軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第868話 それぞれに成すべきこと

その後ライト達は、思い思いに己の成すべきことを日々こなしていった。

ラウルは秋の味覚であるサツマイモ他、秋野菜を中心にカタポレンの畑で巨大野菜をせっせと育ててはガンガン収穫している。

もちろん海樹のところでもらってきた殻類の処理も忘れない。

あまりに巨大過ぎて、ラグナロッツァの屋敷の殻割り部屋では処理できないので、最初だけユグドラツィのもとで大まかに割ってから持ち帰っている。

ユグドラツィ周辺は、今では現代日本でいうところの東京ドーム並みの広さがある。ラウルの殻割り作業をするのに、もってこいの広さなのだ。

ちなみにその殻を見たユグドラツィが『まぁ……すっごく大きな殻ですねぇ』と感嘆していた。

もっとも完全復活したユグドラツィと比べたら、手のひらサイズ程度にしかならないのだが。

そして夜は夜で、せっせとマカロン作りに勤しむラウル。

今度の土曜日には、ライト達とともに天空島行きが確定しているからだ。

その目的は、ライトも植物魔法が使えるようにドライアド達に加護を付与してもらうため。その御礼として、ドライアド達の大好物であるマカロンも山程用意しておかなければならないのである。

一方レオニスの方も、多忙な日々を送っていた。

月曜日にアイギスのセイに依頼した、海樹の枝の円形切り出し。これが月曜日の夜から早速届き始めたのだ。

一日につき十個は届く出来上がり品。その出来栄えはどれも寸分違わぬ均一な大きさに揃っており、表面はもちろんのこと側面までもがツルツルすべすべで、非の打ち所のない完璧な仕上がりだった。

出来上がり品の受け渡し係となったマキシ曰く「セイさん、すっごく張り切ってました」とのこと。しかも、三時のおやつや小休憩時などにちゃちゃっと片手間でこなしては「はー、いい気分転換になるわぁー♪」と喜んで作業しているのだとか。

レオニスの予想通り、定形の切り出しなどセイにとっては朝飯前の超余裕らしい。

これを、レオニスは火曜日から毎日ナヌスの里に送り届け続けた。

その持ち込みスピードの尋常でない速さに、ヴィヒト達はただただ驚くばかりである。

このスピードなら、あと十日もすればユグドラツィの結界用魔法陣のパーツが揃うだろう。

そしてライトはライトで、ラグーン学園に通う傍ら次の日曜日までに今の四次職【聖祈祷師】をマスターすべく、ひたすら職業習熟度上げに励んでいた。

朝の魔石回収を兼ねた修行兼ルーティンワーク時は、斥候系スキル【俊足】で敏捷を上げて素早く回収作業に当たる。

ラグーン学園にいる間は、授業と授業の間の小休憩時に僧侶系スキル【プロテクト】をかけまくる。

【プロテクト】とは、職業システムの【僧侶】の一次職★8で覚えるスキルで、一回につき自身の物理防御力を25%上げるバフスキルである。

ライトがこの【プロテクト】を選んだのには、ちゃんとした理由がある。

HP満タン状態では、回復系スキルは発動しないので使えない。

そして攻撃力アップ等のスキルは、ラグーン学園内で使用するには危険過ぎてこれまた使えない。攻撃力アップで馬鹿力を発揮して学園内の器物を損壊したり、敏捷アップし過ぎてあり得ない速さで校舎内や校庭を駆け抜ける訳にはいかないのだ。

なので、万が一にも他者に影響が出ないように、自身に防御系バフをかけるという手段に出ていた。

この防御系バフスキルがラグーン学園内で何かの役に立つことなど、決してない。完全な無駄打ちだし、むしろ役に立つ方が大問題だ。

だが、SPは一分につき1が自然回復する。五十分間の授業なら、普通に授業を受けている間にSP50が回復するのだ。

この自然回復分を無駄にしないためにも、授業の合間の休憩時間にこっそり消化しておくのが最も効率良く習熟度を上げられるのである。

そして帰宅してからも、ライトの職業習熟度上げは続く。

カタポレンの家の自室内で、エネルギードリンク片手に何かしらスキルを使い続ける。

今はマッピングスキルのレベル上げを優先したいので、もっぱら自室で二点間移動を繰り返す日々である。

ちなみに月曜日にゲットした謎の白紙風紙切れ『ミステリー箱交換チケット』は、ライトのアイテムリュックに仕舞ったまま保存してある。

日曜日に転職神殿でヴァレリアに会う予定なので、その時にあの『開かずの宝箱』のことも含めていろいろと聞いてみよう!と考えているからだ。

木曜日の夜に、寝る直前まで自室に篭ってひたすらマッピングを使い続けるライト。

もう立ってやるのも面倒くさいししんどいので、胡座で床に直座りしたまま地点Aと地点Bを行き来している。

何ともものぐさな図だが、座ったままでも移動できるしスキルの習熟度上げも確実に進んでいるので問題ない。

「はー……土曜日は皆で朝から天空島に行くから、何が何でも金曜日のうちに【聖祈祷師】をマスターしないと……」

「残りあと2%かぁ……この2%がまたクッソ長いんだけどな……」

本日十本目になるエネルギードリンクを、ライトはマイページを眺めつつ一口二口飲み込んでいく。

ライトの今の【聖祈祷師】の職業習熟度は98%。月曜日から、そりゃもう必死こいてひたすらスキルを使い倒しまくって、ようやく上げられたのは10%。

しかし、たかが10%と侮ることなかれ。本来なら一ヶ月以上かかってもおかしくないところなのだ。

四次職の職業習熟度上げとは、それ程に熾烈を極める困難なものなのである。

だが、先日ヴァレリアから特別にもらった支援物資『エネルギードリンクグロス』のおかげで、ライトは惜しむことなくエネルギードリンクを使うことができた。

マッピングスキルも、ひたすら使い倒したおかげで早々にスキルレベル10に到達した。

そのことを思うと、ライトはただただ感謝しかない。

十本目のエネルギードリンクを全て飲み終え、回復したSP100をマッピングの往復五十回で全て使い果たしたライト。

時刻は既に午後の十時半を回っていた。

ライトは部屋着のまま、ベッドにもそもそと潜り込んだ。

「ヴァレリアさんがくれたエネルギードリンクグロスのおかげで、ここまでこれたんだ。その成果をヴァレリアさんに見せるために、何としても日曜日までには絶対に【聖祈祷師】をマスターしておかないとな!」

「……よーし、明日一日頑張るぞ!」

現在の僧侶光系四次職【聖祈祷師】マスターに向けて、思いを新たにしたライト。

それからさして間を置かずに、ライトは眠りに落ちていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして迎えた週末の土曜日。

ライトとレオニスは、いつもより早めに朝のルーティンワークを終えてからラグナロッツァの屋敷に移動した。

二人は二階の旧宝物庫から出て、階段を下りて一階の食堂に向かう。

食堂に入ると、そこにはラウルとマキシが座っていた。

「ラウル、マキシ君、おはよう!」

「ご主人様達、おはよう」

「ライト君、レオニスさん、おはようございます!」

「おう、二人ともおはよう」

朝の挨拶を交わしながら、ライトとレオニスがそれぞれ席に着く。

席には既に四人分の朝食が並べられていて、もう食べるばかりになっていた。

「じゃ、早速皆で朝飯食べるか。いっただっきまーす!」

「「「いっただっきまーす!」」」

家長のレオニスの食事の挨拶に、ライト達三人が揃って唱和する。

そして皆でモリモリと朝食を食べながら、今日の行動の打ち合わせをする。

「今日はどういう順番で回る?」

「ライトはドライアド達の加護をもらいたくて、天空島に行くんだったよな?」

「うん。ぼくもラウルみたいに植物魔法を覚えたいんだー。そしたら今よりもっともっとラウルのお手伝いができるし」

今日のライトの目的を改めて確認するレオニスに、ライトも嘘偽りなく答える。

そんなライトの言葉に、ライトの斜め向かいに座っているラウルが感激の面持ちで声をかける。

「ライト……今でも毎朝の水遣りで十分手伝ってくれているのに、もっと手伝ってくれるのか?」

「うん!だってラウルが作る美味しいお料理やスイーツに、ぼく達はいつもお世話になってるもん!」

「ありがとう……そしたら、これからもたくさん手伝ってくれるライトのために、もっともっと美味しい料理を作り続けなくちゃな」

「うん!これからもよろしくね!」

ライトが植物魔法を覚えたいと思った理由は『自分も巨大野菜を育てたい!』というのが直接の動機だった。

それは純粋な知的好奇心もあるが、ひいてはラウルの野菜作りも手伝えるようになる。

特にライトは、属性の女王や神殿の守護神、使い魔の卵の孵化など新たな出会いがある度に『お茶会』と称してラウルの料理やスイーツを出してきた。

そう、ラウルの料理のおかげで彼ら彼女らと親交を深めていけると言っても過言ではないのだ。

そんなライトとラウルの心温まる会話に、レオニスが参入してきた。

「そしたら俺も、ドライアド達に加護をもらえるよう頼んでみるかな」

「何だ、ご主人様も植物魔法を覚えたいのか?」

「おう。もし俺も植物魔法を覚えられたら、遠征や野営に役立つかもしれんだろ?」

「まぁな。……つーか、このご主人様は本当に新しい魔法に対して貪欲だよな」

レオニスの言い分に、ラウルも納得せざるを得ない。

冒険者という稼業は、遠征や商隊の護衛などで何日も野営することも珍しくない。ラウルも冒険者の端くれとなった今、そうした業界独自の事情もだんだんと分かってきている。

そういった時に役立つ魔法なら、何でも覚えておきたいとレオニスが考えるのも当然であった。

「じゃあ、まずは皆でドライアドの里の泉で加護を頼んで、その後に天空神殿、雷光神殿に行って、エルちゃんにも会いに行くか」

「賛成ー!ラウル、ヴィーちゃんやグリンちゃんにあげる野菜はたくさんある?」

「おう、こないだヴィーちゃん達に大好評だったトウモロコシもたくさん作っておいたし、今日のためにサツマイモもガンガン作って山程収穫してある。もちろん全部熟成させてあるぞ」

「そっか、ならきっとヴィーちゃんやグリンちゃんも喜んで食べてくれるね!」

「だといいな」

だいたいの流れが決まったところで、朝食も四人とも食べ終えた。

各自食器を下ろし、一旦食堂の出入口に集まる。

「各自支度をして、今から十分後に浴室に集合な」

「はーい!」「おう」「はい!」

レオニスの指示に従うライト達。

そうして四人は各自出かける支度をするべく、それぞれの部屋に散っていった。