軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1239話 ケセドの街での待ち合わせ

ライトに見送られ、ラグナロッツァの屋敷に移動したレオニス。

そこでも玄関先で、ラウルが待っていた。

「よう、ご主人様、おはよう」

「おう、おはよう、ラウル。何だ、お見送りのためにわざわざ待っててくれたのか?」

「ああ。お見送りついでに、俺からご主人様に追加で渡したいものがあってな」

「ぉ、ぉぅ、そうか……」

茶化すつもりで言った言葉が見事的中してしまい、照れ臭そうなレオニス。

そんなレオニスを他所に、ラウルが空間魔法陣を開いた。

「ほら、ご主人様も空間魔法陣を開け。遠征用にスイーツを多めに作っておいたから」

「え、マジ? お前が進んで俺にスイーツをくれるなんて、初めてじゃね?」

「マジマジ。つーか、何気に失敬だな?」

ラウルに促されたレオニス、空間魔法陣を開きながらびっくりしている。

実際これまでのラウルは、ライトやドライアド達のためにスイーツを作ってやることはあっても、レオニスのためにスイーツを作ることは殆どない。

もちろんレオニスから材料費を渡されて『○○を作ってくれ』と正式に依頼されれば、ラウルとてきちんとその依頼に応えて仕事をこなしてきた。

だが、そうでない限りはラウルの方からレオニスのために自主的にスイーツを作ってやることなど一度もなかった。

故にレオニスはびっくりしていたのだが、レオニスの失敬な物言いにラウルが一瞬だけムスッとしている。

しかし、ラウル自身もレオニスが思わず言ったことに身に覚えがあるので、そこまで怒ることもなくレオニスにスイーツを渡し始めた。

ラウルの空間魔法陣が上で、レオニスの空間魔法陣が下。

水平に開かれた二枚の空間魔法陣の間を、様々なスイーツが滝のように流れ落ちていく。

アップルパイにドーナツ、ココアクッキーにカスタードクリームパイ、様々なフルーツジャムやクリーム類が入ったプチタルト等々、どれも片手で食べられる携帯性の高いスイーツだ。

それらは外で気軽に食べられるものを、というラウルなりの気遣いチョイスである。

そうして数多のスイーツが、二人の空間魔法陣の間を移動し終えた。

渡すべきものを渡し終えたラウルが、レオニスに話しかけた。

「……ま、ご主人様のことだから心配は要らんと思うし、本当は俺もいっしょにコルルカ高原についていけりゃよかったんだがな」

「ラウルにはこの屋敷にいてもらって、ライト達の面倒を見てもらわなきゃならんからな。すまんが俺が留守の間、ライト達のことをよろしく頼む」

「ああ、任せとけ。小さなご主人様が大きくなって、俺達といっしょに冒険ができるようになるまでは俺が留守番しててやるから。だからご主人様も、安心して任務を遂行してくれ」

「おう、お前に任せときゃ安心だ。じゃ、行ってくる」

「いってらー」

レオニスとラウル、交わす言葉の端々から互いを信頼していることがよく分かる。

レオニスが玄関の扉を開き、右手をひらひらとさせながら外に出ていく。

冬の寒い空気の中、門を出て右に曲がり姿が完全に消えてるまで、ラウルはレオニスの赤い背中をずっと玄関から見送っていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

冒険者ギルドラグナロッツァ総本部から、ギルド内転移門でケセドの街に移動したレオニス。

冒険者ギルドケセド支部を出て、街の北側にある北門に向かう。

今回の任務でレオニスと行動をともにする、鷲獅子騎士団団長アルフォンソとの待ち合わせが北門になっているのだ。

何故北門で待ち合わせをするかというと、北門から見える近い場所に鷲獅子騎士団及び竜騎士団専用の設備があるからだ。

設備といっても、無断侵入防止のための厳重な外壁以外はそこまで大層なものではなく、鷲獅子や飛竜が通れる大きな転移門を設置するためだけに設けられている。

これは、各地で災害が起こった時などに必要に応じて鷲獅子騎士団や竜騎士団が救援に駆けつけるためだ。

そして外壁という街の一番外側にあるのにも、理由が二つある。

一つは転移門の大きさ。

鷲獅子や竜騎士用の転移門は、当然のことだが人間よりも大きな鷲獅子や飛竜が通れる大きさでなければならない。そのため人間用のものより五倍くらいは大きいものを用意する必要がある。

これを街の中心街でやるには、諸々の面で厳しいと言わざるを得ない。

そしてもう一つは、鷲獅子や飛竜を見た人達がパニックにならないようにするため。

鷲獅子騎士団や竜騎士団は、アクシーディア公国の人々にとって憧れであり崇敬の的でもある。

しかし、遠くで見るのと間近で見るのとは迫力からして違う。

鷲獅子や飛竜達の圧倒的な存在感は、人々を萎縮させたり怖がらせてしまうことも往々にしてあるのだ。

これらの理由により、鷲獅子達が通れる転移門を設置するのに街中は最も不向きなのである。

ちなみにこの鷲獅子&飛竜用の転移門は、どの街にも必ず設置されている訳ではない。

人が多く栄えている主要都市、もしくは立地上防衛措置が必要とされる街に置かれている。

主要都市なら商業都市プロステスや港湾都市エンデアンなどが該当し、防衛上の理由ではノーヴェ砂漠前線基地のネツァクや『呪われた聖廟』の最寄りのセンチネルなどが当てはまる。

そしてこのケセドの街も、コルルカ高原の最寄りの街ということで鷲獅子騎士団及び竜騎士団専用の転移門設置が認められていた。

レオニスが待ち合わせしている北門に行くと、それらしき建物があるのが見えた。

その方向に向かって歩いていくと、建物の前には既にアルフォンソがいた。

アルフォンソの横には、彼の相棒のサムがいる。

レオニスが右手を軽く上げながら、アルフォンソ達に朝の挨拶をした。

「お、アルフォンソ、おはよう。待たせちまったか?」

「おはよう、レオニス卿。私達も先程こちらに来たばかりなので気になさらず」

「そっか、なら良かった」

レオニスとアルフォンソ、互いに無事合流できたことに安堵している。

そしてレオニスはアルフォンソの横にいるサムにも声をかける。

「よ、サム。今日からしばらくいっしょに行動することになるが、ご主人様ともどもよろしくな」

「グルルァァ」

サムの左側に立ち、その脚をぽふぽふ、と気安く叩くレオニスに、サムも『仕方ないなぁ』という表情で返事をする。

レオニスが日々鷲獅子達に懸命に歩み寄った成果が出たようで、何よりである。

「じゃ、早速行くか。休憩する場所やタイミングはアルフォンソ達に任せるから、無理せず行こう。コルルカ高原はだだっ広いからな」

「ああ、最初から飛ばしすぎてもサムの体力が持たないしな。適宜回復時間を取りつつ、奥地を目指そう」

「よし、じゃあ行くぞ」

「ああ」

アルフォンソがサムの背に乗り込み、鞍に跨り手綱を持つ。

アルフォンソ達の準備ができたことを確認したレオニスが、ふわりと宙に浮く。

そしてレオニス達は、コルルカ高原奥地を目指してケセドの街から旅立っていった。