軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第441話 レシピ作成アイテムの認知度

『……アクア様がレオニスに捕まって、次に鬼になったアクア様にイーちゃんが捕まって、イーちゃんに私が捕まって……』

『今度は私がレオニスを捕まえようと思ったのに、全然追いつけなーい!』

『ていうか、私やイーちゃんだけでなくアクア様が追っかけてもレオニスに全然追いつけないとか、一体どういうこと!?』

食後の運動の追っかけっこに満足したのか、レオニス達が雑談しながら小島に戻ってきた。

最後に鬼になった水の女王、レオニスに狙いを定めるも結局捕まえることができなかったらしい。

肩を落としながら、ぷくー、と不満気に頬を膨らませプンスコとむくれる水の女王。むくれると言っても、心底本気で怒っている訳ではないようだが。

ブチブチと文句を呟き悔しがる水の女王に、レオニスは高笑いしながら答える。

「ハッハッハー、現役冒険者を舐めんなよ?この稼業はただ強けりゃいいってもんじゃない、逃げ足だって早くなくちゃ生き残れんからな!」

『むぅー……アクア様、イーちゃん、次は絶対にレオニスを捕まえましょうね!』

「ゥキュゥ……」

「シュルリァゥ……」

爽快な笑顔のレオニスに軽くあしらわれた水の女王、次回こそは必ずレオニスを捕まえる!と鼻息荒くリベンジを宣言する。

リベンジ仲間であるアクアやイードにも発破をかけるも、何故かアクアとイードの返事が弱々しい。

それもそのはず、レオニス達が目覚めの湖で追いかけっこを始めてから、かれこれもう二時間近く経過していた。

返事どころか足取りもかなりヘロヘロなアクアとイードの様子を見るに、よほど全力で泳ぎ続けたのか。

追いかけっこをしていたメンバーの中で、最後まで元気でピンピンしているのはレオニス唯一人。ラウルの美味しい豪華絶品ランチがよほど効いたのだろう。

人族と水神とクラーケンと精霊。総計四種族が真剣に繰り広げた追いかけっこのガチ戦は、人族代表であるレオニスの完勝である。

そんな四者三様のレオニス達を、小島に残ってのんびりと過ごしていたライトとウィカが出迎える。

レオニス達が追いかけっこをしている間、日向ぼっこしながら昼寝していたライトであったが、さすがに二時間も経過すればとうに目が覚めていた。

「皆、おかえりー。飲み物とおやつを用意してあるよー」

「うにゃにゃにゃにゃーう」

「お、もうおやつの時間か。早速いただくとするか」

「クルルゥゥゥ♪」

「キュルァァァ♪」

『また美味しいものがあるの?是非ともいただくわ!』

昼寝から起きたライトは、そのうち戻ってくる皆のためにおやつを用意していた。

ラウル特製のシュークリームに苺のタルト、新作のチョコレートケーキ等々、魅惑のスイーツが敷物の上に並ぶ。

飲み物はぬるぬるドリンク各種にお茶やハイポーション、エクスポーション等々、実に豊富なラインナップである。

皆思い思いに好みの品を選び取り、美味しそうに食べては飲んでいる。

レオニスと水の女王がスイーツに手を伸ばす中、イードとアクアは真っ先にエクスポーションを選んでいた。

腕が十本もあるイードはともかく、水竜姿のアクアは瓶の飲み物を自力で扱えそうにない。

アクアに飲ませてあげるために、ライトはアイテムリュックから大きなボウルを取り出し、そのボウルの中にエクスポーションを注ぐ。一本だけではとても足りなさそうなので、二本目、三本目とエクスポーションを惜しみなく継ぎ注いでいく。

「はい、アクア!このボウルにたくさんのエクスポーションを入れたから、直接口を入れて飲んでね!」

「キュイキュイ♪」

ライトが用意してくれたボウルに、アクアは嬉しそうに顔を突っ込みながら口をつける。

舌を上手に使ってコクコクと飲むアクア。追いかけっこで疲れた身体に、エクスポーションはさぞかし染み渡るであろう。

ちなみにレオニスも、飲み物は真っ先にエクスポーションを選んでいた。

そんなレオニスを眺めながら、ライトが呆れたように言う。

「レオ兄ちゃん、よく水の中で二時間も追いかけっこできるねぇ……疲れない?」

「ンー? この程度でへばってたら、金剛級冒険者なんぞ名乗れんぞ?」

「そりゃまぁそうなんだろうけどさ……」

「それに、水の勲章のおかげで水中でも自由に動けるようになったからな!さすがに地上で走るのとはまた訳が違うが、それでも水濡れせずに着衣水泳できるってのはすげーいいことなんだぞ!」

「まぁね、水場で溺れることは絶対にないってことだもんね」

水に濡れずに着衣水泳できることの素晴らしさを説くレオニス。

その論にはライトも賛成だし異論はないが、それにしたって初っ端から二時間も水中追いかけっことは尋常ではない。タフ過ぎるにも程がある。

とてもじゃないが、今のライトにはまだ真似できない超人的な芸当だ。ライトとしては、呆れ半分、尊敬半分の複雑な心境である。

そんなライトの視線を他所に、くーッ、やっぱ運動の後はエクスポに限るな!と言いながらエクスポーションをぐい飲みするレオニス。

まるで風呂上がりの牛乳もしくは麦茶を飲んでいるようにしか見えない。

するとここで、ライトがふと何かを思いつきレオニスに尋ねる。

「あ、そういえばさ、レオ兄ちゃん。これ、回復剤だと思うんだけど、何だか分かる?」

そう言いながらライトがアイテムリュックから取り出したのは、濃縮エクスポーションに濃縮イノセントポーション、濃縮セラフィックエーテル、グランドポーションにコズミックエーテルである。

ライトが次々と取り出してくる回復剤を手に取り、繁繁と眺めるレオニス。

「んーーー? この色はエクスポーションにイノセントポーション、セラフィックエーテル、か? それにしちゃどれもこれも妙に色が濃いが……何でこんなに濃い色してんだ?」

「で? こっちは何だ?……って、グランドポーションにコズミックエーテルじゃねーか……ライト、お前、何でこんな高級なもんを持ってんだ?」

レオニスはそれらの液体の色を見て、的確に判断していく。

鑑定スキルを持っている訳でもないのに、全部正解を言い当てるレオニス。さすがとしか言いようがない。

今回ライトがレオニスに見せた、五種類の回復剤。

濃縮三種はライトがレシピ作成した品で、グランドポーションとコズミックエーテルは使い魔のフォルがお使いで拾ってきた品だ。

後者は今現在挑戦中のクエストイベントで、作成レシピは既に得ている。だがまだ材料の収集途中なので、実物の作成には至っていない。故にフォルのお持ち帰り品を出していた。

「これ、フォルがカタポレンの森で遊んだ時に時々持ち帰ってくる品なんだよね。瓶の様子からして回復剤っぽいとは思うんだけど、種類までは分かんなくて。レオ兄ちゃんなら知ってるかな?と思って聞いてみたんだ」

「エリクシルといい、グランドポーションといい、フォルは面白ぇもんをよく拾ってくるんだな……つか、どこでこんなもん拾ってくるのよ?」

「うん、それはぼくもホントに知りたい」

今回もシレッとフォルの功績にするライト。

実際にグランドポーションやコズミックエーテルなどは、フォルが時々お使いの戦利品として持ち帰ってくるので本当の話だ。

さすがに生産職スキルで濃縮したものまでは、如何にフォルでも持ち帰ってきたことは一度もないが。

ちなみにライトがこの話題をレオニスに振ったのは、理由がある。

冒険者ギルドの売店では、イノセントポーションとセラフィックエーテルまでしか置いていないのだ。

ライトが知る限りでは、それ以上の回復量があるものがいくつも存在するにも拘わらず、である。

ライトも冒険者ギルドの売店には何度も足を運んでいるが、その度に商品棚を見ては「何でイノポとセラエまでしか置いてないんだろう?」と常々疑問に思っていた。

だが、かつてライトがイヴリン達同級生にヨンマルシェ市場を案内してもらった時のこと。その折にライトの希望で立ち寄った薬屋にも、品揃えは冒険者ギルドの売店と似たようなものだった。

これらのことを踏まえると、もしかしてこのサイサクス世界ではグランドポーションやコズミックエーテルは一般的ではないのかもしれない。もしかしたら未知のアイテムである可能性すらある、とライトは思い至る。

さすがにエリクシルほどの稀少性ではないだろうが、それでもそこそこ入手が難しい品である可能性は高い。だとしたら、ライトがレシピ作成で作り出した品々の扱いも今後慎重にしなければならなくなる。

もしレオニスも知らないような未知のアイテムだとしたら、迂闊に人前で使うことはできなくなるからだ。

だが、濃縮類はともかくグランドポーションやコズミックエーテルはレオニスも知っているようだ。

ライトはそのことに内心で安堵しつつ、レオニスに問うた。

「そのグランドポーションとコズミックエーテルって、普通のお店で売ってるの? 冒険者ギルドの売店では見たことないけど……」

「そこら辺は薬師ギルドの専売品で、薬師ギルド内の売店でしか買えない品だ。手軽な回復剤というより、瀕死の重症を負った怪我人なんかに用いられる。だからそれらは高級品で、一般人が気軽に買うようなもんじゃない」

「あー、結構お高いものなんだね……」

「それらを使うのは主に診療所なんかだな。だが冒険者でも万が一の場合に備えて、薬師ギルドで一本か二本買って常備するやつも多い」

レオニスの話を聞いたライトが、思わずぽつりと呟く。

ハイポーションのように安価で買いやすいものならば、平民でも気軽に購入して備えるだろう。

だが、瀕死の重症人向けの品ともなると値段も高くなり、さすがに取り扱う場所が限られてくるようだ。

「そしたらさ、今度【水の乙女の雫】を冒険者ギルドに提出する時に、この濃い色の回復剤も鑑定に出して見てもらえるかな? ちゃんとした回復剤ならいつか使いたいし、もし毒や麻痺成分が含まれててもそれはそれで別の使い道はありそうだし」

「おう、いいぞ。俺もこれがどんなアイテムなのか気になるしな」

「じゃ、これレオ兄ちゃんに預けておくから、よろしくねー」

「了解」

ライトから謎のアイテムを受け取ったレオニスは、空間魔法陣を開いて収納していく。

レオニスの反応から察するに、やはりこのサイサクス世界には五倍濃縮の回復剤は存在していなさそうだ。もっとも、ライトの知るBCOでも生産職用コンテンツは未実装だったが。

回復剤類の濃縮という、既存にはない全く新しい概念。

このサイサクス世界でもそれが広く普及すれば、アイテムバッグと同じくらい冒険者業界に革命的な旋風が巻き起こるかもしれない。

その一石を投じるために、レオニスを通して外部である冒険者ギルドにその役割を担ってもらうつもりなのだ。

ライトとしても、毎回毎度レオニスに丸投げなのは申し訳ないと思ってはいるのだが。如何せんライトはまだ十歳にも満たない子供なので、表立って目立つような行動はできない。

さらに言えば、レオニスの発言力や影響力の強さも大きく関わる。

子供のライトが言ってもまともに取り合ってもらえないようなことでも、レオニスが言うことならばひとまず耳を傾けてもらえるのだ。

親(レオ兄) の七光りだろうが何だろうが、使えるものは何でも使う!そうすることこそが、このサイサクス世界の発展のため、引いては俺の安定した将来のためにもなるんだから!

レオニスをこき使う罪悪感を拭い去るように、ライトは安定した未来を得るために闘志を燃やすのだった。