軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第440話 規格外の存在

湖底神殿から最寄りの小島に上陸したライト達。

早速敷物やらラウル特製スペシャルご馳走入りのバスケットやらを取り出し、早めの昼食の準備をするライトとレオニス。

ライト達がテキパキと動く間、イード達はのんびりと小島の周辺を遊泳している。

水の女王はというと、小島に上陸してライト達の動きを物珍しそうに眺めていた。

「さ、これで昼飯の準備は整ったぞ」

「イード、ウィカ、アクアー、お昼ご飯の用意ができたよー、皆おいでー!」

湖で遊んでいる面々に向かって、大きな声で集合を呼びかけるライト。

呼ばれたイード達にもライトの声はちゃんと届き、小島に向かって続々と集まってくる。

ウィカとアクアは小島に上陸し、イードは水面から上半身を起こして小島の縁に寝そべるように身を乗り出している。

アクアが湖から小島に上陸する際に、湖面から勢いよく飛び出てきてライト達の頭上を飛び越えた。

その着地時にはドシーン!という大音響とともに、その地響きにより敷物に座っていたライト、レオニス、ウィカ、水の女王が座った姿勢のまま10cmほど宙に浮いた。

ちゃんとライト達の奥、それもだいぶ先の方にアクアは無事着地したから良かったものの。もしこれが、飛距離が足りなくてライト達の居場所にそのまま着地されでもしたら―――間違いなくモザイク規制のかかったスプラッターシーンが展開されていたであろう。

さっき生えたばかりの翼のおかげで大きく飛べたのかな? 何にしてもダイレクトアタックされないで良かったー!

今のアクアにのしかかられたら、俺もレオ兄も絶対にタダじゃ済まん……ぺっちゃんこどころの話じゃねぇ!

ライトは内心肝を冷やしながら、アクアの大ジャンプによる水飛沫をおしぼりのタオルで軽く拭う。

顔や頭をタオルで拭いながら、ライトはふと考えた。

『……あ、そういや今のアクアのステータスって、どうなってるんだろ?』

『さっき進化したばかりだし、昼食食べたらまたすぐレベル上がっちゃうかもしれないな……今のうちにチェックしてみよう』

そう思いながら、ライトは『アナザーステータス』でアクアのステータスを見てみた。

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【名前】アープ

【レベル】25

【属性】水

【状態】通常

【特記事項】単独接触禁忌指定第一種

【HP】47080

【MP】13880

【力】2960

【体力】3510

【速度】4230

【知力】2200

【精神力】2700

【運】1480

【回避】3710

【命中】2220

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アクアのステータスを見たライトは、思わず「ブフッ!?」と噴き出しかける。

レベル25という数値に対して、あまりにも高いそのステータス内容に驚愕するライト。顔に出さないよう、何とか平静を装うのに精一杯である。

周囲に気づかれないように、静かに深呼吸し懸命に気持ちを落ち着かせるライト。

目の前に開いたアクアのステータスに再び目を遣る。

『何このステータス……ついこないだ見た時はレベル6で、その時だって驚異的な数値だったのに』

『まぁレベルが低い初期のうちは、ガンガン上がるのも早いもんだが……それにしてもこのステータスは……』

『レイドボスってのは、全てにおいて規格外な存在なのかもしれないな。そもそもアープは水神なんだし』

見た目はまだ幼く愛らしいアクアだが、その本質は強大な力を持つレイドボスであることを改めて思い知るライト。

やはり詳細鑑定で水神と記されているだけあって、神という存在は伊達ではない。

全員が一ヶ所に揃ったところで、レオニスが皆に向けて声をかける。

「よし、皆揃ったな。じゃあ昼飯にするか」

「「いっただっきまーす!」」

手を合わせて食事の挨拶をするライトとレオニス。

水の女王などはそんな習慣はないので、ライト達の挨拶が何事かは分かっていない。

挨拶の後にライトもレオニスもご馳走を食べ始めたのを見ながら、水の女王は二人の顔を交互に見つつ様子を伺っている。

「ンー、ラウルのサンドイッチはいつ食べても美味しーい!」

「この蟹クリームコロッケも美味いな!これ、こないだの砂漠蟹だよな?」

「こないだ砂漠蟹の他の部位も全部茹でたって言ってたから、多分そうじゃない?……あ、このコロッケバーガーも蟹クリームコロッケだ。美味しーい!」

砂漠蟹のほぐし蟹肉がたっぷり入った、ラウル特製蟹クリームコロッケに舌鼓を打つライトとレオニス。

新しい食材を手に入れる度に、ラウルの料理のレパートリーが広がっていく。実に良いことである。

ちなみにウィカ向けにも、この砂漠蟹のほぐし蟹肉をたっぷり使用したスペシャルメニューが用意されている。

蟹肉と海藻のサラダ、蟹肉のつくね、蟹肉の厚切りステーキ等々。

ライト達が座る敷物の一角をウィカ用の席として、それらの砂漠蟹フルコース料理を並べてある。

もちろんウィカは実に美味しそうに食べている。

「ウィカ、砂漠蟹のフルコース料理、美味しい?」

「うなぁぁぁぁん♪」

「そっか、良かった!今日はイードとアクアのために、スペシャルミートボールくんをたくさん作ってきたからね!好きなだけ食べてね!」

「キシュルルル♪」

「クァァァァ♪」

ライト達が座る敷物を中央として、その左右にスペシャルミートボールくんが百個づつ置いてあるエリアがある。

皿代わりの大きな敷物をそれぞれに敷き、月見団子よろしくピラミッド状に積み重ねてあるのだ。

本日のミートボールくんサイズはボウリングボール大、それが百個も積み重ねられた図はなかなかに壮観である。

レオニスのいる右側をイードが食べ、ライトのいる左側をアクアがそれぞれ食べている。

いつもの手土産は十個程度だが、今日は皆でお出かけのピクニックなのでイードとアクアにも百個づつという、超大盤振る舞いである。

大好物をいつもよりたくさん食べられるとあって、イードもアクアも実に美味しそうにガツガツと食べている。

ウィカも美味しそうに食べているのを見て、皆がピクニックの食事を喜んで食べてくれていることに嬉しくなるライト。

だがふと水の女王の方を見ると、目の前に置かれたご馳走を眺めている。まだ彼女が何も食べていないことに、ライトはようやく気づいた。

こうして大勢でご飯を食べることなど、水の女王にとっては間違いなく初めてのことだろう。故にどうしていいのか分からないのだ。

ライトは慌てて水の女王にも声をかける。

「あっ、水の女王様、気がつかなくてごめんなさい!どうぞ遠慮せずに食べてください!飲み物もたくさんあるし、どのご馳走もとても美味しいですよ!」

「おう、そしたら何がいい? まずはこの茹で蟹を挟んだサンドイッチなんかどうだ? すんげー美味いぞ」

「飲み物はお茶系にしましょうか、ご飯中は口をさっぱりさせるものがいいですし」

ライトは水筒に入れてきたお茶をカップに注ぎ、レオニスは茹で蟹サンドイッチを勧めながら手に持ち水の女王に直接渡す。

お茶とサンドイッチをそれぞれ受け取った水の女王、おずおずとサンドイッチに口をつける。

パクッ、と一口。そしてまたパクッ、と二口。

サンドイッチを食べる毎に、水の女王の表情がキラキラと輝いていく。

ここまでくれば、後はもう大丈夫だ。パクパク、ムシャムシャと一心不乱にサンドイッチを食べ進める水の女王。

あっという間にサンドイッチを完食してしまった。

その後ライトが渡したお茶を飲み、ふぅー、と一息つく水の女王。

『……とっても美味しい!これ、何ていう食べ物?』

「これはサンドイッチという食べ物ですよ。この二枚のパンという食べ物の間に、いろんなものを挟んでるんです」

『サンド、イッチ、ね。覚えたわ!……これ、おかわりしても、いいかしら?』

「もちろんです!茹で蟹以外の味もあるので、好きなだけどうぞ!」

「ああ、まだ他にもたくさん持ってきてるから、遠慮なく食べな」

『ありがとう!』

サンドイッチをおかわりしたい、と遠慮がちに言う女王。もちろんライト達に否やなどなく、快く頷く。

そんなライト達の言葉と柔らかな表情に、水の女王が破顔しながら礼を言う。

ねぇライト、これは何? えーと、ハムマヨですねー、それ美味しいの? もちろん!等々、ライトと会話しながら早速二個目のサンドイッチを食べる水の女王。

仲良く会話するライトと水の女王を、レオニスは十個目の蟹クリームコロッケバーガーを食べながら微笑ましく眺めていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「はぁー、お腹いっぱいー。ごちそうさまでしたー!」

「食った食ったー。ごちそうさん!」

「ケプシュルルゥ」

「うなぁーん♪」

「クウィィィィ」

『えーと、ごちそうさま、でしたぁ♪』

ラウル特製豪華ランチや山盛りスペシャルミートボールくんをたらふく食べたライト達。

膨れたお腹を擦りながら、ごちそうさまの挨拶をする。

あれだけたくさんあったご馳走の、ほとんど全てが皆のお腹の中に消えてしまった。ライト以外は皆とんでもない大食漢である。

とはいえウィカや水の女王はまだ可愛い方か。イードやアクアも、その巨躯を考えれば妥当な範囲だ。

問題はレオニスである。

蟹クリームコロッケ単品二十個に同バーガー十個、茹で蟹サンドイッチ八個に蟹肉入り太巻き寿司二本分という、途轍もない量を完食していた。

某稀代の天才大魔導師ほどではないが、それにしても尋常な量ではない。やはり大陸一の現役最強冒険者もかなり燃費が悪いのだろうか。

『ねぇねぇ、この美味しいものはライトとレオニスが作ったの?』

「ううん、イードとアクアのスペシャルミートボールくんだけはぼくが作ったけど、他のサンドイッチやコロッケなんかはラウルに作ってもらったんだ。あ、ラウルってのはぼく達の家の執事で、人族じゃなくて妖精なんだけどね」

『そうなのね。私もそのラウルって妖精に御礼をしたいから、いつかいっしょに目覚めの湖に遊びに来てね!』

「うん、ラウルにも伝えておくね!」

水の女王も美味しいものをたくさん食べたので、とてもご機嫌だ。

ラウルにも御礼をしたい、と水の女王が言っていたことを聞けばラウルもきっと喜ぶだろう。

次はマキシ君がお休みの日に、ラウルも誘って皆でまた目覚めの湖にピクニックに来よう!とライトは思うのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「さーて、少し休んだら湖で泳いで腹ごなしの運動でもするか!」

「クルルゥゥゥ♪」

『レオニス、アクア様が追いかけっこしよう!って仰ってるわ』

「え、水神と追いかけっこ?」

「キシュリュリュァ♪」

『イーちゃんも追いかけっこに混ざりたいって!』

「え、イードも追いかけっこすんの? つーか、鬼は誰よ?」

レオニスが発した『腹ごなしの運動』と聞き、アクアが追いかけっこしたい!と言い出したのを水の女王が通訳してレオニスに伝える。

しかもその追いかけっこにイードも加わりたいらしい。

人族と水神とクラーケンの水中追いかけっこ。果たしてどのような絵面になるのだろうか。正直全く想像がつかない。

そして、レオニスの『鬼は誰よ?』という問いかけに、アクアとイードだけでなく水の女王までもがレオニスに視線を向ける。

三者からの熱い眼差しに、レオニスは「う"う"ッ」と小さく呻きながらたじろぐ。

アクア達の熱い視線を受けること約十秒後。レオニスは観念したようにがっくりと項垂れながら大きなため息をつく。

「はぁぁぁぁ……しゃあないなぁ。じゃあ一番最初の鬼は俺な」

『キュゥキュゥ♪』

「フシュルル♪」

「じゃあ今から俺が十数える間に、イードとアクアはより遠くまで泳げ。十数え終わったら俺が追いかけるからな。十、九、八……」

レオニスが湖面に背を向けて数を数え始めると同時に、イードとアクアが湖を泳ぎだす。

二者とも違う方向に泳いでいったが、レオニスは両方を追いかけきれるのだろうか?

「……三、ニ、一、ゼロ!行ッくぞーーー!」

湖面とは反対側の陸地の方に一歩づつ進みながら、数を数えるレオニス。

数がゼロに到達した瞬間、くるっと踵を返して湖面の方に振り向いたかと思うと、勢いよく助走をつけて大ジャンプし湖に飛び込んだ。

その飛び込みのフォームの美しさたるや、まるで競泳選手のようである。

「ぅおりゃああああぁぁぁぁッ!」

競泳選手顔負けの飛び込みで湖に入ったレオニス、助走よりも早いスピードで目覚めの湖を泳いでいる。

しばらくクロールで泳いでいたかと思うと、とぷん!と水中に潜っていった。

「ぃゃー、レオ兄ちゃん、元気だねぇ。ぼくはまだお腹いっぱいで動けないや」

「うにゃにゃーん」

「だよねー。ウィカもぼくといっしょにここでのんびりしようか」

『……私もアクア様達と追いかけっこしてくるー!』

「水の女王様もいってらっしゃーい。レオ兄ちゃんが無茶してたら止めてあげてくださいねー。……さ、ぼくはウィカとここでお昼寝しようっと」

「うなぁーん」

レオニス達の追いかけっこがよほど楽しそうに見えたのか、水の女王まで追いかけっこに参戦する!と宣言して水の中に消えていった。

まだお腹いっぱいのライトは、ウィカとともに昼寝することを宣言して敷物の上にころん、と寝転んだ。

騒がしいレオニス達が水の中に潜り、目覚めの湖に静寂が戻る。

その心地よい静けさに、ライトの瞼も自然と閉じられる。

微睡みに誘われたライトの意識は、あっという間に眠りの海に落ちていった。