軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第418話 神樹とのお茶会

神樹の枝から作られたアクセサリーに、ユグドラツィの分体を入れてもらったライト達。それぞれに選んだアクセサリーを早速身に着ける。

ライトはアイテムリュックにタイピンを着け、レオニスは深紅のロングジャケットの袖口にカフスボタンを通す。ラウルも大きいバングルを左手首に通し、小さなバングルは後ほどマキシに渡すために空間魔法陣に仕舞う。

これでユグドラツィはいつでもカタポレンの森の外の景色を見ることができるようになった。

「ツィちゃん、視界はどうですか?」

『ちゃんと三つ見えます。空間魔法陣に仕舞われたものは何も映りませんね。何とも不思議な感覚です』

「そうですか。そしたら、ツィちゃんが見たい時にいつでも見てくださいね!」

『ありがとう……本当に、夢のようです』

「いえいえ、そんな……ぼく達だって、ツィちゃんから祝福もらいましたし。少しでもその恩返しになるなら嬉しいです!」

「そうだな、俺達全員ツィちゃんの祝福をもらってるしな」

分体入りのアクセサリーから見える視界を確認するユグドラツィ。感無量の面持ちでライト達に礼を言う。

ライト達はライト達で、ユグドラツィから祝福という強力な祝福を得ているので、動けぬ神樹のユグドラツィに外の世界を見せてあげるのは恩返しの一環でもある。

するとここで、祝福の話の流れに乗るようにレオニスがユグドラツィに話を切り出した。

「ツィちゃん、俺から一つ頼みがあるんだが」

『何ですか?』

「分体とは違う置き物とかなんだが、それに祝福をつけてもらえないか?」

レオニスが話をしながら、空間魔法陣から木彫りのフォル、小鳥の置き物、扇子を取り出した。

祝福をつけてもらいたい品が三つあるので、まず最初に取り出した木彫りのフォルをライトに持ってもらい、小鳥の置き物と扇子はレオニスの両手にそれぞれ持ってユグドラツィに見せた。

『これは……そこにいる幻獣カーバンクルを模したもの、ですか?』

「ああ、このフォルがモデルになっている」

『小鳥や小物など、他のものも可愛らしいですねぇ』

「さっき分体を入れてもらったアクセサリー、あれらを作った職人の作品だ」

『なるほど、これは……カタポレンの森の番人をして『超一流の職人』と言わしめるのも納得の腕前ですね』

ライトの手に持たせた木彫りのフォルを、ライトの肩に乗るフォルが不思議そうに見ている。

大きさは実物のフォルの方が大きいが、木彫りのフォルは実物そっくりで今にも動きだしそうなくらいに良く出来ている。

それを見たユグドラツィが、ほっこりとしたような声で感嘆の言葉を洩らすのも当然である。

「でな、その超一流の職人―――人族の三人姉妹なんだがな。その人達に、俺達はいつも世話になってるんだ。今回の分体用のアクセサリー然り、俺やライトが身に着ける装備品然り。彼女達の作る品は見ての通りどれも素晴らしく、俺も装備品類で何度も命を助けてもらった」

「俺やライトだけでなく、ラウルやマキシもまた大恩ある人達なんだ」

レオニスがアイギス三姉妹のことをユグドラツィに語って聞かせる。

ユグドラツィはレオニスの話を静かに聞き入っている。

「ツィちゃんとは直接会ったこともない人間なんだが。もし良ければ、この木彫りのフォルや小鳥、扇子にツィちゃんの祝福をつけてもらえないだろうか」

「彼女達は俺達をいつも陰から守り支えてくれる、とても大事な存在だ。そんな彼女達を守る御守りのようなものが欲しいんだ」

己の願いを言い終えたレオニスは、ユグドラツィを見上げてじっと上方を見つめながらユグドラツィからの答えを待つ。

微かな風に揺れる葉擦れの音がサワサワと響く。

『……いいでしょう。カタポレンの森の番人を守り支える者達ならば、番人同様カタポレンの森の平穏を支える者の一員でもあります』

「……!! ありがとう、ツィちゃん!」

『それに、先程私の分体を入れた装備品もその者達の作なのでしょう? ならば私としてもその者達に礼をせねばなりませんしね』

「そう言ってもらえると助かる。本当にありがとう」

レオニスが礼を言うと、ユグドラツィは早速木彫りのフォルや小鳥の置き物、扇子に祝福を与え始めた。

キラキラとした温かくて大きな光が品々を包み込み、ゆっくりと吸い込まれるように光が小さくなり薄れていく。

光が消えてしばらく経った頃、ユグドラツィがレオニスに語りかけた。

『その品々に私の祝福を付与しました。それらを身に着けたり置いた場所は常に浄化され、悪しき気を打ち消します』

『有効範囲がどの程度かは分かりかねますが、私の枝の幅よりも小さいことはないはずです』

『貴方方に与えた祝福同様、その者達にとっても善き守りになることを願うばかりです』

ユグドラツィの言葉に、レオニスは心底嬉しそうに破顔する。

「ツィちゃん、ありがとう!カイ姉達もきっと、いや、絶対に喜んでくれる!」

「良かったね、レオ兄ちゃん!」

「俺も今度アイギスで木彫りのフォルを作ってもらうか……」

ユグドラツィの祝福をもらえたことを喜ぶライトとレオニスの横で、ラウルが自分用の木彫りのフォルを欲しがっている。

この妖精、どこまでもマイペースである。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ひとまず主だった要件を達成し終えたライト達。

ここでライトがレオニスに向かって一つの提案をする。

「さぁ、ツィちゃんの分体や御守りの祝福も無事入れてもらったことだし。そろそろ皆でおやつにしない?」

「お、いいねぇ。ツィちゃんにも飲める美味しい水とかあるか?」

「ラウル、こないだぼくといっしょにツェリザーク行った時に採ってきた雪は?」

「おう、たくさんあるぞ」

「じゃあそれ出して、ツィちゃんにあげて。……って、雪の塊のままだとツィちゃん冷えちゃうかな? 」

自分達の分だけでなく、ユグドラツィのおやつにも気を配るレオニス。前回の訪問時に、ライトが催した『美味しい水の試飲会』なる面白企画のことを覚えているようだ。

ライトはラウルにツェリザークの雪の在庫?を尋ね、たくさんあることを確認する。

だが、雪の塊のまま出してもいいものかはたと悩むライト。

今はまだ二月半ば、雪の塊でユグドラツィの根元が冷え切って風邪でも引いたら大変だ。果たして神樹が風邪を引くかどうかは分からないが。

「ツィちゃんのぽんぽん壊したら困るよね、火魔法で雪を急速解凍すべき?」

「……ツィちゃんでも腹壊すことあんのか? つーか、腹壊す以前に樹木の近くで火魔法使うのはさすがにマズいだろ……」

「あ、やっぱりここで火を使うのはマズい? そうだよね、ツィちゃんは木だもんね、燃えちゃ困るよね。うーん、そしたらどうしよ……」

それは傍から見たら滑稽な悩みに見えるかもしれないが、ライトにとっては真剣な悩みである。

だが、雪の急速解凍のためにユグドラツィの近くで火を使うというのも、それはそれで大問題だ。万が一にもユグドラツィの身体に火が燃え移ったら、困るどころの話ではない。

一人うんうんと悩むライトに、ユグドラツィが声をかける。

『大量の氷ならともかく、雪くらいなら大丈夫ですよ。ゆっくり解けていくのを幹から味わうのもまた風情があって良いものです』

「……そうですか? ツィちゃんがそう言うなら……じゃあラウル、塊のままでいいからツェリザークの雪をツィちゃんの幹と根元の境目あたりに置いてあげて」

「了解」

ライトの指示に従い、ラウルが空間魔法陣を開きツェリザークの雪を取り出す。ラウルの股下あたりまである大きな雪玉だ。

その大きな雪玉を、片手でヒョイ、と持ちながらユグドラツィの幹近くの根元に置くラウル。

雪玉が転がり落ちないよう、少し窪んだところに置いてからその上に少し小さな雪玉を乗せる。まるでというか、まんま雪だるまである。

ラウルがユグドラツィのおやつ?の雪だるまを用意している間に、ライト達も自分達のおやつの用意をする。

レオニスが空間魔法陣からテーブルと椅子を出し、ライトがアイテムリュックからラウル特製カスタードクリームパイと茶色のぬるぬるドリンク入り珈琲を三人分、そしてフォル用のおやつとして好物の木の実などを皿に乗せて出していく。

全ての用意が整ったら『神樹とともに過ごすお茶会 in カタポレンの森』の始まりである。

「「「いっただっきまーす」」」

ちゃんと手を合わせてからおやつを食べ始めるライト達。

ライトが出したカスタードクリームパイは、ライトが好きな時にいつでもどこでもおやつを食べられるようラウルに作ってもらった品である。サクサクとしたパイの中に優しい甘さのとろりとしたカスタードクリームが包まれている。

ライトがラウルにおねだりして作ってもらったメニューだ。

「おー、このパイ美味ぇな。ラウルが作ったやつか?」

「うん、ぼくがラウルにお願いして作ってもらったのー」

「外で食べるにはちょうど良いな。一人なら皿も出さずにそのまま手で持って食えるし」

「そうそう、ぼくも外で手軽に食べられるようにと思ってラウルにお願いしたんだ」

「よし、ラウル。俺にもこのパイ百個作ってくれ!」

「おう、材料費をくれるなら作ってやるぞ。手間賃としてちょっと多めに色を付けてくれるとなお良いがな」

ラウル特製カスタードクリームパイが気に入ったレオニス、自分にもおやつ用に作ってくれとラウルに頼む。

その後『一個あたり20Gでいいか?』『んー、もうちょい!』『じゃあ30Gでどうだ?』『よし、乗った!』等々、おやつ交渉が二人の間で順調にまとまっていく。

何とも長閑な光景である。

そんな中、ライトがふとユグドラツィに声をかける。

「ところでツィちゃん。ぼく、ツィちゃんに聞きたいことがあるんですが」

『何ですか?』

「ぼく、神樹に詳しいとある人から『この世界には六本の神樹がある』と聞いたんですが」

『ほう、それはまた興味深い話ですね。人族の中にも私達神樹のことに詳しい者がいるのですか』

ライトが職人の街ファングで出会った杖職人、ユリウスから聞いたことをユグドラツィにそのまま尋ねる。

ユグドラツィも己のことを噂されていると聞き、興味深そうな声で受け答えしている。

「ぼくは神樹族というと、ツィちゃんと八咫烏の里にいるシアちゃんしか知らないんですが。ツィちゃんは他の神樹のことは知っていますか?」

『もちろんですとも』

「もし良ければ、他の神樹の話を聞かせてもらえますか?」

ライトの質問にユグドラツィは快く応じ、ゆっくりと語り始めた。