軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第138話 帰路と寄り道

雪の中で小一時間は遊んだであろうか。

存分に遊んで少しだけ疲れた様子のライトが、まずフェネセン達のもとに来て休む。

クレアもライトの様子が気になったのか、程なくしてライト達のもとに来た。

そしてアルとクー太は、まだまだ元気いっぱいに飛び跳ね回っている。さすが銀碧狼とドラゴン、体力はまだまだ有り余っているようである。

「ここで少し休んだら、そろそろツェリザークの街に戻りましょうか。ツェリザークに着く頃にはちょうどお昼ご飯の時間にもなりますし」

「そうですね、それがいいと思います」

「うぃうぃ、了解ー」

クレアからの提案に、ライトとフェネセンは頷きながら受け入れる。

「アルとクー太ちゃんはまだまだ元気いっぱいだね。仲良くなってくれて、本当に良かった」

「ええ、私としてもクー太ちゃんにアルちゃんのような素敵なお友達ができて、本当に嬉しいですぅ」

クレアは私服のベレー帽から綺麗なレースのハンカチを取り出し、本当に滲んでいた涙をそっと拭う。

ハンカチ入れる場所、そこなの?とライトは思うが、聞くだけ無駄というか野暮なのでそのままスルーすることにした。

「私、本当に今日ライト君の護衛としてここに来ることができて良かったですー。念願叶って『クー太ちゃんとアルちゃんの夢の二大天使対面企画・仲良く楽しくキャッキャッウフフしよう大作戦』をこうして間近で堪能できたんですから」

「それに、アルちゃんのもふもふブラッシングも体験させていただきましたし。クー太ちゃんにはない、あの美しくも輝かしい銀碧色の極上ふわもふ……やはりというか、当然と言うべきか、私の想像以上に素晴らしい手触りは究極の癒やしでした」

「ああ私ってば、何て幸せ者なんでしょう!不肖クレア、今日という日に過ごし経験した数々の至福と感動を、決して忘れません!」

散々味わったであろうふわもふの記憶でうっとりした後、天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら高らかに宣言するクレア。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

もういっそのこと、クレアがサイサクス大陸の覇王に就任しちゃっていいんじゃなかろうか?とライトは密かに思う。

「ハハハ……クレアさんも楽しそうで何よりです」

「うんうん、吾輩もアルきゅんやお母ちゃんに会えて良かったなぁ。今日はとっても楽しかったよ!」

『そうですね……アルがこんなに楽しそうに遊ぶのも、久しぶりのことかもしれません』

まだ雪の中を転げ回っているアルとクー太以外の四者は、それぞれに今日の出会いの感想を述べる。

「アルきゅんの居場所が分かるカフも渡せたことだし、次にライトきゅんが会いに来る時にはもっと簡単に探し出せるよ!」

「うん、フェネぴょんありがとう。カタポレンの森の家からこの氷の洞窟には、来たくてもなかなか簡単には来れない距離だけどね」

『おや?いずれはあちらの家からこちらまで、週一でマラソンコースとして来るはずでは?』

シーナがシレッと例の無謀な計画話を出してきた。

ライトは半目になりながら、じとーっとシーナを睨むように見つめる。

「あのね、シーナさん?それはレオ兄ちゃんの寝言ですからね?うちのレオ兄ちゃんという人は、起きながらにして寝言を吐ける『寝言の達人』なんですよ?」

『あらまぁ、そうだったんですか……まぁ確かにねぇ、あれは寝言としか思えない話でしたねぇ』

「はぁ……レオニスさんてば、本当にしょうがない人ですねぇ。常日頃から常識の化身たる私が口を酸っぱくして『寝言は寝て言え』と諫言しているというのに」

ライトの抗議に、シーナとクレアが半ば呆れ顔になる。

噂の的たるレオニスも、今頃はもう起きているはずだ。さぞかし盛大なくしゃみを連発しているに違いない。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

楽しい時間というのは本当にあっという間に過ぎるもので、ライト達は小休憩の後ツェリザークに戻る支度を始めた。

フェネセンが椅子とテーブルを空間魔法陣に仕舞い込み、ライトは走り回ったアルをもう一度、名残を惜しむようにそれはそれは丁寧にブラッシングしている。

クレアは自身が持参したクー太のおやつである肉まんボールを、クー太に与えるとともにシーナにもおすそ分けとして大量に渡していた。

今朝からずっとクー太の首の後ろに括りつけられていた、ものすごく大きなラベンダー色の風呂敷包み。あの中身はどうやらおやつの肉まんボールだったようだ。最初からアル達母子への手土産として渡すつもりもあったのだろう。

そのラベンダー色の風呂敷包みを恭しく差し出すクレアに、これまた顔を綻ばせて受け取るシーナ。何とも微笑まシュールな光景である。

「じゃあ、行こうか。アル、シーナさん、またね!あっちの家にもいつでも遊びに来てね!」

「アルきゅん、お母ちゃん、吾輩いずれまた氷の洞窟に行く用事あるから、そん時に遊ぼうねーぃ!」

「アルちゃん、シーナさん、ディーノ村にお越しの際は是非ともお声掛けくださいねぇー。クー太ちゃんとともにお待ちしておりますぅー」

「グルァァァァ!」

アルは尻尾をブンブンと振り回し、シーナも軽く手を振りながら皆からの別れの挨拶に応える。

再び人族の街に戻る四者を、その姿が完全に見えなくなるまでアルとシーナはずっと見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「ねぇねぇ、ライトきゅん。帰りは行きと違うコース歩いていーい?」

アル達と別れてからしばらく歩き進んだ時、唐突にフェネセンから別ルートでの帰りをお願いされた。

「ん?いいけど、何で?何か理由とかあるの?」

「うん。せっかくここまで来たんだから、この周辺にしかない素材類も採取していきたいと思ってねー」

「んー、そうだね。後はもうツェリザークに戻って買い物してから家に帰るだけだし、そういうことならのんびり回り道していこうか」

「ありがとう!そんなに遠回りしないから安心してねーぃ、歩くの30分くらい延びる程度で済ませるから」

ライトに快諾をもらえたフェネセンは、ウッキウキで飛び跳ねる。

早速行きとは違う道に逸れて歩くライト一行。

道々で目にする雪氷花を花の部分だけ摘んだり、雪から少しだけ表面の出ている霧雹石を掘り起こしては空間魔法陣に収納していく。

また、この辺の雪は氷の洞窟から漏れ出た冷気を多分に含んでいるため、雪そのものにも魔力が含まれているのだという。

魔力そのものはそこまで多くはないらしいが、それでも普通の水に比べたら格段に多く含まれているので使い道がかなり多様らしい。

それこそ飲み水や料理はもちろん、ポーション等の回復剤の基材に使えばその効果も何割か増すほどに有用性が高いのだそうだ。

そのため、踏み固められていない上辺の綺麗な新雪部分をボール状の塊にしては、フェネセンの空間魔法陣に収納する作業などもしていた。

「この雪を夏まで保持して、氷の代わりに飲み物に入れると夏バテ防止にもなるんですよー」

「へぇぇぇ、そうなんですね。ぼく、初めて聞きました!」

「でもまぁこの雪の塊を夏まで保持しようと思ったら、空間魔法陣が必要な訳でして。その空間魔法陣を使える人自体が、かなり限られていますから」

「ああ、そうか……誰にでも使える訳ではないんですね」

「そういうことです。優秀な宮廷魔導師を多数抱える王侯貴族なら、そんな贅沢も可能なんでしょうけど」

クレアがこの一帯の雪の効果について、詳しく解説してくれた。

ライトとしては、そんな効果があるんだったらさっき遊んでいた時に作った雪だるまなんて呑気に作らずに、素材として収集しておけば良かった……とも考えたが、あの時はあの時で皆と楽しく遊んでいた訳だから、それに水を差すような真似も無粋だよなー、と思い直す。

そう、思い出はプライスレス!なのだ。

よし、そしたらフェネぴょんといっしょに来ている今が絶好の機会!ツェリザークに着くまでにたくさん綺麗な雪を確保して、その半分をレオ兄の空間魔法陣に分けてもらおう!

ライトはそう考えて、より精力的に雪の採取に励むことにした。