軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第865話 秋の味覚と週末の予定

充実した土日を過ごした翌日の月曜日。

ライトはラグーン学園から帰宅して、すぐに着替えて食堂に向かう。

ラウルとともにおやつを食べるためである。

席についたライトの前に、ラウルが差し出した一枚の皿。

その上には、中くらいの大きさのサツマイモが乗せられていた。

「おおー、今日のおやつはサツマイモなんだね!やったー!……って、これは大きさが普通サイズだけど、家庭菜園の方のやつ?」

「当たり。カタポレンの畑の方は、一昨日新しい畑が完成してな。すぐにサツマイモとゴボウと玉葱を植えたんだが。ま、収穫は明日か明後日だな」

「そっかー。そういや今朝見た新しい畑の作物の葉っぱも、すっごく大きくなってたよ!」

本日のおやつ、焼き芋を見たライトが大喜びしている。

皮ごと焼かれた芋から、何とも言えぬ香ばしい匂いが漂ってくる。

その大きさから、カタポレンの畑産ではなくラグナロッツァのガラス温室で育てられたものだということが一目で分かる。

サツマイモと言えば、秋の味覚の代表格の一つだ。

そして焼き芋とは、ただじっくり焼くだけという最もシンプルかつ王道の調理法。それだけに、出来上がった味は素材の良し悪しがダイレクトに現れる。

特に今回は初物だけに、素材の良さだけで勝負したい!というラウルの意気込みが感じられる。

ライトが皿からサツマイモを手に取って持つと、まだ少し熱く感じる程度の温度だ。それを真ん中から手で二つに割ると、ほんわかとした熱気が伝わってくる。

ちょうど食べ頃の温度の焼き芋に、早速ライトはかぶりついた。

「ンー、すっごく甘くて美味しーい!これ、何て名前の品種なの?」

「あー、苗屋で苗を買う時に、会計のおばちゃんに一応名前は聞いたんだが……はて、何て言ってたかな……アンノウン芋?」

「……ぁー、うん、 安納(アンノウ) 芋、ね……」

ハフハフと頬張りながら、秋の味覚を存分に堪能するライト。

ねっとりとした食感に、まるで飴を舐めているかのような極上の甘さ。

そのあまりの美味しさに思わずライトが品種名を尋ねるも、ラウルから返ってきた答えは実に胡散臭いものであった。

アンノウン芋? 正体不明のサツマイモとか、何ソレ怖ッ!

……ぁー、でもここ、サイサクス世界だしなぁ……基本的にネーミングセンスがダサいのも多いし、運営が実在の品種名をもじって本当に『アンノウン芋』という名前をサツマイモにつけててもおかしくないよな……

……うん、深く考えるのはよそう。どうせ考えたところで無駄だ。

そう、普通に美味しく食べられりゃオールオッケーだし!ちっちゃいことはキニシナイ!

ライトはそんなことを考えながら、ラウルに別の話題を振った。

「これ、今日焼いたばかりなの?」

「ああ。サツマイモ自体は先週収穫したもので、植物魔法を使って熟成を進ませてから焼いたんだ」

「あー、そういやサツマイモって一ヶ月くらい寝かせないと甘くならないんだっけ?」

「そうそう。市場の八百屋の大将の話だと、サツマイモってのは本来なら一ヶ月とか二ヶ月寝かせて熟成させるもんらしいがな。俺の場合は植物魔法があるから、収穫後にちゃちゃっと熟成を早めたって訳」

ラウルの話によると、サツマイモの収穫自体は一週間程前に行ったらしい。

ライトもその昔、前世で親戚が毎年サツマイモを実家に送ってきていたので、寝かせて熟成云々程度の知識は持っていた。

だがその熟成を、ラウルは何と植物魔法を用いることで促進を早めたというではないか。

確かにそのまま空間魔法陣に入れてしまったら、中では時間停止してしまって熟成など微塵も進みようがない。なので、収穫したサツマイモを熟成させるには、少なくとも空間魔法陣の外で行わなければならない。

かと言って、ラウルが栽培し収穫したサツマイモを別途に長期保存するのも、実は何気に難しい。

いや、家庭菜園で育てた普通サイズならまだ許容範囲だが、カタポレンの畑で育てた巨大サツマイモとなるとそうもいかない。

おそらくはトウモロコシのように、サツマイモ一個の長さが1メートルを軽く超えるのもゴロゴロとできるはずだ。

そしてその収穫量も、間違いなくとんでもない量になるであろう。

そんな超巨大サツマイモを大量に保存しておける場所など、空間魔法陣以外にあり得ない。

となれば、ラウルが編み出した『植物魔法で熟成促進=早送りしちまえ!大作戦』以外に、美味しいサツマイモを大量確保しておく最適な手段はないのである。

「植物魔法ってすごいんだねー。いいなー、ぼくもいつか植物魔法を使えるようになりたいなー」

「そしたら次に天空島に行った時に、ドライアド達に加護をくれるようにお願いしてみたらどうだ? 俺からもドライアド達に頼んでみよう」

「え、ホント? ドライアドの加護がもらえたら、ぼくも植物魔法使えるようになる?」

「ああ。俺だってドライアドから加護をもらうまでは、植物魔法の使い方なんてさっぱり分からなかったからな」

ラウルの話に、ライトの顔が瞬く間に輝いていく。

キラッキラに輝く瞳でラウルを見つめるライト。食いつくようにラウルに問うた。

「そしたらさ、次に天空島に行くのはいつ?」

「そうだなぁ……そろそろまたヴィーちゃんとグリンちゃんに、美味しい野菜を届けに行こうと思ってはいたところなんだが。そしたら次の土曜日か日曜日に、俺といっしょに天空島に行くか?」

「うん!そうしてくれると嬉しいな!」

ラウルの提案に、ライトの顔はますます輝く。

前回ライト達が天空島を訪れたのは、先月の八月中旬過ぎ頃。ライトの夏休みが終わる一週間手前のことである。

そこからそろそろ一ヶ月が経過しようとしている昨今。ラウルは近いうちに天空島に出向き、天空神殿と雷光神殿の守護神であるヴィゾーヴニルとグリンカムビにカタポレン産巨大野菜を振る舞うつもりでいた。

その時にライトといっしょに行けば、天空島にいるドライアド達にライトへの加護の付与をお願いできる!という訳だ。

「そしたらご主人様も誘うか?」

「そうだねー、邪竜の島の殲滅戦?の打ち合わせもしたいだろうし、多分いっしょに行くって言うと思うよー」

「だな。じゃあ今日はその話もするために、晩飯は皆でこっちで食っていきな」

「うん!一応カタポレンの家に書き置きしてくるねー」

そうしてまた次の週末の予定が入ったライト。

美味しいアンノウン芋を一本丸ごと平らげた後、カタポレンの家に一旦帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その日の晩は、ライトとレオニス、ラウルとマキシの四人でラグナロッツァの屋敷で晩御飯を食べていた。

おやつタイムの時に、ライトとラウルが計画した天空島再訪の話をするためだ。

ラウル特製パスタや焼き魚、サラダなどをモリモリ食べながら、四人で会話を交わす。

「あー、次の土日か? おう、いいぞー。俺も邪竜の島の討滅戦の話をしに行きたいしな」

「だよね!そしたら土曜日と日曜日、どっちにする?」

「俺はどっちでも構わんから、とりあえず土曜日でいいんじゃね? ラウルはどうよ?」

「俺もどっちでも構わん」

「じゃ、土曜日に決定な」

ライト達の天空島行きが土曜日に決まったところで、マキシがレオニスに向かって声をかけた。

「あの、レオニスさん。ぼくもその天空島行きについていってもいいですか?」

「ン? そりゃもちろん構わんが、アイギスは休みなのか?」

「はい。今度の土曜日は、ラグナ宮殿にお住まいのどなたかの採寸?に呼ばれているそうで、お店が臨時休業になるんです」

珍しいことに、マキシが天空島への同行を求めてきた。

その理由は、ちょうど次の土曜日にアイギスはお休みになるから、らしい。

アイギスは王侯貴族の顧客も多い。基本的にアイギスでは客の身分で対応の差はつけないが、それでも王族のドレスを作る際の採寸だけはカイ達が自ら出向くという。

その理由は聞かずとも分かる。

ドレスの採寸のためだけに、王族自ら直接アイギスに来られても逆にカイ達の方が困るのだ。

王族の移動には、公式非公式問わずかなりの護衛がつく。高貴な身分の者の安全を保つには、それは当然のことだ。

しかし、物々しい大量の警備や護衛とともに来られたら、それこそその日のアイギスの商売は全てストップする。一般客はもちろんのこと、他の貴族の来訪予定も全部キャンセル扱いしなければならない。

そんなことになるくらいなら、最初からカイ達がラグナ宮殿に行った方がはるかにマシというものなのだ。

「そうなのか。カイ姉達も大変だな……しかしまぁ、そういうことならもちろん構わん、マキシもいっしょに天空島に行くか」

「はい!ありがとうございます!」

即時快諾したレオニスに、マキシが嬉しそうに破顔しつつ礼を言う。

そして喜んでいるのはマキシだけではない。ライトもまた嬉しそうにマキシに話しかけた。

「マキシ君とまたいっしょに天空島行けるんだ? 良かったね!」

「ライト君もありがとうございます!今度の土曜日がとても楽しみです!」

「うん、ぼくも楽しみー♪」

和気藹々と喜び合うライトとマキシ。

マキシが勤めるアイギスは客商売なので、基本的に土日祝日も営業していてラグーン学園生のライトとはほとんど休みが合わない。

アイギスも休みになる黄金週間などを除けば、ライトとマキシがともに出かけることなど滅多にないことだ。

それだけに、こうしてたまにともに出かける機会に恵まれると喜びも 一入(ひとしお) に感じるのである。

そうして晩御飯を済ませた後、一同は食後のお茶とデザートを楽しむために大広間に向かっていった。