軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1601話 友達との再会

楽しかったライトの夏休みはあっという間に終わり、ラグーン学園の二学期が始まった。

ライトはいつも通り徒歩で登園し、三年A組の教室に入る。

中には既に大勢の級友がいて、それぞれグループを作って楽しそうに話をしていた。

級友達の半分くらいが日焼けしており、夏休みを野外で楽しく過ごしたであろうことが窺える。

ライトの親友であるイヴリンとジョゼも結構日焼けしていて、浅黒い肌になっていた。

「あ、ライト君、おはよう!」

「おはよー!」

「皆、おはよう!元気にしてた?」

「うん!見ての通りよ!」

ライトの席の近くで、元気な声で朝の挨拶をするイヴリンとリリィ。

彼女達の横には、真っ黒に日焼けしたジョゼと全く日焼けしていないハリエットが穏やかな笑顔で立っていて、ライトを迎え入れてくれた。

「ジョゼ君、すっごく日に焼けたねぇ……今年もキャンプの講習会に参加したの?」

「うん。僕もライト君のように、本格的に将来冒険者になるための勉強を始めたんだ。……って、そういえばライト君、冒険者登録はもうしたの?」

「うん!誕生日当日にディーノ村で冒険者登録して、次の日から一週間の講座も受けてきたよ!」

「そっかー、いいなー。僕は十一月が誕生日だから、冒険者の講座を受けるにしても冬休みになりそうなんだよねー」

ジョゼの日焼け、それは昨年の夏休みと同じくキャンプの講習会に勤しんでいたからだった。

ジョゼがキャンプ=野外活動の練習を積極的にこなすのは、将来冒険者になることを見据えての学習。

ジョゼは子爵家嫡男だが、受け継ぐ領地もさしたる資産もないので、全て自分の手で未来を切り開かなければならないのだ。

「ところで、ディーノ村での講座はどんな感じだったの?」

「ンーとねぇ、薬草採取とかの野外活動とか、魔物の解体実践講座とか、すっごく楽しかったよ!」

「薬草採取はともかく、魔物の解体実践は怖そうだなぁ……」

「まぁねー、すっごく大きい灰闘牙熊の解体もしたからねー」

「灰闘牙熊……キャンプの講習会でも、狩ったウサギを捌いて食べたりはしたけど……さすがに熊はちょっと想像がつかないな……」

ライトが受けた『冒険者のイロハ講座』の講座内容を聞き、ジョゼの顔が心なしか曇る。

ジョゼが参加したキャンプ講習会でも、実際にウサギを狩ってその場で捌いて食べるなどかなり高等な野営実践をしたようだ。

しかし、ウサギと熊では何から何まで段違いなのも事実。

顔を曇らせるジョゼに、ライトが自分の意見を述べる。

「でも、冒険者になったら魔物と戦って倒すのは必須だし。倒した魔物をその場で解体して、野営しながら食事するのも当然だもん。魔物の解体だってできて当たり前っていうか、できなきゃ話になんないよね。場合によっては討伐証明部位だけ切り取ることもあるけど」

「だよねー……」

ライトが淡々と述べる事実に、ジョゼも同意するしかない。

そう、魔物の解体を怖がっていたら、とてもじゃないが冒険者になんてなれる訳がないのだ。

魔物の解体とは、ただ単に食糧を得るだけではない。

討伐証明部位の採取、そして素材を持ち帰るための下拵えにもなる。

特にレアな素材は、冒険者ギルドで高価買取してもらえる。

ライトやレオニスのように、アイテムバッグや空間魔法陣が使えれば一番良いのだが、それができない冒険者も多くいる。

そうした場合は、最も高価な素材をなるべくたくさん持ち帰れるようにするのがベストである。

「そしたらさ、ライト君。僕が十一月に冒険者登録して、冬休みに講座を受ける時にライト君もいっしょに来てくれる?」

「それはもちろんいいけど……既にディーノ村で講座を受けたぼくでも、二回目の講座って受けられるのかな?」

「それは大丈夫なんじゃない? だってライト君だって、今月冒険者になったばかりなんでしょ? だったら普通に新人冒険者として受けられると思うよ」

「そうだねー。……うん、そしたら今度クレナさんに聞いておくね!」

ジョゼの頼みに、ライトが一瞬戸惑っている。

ライトは既にディーノ出張所でクレアの『冒険者のイロハ講座』を受講済みの身。

この手の初心者向け講座を、二度も受けていいもんなのだろうか?と迷うのも当然であった。

しかしジョゼの言うことも尤もで、初心者が初心者向け講座を受けるのは当然の権利。

特に冒険者という、常に危険を伴う稼業は初心を忘れないためにも定期的に講座を受けるべきだ。

こうした男子達の会話に、横にいた女子達が苦笑いしている。

「ジョゼもライト君も、もうすっかり冒険者だよねー」

「うんうん。特に男子って冒険者が好きだよねー」

「ジョゼさんはともかく、ライトさんは仕方がありませんよ。だってライトさんの場合、保護者があの御方ですもの」

「まぁねー。てゆか、ジョゼも仕方がないっちゃ仕方がないかなー」

「うんうん。リリィやイグニスのように、おうちの商売を継ぐ訳じゃないからねー」

「皆さん、今から将来に備えてて本当にすごいですよねぇ……」

ライトとジョゼの冒険者談義に、女子三人が感嘆している。

するとここで、イヴリンがガバッ!とハリエットの方に向き直った。

「じゃあさ、ハリエットちゃんは将来何になりたい!とかあるの?」

「え? わ、私、ですか?」

「そう!だってハリエットちゃんは、伯爵家のお嬢様でしょ? そしたら将来『せーりゃくけっこん』とかするの!?」

「えッ!? せせせ政略結婚ですか!?」

政略結婚などというませた言葉を口にするイヴリンに、ハリエットが目を丸くして驚く。

イヴリンは生粋の平民なので、政略結婚なんて 柵(しがらみ) には一切無縁だ。

しかし、そうした言葉は平民の間でもたまに耳にすることもある。

それは高位貴族の結婚を報じる号外記事や、あるいは巷に広がる恋愛小説などの架空の物語だったり。

とはいえ、実際にはイヴリンと無縁の世界の話なので頭でっかちとなっているのは否めない。

興味津々な瞳で見つめてくるイヴリンに、ハリエットはただただオロオロとするばかりだ。

「え、えっと……私のお父様とお母様は、そこまで権力にしがみつく方々ではないので……私の意に添わぬ政略結婚を無理強いすることなど、ないかと思います」

「そうなんだー。てゆか、そうだよねー。ハリエットちゃんのお父さんとお母さんって、すっごく優しいもんね!」

「はい。それに私は娘で、伯爵家を継ぐのはウィルフレッド兄様ですから……兄様の結婚となると、多少は政略結婚の意味合いも含まれるかもしれませんが、それでも兄様の嫌がる相手と結婚させることは絶対にないと思います」

ウォーベック家の結婚の方針を静かに語るハリエット。

ウォーベック伯爵家の現当主であるクラウス、そしてその連れ合いである妻ティアナは心優しい両親であり、子供達の嫌がることは決してしない。

息子と娘、二人の意見を最大限に尊重してくれる、理解ある両親なのだ。

男子と女子、それぞれで違う話題で盛り上がっていると、教室の扉がガラガラッと開く音がした。

担任のフレデリクの登場である。

担任の入室に、子供達が急いで自分の席に走る。

フレデリクが教壇に就く頃には、子供達は全員自分の席に着席していた。

「皆さん、おはようございます」

「「「おはようございます!」」」

「皆の元気な顔が見れて、先生はとても嬉しいです。皆、充実した夏休みを過ごせましたか?」

「「「はーい!」」」

生徒達との再会を心から喜ぶ 担任(フレデリク) に、 生徒(ライト) 達もまた元気な声で応える。

こうしてラグーン学園の二学期が始まっていった。