軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1221話 鷲獅子騎士団との初顔合わせ

鷲獅子騎士団専用飼育場内の宿舎、その会議室で話し合いを始めたレオニス達。

まず先に口を開いたのは、レオニスの方だった。

「……で? あんた達が力をつけるのに力を貸せと言われて、俺はここに来た訳だが……何をどうしたいとか、具体的な案はあるのか?」

「それについても、レオニス卿に相談させていただきたい。イーノが先日貴殿とお会いした際に、レオニス卿から聞いたという話を我らも聞いたのだが……」

早速話を切り出したレオニスの問いかけに、アルフォンソが真剣な眼差しで応じる。

アルフォンソの話によると、イーノから話を聞くまで竜騎士団の特訓の詳細は全く分からなかったらしい。

話を聞いているレオニスの方も、そりゃそうだよな、と内心で思う。

邪竜の島討滅戦に関しては、それが重要機密だという扱いは特になされてはいなかったが、かと言って大っぴらに話を触れ回っていいものでもない。

おそらくはディラン達も、周囲に何か聞かれた時には『近々決行予定の特殊任務のために、竜騎士団総出でとある地で特訓している』という程度の話でお茶を濁していたのだろう。

そして先日、イーノを経由したレオニスの話でようやくその全貌が明らかになった、という訳だ。

とはいえ、そのとある地が竜の聖地シュマルリで、特訓というのがシュマルリに生息する野生のドラゴン達と実戦ばりの肉弾戦で戦う!という苛烈なものだとは、アルフォンソ達も想像だにしなかったが。

そしてその真相を知ったアルフォンソ達は、またもズンドコに落ち込んだという。

竜騎士団の場合は『廃都の魔城の手駒である邪竜を掃討するため』という、名実ともに猛特訓を実践する立派な理由があった。

しかし、鷲獅子騎士団にはそうした大義名分が全くないのだから。

いや、もし鷲獅子騎士団も事前に邪竜の島討滅戦のことを知っていたら、関係者に頼みに頼み込んで戦いの末席に加えさせてもらっていたかもしれない。

鷲獅子騎士団だって竜騎士団同様、空中戦を得意とする飛行部隊なのだから、参戦の可不可で言えば十分可能だっただろう。

しかしそれも、邪竜の島討滅戦が終了した今となっては後の祭りである。

そんな中、今からでも鷲獅子騎士団の実力強化を図るために無理矢理にでも理由を挙げるとしたら『アクシーディア公国を守るための力、防衛面の強化を図る』くらいしかない。

そしてその大義名分を実現するには、冒険者ギルドとの連携とレオニスへの指導協力を仰ぐ他なかった―――

テーブルに肘を付き、両手を顔の前で組みながら切々と語るアルフォンソ。その後ろで、心なしか窶れ気味な他の鷲獅子騎士団員達も大きく頷き続けていた。

「ぁー……まあ、だいたいのところは分かった。俺もマスターパレンからくれぐれもよろしく、と頼まれてるからな。俺でできることなら協力しよう」

「レオニス卿、ありがとう!恩に着る!」

レオニスの真向かいに座っていたアルフォンソが、ガタン!と勢いよく席を立ちレオニスに礼を言う。

そしてアルフォンソ同様、他の九人の鷲獅子騎士団員全員が起立してレオニスに深々と頭を下げた。

レオニスとしては、他ならぬマスターパレンからの頼みもあって仕方なく引き受けたことだった。

だがしかし、アルフォンソ達にとっては絶望の中に差し込んだ一条の光にも等しかった。

そして、そこまで礼を尽くされればレオニスとて悪い気はしない。

フッ、と小さく笑いながらアルフォンソに声をかける。

「よし、そしたら今後どうするかを決めるか。でもって、俺は鷲獅子のことはそこまで詳しくないから、特徴や生態なんかを詳しく教えてくれると助かる」

「もちろん!鷲獅子のことなら何でも私達に聞いてくれたまえ!」

レオニスの要望に、嬉しそうに答えるアルフォンソ。

そうしてレオニスは、鷲獅子について学ぶべくアルフォンソ達から話を聞くことになった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「レオニス卿、まずはこの資料に目を通していただきたい」

「ぉ、ぉぅ……」

アルフォンソの隣の部下が持っていた資料を渡されたレオニス。

それは気軽に資料と呼ぶにはかなり分厚く、もはや本とか専門書と呼んでも差し支えなさそうな資料集に若干怯んでいる。

「これ、全部覚えなきゃならないんか?」

「いや、暗記レベルまで覚える必要はない。これは鷲獅子騎士団に新しく配属された、新人向けの教科書のようなものだ。将来鷲獅子に乗るからには、その生態を隅から隅まで知っておかなければならないのでな」

「あー、新人用の教科書ね……そう言われりゃ納得だわ」

資料をパラパラと捲りながら、中を見るレオニス。

その資料には様々なタイプの鷲獅子の絵が載せられており、さらには事細かな詳細や注釈、論文なども書かれていて学術書さながらの内容であることが分かる。

「そしたらこれは、俺が持ち帰って読むことはできなさそうだな?」

「その通り。この資料は門外不出として、この宿舎の外に持ち出すことは禁止されている。なので、申し訳ないがこの資料に目を通せるのは宿舎内だけなのだ」

「承知した」

資料が持ち出し厳禁となっていることに、レオニスは確認しつつも納得する。

そしてしばらく無言で資料に目を通すレオニス。パラパラパラ……とページを捲る音が静かに会議室内に響く。

そうした静かな時間が五分程過ぎただろうか。

レオニスは資料の最後のページを捲った後、パタン、と静かに閉じて顔を上げた。

「……よし、だいたいのところは読んだ。これをまた読みたくなったら、ここに邪魔しに来てもいいか?」

「も、もちろん!レオニス卿にはこれから我らを導いてただくのだから、それくらいは当然のこと。もともと今日はレオニス卿に、当施設の通行許可証と徽章もお渡しする予定だったし」

「おお、そうか、そりゃ助かる」

アルフォンソが彼の後ろにいた部下に目配せし、その部下がレオニスの横に来て一枚のカードと徽章をレオニスの前に置いた。

カードは冒険者ギルド発行のカードと同じようなサイズで、そこにレオニスのフルネームと鷲獅子騎士団の紋章が刻印されている。

そして徽章は、かつて竜騎士団のディランから借り受けたものと似ているが、こちらもやはり鷲獅子騎士団らしく、鷲獅子をモチーフとしたバッジである。

「その通行許可証があれば、この専用飼育場内のどこにでも出入りが可能になる。そしてその徽章を持つ者は、鷲獅子騎士団で飼育している鷲獅子に乗ることもできるようになるのだ」

「ああ、竜騎士団の徽章と同じようなもんか」

「そうそう、よくご存知で!……って、そういえばレオニス卿は竜騎士団とも懇意だったな」

「まぁな」

通行許可証と徽章が持つ特典?を解説するアルフォンソを他所に、ササッ、と空間魔法陣を開いてとっとと仕舞い込むレオニス。

これらのアイテムは、今後のレオニスにとって役立つ場面が多いだろう。こうした大事なものは、絶対に失くさないようとっとと仕舞う!がレオニスのモットーである。

「ま、鷲獅子のことは追々学んでいくとして。あんた達はこれからどうしたいんだ?」

「我々がどうしたいか、か……」

レオニスの根本的な問いかけに、アルフォンソは目を伏せつつ静かに答える。

「……それはもちろん、竜騎士団のように鷲獅子の聖地であるコルルカ高原奥地に行って、野生の鷲獅子達と修練を積みたい。それが我ら鷲獅子騎士団の総意であり、本望だ」

「だよなぁ。ならやっぱり、コルルカ高原奥地に直接出向くしかねぇと思うが……あんた達と相棒の鷲獅子達に、その覚悟はあるのか?」

鷲獅子騎士団の総意、とまで言い切ったアルフォンソ。

それを裏付けるかのように、彼の周りにいる九人の騎士達も力強く頷いている。

そしてその意志の強さを改めて確認するかのようなレオニスの問いに、アルフォンソは一瞬の躊躇いもなく即時答える。

「もちろん覚悟している。ただ、我々はこのラグナロッツァを守るための研鑽を日々続けてきた。そのため、お恥ずかしい話ではあるが、ラグナロッツァ以外の世界のことはあまりよく知らないのだ」

「そしてそうした知識は、世界中を旅して回る冒険者の方々達こそよく熟知しておられることだろう。故に此度レオニス卿に助力を願い出た次第だ」

「我らはラグナロッツァでは花形騎士団と呼ばれるが、所詮は井の中の蛙。世界という大海を知らぬ非力な蛙に、どうか貴殿のお力添えをいただきたい」

己の心情を吐露しつつ、レオニスに向けて深々と頭を下げるアルフォンソ。

一見それは自分達をかなり卑下した言い方だが、客観的視点からの自己分析でもあり的を射ていた。

鷲獅子騎士団が外に出るとしても、普段はラグナロッツァ周辺のみ。時折他の街で発生した災害救助に駆り出されることもあるが、それとて人が営む街の中を駆け回るだけのこと。

鷲獅子の聖地とされるコルルカ高原奥地に出向くには、温室育ちの自分達には荷が重い―――アルフォンソはそう考えていた。

そしてアルフォンソの嘘偽りない本音を聞いたレオニス。

その正直な姿は、無駄に虚勢を張って傲慢な態度でこられるより余程好感が持てる。

「分かった。俺もそのためにここに来たんだからな。鷲獅子騎士団が野生の鷲獅子と友誼を結べるよう、俺も尽力しよう。これからよろしくな」

「ありがとう!心より感謝する!」

レオニスの言葉に、アルフォンソはガバッ!と頭を上げて、ガタン!と席を立ち、ダダッ!と駆け出して、レオニスの横に来て握手をした。

レオニスの右手を両手でガッシリと握り、ブンブン、ブブブン!と激しく縦に振るアルフォンソ。その表情は実に明るく、本当に嬉しそうだ。

そんなアルフォンソに、レオニスも小さく笑いながら宣言する。

「よし、そしたらこれから俺達がやる作戦名を決めなきゃな。『野良グリフォンと友達になろう!大作戦』てのはどうだ?」

「「「野良グリフォンと友達になろう!大作戦……」」」

レオニスが提案した作戦名、それはかつてレオニスが決行した『野良ドラゴンと友達になろう!大作戦』をちょいと変えただけのものだ。

この珍妙な作戦名に、アルフォンソ他十人の鷲獅子騎士団員達はしばし呆気にとられる。

だがそれも、ほんの一瞬のこと。数瞬の後には皆キラッキラの笑顔になっていた。

「……おお、それは素晴らしいですな!」

「野良グリフォンとお友達になる……何という甘美な響き…………」

「鷲獅子騎士団員ならば、一度は夢見る光景だな!」

皆口々に、レオニスの提案を褒めちぎり賛成している。

エリート騎士団である鷲獅子騎士団が、こんな作戦名で大喜びするとは意外だ。

結局のところ、彼らもまた一人の人間であり、鷲獅子大好き集団なのだろう。

そんな彼らの無邪気な喜びっぷりを、レオニスもまた嬉しそうに微笑みながら眺めていた。