軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1337話 お風呂上がりと奇跡の出会い

シーナとラーデの初顔合わせも無事済み、ライト達は先にお風呂に入ることにした。

それは先程のツェリザークでのお茶会の時に、シーナが飲んでいたアイスコーヒーをダバダバと零したのを綺麗に洗い流すためであり、いつものようにレオニスやラウルといっしょにお風呂に入る訳にはいかないからである。

浴槽にぬるめのお湯を張り、脱衣所でアルとシーナが大型犬程度の大きさに変身する。

風呂に入る前にライトがアル達にかけ湯をし、特にシーナにはお腹のコーヒーを洗い流すように念入りに湯をかける。

そしてラーデ、アル、シーナの順にライトが石鹸で彼ら彼女らの身体を洗い上げていく。

ラーデが湯船の中をふよふよと泳ぎ、それを見たアルが身体を子犬サイズに変えて、ラーデを真似て風呂の中で犬かきをして泳ぐ。二者とも実に楽しそうだ。

風呂を存分に楽しんでいるラーデとアルを、シーナが脱力したように眺めている。

『まさか、皇竜などという伝説級の存在とお風呂をともにすることになろうとは……夢にも思っていませんでしたよ』

「ラーデは訳あって、殆どの魔力を失っている状態なんです。だから、このカタポレンの森には静養で来ているんです」

『なるほど……確かにこの森は常に魔力に満ち溢れていますからね。魔力を補充するには最適でしょう』

ライトの説明に、シーナも得心する。

ラーデから感じる圧倒的な存在感は、皇竜と名乗るに相応しいと感じたからこそシーナもその話を疑うことなく受け入れた。

だが、何故にそのような高位の存在―――しかも本来なら空に住まうであろう竜が、カタポレンの森にいるのかがさっぱり分からなかった。

しかも外見はぬいぐるみサイズで、見た目だけで言えばとてもじゃないが竜族の始祖とは思えない。

しかし、ライトの話を聞けば納得だ。

このカタポレンの森は、至るところで高濃度の魔力に満ち溢れている。魔力を大量に取り込みたい者にとって、この森はまさに理想的な静養地なのだ。

身体を洗い終えたシーナが湯船に浸かり、ライトもシーナとともに風呂でのんびりと一息つく。

『ふぅー……野に生きる私達は、こうして改めてお風呂に入ることなど滅多にありませんが……たまにはこうしてゆったりと湯に浸かるというのも、いいものですねぇ』

「ですよねー……お風呂や温泉に浸かると、身体の汚れや疲れを落とすだけじゃなくて心も癒やされますもんねぇ」

ライトとシーナが横並びでのんびりしていると、湯船で泳いでいたアルがライトのもとに来た。

ワゥワゥ!とライトに向かって吠えるアル、どうやら風呂から上がりたいようだ。

「シーナさん、ぼくはアルといっしょにお風呂から上がるので、シーナさんはゆっくりとお風呂に入っててくださいね」

『我が子を任せてしまってすみませんが……お言葉に甘えて、もう少し湯に浸からせていただきますね』

「上せないように気をつけてくださいねー。ラーデも後で迎えに来るからねー」

『ええ、お気遣いありがとう』

『うむ、我のことはいいからアルの世話を先にしてやってくれ』

ライトはアルを抱っこして浴槽から立ち上がり、もとに浴室から出ていく。

お風呂にはラーデとシーナが残り、どちらからともなくライト達との出会いやこれまでの経緯などを話していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ライトはバスタオルで自分の身体を急いで拭き、服を着てからアルを抱っこしてリビングに移動した。

その後アルの濡れた身体をバスタオルでワシャワシャと拭い、風魔法でアルの毛がふわふわになるまで乾かしていく。

それからラーデを迎えに行き、ラーデの世話を全部し終えたことろでレオニス達がラウルとマキシとともにカタポレンの家に移動してきた。

転移門があるライトの部屋からリビングに移動したレオニス達、早速ライトにただいまの挨拶をする。

「ただいまー。今日はアル達が泊まりに来てるんだって?」

「あ、レオ兄ちゃん、おかえりー。うん、今日はラグーン学園が終わってお昼ご飯を食べた後、ラウルといっしょにツェリザークに出かけたんだー。そしたらアルとシーナさんも来てくれたから、前から約束してたお泊まりをシーナさんにお願いしたら来てくれたの!」

「そっか、そりゃ良かったな。アル、久しぶりだな!」

「ワォーーーン!」

久しぶりに会うレオニスの挨拶に、絨毯の上で寝そべってのんびりと寛いでいたアルが嬉しそうに起き上がり、レオニスに飛びつく。

レオニスの後ろにいたラウルとマキシも、アルに話しかけた。

「おお、アルもラーデも風呂上がりか? 綺麗にしてもらって良かったな」

「ワゥワゥ!」

「アル君、初めまして、こんばんは。僕の名はマキシ、ライト君やラウルの友達で、レオニスさんにもとてもお世話になっている八咫烏です。僕とも仲良くしてくれると嬉しいな」

「ワォンワォン!」

ラウルやマキシの言葉に、アルが嬉しそうに応えた。

アルは全く人見知りしない子なので、初対面のマキシに対してもとても友好的に接している。

するとここで、レオニスが回りをキョロキョロと見回しながらライトに問うた。

「ン? シーナがいないようだが、どこに行ったんだ?」

「あ、シーナさんはまだお風呂にいるよー。そろそろ迎えに行かないと」

「おお、そうか。じゃあ俺達はここで待つとするか。ラウル、台所で晩飯の準備をしといてくれ」

「了解ー」

ライトがシーナを迎えに風呂に行き、ラウルは晩ご飯の支度をするために台所に向かう。

ラーデはラウルの後をついていき、レオニスとマキシはそのままリビングで待機してライト達が戻るのを待っていた。

しばらくしてライトがシーナとともにリビングに入ってきた。

身体は脱衣所である程度拭いてきたようだが、それでもまだシーナの身体は濡れそぼっていた。

「お、シーナ、おかえりー」

『あら、レオニスではないですか。久しぶりですね、お邪魔しています』

「おう、久しぶり。今日はライトの願いを叶えてくれたそうだな、わざわざ遠方から来てくれてありがとうな」

風呂から上がってきたシーナに、レオニスが早速挨拶がてら礼を言う。

そんな律儀なレオニスに、シーナがライトにバスタオルで身体を拭われながら応える。

『いいえ、礼を言われることではありませんよ。この家に遊びに来て泊まるという約束は、前々からしていたことですし。むしろその約束を果たすのがだいぶ遅くなってしまって、私の方が謝らなければなりません』

「そんなん気にするな、こうして約束を守って泊まりに来てくれたんだからよ!」

シーナの横に来たレオニスが、シーナの身体を乾かすべく風魔法で温かい風を当てる。

するとここで、シーナが見慣れない顔、マキシを見つけて不思議そうに問うた。

『……おや、皇竜以外にも私の知らぬ者がいますね?』

「あ、僕はマキシと言います。実は八咫烏なんですが、今はレオニスさんのご厚意でラウルとともにラグナロッツァのお屋敷に住まわせてもらってます」

『八咫烏…………大神樹のもとで里を形成しているという、あの八咫烏ですか?』

「はい、その認識で合ってます」

『レオニスにライト…………貴方方の周りには、本当にいろんな種族の者達が集まるのですねぇ』

シーナと初対面のマキシ、自分の正体を明かすべく人化の術を解いて八咫烏の姿に戻ってみせた。

八咫烏が銀碧狼と対面するのはこれが初めてのことだし、もちろんシーナの方も八咫烏に会うのは生まれて初めてだ。

ラーデに続き、またも新たな出会いが待ち構えていたとは。シーナもびっくり仰天である。

このこぢんまりとした家の中に、人族と妖精、八咫烏に皇竜、そして銀碧狼という、実に多種多様な種族が集っていることにシーナは驚きを禁じ得ない。

そしてこの様々な種族の者達は、人族であるレオニスやライトを慕いここにいることを、シーナは理解していた。

我が子アルだってライトを親友と慕い懐いているし、ラウルはレオニス達のことを『大きなご主人様』『小さなご主人様』と呼んでいるし、マキシも言葉の端々からレオニスのことを尊敬しているのがありありと分かる。

風呂の中で聞いた皇竜の話でも、天空島で起きた大事件を解決に導いた二人の人族の英雄ぶりにシーナは舌を巻く思いだった。

しかし、二人が驕り高ぶる様子などシーナは今まで一度も見たことがない。

レオニスはいつもニカッ!と爽やかな笑顔で笑いかけてくれるし、ライトも養い親のレオニスを見習ってか人懐っこい笑顔で自分達親子のことを常に気にかけてくれる。

彼らの持つ力や交友関係はもはや一介の人族とは言えない、まさに人外で規格外もいいところだ。

そんな人外ブラザーズに、シーナはいつも驚かされてばかり。

だが、その驚きは決して不快なものではなく、主に良い意味でシーナの想定を常にはるか上をいくだけのことなのだ。

本来の八咫烏姿に戻ったマキシを前に、シーナが小さく笑いながら呟く。

『フフフ……この奇跡の出会いの中に、私達銀碧狼も含まれていることに感謝しなければなりませんね』

「そうですね……僕も、あのままずっと八咫烏の里に篭っていたら、絶対に今の僕はありませんでした。僕はラウルを通してレオニスさん達と出会い、人里で暮らすようになりましたが……ラウルだけでなく、レオニスさんやライト君にも感謝しているんです」

『良き出会いに恵まれた者同士、私達とも仲良くしてくださいね』

「もちろんです!アル君やシーナさんのお話はライト君からもよく聞いていて、僕も是非とも一度お会いしたいと思っていたんです。こちらこそ、よろしくお願いします!」

シーナの言葉に、マキシも大きく頷きつつ破顔する。

するとここで、ライトがマキシに小さな声で話しかけた。

「マキシ君……レオ兄ちゃんはともかく、ぼくはマキシ君に感謝されるようなことなんて何もしていないよ? むしろぼくの方が、マキシ君の世話になってばかりかも……」

「そんなことありません!ライト君だってもう僕の大事な仲間で、親友で、家族なんですから!」

「そ、そう? マキシ君にそう言ってもらえるなんて、何だか嬉しいな……」

ライトの言葉に反論するマキシに、ライトも照れ臭そうにはにかむ。

そんな二人の仲睦まじい会話に、レオニスが俺も俺も!とばかりに加わってきた。

「なぁ、マキシ、俺もその仲間の一人だよな?」

「もちろんです!だって、レオニスさんがいなければ僕もラウルも、今のような幸せな生活は決して得られなかったですもん!」

「そうか、そしたらこれからも皆で仲良く楽しく暮らしていこうな」

「はい!」

マキシの仲間認定に、嬉しそうに破顔するレオニス。

わざわざマキシにそう言わせるなんて大人気ない、と思うなかれ。

人間なんてものは、きちんと明確に言葉にして出さないとその意図や本意はなかなか伝わらないものなのだ。

そんな話をしているうちに、シーナの毛がふわっふわのツヤッツヤに輝いてきた。

ライトがまだ濡れたままの場所がないか、シーナのすべすべもふもふの毛をあちこち撫でながら確認している。

「……うん、シーナさんの身体ももうすっかり乾いたね!」

「おう、そしたら皆で晩飯を食いに台所に行くか」

「うん!シーナさん、マキシ君、今日も美味しいご飯をたくさん食べていってね!」

「ありがとうございます!」

シーナの身体が乾いた後は、台所へ行って皆で晩御飯を食べるのみ。

ラウルがリビングを出てから十分以上は経過しているので、台所の方にもたくさんのご馳走が全て人数分並べられていることだろう。

そうしてライト達はリビングを出て、食堂に向かっていった。