軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第813話 アドナイの特産品

レオニスが支部長室で話をしている頃、ライト達はレオニスに言われた通りに依頼掲示板や売店を見て回っていた。

まずは依頼掲示板に行くライトとラウル。ここアドナイでは、どんな依頼が出されているかを見るためだ。

ラグナロッツァの巨大な掲示板と違い、アドナイの掲示板は小ぶりでこぢんまりとした印象だ。やはりそこら辺は、街の規模によってかなり異なるのだろう。

「ふむ……この街は半数くらいが薬草採取系なんだな」

「そうみたいだねー。でも、生えている草の場所によって難易度が違うっぽいねー」

「渓谷の奥深くとなると、白銀級以上でないと受けられないのか……うーん、少し大袈裟じゃねぇか?」

「いやいや、そうでもないんじゃない? 例えばカタポレンの森に薬草を採りに行けってなったら、白銀級どころか黄金級とか聖銀級の指名になると思うよ?」

「それもそうか」

冒険者ギルドアドナイ支部の依頼状況を、冷静に分析するライトとレオニス。

薬草系以外だと、ラグナロッツァでも定番のビッグワーム駆除とか魔狼の皮の買い取り等々、どれを見ても平凡かつ穏当な内容が並ぶ。

それは、このアドナイという街が日頃から平和な街であるという証拠なのだろう。

「じゃ、次は売店見よっか!」

「おう、何か名産品があるといいな」

依頼掲示板を一通り見終えたライトとレオニス。

次はギルド内売店に移動した。

やはり売店の規模もそれ程大きくないが、それでも他の街の土産物を見るのは案外楽しいものだ。

以前レオニスが、このアドナイの街の特産品としてレモンとオリーブを挙げていたが、確かにそれ関連の品がいくつか置いてある。

中でもとりわけライトの目を引くのが『ぬるぬるドリンク特濃レモン味』である。

このサイサクス世界において、今や立派なぬるぬるドリンク愛好家となったライト。そのマニアぶりは『ぬるぬるドリンクマスター』などという称号が勝手についてきたくらいである。

そんなライトが、ご当地グルメとして売り出されているぬるぬるドリンク限定品を見逃せるはずがない。

ふらふらふらー……と吸い寄せられるようにその品の前に行って、商品棚に書かれている謳い文句を読み上げる。

「何ナニ……『アドナイの特産物であるレモンを、ギュッ!と濃縮した逸品!』『ただのレモン味ではありません。その酸っぱさは、通常品の五倍とも十倍とも!?』『一度口にしたら、絶!対!に!忘れられない味!癖になること間違いなし!』『特濃なのに、ぬるぬる度は他のドリンクと同じ。これってスゴイことなんですよ?』『眠気覚ましにはもちろんのこと、使い勝手の良い調味料としても活躍中!』『ぬるぬるドリンク特濃レモン味を買えるのは、このアドナイだけ!』……だって」

「ほう、こりゃまた何とも興味を引く謳い文句だな」

ライトとラウル、二人して『ぬるぬるドリンク特濃レモン味』の、棚をまじまじと眺めている。

今までライトが見てきたぬるぬるドリンクの中で、特濃を謳うものはこれが初めてだ。

しかもそのお味は、よりにもよってレモン味。通常品の五倍も十倍も酸っぱいとは、どれ程酸味が強いのであろうか。

想像するだけで、あっという間に口の中で唾の海が広がりそうだ。

しかも、謳い文句の後半部分がまた何とも憎い。

『使い勝手の良い調味料としても活躍中!』なんて書いてあったら、料理好きのラウルが見逃せるはずがないではないか。

案の定ラウルが目を輝かせながら、いそいそと売店入口に向かっていく。瓶を入れるための買い物カゴを取りに行ったのだ。

そしてすぐに戻ってきたラウルが、これまたいそいそと『ぬるぬるドリンク特濃レモン味』をいくつもカゴの中に入れていく。

目にも留まらぬ素早い動きで入れていく様に、ライトがびっくりしながらラウルに問いかける。

「ラウル……一体何本買うの?」

「とりあえず二十本は買っとくか」

「そんなに買うの?」

「ぬるシャリドリンクのように、お一人様一本限定になったら面倒だからな。それに、こいつも値段的にはそんな高いもんじゃないしな」

「そうだねー。空間魔法陣に入れておけば、賞味期限なんか気にしなくていいもんねー」

「そゆこと」

そんな会話をしながら、ライトも自分用に『ぬるぬるドリンク特濃レモン味』を五本買い込んでいる。

何故ライトもそんなにたくさん買うかと言えば、主にナヌス用のお土産である。

ナヌスの人達、特にご婦人方に絶大なる人気を誇る『黄色のぬるぬるドリンク』。その上位版?となれば、これはもう買うしかないでしょう!という訳だ。

というか、謳い文句の後半の使い勝手の良い調味料云々は、ツェリザークのぬるシャリドリンクを彷彿とさせる。

一見さんのライトとラウルは知る由もないが、実はこの謳い文句、ツェリザークのぬるシャリドリンクの爆発的ヒットに 肖(あやか) ろうとしてたりする。

そう、この『ぬるぬるドリンク特濃レモン味』もまたぬるシャリドリンク同様、そのあまりの強烈な酸味故にアドナイにおける罰ゲーム品扱いとなっていたのだ。

しかしその不遇な扱いも、ぬるシャリドリンクの輝かしい再起を知ったことで一変する。

『アレが調味料として大受けしたのなら、うちの特濃レモンだって絶対に受けるハズ!』『ぬるシャリドリンクに続けー!』とばかりに、調味料アピールを始めたのだ。

ライト達はまだそのお味を知らないが、ラウルのことだ、きっと今日ラグナロッツァに帰ったらすぐに味の研究にとりかかることだろう。

レモンの用途の定番であるドレッシングや薬味にはもちろんのこと、蜂蜜漬けのアクセントに使用したりケーキやデザートに用いてもいいかもしれない。

会計を済ませながら、ラウルの頭の中はレモン味の料理のことでいっぱいになる。

ライトの分の買い物も済ませ、広間でしばらく待っていると、レオニスが戻ってきた。

レオニスの姿に真っ先に気づいたライトが、レオニスのもとに駆け出していく。

「レオ兄ちゃん、おかえりー!」

「おう、ただいま」

「お話は無事済んだの?」

「ああ、おかげさまでな。売店に何かいいもんあったか?」

「うん!ぬるぬるドリンクの特濃レモン味ってのがあってね、ぼくもラウルも買ってみたんだ!」

「特濃レモン味……そりゃまたすんげー酸っぱそうだな……」

売店での買い物報告に、レオニスが微妙そうな顔をしている。

そこに、ライトの後をゆっくりついてきたラウルも合流してレオニスに問うた。

「よう、ご主人様、おかえり」

「おう、待たせたな。ラウルも買い物できたようで何よりだ」

「おかげさまでな、良い物が買えて満足だ。今から例の場所に行くのか?」

「ああ、周辺の地図ももらったし、今から現場に行くぞ」

ラウルの問いに、レオニスがマリサから受け取った地図をピラッとさせながら見せる。

その地図を見ながら、さらにラウルが質問していく。

「ここからどれくらいのところにあるんだ?」

「マリサの話によると、街を出てから普通に歩いて二時間半程のところだそうだ」

「なら、俺達三人なら三十分ってところか」

「そうだな、街を出て走り続けてそんなとこだろ」

今回レオニス達が行く現場は、アドナイの街から約10kmくらい離れた場所にあるという。

常人なら歩いて二時間半かかるところだが、ライト達人外ブラザーズに常人の常識を当て嵌めてはいけない。

「さ、じゃあ行くか」

「はーい!」

「了解」

アドナイ支部長との打ち合わせや買い物も済ませたライト達。

ギルドの建物から出て、いよいよ現場の小洞窟に向かっていった。