軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第814話 驚愕の瞬間

冒険者ギルドアドナイ支部を出て、現場の小洞窟に向かうライト達。

一歩街の外に出れば、荒れ地寄りの平原がしばらく続く。

普段森の中を駆け巡るライトやレオニス、そして飛行できるラウルにとっては楽勝過ぎる移動だ。

時折単体で突っ込んでくる雑魚魔物を、レオニスが蹴散らしては少し後ろにいるライトが拾い、アイテムリュックに仕舞う。

イモムシ系魔物や鳥系魔物、蛇系魔物もちらほらといるが、何がどれといちいち確認している暇はない。

家に帰ったら、暇を見てゆっくり観察しよっと!などとライトは考えながら、レオニスに吹っ飛ばされて撃沈する魔物の死骸をせっせと集めている。

ちなみにライトが取りこぼした分は、ラウルが拾ってライトに渡す。ライトが素材として欲しがるだろうことを理解しての行動だ。

小さな主の願いを積極的に叶える、実に優秀な万能執事である。

そうして街の外に出てから、およそ二十分くらい走り続けていくと目的の渓谷の入口が見えてきた。

そこからしばらく険しい山道を登っていく。

カタポレンの森程ではないが、緑豊かな山林や様々な草が生茂っている。有用な薬草も結構ありそうだ。

「ここら辺の薬草を採っていて、単眼蝙蝠を見つけたのかな」

「多分な。ほら、そこにも単眼蝙蝠がいるし」

ライトがレオニスと会話している傍から単眼蝙蝠を発見する。

今回の依頼は、小洞窟の完全封鎖。単眼蝙蝠程度の雑魚魔物なら、普段なら襲いかかってこなければ見逃すところなのだが、今日はそうはいかない。

今回は念の為に、単眼蝙蝠を見かけたら片っ端から倒していくレオニス。こいつらの巣は分かっているので、外に出てる分は倒しても問題ないという訳だ。

そしてその死骸を、ライトがいそいそと回収していく。

今回ライトがどうしてもレオニスの洞窟調査に同行したがったのには、実はこの回収作業に理由がある。

単眼蝙蝠は、イノセントポーションのレシピ作成の材料の一つなのだ。

クエストイベントのエクストラクエストが発動した今、ライトはこれから大量の回復剤を作らなければならない。そのためには、単眼蝙蝠もまたたくさん狩らねばならないのである。

ちなみにラウルはラウルで、単眼蝙蝠に関して気になることがあるようで、レオニスに問うている。

「なぁ、ご主人様よ。単眼蝙蝠って、どこか食える箇所はあるか?」

「いやー、本体はほぼ目玉だし、食える部分なんてほとんどないと思うぞ?目玉以外の部分だって、皮膜の羽と尻尾しかないからな」

「そうか、そりゃ残念だ」

ラウルの気になること、それは単眼蝙蝠の食の可否だった。

例えばネツァクの砂漠蟹やツェリザークの氷蟹、プロステスの人喰いパイアやファングのペリュトンなども魔物の一種であり、それらの肉は食用として十分に活かせる。

魔物であっても可食部はあるのだから、単眼蝙蝠も食べられるのか?とラウルが考えるのも、ある意味当然と言えば当然なのだが。

とことん食いしん坊な妖精である。

そして三人は、目的地と思しき洞窟の入口を見つけた。

冒険者ギルドでも『小洞窟』と言っていた通り、入口は然程大きくない。その高さは2メートル程度で、レオニスやラウルが立って歩けるギリギリの高さだ。

幅もあまり大きくなく、これは他の洞窟のように横並びで進んでいくのは無理そうだ。

「……よし、中に入るぞ」

「うん」

「おう」

レオニスが先頭に立ち、真ん中にライト、 殿(しんがり) にラウルという順番で一列になり、三人は小洞窟の中に入っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

小洞窟の中は、数歩入るともう真っ暗闇になる。

ここには炎の洞窟のような光源になるものは全くないので当然のことか。

レオニスが初級光魔法の『 点灯虫(テントウムシ) 』を使い、周囲を照らす。

すると、その光に反応したのか、数匹の単眼蝙蝠が襲いかかってきた。

単眼蝙蝠は、先頭にいるレオニス目がけて光線を目から放つが、この程度のビームなどレオニスには効かない。

レオニスは手に持った短剣で単眼蝙蝠を斬りつけ、確実に仕留めていく。洞窟内は狭く、普段愛用している大剣を振り回すことはできないからだ。

そうしてバッタバッタと単眼蝙蝠を倒しながら、前に進んでいくライト達。程なくすると、行き止まりになった。

ここまでに分岐点などは一切なく、一本道をずっと歩いていたので、そこがこの小洞窟の最奥なのだろう。

「ここで行き止まりか。ライト、洞窟の中に入ってから何匹の単眼蝙蝠を倒した?」

「えーとねぇ、拾ったのは六十二匹かな」

「そうか、そしたらここにいた単眼蝙蝠は粗方倒したと考えて良さそうだな」

「多分ね…………って、ン?」

これまで倒した単眼蝙蝠の数を確認し合うライトとレオニス。

ライトの役目は死骸を集めて回収するだけでなく、その数をカウントするという役割もあるのだ。

冒険者ギルドアドナイ支部で聞いた話では、小洞窟には五十匹以上の単眼蝙蝠がいるということだった。

事前に聞いていた話と大体一致したところで、単眼蝙蝠の殲滅は果たされただろう、とレオニスが判断したその時。

ライト達の脇の岩陰から、一匹の単眼蝙蝠が出てきてライト達に襲いかかった。

単眼蝙蝠の存在にいち早く気づいたライトが、ラウルに向かって叫んだ。

「ラウル、危ない!」

「ン?」

単眼蝙蝠が放った光線が、ラウルの背中にヒットした。

だが、ラウルには何のダメージも発生しなかった。何故ならば、今日のラウルは冒険者仕様であり、黒の天空竜皮革装備一式を着ているからだ。

ラウルは撃たれた報復という訳ではないが、振り返ってすぐに風魔法を繰り出して単眼蝙蝠を仕留める。

「ラウル、大丈夫!?」

「ああ、この程度の攻撃など何ともない」

「そっかぁ、良かったぁ…………っていうか、燕尾服に傷一つついてないね」

「だろ?」

背後からの不意打ちを食らった格好のラウルを心配したライト。だが、ラウルは涼しい顔して何ともないと言う。

念の為にライトがラウルの背中を見ると、燕尾服スタイルのジャケットには傷一つついておらず、どこを直撃したのかも全く分からない。

その頑丈さに驚くライト。さすがはアイギス製、天空竜の革で作られただけのことはある。

もっとも、今のラウルならば普段着であっても単眼蝙蝠の光線如き痛くも痒くもないだろうが。

「さ、そしたらとっとと土魔法でこの洞窟を埋め立てるぞ」

「あ、レオ兄ちゃん、そしたらぼくの土魔法でやれるところまでやってみていい!?」

「おう、そうだな、土魔法の練習がてらやってみるのもいいかもしれんな。じゃあここはライトに任せることにするか」

「うん!レオ兄ちゃんとラウルは周囲の警戒をよろしくね!」

ライトは腰に着けていたワンドを取り出し、土魔法を発動させる。

洞窟内の空間を隙間なく埋めるように、石礫と土を生み出し続けて埋め立てていくライト。

洞窟をただ単に封鎖するだけなら、その入口を岩なり木の板で塞ぐだけでもできる。

だが、それだけでは到底完全封鎖とは言えない。もしかしたら、中の空間に後日何らかの異変が起きる可能性だってある。

そうした可能性をも完全に潰し未然に防ぐには、中の空間すらも隙間なく埋め立ててしまうのが最善策なのだ。

背後の警戒をレオニスとラウルに任せ、ひたすら土魔法で埋め立て作業をしていると、またもどこからともなく単眼蝙蝠が出てきた。

ライトは咄嗟に土魔法を止めて、風魔法に切り替えて単眼蝙蝠を仕留めた。

単眼蝙蝠の出現に気づくのが遅れたレオニスが、びっくりしながらライトに問うた。

「ライト、大丈夫か!?」

「うん、大丈夫だよ!」

「そりゃ良かった……後ろばかり見てて気づくのが遅れてすまなかった」

「ううん、気にしないでー。それにしても、ここ本当に単眼蝙蝠が多いね」

「そうだな……マスターパレンの言うように、ここは完全封鎖しとくべきだな」

ライトはレオニスを気遣い、気にしないように言ったが内心ではかなり驚いていた。

それは、通常魔物のリポップの瞬間を二度も目の当たりにしたからだ。

今さっき起きた襲撃はもちろんのこと、先程ラウルに襲いかかった単眼蝙蝠も、実は岩陰に隠れていた生き残りではない。

それまで何もなかった空間に、小さな黒い点のような空間が出来たと思ったら、何とそこから単眼蝙蝠がいきなり出現したのだ。

驚愕の瞬間を目撃したライトとしては、リポップの瞬間をもっと細かく観察したいところだが、レオニスとラウルが同行している以上そんなことは言えない。

それに、単眼蝙蝠はかつて廃都の魔城の四帝の手先として使われたことのある魔物だ。そんなものがこんなにポンポンと簡単にリポップしては、たまったものではない。

もしこれがカタポレンの森の中のことだったら、ライトは『イエーイ!イノセントポーションの材料無限確保だぜー!』と狂喜乱舞するところなのだが。

生憎ここは遠く離れたアドナイ、ライトが単眼蝙蝠目当てに通いで行き来できる場所でもない。

このアドナイの平和と今後のリスクを抑えるためにも、ここは完全に封じてしまう方がいいのだ。

諸々の考察は後回しにして、まずは雑念を払い土魔法の行使に集中するライト。

ライトは土魔法や風魔法を使えるようになったばかり。他の考え事をしながら魔法を行使できるほど、そこまで熟練の域に達していないのだ。

そうして一本道の洞窟のほぼ全てを埋め尽くし、外に出たライト達。

仕上げにレオニスが土魔法で巨大な岩を出し、洞窟の入口を完全に塞いだ。

「よし、これで今日の依頼は完了だ。そしたらとっととアドナイ支部に戻るか」

「うん!」

「了解ー」

単眼蝙蝠の巣窟を完全封鎖したライト達。

依頼達成を報告するべく、早々に冒険者ギルドアドナイ支部に戻っていった。