軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1545話 おねだりと慰めと感謝の気持ち

「ぉ、ぉぅ……これは……アレだね……」

『主様ー、これは何ですかー?』

『パパ様、本が出てきましたー!』

『ライトさん、お気を落とさず……』

『パパ……これは、良い物?』

宝箱を開けるように、次々とミステリー箱を開けていくライト。

ミステリー箱は所有者以外の者は開封できないので、開封作業だけはライト自身が行わなければならない。

ミステリー箱を開けるライトの周りに、ヴァレリア他この場にいる全員が取り囲むようにして見守る。

そして箱の中身がライトの手によって取り出される度に、コレは何だ、アレは何だ、と囃し立てるように盛り上がっている。

ちなみにこのミステリー箱、開封して中身を取り出すと箱は瞬時に跡形もなく消え去る。

中身のゴミさ加減はさて置き、開封後に余分なゴミが出ないことだけは本当に素晴らしい仕様である。

そうして開封したミステリー箱四十三箱の中身、その内訳は以下の通りである。

・フラグメントデスペリア(片手武器)

・グランツワンド(両手武器)

・プリズムシールド(盾)

・ヴァイキングヘルム(防具/頭)

・トワイライトメイル(防具/体)

・粒子の両翼 (アクセサリー)

・昏き星界 (アクセサリー)

他雑魚アクセサリー 7個

・勇者ノ心得書 (スキル)

・無色のメモリークリスタル(スキル)

・赤の写本 (スキル)

・紫紺色の香炉

・漆黒の香炉

・エネルギードリンク 4個

・アーガイルチェックタイツ(ファッション/足)

・フレイムレッドアイ(ファッション/目)

・ごーれみゅマスク(ファッション/頭)

・キョンシー帽子(ファッション/頭)

・ギャングマスク(赤)(ファッション/口)

・サイレンスコート(ファッション/体)

・サイド編み込みポニーテール(髪型変更チケット)

・外はねロング(髪型変更チケット)

・シングルお団子(髪型変更チケット)

・目の色変更チケット(オッドアイ/緑×紺)

・テンプルナイト(称号)

・ツィタデッラ(称号)

以下雑魚称号 9個

この結果に評価をつけるとしたら、間違いなく『ハズレが多かった』である。

しかし、ライトはそこまで悲観していない。

もともと宝箱や福袋の類いは当たり外れがあるものだが、BCOのミステリー箱は当たりを一個引くまでにハズレを十個掴まされる覚悟が必要である、というのがライトの持論だ。

だが、今回ライトが開けたミステリー箱四十三個のうち、当たりと思えるものは五つあった。

これは、引き運が弱いライトにしてみたらものすごい快挙であった。

「皆、お疲れさま!」

『お疲れさまでしたー!主様、良いものはありましたか?』

「うん、少なくとも五個はあったよ!」

『それは良かったですね!きっとパパ様の日頃の行いが良いから、今回良いものが引けたんですね!』

「そ、そうかなぁ……? ルディにそう言われると、何だか嬉しいな」

『で、どれが大当たりなのですか?』

「えーとねぇ……これとこれと、あっちのアレとそれとこれ!」

大当たりを知りたがったレアの問いかけに、ライトがご機嫌な声でアイテムを指差しで教える。

ライトが当たりだと感じたアイテム。それは『フラグメントデスペリア』『プリズムシールド』『ヴァイキングヘルム』『勇者ノ心得書』『無色のメモリークリスタル』である。

「このフラグメントデスペリアは片手武器だから使いやすいし、盾のプリズムシールドと組み合わせると攻守のバランスが良くなるんだ」

『この盾、ゴツいですねぇ……』

『あちらの大きな杖は、使えないのですか?』

「ぁー、グランツワンドね……あれ、両手武器だからね。本当に両手で持たないと、持ち上げることすらできないから実はかなり不便なんだよね」

『そうなんですねぇ……今のパパ様は魔術師だから、剣より杖の方が良いかと思ったのですが……一概に良いとは言えないものなのですね』

「うん、魔術師でも剣や拳だけで十分イケるし。それに、実際のところ両手武器は片手武器より攻撃力高いけど、その分盾が使えなくなるから防御ステータスはかなり弱くなるんだ」

『それは困りますね!防御だってちゃんとしないと!』

「そゆこと」

興味津々な様子でアイテムを見つめたり、ライトに解説を求めるミーナ達。

フラグメントデスペリアは、青い剣身と剣の先端が赤く光っているのが特徴的な剣で、剣の根元に深紅の宝玉が埋め込まれている。

刀身だけで100cm近い長さがあるが、その見た目に反して重量は驚くほど軽い。これは、片手武器という設定がなされているからであろう。

攻撃力や取り回しやすさなどは、ライトの愛用の得物であるガンメタルソードと比べて二割ほど劣る。

しかし、予備武器としてなら十分御の字だ。

そしてルディが尋ねたグランツワンド。

杖型の両手武器で、杖の先端に大きな水色の宝玉がついている。

その宝玉の周りには、宝玉を支える金色の台座や二本の金色の輪が交差する装飾が施されていて、ちょっとした地球儀のような優雅さを漂わせる。

しかし、残念ながらライトに言わせればこれはハズレ。

確かに見た目は綺麗だし性能も高めだが、何が一番よろしくないかと言えば『両手武器』であること。この一言に尽きる。

今年の正月に、ルティエンス商会を訪ねた時の悪夢をライトは忘れていない。

その時に何気なく持たせてもらった両手武器『ハデスの大鎌』を片手で持った瞬間、ライトは大鎌を持ち続けることができなくなったのだ。

このことから『勇者候補生であるライトは、BCO由来の両手武器は 絶対に(・・・) 両手で持たなくてはならない』という無情な規則があることを知った。

それ以来、ライトの中では両手武器は使えないものとなり、選択肢から完全に外されるようになったのだ。

ちなみに今回引き当てた武器類、フラグメントデスペリアやグランツワンドをミーナやルディが持ってみようとしたが。彼女達には何をどうしても持ち上げることすらできなかった。

ヴァレリア曰く『戦闘を想定していない使い魔に、BCO由来の武器防具を装備させられる訳がない』とのこと。

『『そんなぁー……』』としょんぼりするミーナとルディに、ヴァレリアが慌ててフォローに回る。

「でもね、ミーナ達が使えないのはあくまでも『BCO由来の武器防具』であって、このサイサクス世界で作られた普通の武器防具なら身に着けられるはずだよ?」

『『ホントですか!?』』

「ホントホント、ヴァレリアさんは嘘つかなーい!だから君達もそんなに落ち込まないで、今度ライトパパに武器防具をおねだりしてプレゼントしてもらいなさーい」

『『はいッ!』』

ヴァレリアの懸命のフォローに、ミーナとルディのしょぼくれた顔が瞬時にパァッ!と明るくなる。

そしてヴァレリアの余計な一言を受けて、ミーナ達がキラッキラの目でライトを見つめ始めた。

二者の期待に満ちた眼差しに、文句など言えようはずもない。

ライトは言葉に詰まりながら約束した。

「うぐッ……う、うん、近いうちにぼくからミーナ達に何かプレゼントするね……」

『主様、ありがとうございます!』

『パパ様からのプレゼント、すっごく楽しみにしています!』

ライトからプレゼントをもらえることになったミーナとルディ、飛び上がらんばかりに喜んでいる。

ミーナとルディは、既に何度かライトのお供で魔物狩りを手伝ったことがある。

自分達の生みの親であるライトを守り、少しでも役に立ちたい、と常々思っている。

ミーナ達のそうした忠誠心を、ライトもよく知っている。

だからこそライトは、ミーナ達への武器防具のプレゼントを承諾したのだ。

そうしたライト達の会話に、レアも入ってきた。

『パパ、私にも何か武器をくれますか?』

「ン? レアも装備品が欲しいの?」

『はい。私もパパのお役に立ちたいです』

「そっか、ありがとね!……でも今は、その気持ちだけでいいよ。レアはまだ生まれてから日も浅いし、無理して戦ってレアが怪我したりする方が悲しいもの」

『…………はい』

レアに武器防具はまだ早い、と暗に諭すライト。

実際レアはまだ生後半年だし、ライトの魔物狩りに連れていくには幼すぎる。

だが、レアだって使い魔の端くれ。 生みの親(ライト) に尽くしたいと思う気持ちは誰にも負けないつもりだ。

姉(ミーナ) や 兄(ルディ) と違って、まだ自分はパパの役に立てない―――そう考えて目に見えて落ち込むレア。

そんなレアに、レアを抱っこしていたミーアが優しく声をかける。

『レア、そんなに慌てることはありませんよ。貴女だって、すぐに大きくなります。そして今よりもっと大きくなったら、ライトさんのお役に立てる時が必ず来ますから』

『……ミーア姉様、ホントですか?』

『ええ、本当ですよ。これまで私が貴女に、一度でも嘘をついたことがありますか?』

『ないです……』

ミーアの慰めの言葉に、俯いていたレアの顔が少しづつ上向いていく。

そしてここでライトも、レアに改めて声をかけた。

「レア、武器や防具をあげるのはもう少し先になるけど、レアにもちゃんとプレゼントを用意するよ。服につけるアクセサリーとかはどうかな?」

『ホントですか!?』

「うん。だって、ミーナやルディにプレゼントをあげてレアにあげないのは不公平だもんね」

『……ありがとうございます!パパの手作りアクセサリー、すっごく楽しみです!』

ライトの言葉に、レアが花咲くような笑顔になる。

何も戦うための武器防具だけがプレゼントではない。

戦闘には全く関係ない、着飾るだけのアクセサリーだって十分プレゼントたり得る。

ライトとレア、二人のやり取りに今度はヴァレリアが乱入した。

「あー、ライト君の手作りアクセサリー、いいなー。私にもちょーだい!」

「えー、ヴァレリアさんも欲しいんですかー? ヴァレリアさんなら、アクセサリーくらいたくさん持ってそうですが……」

「チッチッチッ、ライト君ね、考えてみてご覧よ? 私にプレゼントをくれるような人が、このサイサクス世界に一体どれだけいると思ってんの?」

謎のドヤ顔でライトを問い詰めるヴァレリア。

そこは決してドヤ顔できるような場面ではないと思うのだが。

しかし、ヴァレリアに友人と呼べるような存在がどれだけいるかと問われれば、確かに少なそうではある。

しかし、全くいない訳ではないこともライトは知っている。

「…………ロレンツォさん、とか?」

「あァン? ライト君だって、ルティエンス商会で売ってる品物知ってるでしょ!? ロレンツォ君にプレゼントのセンスを求めちゃイカンザキやろがえぃ!」

「じゃあ……コヨるんさん?」

「あれはビースリーのボスですしおすし!そりゃ確かにコヨるんだって私の友達だけど!それとこれは全然違ーう!」

「破壊神のイグニス君……」

「破壊神からもらえるものなんて、壊された武器防具の欠片くらいしかないじゃん!」

ライトが知るヴァレリアの数少ない友人を次々と挙げていくも、どれもヴァレリアのお気に召さずに撃沈する。

確かにどれも問題ありだが、問題ありな友人しかいない時点でヴァレリア自身にも大いに問題ありである。

しかし、そんな残酷な真実を告げるほどライトも鬼ではない。

興奮気味のヴァレリアがハァ、ハァ、と息咳切っているのを、ライトはライトでハァ……とため息をつきながら折れた。

「分かりましたよ……次にぼくが質問したい時までに、ヴァレリアさんへのプレゼントを用意しておきます」

「ホント!? ヤッターーー♪」

ライトからプレゼントをもらえることになり、ヴァレリアが小躍りしながら大喜びしている。

十歳の子供にプレゼントをねだる大人気ない魔女、と思うことなかれ。ヴァレリアだって一人の女のコ、なのである。

するとここで、ライトがすぐにクルッ!とミーアの方に身体を向き直した。

「もちろんミーアさんにもプレゼントを用意しますね!」

『まぁ、私の分も、ですか? そんな、お気遣いなさらずともよろしいのに……』

「いいえ、ミーアさんにはいつもお世話になってますから!そしてこれからも……ぼくが生きている限り、ミーアさんにはずっと厄介になりますし」

『厄介だなんて……私のこの生命は、勇者様のためだけに存在するのですから。ライトさんのお世話をして当然なのです』

ライトの気遣いに、最初のうちは遠慮していたミーア。常に謙虚で控えめな彼女らしい。

しかし、ライトがBCOシステムを活用する上で最も世話になるのは間違いなくミーアだ。

職業システムはライトが強くなっていく上で絶対に欠かせないし、その職業システムを担う転職神殿を切り盛りするミーアもライトにとっては必要不可欠な存在なのである。

その彼女に日頃の感謝を込めてプレゼントを贈るのは、気遣いなどではなくむしろ当然のこと。

それどころか、何故今までプレゼントの一つも贈ってこなかったのか、とライトは悔やむばかりだ。

「ミーアさん、ぼくは本当にミーアさんに感謝してるんです。……いえ、ミーアさんだけでなく、ミーナやルディ、レア、そしてヴァレリアさんにもすっごく感謝してます。だから、お願いです。皆への感謝の気持ちを表す機会を、ぼくに下さい!」

『……そこまで言われては、断ることなどできませんね。私も皆と同じく、ライトさんからのプレゼントを楽しみにしています』

「はい!そんな大層なものは作れないけど……でも、心を込めて作りますね!」

嫋かな笑顔で微笑むミーアに、ライトも嬉しそうに応える。

大量のミステリー箱の開封で大盛り上りしていた転職神殿は、いつの間にか和やかで温かな空気に満ち溢れていた。