軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第647話 新たなお題

ライトはドキドキしながら、クエストイベントの▶マークを押す。

すると、次の瞬間クエストイベントの10ページ目が表示された。

ライトの目の前に現れた、新たなる10ページ目。その内容は、以下の通りであった。

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★小人族の危機に備えよ act.7【春暁の訪れ】を作ろう!★

〔春暁の訪れ 原材料〕

46.神樹の緑葉10個 報酬:1000万G

47.マキシマスポーション1個 報酬:金糸雀色の香炉1個

48.クラーケンの吸盤3個 報酬:150CP

49.ギャラクシーエーテル1個 報酬:呂色の香炉1個

50.無色のべたべた1個 報酬:200CP

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最新ページのお題になっている、新アイテム『春暁の訪れ』とは回復剤の一種で、石化解除の働きを持つ。

石と化し固まった状態から解放された様子を、春の訪れに例えたアイテム名となっている。

その材料が、No.46からNo.50までの五種類である。

本来ならば、どれも入手困難な素材ばかりだ。

だが、ライトはそれらを見ながら気の抜けたような声でぽつりと呟く。

「……え。こんなんでいいの?」

ライトが最新ページを繁繁と眺めながら、思わず呟くのも無理はない。

何故なら、どれもこれも今のライトにとっては然程労せずにすぐに用意できそうなものばかりだったからだ。

『神樹の緑葉』は、ユグドラツィやユグドラシアからもらった枝の葉っぱがたくさんあるし、『クラーケンの吸盤』だって目覚めの湖にいるイードに頼めばいくらでも譲ってもらえる。

マキシマスポーションやギャラクシーエーテルは、その材料の肝である『小人族の丸薬』『鬼人族の秘酒』は既に入手済み。『無色のべたべた』も、スライム飼育場へ行けば売店ですぐに購入できるだろう。

だがしかし、ライトは気づいていない。それらの品々は、本来なら天空島の閃光草と大差ないくらいに入手困難なアイテムであることを。

そう、普通に考えれば神樹や巨大クラーケンなどというのは艱難辛苦の冒険を乗り越えた果てに辿り着く存在であって、それとは全く別のルートでそれらと友達になっている者などいないのである。

とはいえ、その過程の是非はともかく、クエストイベントが楽に進められるのはライトにとっては朗報だ。

特に9ページ目で散々手こずってきたのだ、それより先のクエストが簡単になるならこれ程嬉しいことはない。

しかもクエストイベント終盤だけあって、その報酬内容もかなり良いものが並ぶ。

クエストイベントのページを眺めるライトの顔も、自然とニヤけてくる。

「ぶっちゃけ香炉はどうでもいいけど、他が1000万Gに350CPか。なかなかいいじゃん!……てゆか、ここで350CPゲットできるなら、今までの分と合わせて500CPになる?」

「おお、そしたら課金任務の天空神殿討伐権も購入できるじゃないか!やったーーー!」

その報酬内容に、喜び勇んで両手を上げて万歳したところでライトの身体がはたと止まる。

「……って、天空神殿って、そもそも『討伐』できるんか……?」

「光の女王様のいる神殿に攻め入るとか……そんなん絶対無理くね?」

ここでライトが困惑しだしたのももっともだ。

彼が知る前世のBCOでの課金任務は、神殿の名を冠するものが多かったのである。

内容的には『どこそこで神殿型の遺跡が見つかった。その神殿の調査に向かえ』というものだ。

そしてその調査先で、ユーザー達は謎のモンスターや領域に侵入した敵対者として神殿の主に襲われる。そのモンスターや神殿の主と戦い、見事倒した暁にドロップアイテムが出る。

そのドロップアイテムが討伐報酬品としてユーザーが獲得する、というシステムである。

だが、このサイサクス世界の神殿には主に属性の女王が住んでいることが、これまでの神殿訪問で分かっている。

そして神殿に住まう属性の女王達は、特にとち狂っている訳でもなければ、誰かに操られて襲いかかってくる訳でもない。

そんな至って普通の状態の、善良な女王達を相手に討伐などできようはずもなかった。

また、神殿には属性の女王以外にも固有の守護神がいるが、それらはBCOのレイドボスが基になっている。

レイドボスなら討伐するのも吝かではないが、湖底神殿の水神アープのアクア、暗黒神殿のノワール・メデューサのクロエはライトが卵を孵化させた縁により、ライトを生みの親として慕っている。

生みの親兼仲の良い友達として接している今、彼らを討伐するなんてことは絶対にできない。

他にも海底神殿のディープシーサーペントは海の女王が大事にしている守護神だし、天空島にいるグリンカムビやヴィソーヴニルだって天空神殿や雷光神殿の守護神であり、とてもじゃないが害意を以て接することなどできない。

結果、レイドボスであってももうライトには手出しすることなど実質不可能である。

前世では、何の疑問を持つこともなくこなせていた課金任務『天空神殿討伐権』。

今のライトにとっては、手に入れたところで到底クリアできそうになかった。

「ンーーー……どうしよ、コレ……」

「そしたら今度ルティエンス商会に行って、ロレンツォさんに会って話してみるか。500CPなんて大金使って交換するんだ、その詳細とか討伐権の内容を直接聞いてもバチは当たらんだろう」

「……何ならもう課金任務は諦めて、別のアイテムと交換したっていい訳だし」

ライトは思案顔でブツブツと独りごちる。

このサイサクス世界において、課金通貨であるCPを用いた買い物?が可能なのは、現時点で二ヶ所。ライトだけが見れるマイページ内のショップ欄と、ツェリザークに実在するルティエンス商会だ。

CPの使用はマイページ内のショップ欄でも可能だが、課金アイテムについて疑問点や質問したい事柄があるならば、この世界に実在するルティエンス商会の店主ロレンツォに相談するのが一番早くて確実である。

また、もし万が一ロレンツォでも知らない、あるいは答えられないような疑問であっても、鮮緑と紅緋の渾沌魔女ヴァレリアならきっと答えられるだろう。

もっともヴァレリアにはそう簡単には会えないので、もしヴァレリアに聞くとしたら今のライトの職業【僧侶】の四次職をマスターしてからでなければならないが。

ライトとしても、本音を言えば課金任務はこなしてみたかったが、討伐相手が見知った仲良しとなると話は別だ。

そんなことをするくらいなら、いっそのこと課金任務は諦めよう。その代わりに、別のものを入手すればいいのだから―――そこに考えが至ったライトは、少し心が軽くなった気がした。

「……ま、それは10ページ目を全クリアしてからの話だな。まずはその手前の五つのお題のクリア、これを目指さなくちゃ」

「よし、そしたらエリトナ山の遠征から帰ってきたら、すぐにイードにお願いしに行こうっと!」

「無色のねばねばも、またスライム飼育場に買い出しに行かないとなー。それもエリトナ山から帰ってきてからか。……あ、そのついでに、ナヌスに差し入れする黄色のぬるぬるの素も買ってこよっと。前に差し入れしたやつも、そろそろ切れる頃だろうし」

クエストイベントのお題をより細かく精査しつつ、そのためにすべきことを次々と把握していくライト。

神樹の葉は、既にライトの手元に山ほどあるのでOK。特に銘柄や神樹の個体名も明記されていないので、おそらくはユグドラツィやユグドラエル、どの神樹の葉でも問題なくカウントされるはずだ。

『神樹の葉』という指定で今のライトが入手可能なのは、大神樹ユグドラシア、神樹ユグドラエル、竜王樹ユグドラグスの三種類。

先日訪ねた天空樹ユグドラエル、その枝はまだ入手できていないが、恙無く交流できたので次回訪問時に枝を分けてもらえるだろう。

試しに四種類全部の葉っぱをアイテム欄に入れて、確認してみよっと!もしかしたらオーガ族のお酒のように、いろんな種類で認識されるかもしれないしね!などとライトは考えている。

クラーケンの吸盤も、イードがよくアル親子などに譲る時のように、触腕の爪の先ほどの少量をもらえばすぐに三個分が採取できるだろう。

イードの身体を傷つけるのは本意ではないが、それを回避するために他のクラーケンを一から探し出す気力はさすがにない。

ここはイードに頼んで譲ってもらう一択である。

濃縮回復剤二種も、その材料はレシピを見て既に把握済み。材料も全て揃っているので、後はレシピ通り作成するだけだ。

スライム由来の強化素材の一つであるべたべたも、ラグナロッツァ郊外にあるスライム飼育場に行けばすぐにでも用意できる。

特にスライム飼育場は、非常に有用な施設だ。

スライムのぬるぬるやねばねばは、本来なら該当する色のスライムを冒険フィールドで散々狩って狩って狩りまくって、ドロップ品として入手しなければならないアイテムである。

だがこのサイサクス世界には、お金を出せば同等品を購入することができる手段があるのだ。

魔物狩りに手間を割くことなく、しかもお手頃価格で入手可能。さらにはナヌスやオーガなどの異種族にも好評で、親睦を深めるきっかけにもなってくれた。

もはやライトにとってスライム飼育場は、人生の中で欠くことのできない大事な場所であり、本当に『神様仏様スライム飼育場様々!』なのである。

思えばライトがこのクエストイベント【湖の畔に住む小人達の願いを叶えよ】に取り組み始めたのが、昨年の十一月初旬の頃。

初めてのイベント【使い魔の卵を育成しよう!】を無事クリアし、その次に選んだ二番目のBCOイベントだった。

早いもので、それからもう八ヶ月くらいが経過したことになる。

こんなに時間がかかるとは、正直ライト自身も最初の頃には夢にも思っていなかった。

それはボリュームの多さもさることながら、前世当時の余暇の時に遊ぶゲームとは違ってリアルの生活と並行してこなさなければならなかったからだった。

レオニスとともに過ごし、ラグーン学園に通い、勉強や宿題、学園の友達との交流等々、現実世界の柵もかなり多い。

そんな制約だらけの中で、ライトだけが挑むことのできるクエストイベントをここまで進められたことに、ライトは感動すら覚える。

心ゆくまでクエストイベントの最新ページをチェックすることができたので、マイページを閉じてベッドにコロン、と寝転んだライト。

このクエストイベントが完了したら、次はどんなイベントを始めよう? BCOイベントも楽しみだけど、明日から行くエリトナ山遠征も楽しみだな!やること山積みだけど、これからも頑張ろう!

思考があちこち散らかりながらも、これからの未来に思いを馳せるライトだった。