軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第804話 エクストラクエスト

ライトは勢いに任せて、クエストイベントページ右側に現れた▶マークを押す。

すると、やはりというか案の定クエストイベントの新しいページが出てきた。

まずライトの目に飛び込んできたのは、画面上部にある『エクストラクエスト1』という文字。これまでのページにはなかった文字だ。

やはりこの新しいページは、ライトが予想していた追加分のクエストで間違いないようだ。

逸る気持ちを抑えつつ、新しいクエストを上から順に見ていくライト。

クエストの内容は、以下の通りである。

====================

★身代わりの実を10回作ろう!★

〔身代わりの実 原材料(1個分)〕 進捗度:0/10

51.閃光草の根10個 報酬:エネルギードリンク1グロス 進捗度:0/10

52.濃縮マキシマスポーション10個 報酬:身代わりの実追加レシピA 進捗度:0/10

53.熱晶石10個 報酬:魔法の刷毛1個 進捗度:0/10

54.濃縮ギャラクシーエーテル10個 報酬:身代わりの実追加レシピB 進捗度:0/10

55.銀色のべたべた10個 報酬:荊棘の巻物【刃】1個 進捗度:0/10

====================

ざっと見終えたライトの目が大きくなっていく。

そして震える人差し指で、触れられないホログラムのある一点を指す。

「こ、これ……荊棘の巻物!?」

「しかも【刃】ってことは、物理系!?」

「ヤッターーー!これで【無限の手】がゲットできるぞーーー!」

思わず両手を上げながら飛び跳ねるライト。

ライトが真っ先に注目したのは、クエスト55の報酬『荊棘の巻物【刃】』だった。

ライトの記憶では、この『荊棘の巻物』はBCOにおける特殊スキルを内蔵した書物だ。

今回ライトが目にした『荊棘の巻物【刃】』は物理系スキルで、【無限の手】という名のスキルを習得できる。

他にももう一種類、魔法系スキル『荊棘の巻物【念】』が存在しており、そちらは【無限の氣】が習得できる。

それらのスキルの一体何がどう特殊なのかというと、最たる特徴は『SP消費ゼロの攻撃スキル』である。

ただし、その他のパラメータであるHPやMPは若干消費する。

そして攻撃スキルと言っても、繰り出した対象に与えられるダメージは他の攻撃スキルよりもかなり低い。

スキルレベルが低いうちはダメージ20とか30程度で、スキルレベルが上がってもユーザー自身の能力値や武器の性能が相当高くなければ大したダメージ量は出せない。

このように、【無限の手】はぱっと見ただけでは固定ダメージスキルの『ファイターパンチ』と大差ない、取るに足らない雑魚スキルのように思える。

だがこの【荊棘の巻物】に記されたスキルの真価は、ダメージ量云々などの表面的なものではない。

ならば一体どこで真価を発揮するのか? それは『職業習熟度』である。

職業習熟度は、スキルを使うことでレベルアップしていくコンテンツだ。

使うスキルは、それまでユーザーが得てきたスキルなら職業問わず何でもOK。

例えばの話、僧侶系の修行中に物理系必中スキル【手裏剣】を繰り出してもいい。あるいは戦士系の修行の最中に、回復スキルの【キュア】を使っても職業習熟度ポイントは貯まる。

つまり、兎にも角にもスキルを使い続けることで職業習熟度は上がっていくのだ。

しかし、通常のスキルはSPを1以上消費して発動させるもの。もしSPをゼロまで使い切ったら、通常のスキルは何も使えない。

エネルギードリンクでSPを回復させるか、あるいは1分につき1回復する自然回復でSPが貯まるのを待つしかない。

その常識を根底から覆すのが、【荊棘の巻物】に記されたスキルだった。

そんな特殊スキルが、このエクストラクエストで入手できる。

この事実に、ライトは雄叫びにも近い声を上げて喜ぶ。

「うおおおおッ!ここで『荊棘の巻物』が登場するとは!何という、何という胸熱展開!これは何としても手に入れなきゃ!」

「……って、そういや今の俺って、根っからの魔法系体質だったっけ……この【刃】って物理系だったよな……」

「本音を言えば、【念】の方が欲しかったけど……ぃゃぃゃぃゃぃゃ、そんな贅沢言ったら罰が当たる!【刃】が入手できるだけでも御の字だ!」

喜んだり落ち込んだり、まるで百面相のようにくるくると表情が変わるライト。なかなかに忙しいことである。

ライトが落ち込んだのは、『荊棘の巻物【刃】』が物理系スキルだったことが原因だ。

今のライトは赤ん坊の頃にレオニスに引き取られ、そのままずっとカタポレンの森の中で過ごしてきた。

カタポレンの森は、別名『魔の森』。森の中には常時濃い魔力が漂う。

そんな環境で育ったライトは、まだ十歳にも満たないのに魔力耐性が非常に高くて魔力量もアホほど多い。

だからライトの本音としては、物理系の【無限の手】よりも、魔法系の【無限の氣】の方が欲しかったのだ。

だが、落ち込んだのはほんの一瞬だけで、すぐに気を取り直す。

ライトが喉から手が出る程欲しかったスキル、【無限の氣】と【無限の手】。その違いは、ダメージの質や消費パラメータが物理系か魔法系かというだけで、本質的には同じ。

物理系の『荊棘の巻物【刃】』があるのなら、魔法系の『荊棘の巻物【念】』だって必ず存在するはずだ。

ならば、この先『荊棘の巻物【念】』を獲得する機会も絶対に、必ず訪れるはず―――ライトはそう考えていた。

その証拠、とまでは言わないが、ライトはとあることに着目していた。

それは、一番最初に目に飛び込んできた『エクストラクエスト1』という文字にあった。

「つーか、『エクストラクエスト1』ってことはさ。当然『2』もあるってことだよな?」

「エクストラが何ページまで出てくるかは分からんが……少なくとも2ページ以上はある、はず」

「だったら2以降に【無限の氣】が報酬に出てくる可能性大だよな!」

ライトが着目した『エクストラクエスト1』という文字。

もしこのエクストラクエストが1ページだけの追加だとしたら、わざわざ『1』なんて数字はつけないはずだ。

それ以降にも2ページ目が控えており、もしかしたら3ページ目、4ページ目もあるかもしれない。

一体全部で何ページまであるのかはまだ分からないが、ライトが求めて止まない【無限の氣】がその先の報酬に出てくる可能性は非常に高い。

ライトの期待は高まるばかりだ。

だが、このエクストラクエストはライトにとって良いことばかりではない。

その後各種お題の内容をじっくりと精査していくライト。時折眉を顰めては呻る。

「つーか、これ……身代わりの実を『10回』も作らなきゃならんのか?」

「原材料のところに(1個分)ってわざわざ書いてあるし、タイトルにも『10回作ろう!』ってあるし……そういうことだよな……」

「しかも、濃縮マキシマスポーション10個に濃縮ギャラクシーエーテル10個って……その五倍のマキシマスポーションとギャラクシーエーテルを用意しなきゃならんのか……」

「……ってことは? え? これを十回分用意するってこと?…………キッツ!」

エクストラクエストの要求内容に、思わず悲鳴を上げかけるライト。

今エクストラクエストのお題に出ているのは、身代わりの実の原材料 一個分(・・・) の分量。

タイトル内容からすると、それを十回分作成しなければ次のページに進めない。

つまり、このエクストラクエスト1ページ目を完全クリアするには、お題の原材料の十倍分を用意しなければならないのだ。

これを具体的数値にすると『閃光草の根100個』『濃縮マキシマスポーション100個』『熱晶石100個』『濃縮ギャラクシーエーテル100個』『銀色のべたべた100個』ということになる。

閃光草の根や熱晶石はまだいい。銀色のべたべたも多分何とかなる。

だが、濃縮マキシマスポーションと濃縮ギャラクシーエーテル各百個は洒落にならない。それは、濃縮前で各五百個用意しなければならないことになる。

ライトが思わず辟易しかけたのも無理はなかった。

ベッドの端に座り、はぁー……としばし項垂れるライト。

マキシマスポーションとギャラクシーエーテルは、ライトが知る中で最も回復効果が高い最上級回復剤。

それだけに、一個作るだけでもかなりの材料と下準備が要る。

それを各五百個とは―――達成までの道のりは、かなり長いものになりそうなことは容易に想像できた。

しかし、ここまで来て諦めるという選択肢はライトにはない。

項垂れていた頭を上げて、斜め上を見上げながら呟く。

「……ま、クリアまでキツいことは間違いないけど、そればかりでもないよな」

「身代わりの実を自前で作ることができるようになれば、絶体絶命の危機に陥っても生き延びる確率が高くなるし」

「身代わりの実をたくさん作って自分で持ち歩いてもよし、作った分をレオ兄やラウル、マキシ君に分けてあげてもいいし」

「……その時は、フォルが拾ってきたことにすりゃいいか!」

ライトの計画は、エクストラクエストクリア後のさらに先の未来を想定し始めている。

身代わりの実は、即死に至る攻撃ダメージを受けた際に一度だけ身代わりとなって引き受けてくれる、いわゆる即死回避アイテム。即死攻撃を受けて回避効果が発動するとその場で粉々に砕け散る、一回限りの使い捨て消費アイテムである。

それはかつてツェリザークで、邪龍の残穢に襲われた冷晶石管理技師のスミスの命を救った品。

生命の危機に晒される冒険者になるならば、一つは常備しておきたい必需品なのだ。

それを自分の手で作れるようになれば、ライトの冒険者ライフはさらに万全なものとなることは確実だ。

その技術を会得するためにも、ここから一ヶ月二ヶ月―――いや、半年一年かかろうともやり遂げなければならない。

「……よし!そしたらまずは、マキシマスポーションとギャラクシーエーテルの材料確認からいくか!」

ライトは座っていたベッドから立ち上がり、己の頬を両手で軽くパン!と叩く。

新たなる課題、エクストラクエストをクリアすべく気合いを入れて張り切るライトだった。