトの三番目の使い魔なので、その先輩であるフォルとウィカのことを『フォルお姉様』『ウィカお兄様』と呼ぶ。

なので、ウィカもそれに合わせてミーナのことを『妹天使ちゃん』と呼んでいる。

そんな使い魔達の心和む交流の横で、ライトがキョロキョロと周囲を見回している。

「……あれ? ルディはいないの?」

『ルディは先程お使いに出かけたばかりでして。しばらくすれば戻ってくると思います』

「そうなんですね。ミーアさんもお元気そうで良かったです!」

『ええ、おかげさまでこの通り、ミーア達とともに元気に過ごしております』

ライトの疑問に、ミーナに少し遅れてやってきたミーアが答える。

ライトがキョロキョロと辺りを見回していたのは、ルディの姿が見当たらなかったからだ。

それもそのはず、ミーアによるとルディは先程お使いに出かけたばかりだという。ならば、しばらくは戻ってこないだろう。

BCOにおける使い魔の役割は『様々な場所に出かけて、様々なアイテムを拾ってくる』こと。これをBCOでは『お使い』と称していた。

ミーナとルディは、既にライトの手から離れた使い魔達ではあるが、使い魔の存在意義は本能として刻み込まれている。

故にミーナとルディは、それぞれ気が向いた時に交代でお使いに出かけていた。

ちなみに何故交代なのかと言えば、それはひとえにミーアをひとりぼっちにさせないためである。

ミーナとルディ、ともにお使いに出かけることも可能だが、それではミーアがこの転職神殿で一人寂しく二人の帰りを待つことになる。

それは避けたい、と考えたミーナとルディは、お使いを自主的に交代制にするようになったのだ。

転職神殿から出ることのできないミーアに対する、二人なりの優しさだった。

そんな心優しいミーナが、ライトの今日の来訪目的を早速尋ねてきた。

『主様、今日も何か実験とかするのですか?』

「ンーとねぇ、今日は実験ではなくて、幻の鉱山に行こうと思ってるんだ!」

『ああ!先日ヴァレリアさんに使い方を教えてもらっていた、あのツルハシで行けるヤツですね!?』

「そうそう、それそれ!」

ライトの目的を聞いたミーナが、パァッ!と明るい顔になる。

二週間前に、ライトはここ転職神殿で『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』の使い方のレクチャーを受けた。

その時に、ミーナも『幻の鉱山に行ってみたい!』と言っていた。

ライトは早速マイページを開き、アイテム欄からツルハシを取り出した。

「幻の鉱山に行くためのエネルギー、MP10万をやっと貯めることができたんだ」

『MP10万って、本当に途方もない量ですよねぇ……』

「ホントホント……今回は、前にヴァレリアさんが5万以上もMPを入れてくれたから、こうして早くに行くことが可能になったけどね」

『でも、その後はライトさんが頑張って貯め続けたのでしょう? やはりライトさんは、勇者を目指す勇者候補生に相応しい御方です』

「ぃゃぁ、そんな……ぼくなんて、勇者にはまだまだ程遠いですけど」

ツルハシを起動するための必須条件、MP10万充填。

言うは易し行うは難し、を地で行く厳しい条件に、改めてライト達はため息をつく。

だが、その後のライトの努力を褒めることもミーアは忘れない。

思わぬところでミーアに褒められて、ライトは照れ臭そうにはにかむ。

そんなライト達の横で、ミーナがおそるおそるライトに話しかけてきた。

『あのぅ、主様……その幻の鉱山に、私も連れていっていただけるのですか……?』

「もちろん!むしろぼくの方から、ミーナにお手伝いしてもらおうとお願いしようと思ってたんだ!」

『ホントですか!?主様、ありがとうございますぅぅぅぅ!』

「おごッ」

ライトの答えを聞いたミーナが、破顔しつつライトをむぎゅう!と抱きしめた。

ミーナの形の良い胸に圧迫されるライト。だが、窒息しない程度の抱擁なら許容範囲だ。

ライトはミーナの背中をポン、ポン、と叩きながら、幼子のように喜ぶミーナに声をかける。

「そしたら、今から早速幻の鉱山に行くよ」

『はい!……あ、ミーアお姉様は……』

「それなら大丈夫、今日はフォルとウィカにも来てもらってるから」

『あ、そういえばそうですね!フォルお姉様とウィカお兄様がおられましたね!』

ルディが不在の今、ミーアを置いていくことに一瞬だけミーアが懸念を示した。だがライトの言葉を聞いて、すぐに安堵する。

そう、今日のライトはフォルやウィカとともにやってきた。ライトとミーナが幻の鉱山に出かけている間、ミーアとともに皆でお留守番してもらえば良いのだ。

「フォル、ウィカ、ぼく達が出かけてる間、ミーアさんとお留守番しててね」

「フィィィィ♪」

『うん、任せてー!』

ライトがフォル達に声をかけると、二匹はライトの肩から下りてミーアのもとに駆け寄る。

それを見たミーアが地面に前屈みになり、フォルとウィカを迎え入れて腕の中に抱きかかえた。

ライトはツルハシを両手に持ち、ミーナに声をかける。

「ミーナ、ぼくの身体のどこかに触ってて」

『分かりました!』

二人は神殿内の広い平地に移動し、ライトがミーア達の立っている方を向きながらツルハシを高く掲げる。

ミーナはライトの背後に立ち、ライトの指示通りに両肩に手を乗せている。

そしてライトはミーア達に向けて声をかけた。

「一時間後には戻ってくるので、皆ここで待っててくださいね!」

『分かりました、お気をつけていってらっしゃいませ』

「じゃ、いってきます!」

『いってきまーす!』

お出かけの挨拶をした後、ライトは高く掲げていたツルハシを勢いよく斜め袈裟懸けに振り下ろす。

次の瞬間、ミーア達の目の前からライトとミーナの姿が消えていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

『幻のツルハシ・ニュースペシャルバージョン』により、幻の鉱山に移動したライトとミーナ。

辺りを見回すと、二人はドーム様の広い空間にいた。

それまで野外の転職神殿にいたのに、瞬時に景色が変貌したことにミーナは驚きを隠せない。

『主様……ここが幻の鉱山、なのですか……?』

「うん、そうだよ!……あ、もうぼくから離れても大丈夫だよ」

ミーナは初めての光景に驚きっぱなしだが、ライトにとっては三回目の鉱山で見慣れた場所だ。

しかし、これまでの二回はレオニス所有のツルハシで行ったもので、今回はライトが過日ルティエンス商会で購入して入手したツルハシ。

もしかしたら、レオ兄のツルハシで行く鉱山と違う場所かも?とライトは思い、しばしミーナとともにキョロキョロと周囲を見回す。

しかし、見た感じでは特に目につくような差異は見受けられない。

それもそのはず、周囲は一面岩しかないのだから。

ま、レオ兄のツルハシと行き先が同じでも違っても、どっちでもいいや!あまり時間に余裕もないしね!とライトは開き直ることにした。

ここで検証に時間を費やすよりも、今は少しでも多くの鉱物を得ることが重要なのだ。

ライトは一旦ツルハシを下ろして、背中に背負っていたアイテムリュックを地面に置く。

そしてアイテムリュックの蓋を開けて、入口を限界まで大きく開いた。

「ミーナ、今からぼくがこの鉱山の壁をツルハシで切り崩していくから、ミーナは切り出された鉱物を全部このリュックに入れていってね」

『分かりました!』

「大きいものだけじゃなくて、小さなものも全部拾ってね。特に小粒のもの程貴重なものが多いから、爪の先程の細かいものも全てリュックに入れていってね」

『はい!小さな粒も見逃さずに、片っ端から全部拾いまくります!』

ライトの説明に、ミーナは両の拳を握りしめながらフンス!と鼻息も荒く意気込んでみせる。

そしてライトはライトで、ミーナに口頭で説明しつつマイページを開いた。

マイページ内のスキル欄を開き、自身にバフスキルを複数かけていく。

ここで一つ、ライトが使うBCOスキルの特徴を解説しておこう。

サイサクス世界のバフデバフは上限が100%となっているが、BCOのバフスキルは違う。

敵に対するデバフは下限100%と同じだが、バフの上限は200%まで上昇が可能なのだ。

つまり、レオニス達が使うバフは100%までなのに対し、ライトはその倍の200%まで上げることができる。

ここでもライト以外の埒内の者と埒外の者、BCOの勇者候補生に対する優遇の差がはっきりと表れているのだ。

ライトはまず自身の物理攻撃力を40%アップする【エナジー】を選択し、バフスキルの上限である200%になるまで計五回かけていく。

これは【僧侶】の光系三次職である【阿闍梨】の★1で獲得したスキルだ。

物理攻撃力を200%上げることで、ツルハシを用いて岩肌を切り崩すための力を底上げしよう!という訳だ。

そしてライトは続けて【俊足】というスキルを選択した。

こちらは【斥候】の一次職★8で得られるスキルで、自身の敏捷を10%上げる。これを【エナジー】と同じく上限200%になるまで、計二十回分を連打した。

敏捷を上げれば上げるほど、ライトの動きも素早くなる。それはつまり、ツルハシを振るスピードアップを意図していた。

この二つのスキルは、どちらも消費SP1。

とはいえ、合計二十五回ものスキルを使用したので、SPの消費は合計25にも及ぶ。

そしてBCOのバフスキルの効果は、発動から十五分間持続することがライトの実験により分かっている。

幻の鉱山に滞在できるのは一時間。ライトはその間バフスキルを四回かける必要がある計算になる。

今のライトのステータスのSP量は最大148。鉱山にいる間に四回バフスキルをかけても合計100なので、十分余裕はある。

バフスキルをかけ終えて、準備万端整えたライト。

早速鉱山の壁に向かってツルハシを振るい始めた。

「うおおおおおッ!すんげー軽いー!壁も柔らかーい!」

先程までそれなりの重量に感じていたツルハシが、まるで箸か鉛筆でも持っているかのように軽い。

そして本来ならそれなりに硬いであろう岩肌も、ほとんど抵抗力を感じない。それこそ豆腐に箸を入れるかのようだ。

これは物理攻撃力アップスキル【エナジー】のおかげで、単純にライトの物理的な力が爆上がりしているのだ。

そしてツルハシを振るスピードも、ものすごい速度になっている。

こちらも敏捷アップスキル【俊足】のおかげで、ライトの動く速さがとんでもなく加速されていた。

『主様、頑張ってくださーい!』

目にも留まらぬ怒涛の勢いでツルハシを振り続けるライトに、ミーナが応援の声をかけながら早速切り出された鉱物を拾っている。

ライトはガンガン壁を崩しながら、秒で横伝いに移動し続ける。

ライトが移動した後の足元には、大小様々な鉱物が落ちている。

安価な鉄やアルミなどは大きな塊となって現れ、金、銀、銅などの分かりやすい鉱物の他にも、水晶やダイヤモンド、ルビー、サファイアなどの宝石類の原石もどんどん出てきた。

さらにはミスリルやオリハルコン、ヒヒイロカネ、アダマントなどの稀少性の高い金属。これらは親指から小指の爪程の大きさしかないが、そうした小さな粒もミーナは一つ残さず拾い集めてアイテムリュックに入れていく。

こうしてライトとミーナは、幻の鉱山で無我夢中になり宝拾いをしていった。