軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1238話 鷲獅子達の生態と朝のお見送り

レオニスがライト達にコルルカ高原奥地遠征を伝えてから、レオニスは遠征の準備で多忙な日々を送っていた。

遠征中に用いる各種回復剤を多めに用意したり、野営のための寝袋を新たに一つ購入したり、ラウルに遠征中の食事を作ってもらうために多めに資金を渡して食事作成依頼をしたり。

そうした下準備の中で、レオニスは特に鷲獅子騎士団専用飼育場に足繁く通った。

アルフォンソの相棒であるサムを始めとして、全ての鷲獅子達と触れ合う時間を積極的に増やして親睦を図るためである。

そのおかげで、最初はただひたすらに怖がられていたレオニスも、次第に鷲獅子達に『コイツ、うちの団員達とも仲良いみたいだし?』『しゃあない、俺らも友達になってやるか』程度には認められていった。

要はレオニスのしつこさに鷲獅子達が根負けしたようなものだが、毎日の追いかけっこで鷲獅子達もレオニスの恐ろしいまでの実力を身に沁みて実感していたし、いずれにしても意思疎通が深められたのは何よりである。

そしてその他にも、レオニスは鷲獅子達の食性について率先して勉強したりもした。

鷲獅子は基本的に雑食で、肉に魚に野菜に虫、何でもござれとばかりに食べる。

そして鷲獅子騎士団では、竜騎士団でも用いている『ビッグワームの素』を遠征用食糧として用いていた。

たっぷりの水で戻したプリップリかつボリュームたっぷりのビッグワームを、美味しそうに食べる鷲獅子達。

その様子を見ながら、レオニスが感嘆する。

「このビッグワームの素、竜騎士達が使っているのを見たことがあるが……鷲獅子達もこれが好物なんだな」

「ええ。そもそもこのビッグワームの素は、我ら鷲獅子騎士団と竜騎士団が共同開発したものですからね」

「そうなんだ? それってやっぱり遠征用とか非常食として使うためか?」

「その通りです。鷲獅子や飛竜の食べ物は、我ら人族とは全く異なりますからね。もともと鷲獅子と飛竜はビッグワームを好んで食べるので、遠征用や備蓄、そしてさらには携帯性を向上させるために極限まで濃縮化したのが、このビッグワームの素なのです」

レオニスの質問に、鷲獅子騎士団副団長であるエドガー・ヘルクヴィストが答える。

鷲獅子騎士団員たちが使うビッグワームの素。

レオニスは、それが鷲獅子騎士団と竜騎士団の共同開発品だとは全く知らなかった。

しかし、よくよく考えればそれも当然だ。両騎士団はアクシーディア公国の直轄組織なのだから。

必要とあらば双方が手に手を取り、協力体制を取ることも往々にしてあるだろう。

そしてこのビッグワームの素の原料であるビッグワームについても、レオニスが言及する。

「ラグナロッツァの外壁の向こうには、いくらでもビッグワームがいるもんな。材料に事欠かないってのもいいよな」

「ええ。あれらは何気にというかかなり厄介で、数日でも放っておくとあちこち地面を掘り進めて、終いにはラグナロッツァの中にまで侵入してきますからね……日々の駆除作業が欠かせませんが、駆除ついでに鷲獅子達の非常食を確保できるのが最大の利点です」

レオニスの言葉に、エドガーもうんうん、と頷きながら同意する。

ライトもいつも愛用する『地虫の大顎』の元でもある、イモムシ型魔物ビッグワーム。全身緑色で、最大のものになると体長10メートルを超える魔物だ。

特定の生息地はなく、平地ならばサイサクス大陸の至るところにいる雑魚魔物の一つとされているが、何故か特にラグナロッツァ周辺に多く出没するという。

そのため魔物図鑑などでは、ビッグワームの項目内の主要生息地情報に『ラグナロッツァ』と書かれているものも多い。

こいつが何より厄介者扱いされるのは、ミミズやモグラのように地面を掘ってボコボコにする習性があるからだ。

しかも、ただ勝手に地面を掘るだけならまだいいが、時にはラグナロッツァの外壁の下を潜り抜け、ラグナロッツァの中にまで侵入してきてしまう。

地上は結界で万全の防御を誇るラグナロッツァだが、さすがにその結界の効力は地面の下までは及ばないらしい。

さらには雑魚魔物らしく、繁殖力も半端なく強い。

駆除のための狩りをほんの数日サボっただけで、ねずみ算式に激増していくという。

そうした諸々の理由により、鷲獅子騎士団と竜騎士団は手分けしてラグナロッツァの周囲を毎日巡回し、ビッグワームを見つけ次第駆除するのが日々の任務となっている。

そう、たかが雑魚魔物と侮ってはいけない。

ラグナロッツァの治安と平和な日々は、鷲獅子騎士団や竜騎士団のおかげで保たれていると言っても過言ではないのだ。

そうして鷲獅子に関する勉強や下準備を続けていき、遠征出立の日となった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

遠征出立の月曜日の朝。

ラグナロッツァの屋敷を朝イチに出立するために、まだ夜が明け切らないうちからカタポレンの家で一人早めの朝食を食べるレオニス。

するとそこに、ライトが眠い目を擦りながら台所に入ってきた。

「レオ兄ちゃん、おはよーぅ……」

「おう、おはよう、ライト。何だ、早く起きちまったのか?」

「ううん……レオ兄ちゃん、今日から遠征にお出かけするから……ちゃんとお見送りしたくて……」

「そっか、ありがとうな」

パジャマのまま、ぽすん、と台所のテーブルの椅子に着いたライト。

そんなライトに、レオニスが自分用に焼いたトーストの一枚を分け与える。

今回の遠征について、ライトはそこまで心配していない。

あの危険極まりないシュマルリ山脈にだって、レオニスは単身乗り込んで『野良ドラゴンと友達になる!』という目的を見事達成したのだ。ならば今回のコルルカ高原奥地だって、朝飯前のお茶の子さいさいとまでは言わないが、ちゃんと踏破して無事帰ってくるだろう。

だが、それはそれとしてレオニスが一週間近くも不在になるというのは、やはりライトにとっては寂しい。

だからこそ、出立の見送りだけでもちゃんとしておきたかったのだ。

二人でもくもくとトーストを食べる。

ちなみにラーデは、まだライトのベッドですやすやと寝ている。

そしてライトの方から、レオニスに話しかけた。

「レオ兄ちゃん……なるべく早く帰ってきてね……」

「おう、何日かかるかは分からんが、なるべく早く帰れるよう頑張るから心配すんな」

「うん……もし野生のグリフォンとも仲良くなれたら、いつかぼくもコルルカ高原奥地に連れてってね?」

「ああ、約束しよう。いつか俺といっしょに、コルルカ高原奥地に行こうな」

「……うん!」

ライトのおねだりに、いつかいっしょに旅をしようとレオニスも答える。

その答えを聞いたライトの顔が、パァッ!と明るくなる。

「……さ、そしたら俺はそろそろ出かけるとするか。すまんが皿の後片付けとかよろしくな」

「うん。レオ兄ちゃん、気をつけていってきてね!」

「ああ、コルルカ高原土産を期待しながら待っててな」

朝食を食べ終えたレオニスが席を立ち、皿やカップを流し台まで持っていく。

そして一旦自室に戻り、深紅のロングジャケット他冒険者としての正装に着替える。

その間にライトは自分の皿も含めて洗い物を済ませ、自室に戻る。

程なくして、出かける支度を整えたレオニスがライトの部屋に入ってきた。

そしてラグナロッツァの屋敷に繋がる転移門の上に乗った。

「じゃ、行ってくる」

「いってらっしゃい!」

転移門の中で、レオニスが微笑みながらライトに向けて小さく手を振る。

そして瞬間移動で消えていったレオニスを見送ったライトもまた出かける支度をし、朝のルーティンワークである魔石回収のためにカタポレンの家を出ていった。