軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1171話 公国生誕祭二日目のメインイベント

翼竜わくわくふれあい広場で、思う存分翼竜達と遊んだライト達。

途中牧場内でナディアの兄シグニスとも会い、久々の再会を互いに喜び合い話に花が咲いたりもした。

そうして正午の十二時を過ぎた頃。

翼竜牧場を後にしたライト達は、お昼ご飯を食べることにした。

今日の昼食も、昨日と同じくお祭りフードが主役を務める。

全員で公園に移動し、敷物の上で思い思いのお祭りフードを食べる。

豚のちゃんちゃか焼きや焼きトウモロコシなど、普段の日常生活ではあまり食べる機会のないお祭りならではの食べ物がずらりと並ぶ。

それらに舌鼓を打ちながら、ライト達は会話を交わす。

「翼竜牧場、すっごく楽しかったね!」

「はい!あの牧場にいる子達は皆賢くて可愛い子ばかりでしたね!」

「俺も普段は遠くから見るだけだったから、実際に間近で翼竜を見て触れられたのは良かった」

「我らも、同じく空を駆る者としてとても親近感が湧きましたな」

「ええ。我らの羽と翼竜の翼は作りが全く異なりますが、それでも先に見た飛竜に劣らぬ迫力でしたね!」

「私もいつか翼竜籠に乗ってみたくなっちゃったわ!旅の一座で移動している間は難しそうだけど……冒険者になったら絶対に翼竜籠に乗ってお出かけする!」

先程までいた翼竜牧場での得難い経験に、皆それぞれ感動したようだ。

ライトとラウル、そしてマキシは去年も翼竜わくわくふれあい広場を観に行って楽しんだ経験がある。

その三人ですら、今年もとても楽しかったのだ。翼竜を初めて間近で見たウルスやケリオン、シャーリィの感動ぶりは計り知れない。

お昼ご飯を食べ終えて、ライト達一行は待ち合わせの広場に向かう。

約束の時間は午後二時半、公園からのんびり歩いて行けば予定時間より少し早くに着くくらいで十分間に合う。

そうして約束の場所に行くと、イヴリンにリリィ、ジョゼとハリエットがもう既にいた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

自分が一番最後の到着と知ったライトが、慌ててイヴリン達のいる場所に向かって駆け出した。

「あ、もう皆集まってる!おーい、皆ー、こんにちはー!」

「あッ、ライト君が来た!」

「ライト君、やっほー!」

「ライトさん、こんにちは!」

慌てて駆け寄ってきたライトにイヴリン達も早々に気づき、挨拶をするとともに笑顔で迎え入れる。

「待たせちゃったみたいで、皆ごめんね」

「ううん、そんなに長く待ってなんていないから気にしないでー」

「そうそう、リリィちゃんがあまりにもスライムショーが楽しみ過ぎて、集合時間の一時間前に僕やイヴリンの家に迎えに来ただけのことだから」

「あ、ジョゼってばしどい!いつもジョゼが言っている『五分前行動』をしただけなのに!」

「リリィちゃん……五分前と一時間前は、だいぶというかかなりというか、全然違うよ?」

皆を待たせてしまったことを平謝りするライトに、イヴリン達は快く答える。

そして話の流れでジョゼがぽろりと漏らした話によると、どうやらリリィがスライムショーをいち早く見たさに幼馴染達の家に集合一時間以上も前に押しかけたらしい。

それを暴露されたリリィはプンスコと怒っているが、ジョゼの言う通り五分前と一時間前では壮絶に違うんじゃ……? とライトも内心で密かに思う。

しかしそれは決して口にはしないライト。

リリィの横でジョゼとの微笑ましいやり取りを、ニコニコ笑顔で見守るハリエットのようにライトもまたニコニコと微笑んでいる。

そんな中、イヴリンがいち早くライト以外の面々に声をかける。

「あッ!ラウルさんにマキシさん、こんにちは!今日は私達の付き添いに来てくれて、ありがとうございます!」

「こんにちは、イヴリンちゃん!」

「おお、イヴリンちゃん、こんにちは。秋の大運動会以来だな」

「はい!あの時もたくさんの美味しいご馳走とスイーツで、体重が3kgも増えちゃいました!」

「イヴリンちゃん達は、今が一番の育ち盛りだからな。たくさん食べてたくさん遊んでよく寝る、それが一番だ」

「はい!」

ヨンマルシェ市場のアイドル、ラウルとマキシと目の前で話ができたイヴリン。ものすごーくご機嫌である。

そんなイヴリンに続け!とばかりに、リリィがラウル達に声をかけた。

「ラウルさん、マキシさん、こんにちは!今日のスライムショー、ラウルさん達といっしょに観れるなんてすっごく嬉しいです!」

「そうか、俺もこんな機会でもなきゃスライムショーなんて観ないからな。皆のおかげで良い経験ができそうだ」

「僕もライト君のお友達といっしょに遊べるなんて、とても嬉しいです!今日はよろしくお願いします!」

「「はゎゎゎゎ……」」

眉目秀麗のラウルと紅顔の美少年マキシの爽やか&人懐っこい笑顔に、イヴリンもリリィも頬を赤らめながらため息を漏らしている。

イヴリンのことが好きなジョゼにしてみれば気が気ではないが、ふと彼の視線がシャーリィを捉えた。

ちなみに今日のシャーリィは、昨日魔術師ギルドの出店で購入した『非モテお守り』を三つ身に着けている。

装着箇所は、右手首と左手首に一個づつ、そして残る一つはウエストポーチにぶら下げている。

これのおかげで今日は外も普通に歩けたし、翼竜牧場でも他の観客に騒がれたりまとわりつかれることなく翼竜と存分に触れ合いを楽しめていた。

しかし、この『人々の目から強烈なモテオーラを見えにくくする』という非モテお守りも完璧ではない。

単なる通行人同士のように、互いに全く意識しなければ効果が十全に発揮されるが、逆に言えば『対象を意識しながら見ると、本来持つモテオーラを完全には隠しきれない』という弱点があるのだ。

その例に漏れず、ジョゼの目に映るシャーリィはとても美人に見える。

しかし非モテお守りの効果で、本来の姿である絶世の美姫とまでは感じていないようだ。

その証拠に、ジョゼは臆することなくシャーリィに声をかけた。

「お姉さん、初めまして、こんにちは。お姉さんのお名前をお伺いしてもよろしいですか?」

「初めまして、こんにちは。私の名はシャルというの、よろしくね」

まず手始めにシャーリィの名を問うたジョゼ。

無難だが堅実な取っ掛かりの仕方で、シャーリィとの親睦を図る。

シャーリィもにこやかな笑顔で応え、人里での名『シャル』を名乗った。

「シャルさんも、ラウルさん達と同じく僕達の保護者として来てくださったんですか?」

「ええ。ラウルは私の昔からの知り合いなんだけど、一昨日からこの公国生誕祭に参加するためにラグナロッツァに来たの。で、ラウルが務めているお屋敷にもお泊まりさせてもらっててね。今日はライト君達といっしょに皆でショーを観に行くって聞いて、私もついてきちゃったの♪」

「そうなんですね!」

初めて顔を合わせるシャーリィとジョゼ、和やかな会話を交わしている。

ジョゼはシャーリィが公国生誕祭のパレードを担う『暁紅の明星』のトップダンサーであることを知らない。

いや、もちろんジョゼとて何度も公国生誕祭のパレードを見たことはある。だがしかし、目の前にいる美しい大人のお姉さんがパレードの舞姫その人だとは思いもしないようだ。

そしてそれはイヴリンやリリィも同じで、ジョゼがシャーリィと会話をしているのをふと見て「わぁー、綺麗なお姉さんね!」「リリィもあんな美人なお姉さんになりたいなー!」とか言っている。

しかし、唯一ハリエットだけはシャーリィの正体に気づいていた。

「ねぇ、ライトさん……もしかしてあの方、パレードの筆頭踊り子さんでは……?」

「うん、そうだよー。……って、ハリエットさんはシャルさんのことを知ってるの?」

「ええ、直接お話ししたことはないのですけど……ラグナ宮殿での大規模なパーティーで、何度かお見かけしたことがありまして」

「へー、そうなんだー」

ハリエットの話に、ライトが意外そうな顔で驚いている。

シャーリィがいる『暁紅の明星』が世界レベルで有名な踊り子集団である、ということはライトも知っていた。

しかしそれが、ラグナ宮殿でのパーティーにまでお呼ばれされているとは全く知らなかった。

それならハリエットがシャーリィの顔を知っていても当然である。

「ていうか、『暁紅の明星』って公国生誕祭のパレードを担当するだけじゃないんだね」

「はい。外国からいらした王族や勅使をおもてなしするために、華麗な舞いと音楽を披露するのが定番となっています。しかし……」

「ン? どしたの?」

「い、いえ……あの方がシャルさんだというのは分かるのですが……何だかいつもより覇気がないというか、これまでに私が見てきた人とは別人のようにも見えまして……」

「ぁー……」

ハリエットが躊躇いがちに述べる、何気に鋭い主観。

その鋭い指摘に、ライトも思わず口篭る。

「えーとね、ここだけの話なんだけど……」

「はい、何でしょう?」

「シャルさん、昨日魔術師ギルドのお店で『非モテお守り』ってのをたくさん買っててね? 今日もそれを身に着けているんだ」

「非モテ、お守り……?」

ハリエットの疑問に、ライトがコソコソと小声でその理由をハリエットに教える。

ライトが発した謎のパワーワード『非モテお守り』なる言葉に、ハリエットは訳が分からず首を傾げていた。

ハリエットのような貴族令嬢が『非モテ』などというゴリゴリの平民スラングを知っていようはずもない。

そんなハリエットに、ライトはさらに解説を続ける。

「非モテってのは、簡単に言うと『モテない』ってこと。シャルさんの場合、普通にただそこにいるだけですっごく目立っちゃうでしょ? だからね、外を出歩いてもあまり目立ち過ぎないようにするために『非モテお守り』を身に着けるといいんだって」

「ああ、そういうことですか……確かにシャルさん程の美貌ともなると、すれ違う人全てが何度も振り返っては見返しちゃいますからね……」

「そゆこと」

ライトの解説に、ハリエットが得心しつつ頷いている。

ハリエットの記憶の中のシャーリィも、それはもう誰もが何度も見返す程の壮絶な美貌を誇っていた。

その時のオーラが今はほとんど感じられないのは、ライトの言う『非モテお守り』の効果なのだと考えれば納得だ。

そんな話をしているうちに、他の親子連れの観客達が入場口に並び始めるのが見えた。

それに気づいたリリィが、ライト達に向かって大きな声で呼びかける。

「あッ!そろそろ入場整理が始まるみたい!皆、急いで並ぼう!」

「そうだね、少しでも前の列で見るには並ばなくちゃね!」

「ラウル、マキシ君、シャルさん、皆で並ぼう!」

「おう」「はい!」「はーい♪」

入場口に向かって一目散に駆け出すリリィ。今日のこの日のスライムショーを、彼女が如何に楽しみにしていたかがよく分かる。

そんな可愛らしいリリィの背中をライト達は微笑みながら見つめつつ、彼女の後を追いかけていった。