軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1757話 謎の巨竜

「ぇ……何、あの光」

「あれ、ラーデの寝床がある方だよな?」

「つーか、とんでもねー魔力の塊がいるぞ……」

『………………』

ライト達は、家の近くに現れた淡い緑色の光を見ながら戦慄する。

今朝出かけるまでは何ともなかったのに、出先から帰ってきたら家の周辺が謎の光に包まれていたのだから、びっくり仰天どころの話ではない。

そしてそれはライト達の家から非常に近い場所で発生しているらしく、方角で言えば南側。

療養中のラーデの身体が大きくなっていっても問題なく過ごせるように、かなり広めに切り拓いた平地がある方向から淡緑色の光が出続けている。

そこにライト達の知らない何者かがいるかもしれない、という非常事態にライト達が戦慄する中、唯一ラーデだけは非常に渋い顔をしていた。

『あれは……メテオリタだ』

「え"ッ!? ラーデのお嫁さん!?」

「……そういやさっき、ライトがラーデに聞いたメテオリタの特徴の中に『全身が淡い緑に輝いていて』ってのがあったな……」

「何でラーデの嫁さんがここに来てんだ!?」

『それは我にも分からぬ。とりあえず、あちらに行って確認するのが先決だ』

「そ、そうだな……」

あの淡い緑色の何かがラーデの妻、メテオリタかもしれないという話にラーデ以外の三人が泡を食っている。

しかし唯一冷静なラーデの言う通り、まずは現場を見てからでないと始まらない。

四人は早速ラーデの寝床として開拓したエリアに向かった。

そうした四人の目に飛び込んできたのは、うつ伏せ状態で寝ている赤茶色の鱗を持つ巨大な竜だった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライト達の目の前に、赤茶色の鱗に淡い緑色のオーラを全身から放つ竜のような何者かがいる。

その身体はとても大きく、パッと見では体長が何メートルあるのかすらよく分からない。

そしてその何者かは、ラーデの寝床でうつ伏せになりながらスヤスヤと寝ているではないか。

全てが想定外の事態に、全員がただただ呆然と立ち尽くしていた。

ただし、その中でライトだけは別の感慨に浸っていた。

『この色、この形、やっぱメテオリタだ!』

『てゆか、実物のメテオリタ、デカ過ぎ!こんなデカいの!?』

『こんなデカい魔物、人間が束になってかかったところで倒せる訳ねーじゃん……やっぱりゲームはゲームでしかないんだな』

ライトの記憶の中にある、BCOのレイドボスの一つ『憤竜メテオリタ』。

今目の前にいる謎の竜と完全一致していて、本物のメテオリタと邂逅できたことに内心でものすごく歓喜していた。

そうして初めて見る竜のような何者かの前で、しばしぽけーっ……と謎の竜を見上げていたライト達。

しかし、次第に我に返り小声でゴニョゴニョと話し始めた。

「ラーデ……これ、やっぱりラーデのお嫁さん……だよね?」

『うむ……これは紛うことなき我が妻、メテオリタである』

「何でラーデの嫁さんがここに来てんだ? ファフニール達の話だと不思議の森に帰ってくるって話じゃなかったか?」

『それは我にも分からぬ。これの口から直接理由を聞いてみないことには何とも言えぬ』

「じゃあ、起こして聞いてみるか? ……って、気持ち良く寝ているところを叩き起こすのは忍びないが」

『できればこのまま寝かせといてやってくれ。これの故郷は遠く離れた異星なのでな、長旅で疲れて寝ているのかもしれぬし』

「そうだな……」

矢継ぎ早に飛んでくるライト達の質問に、ラーデが淡々と答えている。

謎の竜がラーデの妻メテオリタで確定したのはいいが、何故不思議の森ではなくこのカタポレンの森に現れたのかが皆目分からない。

その理由をすぐにも知りたいところだが、せっかくだからこのまま寝かせてやってほしいというラーデのさり気ない気遣いも理解できる。

三人が納得しかけたところで、ラーデがとんでもないことを明かした。

『ただ、これは眠るのも長くてな。次に起きるのは十日後とか一ヶ月後かもしれんが』

「何ッ!? そりゃ困る、もしラーデの嫁さんの寝相が悪かったら、寝返り一つで俺達の家もろともぺしゃんこだぞ!?」

「俺も困る!この緑色の光が四六時光り続けていたら、畑で作っている野菜や果物にどんな影響が出るか分からん!」

『うぬぅ……確かにそれもそうだ』

いつ起きるか分からない、というラーデの話にレオニスとラウルが速攻で抗議した。

レオニスの主張、メテオリタの寝相に関する危惧も尤もだし、特にラウルの言い分『農作物に影響が出たら困る!』というのはラーデも無碍にはできない。

ラウルがこのカタポレンの家の周辺の畑で作っている野菜や果物。その有用性は、ラーデもよく知るところだ。

ラウルが作る美味しい野菜や果物は、人族のみならずオーガや八咫烏、ひいては属性の女王達や神殿守護神までも虜にしてやまない逸品ばかり。

それどころかラーデの子供達、ファフニールにリンドブルム、気難しいサマエルですら美味しいと認めたくらいだ。

そしてラーデ自身、毎日毎朝ラウルの収穫の手伝いをしてはその都度ご褒美として、美味しい林檎や桃を食べさせてもらっている。

手ずから世話をした農作物の成果、その味は何物にも代え難い幸福感を与えてくれる。

こうした平和なひと時、至福の時間と日常が壊されてしまうかもしれない―――これはラーデにとっても決して他人事ではなかった。

『仕方がない、これには悪いが起きてもらうとしよう』

「そうしてもらえると助かる……って、どうやって起こすんだ?」

『とりあえず、我が声をかけてみよう』

「そんなんで起きるのか? ……まぁ、何事もやってみないと分からんとは思うが」

『其方達はここで待っててくれ』

「分かった」

意を決して謎の竜のもとに向かうラーデ。

ふよふよと飛んでいく様を、ライト達三人は固唾を飲みながら見守るしかなかった。

そうしてメテオリタらしき何者かの前に浮くラーデ。

その小さな手で何者かの頬を触りつつ声をかけた。

『メテオリタ、どうした。こんなところで寝ていると、風邪をひいてしまうぞ』

『…………ッ!?!?!?』

ラーデが囁いた、ほんの数言の言葉。

それは決して大声ではなく、むしろ小さな声だったのだが。

その言葉に巨大な何者かがビクンッ!と大きく反応して飛び起きた。

その拍子にラーデが思いっきり後方に吹っ飛ばされかけたが、レオニスが咄嗟に飛んでラーデを右手でキャッチして事なきを得た。

その間何者かはキョロキョロと周囲を見回している。

目は半開きで時折フガフガという鼻息も漏れていたので、おそらくは寝呆け眼状態だと思われる。

そのうち視界にラーデを捉えた何者かの目がギラッ!と光った。

そして開口一番、ラーデの名を呼んだ。

『ラー君!会いたかったわ!』

ラーデの妻メテオリタがサイサクス世界に降臨したことが確定した瞬間だった。