軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1709話 心尽くしの贈り物とレオニスの願い

ラーデと一頻りキャッキャウフフ♪したライト。

ふと我に返り、レオニス達の方に向かって声をかけた。

「じゃあ、次はぼくの番だね!……って、大トリを務めるような良い物なんて用意できてないけど」

ライトが申し訳なさそうにしながらも、アイテムリュックからいろいろと取り出してはレオニス達の前に置いた。

「ラウルにはコレ、はい!」

「おお、こりゃ何だ?…………料理のレシピか?」

「うん!ラグーン学園の図書室にも、料理の書籍がいくつかあるんだけどさ。その中で、ラウルが好きそうなのとか興味を持ちそうな料理をいくつか選んで書き写してきたんだ」

「そりゃありがたい!俺の場合、ほとんど独学だからな……ちゃんとした書籍から学べる機会なんてこれまでなかったから、このプレゼントはすごく嬉しい」

「喜んでもらえてよかった!……って、独学でここまで美味しいものを作れちゃうラウルの才能の方がすごいよね!」

ラウルへのプレゼントは、料理のレシピを書き写して一冊にまとめた風のレシピノート。

ライトが解説していた通り、ラグーン学園の図書室に置いてある料理本を書き写したものだ。

ライトはラグーン学園での昼休みをほとんど図書室で過ごしているが、最近ではラウルへのクリスマスプレゼントのためにレシピの書き写し作業に没頭していた。

「おお、こりゃすげぇな……どれも一度は作ってみたいと思っていたものばかりだ」

「ラウル、羽衣作りが一段落してからでいいから、どれか作ってみてね。でもって、ぼく達にご馳走してね!」

「おう、任せとけ」

ライトが選んだメニューは『手打ちうどん』『手打ち蕎麦』『金平糖』『パンナコッタ』など十種類以上あり、他にも『カレーのスパイスの一覧表』といった、実にラウルが好きそうな情報がぎっしりと詰め込まれていた。

ノートをパラパラと捲るラウルの目は、これ以上ない程に輝いている。

「マキシ君へのプレゼントはコレ!」

「これは…… 鏨(タガネ) 、ですか?」

「うん。去年のクリスマスに、オリハルコンゴーレムの鑿をプレゼントしたでしょ? それと同じシリーズの鏨だよ」

「うわぁ……すっごく嬉しいです!ライト君、こんなに素敵なプレゼントをありがとうございます!」

ライトからのプレゼント、鏨の片切、毛彫り、丸毛彫りの三本セット。

それらは彫金や石留めに欠かせない工具。

昨年のクリスマスに続き、今年もマキシが最も必要とする品を選んだのだ。

「これも、あのルティエンス商会で買ったんですか?」

「そそそ、こないだルティエンス商会に買い物に行った時にね、買ってきたんだー」

「あのお店、ホントに良い品がたくさんありますよねー。ライト君が贔屓にするのも分かりますー」

「アハハハハ……そう言ってくれるのは、ラウルとマキシ君とハリエットさんくらいだけどね」

ラウルに負けないくらいに目をキラキラと輝かせながら、プレゼントされた鏨を見つめるマキシ。

去年のプレゼントのオリハルコンゴーレムの鑿が甚くお気に入りなので、きっとこの鏨も愛用してくれるに違いない。

そしてラーデには帆布製の肩掛け鞄。

本当はリュックとか作ろうかと思ったのだが、ラーデはその背に羽毛の翼が生えているのでリュックは非常に使い難そう……ということで断念したのだ。

そのことをライトが正直に伝える。

「ラーデには肩掛けの鞄ね!ホントはさ、ぼくとお揃いのリュックにして、レオ兄ちゃんにアイテムリュック化してもらおうかと思ってたんだけど……ほら、ラーデの背中には翼があるでしょ? それだとリュックなんて使いにくいだろうから、リュックはやめて肩掛け方式にしたの」

『ン? 我の翼は極小にもできるぞ?』

「え"、マジ?」

『マジである』

ラーデの思いがけないカミングアウト?に、ライトだけでなくレオニス達も目を丸くして驚いている。

ラーデ曰く『場所によっては、この翼が邪魔になることもあるだろう? そうした場面に出食わしても対処できるよう、我の背の翼は握り拳程度にまで小さくできるのだ』『というか、それくらいのこともできずに右往左往するなど皇竜の名折れ。この程度は出来て当然』とのこと。

そう言いながらラーデは己の翼を小さくしていく。

実践してみせたそれは、確かにラーデの握り拳大程のサイズだった。

これなら確かに洞窟などの狭い場所にも容易に入れるし、リュックも余裕で背負えるだろう。

さすがは皇竜、このサイサクス世界で彼に行けない場所などないのである。

「じゃあさ、また次にリュックをプレゼントするからさ、そしたらぼくとお揃いにできるね!」

『うむ。その日を楽しみにしておるぞ』

「レオ兄ちゃん、そしたらラーデのリュックもアイテムリュックにしてね!」

「……ン? ぉ、ぉぅ、いいぞ。さっきラーデには空間魔法陣を教える約束をしたが、ありゃまたそれなりに魔力を使うからな。今のラーデには、空間魔法陣よりアイテムバッグの方が都合もいいだろ」

ライトのお願いを快諾したレオニス。

確かにレオニスの言う通りで、まだ完全回復しきっていない今のラーデに空間魔法陣を使わせるのは、彼の身体に多少なりとも負担がかかるだろう。

それよりは、魔宝石で使用魔力を賄うアイテムバッグ形式の方が絶対に楽なはずだ。

しかし、それはそれとしてレオニスの挙動が何故か不審になっている。

その原因は、レオニスの前に置かれたライトからのプレゼントだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトからもらったばかりのクリスマスプレゼント———咆哮樹の実を右手のひらの上に乗せながら、目を丸くしてじっと凝視しているレオニス。

その眼差しは、信じられないものを見るかのような目つきだった。

「な、なぁ、ライト君よ。これ……咆哮樹の実、だよな?」

「うん、正解!さっすがレオ兄ちゃん、これが何だか一目で分かるなんて。やっぱレオ兄ちゃんの冒険知識はすごいね!」

「ぉ、ぉぅ、お褒めに与り光栄だ……つーか、何でこんな貴重なもん持ってんの?」

「これね、転s……じゃね、旧教神殿跡地からちょっと東に行くと咆哮樹が出てくるんだよね。そこで拾ったの!」

「ひ、拾ったって、お前……確かにあの一帯は咆哮樹がうようよといるが……咆哮樹の実なんて、あの辺りでもそう簡単に拾えるもんじゃねぇぞ……?」

ニコニコ笑顔でレオニスへのプレゼントの出処を語るライト。

その途中で、旧教神殿跡地の正式名称である『転職神殿』と言いかけて、慌てて言い直したのはご愛嬌である。

今回ライトは、皆に贈るプレゼントに対してなるべく隠し事をせず、自分の力で取り揃えたものを贈ろう!と思っていた。

レオニスに対して贈った咆哮樹の実もその一つであり、ライトが実際に超大型咆哮樹からもぎ取った成果物である。

しかし、レオニスもまた知っている。

咆哮樹の実とは、超大型の咆哮樹からしか取れないものであり、決して小型や中級の咆哮樹では得られない貴重な品であることを。

とてもじゃないが、ライトのような十歳の子供が拾ってこれるような代物ではない。

明るい顔で説明するライトに対し、レオニスだけが終始戸惑っているのも当然であった。

オロオロとしているレオニスに構うことなく、ライトの解説はなおも続く。

「ほら、あの旧教神殿ってディーノ村の父さんと母さんの家の裏山にあるじゃん? ぼくは今でも月に一度は父さんと母さんの家に通って、家の空気を入れ替えたり掃除したり草むしりしてるんだけど。そのついでに裏山探索をしているうちに、あの旧教神殿にも行くようになってさ。そこでミーアさんやヴァレリアさんともお友達になったの!」

「ぁー、あのエルフの巫女と謎の魔女か……」

「そそそ、巫女さんと魔女さんね」

ライトが咆哮樹の実を得るに至った経緯を解説していく。

まずは旧教神殿跡地に出入りするようになった経緯。

ここまでは100%事実。ただし、本当の動機『転職神殿を見つけるため』という箇所は伏せているが。

「でね、旧教神殿に行く度に、回りの山を少しづつ散策しててさ。そのうちに、あの辺りにいる咆哮樹ともそこそこ顔見知りになって、枝や実を拾えるようになったんだ!」

「お前……咆哮樹と顔見知りって、一体どゆこと?」

ライトの信じられない解説内容に、レオニスはただただ呆然とする。

しかし、ここでレオニスははたととあることを思い出した。

それは、ライトがラグーン学園二年生の時の夏休みの宿題で出したという観察日記のことである。

ぁー、そういやオラシオンから聞かされた、デッドリーソーンローズの観察日記なんてもんがあったな……

オラシオン曰く『これがアサガオなんかの観察日記だったら、植物とも親密に会話できる想像力豊かな子、という評価になるんですけどねぇ……』って、そりゃもう特大のため息をつかれたもんな……

デッドリーソーンローズと友達になれるってんなら、咆哮樹とも友達になれるってことか?

……うん、そうだ、きっとそうだ。そう思うことにしよう!

グラン兄、レミ姉、あんた達の子は本当にすげーよな!

オラシオンとのやり取りを思い出していたレオニス。

何故か最後はライトの父母への賛辞に変遷していった。

それは現実逃避と思考放棄の意味合いが多分に強い気がするが。多分気のせいだろう。キニシナイ!

そして、ライトが咆哮樹の実をレオニスへのプレゼントに選んだ真意を語りだした。

「でさ、ヴァレリアさんから聞いた話なんだけど。この咆哮樹の実で身代わりの実を作ることができるんだって」

「何ッ!? それ、ホントか!?」

「ホントだよ、だってそう聞いたもん」

「マジかよ……身代わりの実は魔導具類の中でも最も価値が高くて、それだけにその製造方法は秘中の秘とされてるってのに……」

ライトの話に、レオニスが今まで以上に呆然とした顔になっている。

このサイサクス世界での身代わりの実は、魔術師ギルドで50万Gで購入することができる。

というのも、身代わりの実は魔導具の一種であり、それを作って世に出すのは魔術師ギルドの領分だからだ。

そしてその製造方法は、魔術師ギルド内でも極一部の者にしか知らされていない。身代わりの実が持つ効果とその価値を思えば、製造方法が外部に漏れることを良しとせず警戒、死守するのは当然のこと。

なのに、あの魔女―――ヴァレリアは、身代わりの実の作り方を知っているというではないか。

俄には信じ難い話だが、レオニスは内心で納得もしていた。

あの魔女は、コヨルシャウキのことを『コヨるん』と愛称呼び、亀裂の向こうに渡ったライトを取り戻すために交渉しに行ける程の人物だ。

それだけの能力を持っている者なら、身代わりの実の作り方を知っていても何らおかしくはないだろう……

そんなことをつらつらと考えていたレオニス。

ここでつい、と顔を上げて、意を決したようにライトに話しかけた。

「なぁ、ライト。今度俺もまた、旧教神殿跡地に行ってもいいか?」

「え? レオ兄ちゃんも旧教神殿跡地に行きたいの?」

「ああ。そのヴァレリアって魔女や、エルフの巫女さんと話がしたい」

「ンーーー、ミーアさんはいつでも会えるけど……ヴァレリアさんは気まぐれで忙しい人だから、行っても滅多に会えないよ?」

「それでも構わん。そのミーアって巫女にだけでも、あの時の礼を言いたい」

レオニスの願いを聞いたライトが、戸惑い気味に応える。

レオニスがヴァレリアやミーアに興味を示すのは、当然のことと言える。あのような朽ちた施設の跡地に、人が住んでいること自体が驚天動地なのだ。

しかし、転職神殿に常駐しているミーアはともかく、アポ無しで出向いてヴァレリアに会える保証などどこにもない。

ヴァレリアは文字通り神出鬼没で、勇者候補生であるライトですらいつでも会える訳ではないのだから。

だが、レオニスは真剣な眼差しでライトを見つめ続けている。

それは決して興味本位などではなく、レオニスが心から彼女達に礼を言いたいと思っているからだということがライトにもよく伝わってきた。

「……じゃあ、今度ぼくといっしょに旧教神殿跡地に行く?」

「!!……ああ、案内よろしくな!」

「そしたら、ぼくが冬休みに入ってからでいい?」

「もちろん!……ああ、そしたらその時にグラン兄とレミ姉の墓参りにも行くか」

「うん!」

ライトの承諾が得られたことに、レオニスの顔がパァッ!と明るくなる。

旧教神殿跡地とは、ライトが勇者候補生であるという隠された秘密に直結する場所。

未だ勇者候補生が何たるかを語りたがらないライトに、旧教神殿跡地の案内を頼んでも断られるかもしれない、とレオニスは考えていた。

だがその考えは杞憂であり、自負の真摯な思いをライトがきちんと受けとめてくれたことがレオニスには嬉しかった。

レオニスが自分の横の席に座るライトの頭をくしゃくしゃと撫でる。

「……さ、プレゼント交換も無事済んだことだし。今日は皆でコテージの風呂に入るか」

「賛成ー!ラウル、さっきぼくがお風呂に水を張っておいたけど、何分後にお風呂に入れる?」

「そうだな、十分も時間をもらえばいけるだろ」

「分かった、十分ね!その間にテーブルの片付けや着替えの用意をしておくから、お風呂の準備よろしくね!」

「おう、任せとけ」

皆でお風呂と聞き、ライトが張り切りながら喜んでいる。

コテージの風呂はとても大きくて、皆で入ると賑やかでとても楽しいのだ。

しかしその大きな風呂の水を、ラウルは十分もあれば適温のお湯にできるというのだから大したものだ。

火と炎の女王姉妹の加護を得た万能執事は、今日も超有能である。

その後ライト達はコテージの風呂に入り、皆で背中を流し合いしたり風呂上がりに牛乳やぬるぬるドリンクを飲んだりして、楽しいひと時を過ごしていった。