軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1708話 妖精と八咫烏の努力の賜物

「さて、お次は俺の番なんだが……」

レオニスの次にクリスマスプレゼント披露に立候補したラウル。

しかし、何故か空間魔法陣を開くなどの素振りが全くない。

その理由を、ラウルは席に着いたまま話し始めた。

「今度俺から皆に、天舞の羽衣を作ってプレゼントしようと思っているんだが……今はフラムに贈る羽衣を最優先に作っててな。皆の分はもうちょい先にさせてもらいたいんだ」

「今日ここに現物を出せないのは、非常に申し訳ないが……もう少し待っててもらえるとありがたい」

皆に向かって深々と謝るラウル。

そんなラウルに、真っ先に擁護したのはライトだった。

「ラウル、謝ることなんてないよ!だってフラムにあげる羽衣が最優先なんて、当たり前のことだもん!」

「そうだよ!フラム君だってラウルの羽衣を心待ちにしてるんだから!」

「だな。俺達の分なんていつでもいいし、いくらでも待てる。だから、これまで通りフラムへの羽衣作りを一番先に仕上げてくれ」

『うむ。皆の話を聞くに、朱雀は心身ともに深く傷ついているであろう。その傷を癒やすのが最優先なのは当然のことだ』

「皆……ありがとう」

ライトに続き、マキシやレオニス、ラーデもラウルの言い分に同意している。

ラウルが羽衣作りが苦手なことは、ライト達も知っている。

そんな苦手な作業を毎日何時間も黙々とこなしているのは、ひとえに炎の洞窟での事件で深く傷ついたフラムのため。

フラムが負った心の傷を少しでも癒やすために、ラウルは好きな料理や畑仕事を全て後回しにするくらい羽衣作りに打ち込んでいるのだから。

そして、ラウルからのクリスマスプレゼントに天舞の羽衣をもらえることを知ったライトが、とても嬉しそうな顔でラウルに声をかけた。

「てゆか、ぼく達にも天舞の羽衣をくれるなんて、すっごく嬉しい!ラウル、ありがとうね!」

「どういたしまして。フラムへの羽衣が完成したら、次はライトの分を作る予定だ」

「ホント!? 楽しみにしてるね!」

「ああ、小さなご主人様の期待は決して裏切らん。ライトにもマフラーサイズの羽衣を作ってやるから、気長に待っててくれ」

「うん!」

まだもらえてもいない羽衣に礼を言うライトに、ラウルも小さく微笑みながら会話している。

BCOではプーリアという妖精など出てこなかったし、天舞の羽衣などというアイテムも存在していなかった。

しかし、このサイサクス世界にはBCOには出てこなかった種族がたくさんいて、必然的に見知らぬアイテムも数え切れぬほどある。

さらに言えば、ラウル達プーリアだけが作れる天舞の羽衣には、敏捷性アップの効果があるという。

ポーション類やエーテル類、呪符のような消耗品は一回使ったら終わりだが、生地の一種である羽衣ならば身につけているだけで常時バフ効果が得られる。

これは何気にすごいことだし、ありがたいことでもある。

こうした未知の魔導具類を入手できるのは、ライトにとっても大きなメリットなのだ。

しかし、ライト達の和やかなやり取りの空気を読まない者がここに一人。

「ラウル、ライトの次は誰の分を作るんだ?」

「ンー……マキシ、ラーデ、ご主人様、の順かな」

「え"、何で俺が一番最後なんだよ」

「そんなん決まってるだろう。ご主人様が一番強いから一番後回しなんだよ」

「ぉ、ぉぅ、そうか……」

ラウルのプレゼントの順番を尋ねたのはレオニス。

そしてその回答にちょっぴり不満そうだったが、即答したラウルの答えを聞けば納得だ。

まずは冒険者登録したばかりのライトを優先し、その次にたくさんの人族がいる人里の中で正体を隠しつつ日々努力するマキシ。

ラーデはカタポレンの家にいる限りは安心だが、今はレオニスより弱いだろうからレオニスよりも優先して三番目。

ご主人様(レオニス) は今のまま放っといても十分に強いから、皆の後でも全然問題ねぇだろ!というラウル流ド正論により、レオニスは最後のどんじりに回された、という訳である。

一見全問正解に思えるラウルの優先順位付け。

惜しむらくはライトの位置。

強さ順で言えば、間違いなく八咫烏のマキシよりも今のライトの方が総合的な実力は上だろう。

しかし、ラウルの中でのライトは今でも『小さなご主人様』であり、大人が庇護してやらなければならない子供なのだ。

「ラウル、羽衣をもらえるのは楽しみにしてるけど、そんなに急がなくてもいいからね。ラウルだっていろいろと忙しいだろうから、あまり無理しないでね」

「ありがとうな。大丈夫、俺もフラムへの羽衣作りしていくうちに少しづつ上達してきているからな」

「そうなんだ。やっぱラウルってすごいね!」

「お褒めに与り光栄だ」

多忙なラウルを気遣うライトに、ラウルがドヤ顔で羽衣作りの上達を伝えている。

万能執事の数少ない苦手分野、羽衣作りまで達人級に上達してしまったらもはやラウルは向かうところ敵無しなのではなかろうか。

「またラウルが糸を作るところ、見てもいい?」

「もちろんだ。ライトももうそろそろ冬休みになるもんな」

「うん!冬休みになったら、ラウルの畑仕事とかいっぱいお手伝いするね!」

「おお、そりゃありがたい。よろしく頼むな」

「うん!」

フラムの次に羽衣作りをしてくれると言うラウル。

その気持ちがライトにはとても嬉しかった。

羽衣作りにおいては、糸作りも織るのも全てラウルが手作業で進めなければならないため、ライトが直接手伝えることはない。

しかし、他のこと―――畑仕事や家事ならいくらでも手伝える。

特にラウルの生き甲斐になりつつある畑仕事は、水遣り等で今でもそれなりに手伝っている。

貴重な品をプレゼントしてくれるラウルへの恩返しに、たくさんお手伝いしよう!とライトは心に誓ったのだった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「じゃ、次は僕のプレゼントを皆にお渡ししますね!」

プレゼント披露の三番手に立候補したのはマキシ。

マキシが空間魔法陣を開き、中から四つの小箱を取り出した。

そしてライトにはこれ、レオニスにはこれ、ラウルにはこっち、ラーデはこれ!と、他の四人の前にそれぞれ差し出した。

皆で早速中を開けると、宝石付きのアクセサリーが入っていた。

ライトの宝石はペリドット、レオニスにはスターサファイア、ラウルはシトリン、ラーデはガーネット。

ラーデは鱗の色で、他の三人は瞳の色でチョイスしたようだ。

「マキシ君、これはなぁに?」

「これはタックピンと言って、服や鞄などの布地ならどこにでもつけられるアクセサリーです」

「おお、そりゃありがたいな!」

ピンバッジに似たアクセサリー、タックピン。

タックピンとは、装飾部分と針・留め具が分かれるタイプのピンバッジのことを指す。

針を布に通して裏側の金具でしっかり固定するため、布地部分ならどこにでもつけられるというメリットがある。

するとここで、スターサファイア付きのタックピンをじっと眺めていたレオニス。

思ったことを正直かつ何気なく口にした。

「……ていうか、これ、セイ姉の研磨じゃないな?」

「さすがレオニスさん、一目で分かってしまうんですね!……そうです、これ、僕が初めて研磨した宝石なんです」

マキシがまだ言わないうちから、誰が宝石を研磨したのかを看破したレオニス。

その審美眼に、マキシが驚きつつも自らが研磨したものだと明かした。

それを聞いたラウルが、破顔しつつマキシに声をかける。

「マキシ、とうとう宝石を研磨させてもらえるようになったのか!良かったなぁ!」

「うん!皆へのプレゼントに宝石付きのタックピンを作りたいってカイさん達に相談したら、セイさんが『宝石研磨からやってみなさい』って言ってくれたんだ!」

マキシの腕の上達を喜ぶラウルに、マキシも照れ臭そうに応える。

正直なところ、マキシの研磨の腕はセイどころかカイやメイの足元にも及ばない。それは、レオニスに一発で見破られたことからも明らかだ。

しかしそんなのは当たり前のこと。

アイギスで働くようになって二年弱のマキシと、アイギスを十年以上切り盛りしてきた三姉妹では経験量からして全然違うのだから。

マキシが人里に住むようになって二年。

無事就職できたアイギスで、店内やお店の前の道路を掃き掃除したり、メイとともに接客担当などをこなしつつ彫金を基礎から叩き込まれた。

そうした日々の積み重ねと弛まぬ努力により、とうとう今回は宝石研磨までさせてもらえるようになった。

このことに、マキシの大親友であるラウルが喜ばない訳がないのだ。

ちなみにラーデのものだけは、タックピンではなくネックレスにしてある。

今のラーデは布類など全く身につけていないので、首や手などに着けるように、というマキシの配慮である。

「マキシ、こんな良いものをありがとうな。そしたら後で俺が、皆の希望を聞いて魔法付与を施そう」

「ありがとうございます!僕の方からも、後でレオニスさんにお願いしようと思ってたんです!よろしくお願いします!」

「おう、任せとけ」

レオニスからの申し出に、マキシが破顔している。

金属類や良質な宝石に魔法付与を施すのは、レオニスが得意とするところ。

マキシが宝石付きのアクセサリーをプレゼントに選んだのも、ラウル同様に皆の身の安全に少しでも役に立ちたい!という思いからだった。

ライトが早速ペリドットのタックピンを胸元に着けて、レオニスやラウルもそれに倣って各々の服に着けている。

レオニスは左手首、ラウルは襟元。

ラーデのネックレスは、一足先にアクセサリーを着け終えたライトが首にかけてあげている。

『おお、その宝石はライトによく似合っておるな』

「ホント? ありがとう、嬉しいな!ラーデのガーネットのペンダントもすっごく素敵だよ!」

『うむ。後でレオニスから空間魔法陣を教えてもらったら、これも失くさぬよう大事に仕舞っておくことにしよう』

「ラーデも空間魔法陣を教えてもらえていいなー。ぼくも早く空間魔法陣が使えるようになりたーい!」

マキシからのプレゼントを身に着けて、お互いに褒め合うライトとラーデ。

キャッキャウフフ♪と仲良く戯れている様子に、マキシを始めとしてレオニスやラウルも嬉しそうな笑顔で見守っていた。