軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1782話 飛行ショー観戦

スライムショーが終わり、イヴリン達とも別れて家路につくライト達。

公国生誕祭中は夜でも露店が出続けていて大賑わいなのだが、さすがに子供連れで夜に出歩くのは憚られる。

それに、今日は朝からずっと出かけ通しなので早々に家に帰るのだ。

道中ではスライムショーの素晴らしさに興奮冷めやらぬライトとマキシが、シャーリィに礼を言ったりラーデに感想を問うたりしていた。

「今年のスライムショーも、すっごく楽しかったね!」

「はい!シャルさん、僕の代わりにラーデ君といっしょにいてくれて、本当ありがとうございました。おかげで僕も、ライト君達といっしょにスライムショーを楽しむことができました!」

「いえいえ、どういたしましてー。私もラーデ君といっしょに上空でショーを見てたけど、本当にすごかったわね!」

「ラーデもスライムショー、よく見えた?」

『うむ。スライムに、よもやあのような素晴らしい立ち回りができるとはな……正直なところ、我の予想をはるかに超えていた。スライムとは有能な生き物だったと知ることができて、実に有意義なひと時だった』

「そっか、ラーデも楽しめたなら良かった!」

ラーデもちゃんとスライムショーを見て楽しめたことに、ライトが破顔して喜ぶ。

ラーデはいつものように堅苦しい口調だが、実はシャーリィとともに上空にいた時は身を乗り出すようにして地上で行われているショーを見ていた。いわゆる『ワクテカ状態』というヤツである。

それは、悠久の時を生きるラーデであっても初めて見る景色。

食い入るようにスライムショーを見ているラーデに、シャーリィもフフッ、と笑いながら心和んでいた。

「ホーント、公国生誕祭って楽しいわね!」

「明日のレオニスさんのイベントも楽しみですねー!」

「ご主人様の腕相撲大会、せっかくだから俺も一回だけ挑んでみるか」

「え"ッ!? ラウルとレオ兄ちゃんの直接対決!? 何ソレ、すっごく楽しみー!」

『ほう、大家さんと執事の対決か。それは我も楽しみだな』

夕暮れ時のラグナロッツァの街を、のんびりと歩きながら話に盛り上がるライト達。

明日は公国生誕日。生誕祭二日目も存分に楽しむためには、きちんと休息を取って英気を養わなければならない。

ライト達は終始楽しげに会話を交わしながら、ラグナロッツァの屋敷に戻っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

翌日の一月十七日。

この日はアクシーディア公国の建国記念日当日にして、公国生誕祭二日目である。

朝から建国記念日を祝う花火の音が数分置きに絶え間なく続く。

初日以上にけたたましいが、パン、パン!パパパン!と景気良く鳴り響く乾いた音は、弥が上にも公国生誕を祝う気分を盛り上げてくれる。

ライトが午前七時に食堂に行くと、ラウル達三人が既に席についていた。

「皆、おはよーぅ」

「おはよう」

「おはようございます!」

「おはよーぅ♪」

朝の挨拶を軽やかに交わすライト達。

それから皆で朝食を摂り、午前九時半まで各自自由行動とした。

自由行動といっても、全員カタポレンの家に移動したのだが。

ライトはカタポレンの森で魔石回収ルーティンワークを行った後、カタポレンの家のプランターで薬草栽培の準備に勤しむ。

昨日イヴリン達と行った『薬草育成セミナー』で得た知識を早速実践するためだ。

ラウルはカタポレンの畑でマキシとともに収穫や手入れを行い、シャーリィは畑の隅にある四阿でラーデと楽しそうにお話をしている。

ラウルは畑の収穫をサクッと済ませていて、ライトがルーティンワークから帰ってきてからライトのプランター作りなどを手伝っていた。

そうして時間はあっという間に過ぎ、九時半にライト達はラグナロッツァの屋敷に移動した。

十時から始まる公国生誕祭の目玉行事の一つ、竜騎士団と鷲獅子騎士団の飛行ショーを観るためだ。

ライト達四人とラーデは屋敷の屋上に移動して、皆で観戦の準備を始めた。

まずラウルが椅子を四脚出して、ラグナ宮殿に最も近いところに椅子を置く。

そしてそれぞれに小さなテーブルや温かい飲み物、ひざ掛けなども用意した。

これで飛行ショー観戦の準備は万端である。

ちなみにラーデの席はシャーリィの膝と決まっているらしいので(シャーリィ談)席は設けられていない。

「今年はきっと、鷲獅子騎士団の人達も大活躍するだろうねー」

「ああ、そうだな。ご主人様の話によると、あの後鷲獅子騎士団の連中も足繁くコルルカ高原に通っているらしいからな」

「コルルカ高原って、金鷲獅子が住んでいるんだよね? いつか僕も金鷲獅子に会ってみたいなぁ」

『我もあれ以来、アウルムに会っておらんからな……そのうち大家さんに、またアウルムのもとに連れて行ってもらえるよう頼んでみるとするか』

「えー、何ナニ、皆金鷲獅子に会ったことあるのー?」

飛行ショーが開始されるまで、のんびりと会話するライト達。

そうこうしているうちに、ラグナ大公の挨拶が始まった。

『昨年このラグナロッツァは、未曾有の危機に襲われた。だが、官民一丸となり無事乗り越えることができた』

『こうして例年通り、公国生誕祭を迎えられたことを本当に嬉しく思う』

『……では、我が国の誇る二大騎士団、竜騎士団と鷲獅子騎士団の勇姿をとくと見よ』

『我等アクシーディア公国に、 永久(とこしえ) に栄光あれ』

ラグナ大公の祝辞が締め括られた途端『おおおおおッ!!』という割れんばかりの歓声が、庭園に集まった民衆から沸き起こる。

これも建国記念日当日の風物詩だ。

その後しばらくしてから、竜騎士団及び鷲獅子騎士団の飛行ショーが始まっていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ラグナ大公の挨拶が終わり、民達の割れんばかりの歓声とともに飛行ショー開始を告げるファンファーレが高らかに鳴る。

そして鷲獅子騎士団の飛行ショーから始まった。

ラグナ宮殿背後から現れたのは三十頭の鷲獅子と、鷲獅子の背に乗り手綱を取る鷲獅子騎士である。

「おおー、今年は去年の倍の鷲獅子騎士が出ている!?」

「こりゃまた気合い入ってんなぁ」

「うわぁー、動きも去年とは比べ物にならないほど機敏になってるね!」

『あの者達も、コルルカにいるアウルムのもとで精進し続けたのだろうな』

「すっごく滑らかな飛び方ね……まるで空の上で華麗な舞を踊っているようだわ!」

鷲獅子騎士達の勇姿に、ライト達全員が惚れ惚れとしながら観ている。

アルフォンソ率いる鷲獅子騎士団が、ディラン達竜騎士団の目覚ましい成長に愕然としたのはちょうど一年前のこの飛行ショーでのことだった。

ディラン達は竜の女王である白銀の君に直々に扱かれ、両騎士団の実力が大きく乖離してしまったからだ。

その後鷲獅子騎士団は冒険者ギルドにレオニスに個人指名の依頼を出し、マスターパレンの快諾を経てレオニスの協力を得た。

コルルカ高原での遠征では念願の金鷲獅子との邂逅を果たし、さらには金鷲獅子に『アウルム』という名付けまで行なった。

こうした紆余曲折を経て培った鷲獅子騎士団の実力は、間違いなく飛躍的に成長していた。

そして鷲獅子騎士団が空に飛び立った後、しばらくしてから今度は竜騎士団が出てきた。

こちらも三十騎の飛竜が出てきて、華麗かつ緻密な連携を披露している。

「わぁー、竜騎士団は今年もすごいね!」

「ああ、あいつらも未だにシュマルリとの往復を欠かさないらしいな」

「飛竜をあんなにも自在に操るなんて……本当にすごいですね!」

『うむ。あれ程の一体感は、一朝一夕で身につけられるものでない。弛まぬ努力の賜物であろう』

「……でも、何だかちょーっとすご過ぎない?」

「「「『………………』」」」

最初のうちこそ大はしゃぎしていたライト達だったが、シャーリィのおずおずとした感想をきっかけに黙り込んだ。

確かにそれはシャーリィの言う通りで、竜騎士達の飛行には『華麗』とか『力強さ』などという言葉ではもはや言い表わせない程の、鬼気迫るような気合いや気迫がこれでもか!というくらいに感じられたからだ。

「……これ、昨日ラーデが竜騎士団を直接訪問して激励したせい、かな?」

「多分な……」

「何というか……鷲獅子騎士団が気の毒になってきました……」

『うぬぅ……アウルムがこれを見たら、文句を言われそうだな』

「何だかよく分かんないけど、ライバルに差をつけられるのは悔しいわよねー」

ぽつりぽつりと所感を漏らすライト達。

昨日ラーデがライト達とともに飛竜専用飼育場を訪れ、竜騎士達に直に礼を言い励ました。

その鼓舞がこんなにも凄まじい効果を発揮するとは、夢にも思っていなかったのだ。

そしてその後、鷲獅子騎士団がさらに足繁くコルルカ高原に通い詰めることとなったのは言うまでもない。