軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1455話 プロステスの別荘の下見

ウォーベック伯邸で、賑やかで楽しい晩餐会を過ごしたライト達。

ライト達が帰る時にも全員で玄関まで見送りに来てくれた。

「ライトさん、明日からまたラグーン学園でお会いしましょうね」

「うん!また明日からもよろしくね!」

ライトがハリエットと楽しそうに会話している横で、レオニスやラウル、マキシもそれぞれ別れの言葉をかけられている。

「レオニス君、プロステスの別荘の件は早急に手配しておくので、是非とも期待していてくれたまえ」

「ああ、よろしくな」

「ラウルさん、新作のスイーツを作ったら絶対に教えてくださいね!」

「ああ、その時にはクラウスにも差し入れしてるだろうからな、そっち経由で連絡がいくだろ」

「マキシさん、アイギスの新作情報、心よりお待ちしておりますわ!」

「はい、カイさん達にもお伝えしておきますね!」

全員が和やかに会話していて、今日の晩餐会で親交を深められたことが手に取るように分かる。

そうしてライト達は、笑顔のウォーベック一族に見送られながら屋敷に帰っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

その後ライトはレオニスとともにカタポレンの家に帰り、明日から始まるラグーン学園の支度を済ませて早めに布団に入った。

そして布団の中で、この黄金週間の間の出来事を振り返る。

「くッそー、今年もすんげー過密スケジュール過ぎて、素材集めもギャラクシーエーテル作りも全ッ然できなかった……」

「でも、ティファレト温泉旅行とかすっごく楽しかったし。ココちゃんの初めてのお泊まり会も、出来たての新しいコテージに泊まれて良かった!」

「スタンプラリー回りもできたし、レインボースライム戦隊ショーも面白かったし……やっぱり黄金週間って楽しいな!」

「そしたら明日からまた頑張ろう……次の土日は、絶対に素材集めをするんだ…………」

九日間という長い休暇は、本当にあっという間に過ぎてしまった気がする。

それだけ充実した休暇だったということであり、心は存分に満たされつつも身体は子供なので休息を欲している。

休息を求める身体の欲求に抗うことなく、ライトの瞼はすぐに閉じて眠りに落ちていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうして再び平穏な日々に戻ったライト達。

ライトは毎日元気にラグーン学園に通っているし、ラウルもラグナロッツァの温室やカタポレンの畑で存分に家庭菜園を楽しみ、マキシもまたアイギスで接客業をこなしながらアクセサリー作りの勉強に精を出している。

一方でレオニスは、新たに発生した案件対応に早々に追われていた。

黄金週間が終了してから四日後の木曜日。

レオニスはクラウスから連絡を受けて、プロステスに出向いていた。

冒険者ギルドの転移門で、ラグナロッツァからプロステスに移動したレオニス。

そのままプロステス領主邸に向かい、執務室でアレクシスと再会した。

「よう、アレクシス侯、四日ぶり」

「ようこそレオニス君!君も忙しいだろうに、わざわざこっちまで来てもらって申し訳ない」

「いやいや、例の別荘の内見ができるってんなら問題ない。俺も実際にこの目で見てから決めたいしな」

今日レオニスがプロステスを訪れたのは、クラウス経由でアレクシスから別荘を見に来てほしい、と要請されたからだ。

レオニスとしてはそこまで急ぐ案件ではないのだが、ウォーベック兄弟が何しろ乗り気なのと、彼らから『今年の夏休みが始まるまでには入居できるようにしておこう。そうすれば、ライト君も夏休みの間に遊びに来れるだろう?』と言われれば、それもそうかとレオニスも思うので要請に応じることにしたのだ。

「そしたら、早速今から見に行こうじゃないか。屋敷の鍵は私が預かっているので、今すぐ案内できるぞ」

「ン? アレクシスが直接案内してくれるのか? あんたこそ仕事が忙しいだろうに、いいのか?」

「いやいや、早めの昼の休憩と思えば何の問題もない。それに、レオニス君に勧める物件はここから二軒隣の近所だからな」

「それならいいが……」

プロステス領主自らが不動産物件を案内してくれるという厚遇に、レオニスが少しだけ戸惑っている。

しかし、アレクシスは全く動じることなく執務机の引き出しから鍵を取り出し、席から立ち上がった。

そして椅子の斜め後ろのコート掛けに掛けてあったコートを羽織りながら、なおも言葉を続ける。

「というか、君ほどの人物を領主自らが接待するのは当然だろう? それに、レオニス君への接待という名目で、私は書類仕事からしばし解き放たれる。まさに一石二鳥だ!」

「………………」

アレクシスの言い草に、レオニスがぽかーん……としている。

レオニスに勧めたい物件が近所にあるのは事実だし、今の時刻も午前十一時を少し回ったところなので、早めの昼の休憩と言われればその通り。

そして、レオニスという伝説の金剛級冒険者を接待するなら、プロステス領主である自分を置いて他にはいない!と言う彼の主張も真っ当なものだ。

しかし、アレクシスの本音は一番最後の『書類仕事からしばし解き放たれる』が最も重要なのではなかろうか。

そんなあざとさを匂わせながらも、ニカッ!と笑うアレクシス。

その屈託ない笑顔は、憎めないどころか愛嬌たっぷりに思えてくるから不思議なものだ。

これもきっと、アレクシス・ウォーベックという男の器の大きさなのだろう。

アレクシスの人たらしぶりに、レオニスがくつくつと笑い出した。

「クックックック……あんた、ホンット良い根性してるよなぁ」

「お褒めに与り光栄だ。天下無双のレオニス君に褒められたということを、今日の晩御飯の時に妻や子供達に自慢しなくてはな!」

「それ、自慢話になるのか?」

「もちろんなるさ!我が家は全員レオニス君とラウル君の大ファンだからな!」

「俺なんかより、ラウルのスイーツの方が好きなんだろ?」

「レオニス君よ、答えに詰まるような質問は勘弁してくれたまえ」

「アハハハハ!」

アレクシスの軽妙な返しに、レオニスが堪らず大笑いする。

流暢で巧みな話術は、さすがプロステス領主を長年務めるだけのことはある。

このプロステスが商業都市としてその名を轟かせているのも、ひとえに有能な領主一族と手腕があってこそなのだ。

そうして二人は領主邸の二軒隣にあるという空き家の邸宅を見に行くべく、執務室を後にした。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「…………これ、デカ過ぎねぇか?」

アレクシスが案内した屋敷の前で、建物を見上げながらレオニスが呆気にとられている。

レオニスの目の前に、デデーン!と聳え立つ三階建ての建物。

それは明らかにラグナロッツァのレオニス邸よりも大きくて立派なものだった。

そして立派なのは邸宅だけでなく、広大な庭園には噴水や様々な木々や草花が植えられている。

ただし庭園の方は、空き家となって以降そこまで丁寧な手入れがされていなかったようで、噴水は水がなく枯れていて植木類もところどころ荒れてはいるのだが。

予想以上の豪邸にレオニスが度肝を抜かれている横で、アレクシスが持ってきた鍵を用いて屋敷の正面玄関の扉を開けている。

「いやいや、ラグナロッツァにある君の家もこれくらいあるだろう?」

「いやいやいやいや、うちはこんなに大きくねぇって。つーか、俺んちは四人住まいなんだから、いくら別荘ってったってこんなに大きくなくてもいいぞ?」

「いやいやいやいやいやいや、レオニス君だって友人知人を招いてパーティーをすることくらいあるだろう?」

「いやいやいやいやいやいやいやいや、俺はそんなに社交的じゃねぇし。自分ちでパーティーなんてする訳ねぇだろう、貴族じゃあるまいし」

アレクシスが開けた正面玄関から中に入り、二人で中の設備や部屋を見ていく。

一階から三階の各階全てに風呂があり、しかも厨房まで全階に完備されている。

風呂も厨房も簡易的なものではなく、どの階も本格的かつ豪華で一階のものと遜色ない作りときた。

特にラウルがこれを見たら、狂喜乱舞するに違いない。

そして地下にもいくつかの部屋があり、それらは主に倉庫として使われていたようだ。

地下に降りる階段を歩きながら、レオニスが『座敷牢とかじゃねぇよな……』と内心警戒しつつ見ていたが、そうした使い方ができるような作りではなかったのが幸いだ。

屋敷に入ってから全ての階と部屋を見終えるまで、約四十分もの時間をかけて見て回ったレオニスとアレクシス。

一通り見終えたところで、アレクシスがレオニスに感想を尋ねた。

「どうだね、レオニス君。気に入ってくれたかね?」

「確かにすごい豪華な屋敷だってのは分かったが……この家、いくらで売りに出されていたんだ?」

アレクシスの問いかけに、レオニスは即答せずに屋敷の価格を尋ねる。

これだけの豪邸だ、購入するとなったら生半可な金額ではないことはレオニスにも分かる。

もしレオニスがこの豪邸を購入するとしても、本来の正当な評価価格を知っておきたいと思うのも当然のことだった。

「ンー……君に嘘をつきたくはないので、本当のことを言うが……当初の売値は、確か3000万Gだったかな。空き家になってから二年も買い手がつかなかったため、最近は2000万Gに値下げしたらしいが」

「あんた、こないだ俺には500万Gだけ負担してくれればいいって言ってただろう? 2000万Gのものを500万Gだけでいいってのは、さすがに安過ぎねぇか?」

アレクシスの答えに、レオニスがなおも疑問をぶつける。

いくらアレクシスがレオニスの別荘購入を熱望しているとしても、2000万Gのものを500万Gで売るというのは破格が過ぎるというものだ。

そんなレオニスの疑問に、アレクシスが真摯に答える。

「その辺の心配は要らない。この屋敷は前の持ち主が1500万Gで手放した物件なんだ。本当はもっと高値で、それこそ5000万Gとかで売りたかったようだが。そんな値段では、一般市民やそこら辺の貴族では到底手が出せないしな」

「あんた、やたらに詳しいな? ここを管理してる不動産屋と余程懇意にしてるのか?」

「そりゃ内情に詳しくもなるさ。屋敷を売ろうにも全ての不動産屋に断られ続けて、結局私のところに泣きついてきたのだからね」

「そ、そうなんか……」

アレクシスの話によると、この豪邸は土地家屋全て込みでアレクシスが買い取ったのだという。

その後ウォーベック家の傍系が経営する不動産業者に委託管理を任せたものの、未だに売れずにそのまま残っているらしい。

「長年近所の誼で付き合ってきた相手の頼みだから、私も仕方なく買いはしたが……長年買い手がつかないまま、不良債権化しても困るのだよ。何しろこれだけの豪邸だ、管理維持費も馬鹿にならんし」

「確かにな……でも、あんた達だって普通に使える家だろ? こんな近所にある訳だし」

「子供達はこの屋敷を欲しいとは言わんし、むしろ『使用人とかたくさん雇わなきゃいけないような金食い虫は要らん!』とまで言われたよ……」

「………………」

この豪邸を、子供達から『金食い虫』と断じられたアレクシスが遠い目をしながら呟いている。

実際これだけの豪邸を維持するとなると、最低でも五人以上は人を雇い入れなければならないだろう。

執事、下働きの侍女、料理人、庭師、そうした人達への給料を払い続けなければならないと思えば、アレクシスの子供達の『金食い虫』という評価は実に正しい。

するとここで、黄昏れていたアレクシスがクルッ!とレオニスの方に身体を向き直した。

「だが、レオニス君。君ならば、この屋敷を活かしてくれるだろう? 君にはラウル君という超有能な執事がいるし」

「いや、でも、さっきも言ったが……俺んちは四人家族で、こんなドデカい別荘はさすがに手に余るというか……」

「それとて心配ないさ。何も君の家族は、未来永劫四人で固定、という訳ではないだろう? この先君達四人が結婚して伴侶を得て、子供がたくさん生まれて大家族になってもずっといっしょに暮らせるぞ?」

「確かに……」

アレクシスの言葉に、レオニスも口に手を当てながら思案する。

妖精のラウルや八咫烏のマキシの結婚問題はともかく、レオニスとライトは結婚して子供も儲けるつもりではいる。

もし万が一、その願いが叶わず生涯独身を貫くことになったとしても、別の道もある。

それは『シェアハウスにしてアイギス三姉妹と住むこと』である。

アイギス三姉妹は常々『結婚はしない』『老後もずっと三人いっしょに過ごす』と公言している。

もしレオニスが結婚できなくても、幼馴染のカイ、セイ、メイと老後を過ごせれば毎日が楽しく過ごせるだろう。

何ならセイに「レオも、もしこの先もずーっと一生独身だったら、その時は私達といっしょに老後を過ごしましょうね!」と言われたくらいだ。

レオニスは、かつてセイとそんなやり取りを交わしたことを思い出しながら、小さく微笑む。

「……そうだな。孤児院のように、血の繋がらない同士で大人数で住むのも悪くはないな」

「だろう? そんな訳で、私としても是非ともレオニス君にこの物件をオススメしたいのだよ」

「分かった。そしたら500万Gで買わせてもらおう」

「おお、受けてくれるか!こんなに嬉しいことはない、そしたらすぐに執務室に戻って契約書を作ろう!」

レオニスが豪邸の購入意思を決めたことに、アレクシスの顔がパァッ!と輝く。

そして今すぐに売買契約を交わそうとするアレクシス。

せっかちのような気もするが、ここは『善は急げ!』ということなのだろう。

そうして二人は空き家の豪邸から出て、二軒隣の領主邸に戻っていった。