軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1170話 飛行ショーと翼竜わくわくふれあい広場

ラグナ大公の挨拶が終わり、民達の割れんばかりの歓声とともに飛行ショー開始を告げるファンファーレが高らかに鳴る。

そして鷲獅子騎士団の飛行ショーから始まった。

ラグナ宮殿背後から現れたのは十五頭の鷲獅子と、鷲獅子の背に乗り手綱を取る鷲獅子騎士である。

「わー、今年は鷲獅子騎士が十五人も出てる!」

「すっごい豪華ですね!」

「おお、去年見た時よりも明らかに人数多いな」

「おおお……あれがマキシやライト殿達から噂に聞く、鷲獅子騎士団なるものか……」

「何と雄々しく気高き姿でしょう……」

空高く舞う十五頭の鷲獅子の勇姿に、ライトやラウル、マキシ達八咫烏親子も感動の面持ちで眺めている。

そしてシャーリィもまた、真上を見上げながら感心したように声を上げる。

「へー、これが公国生誕祭名物の騎士団飛行ショーなのね!思ってた以上に格好良いわ!」

「何だ、シャーリィ。お前、今まで飛行ショーを見たことなかったのか? 公国生誕祭初日の前の日には、ラグナロッツァ入りしてるんだろ? つーか、ラグナ宮殿で寝泊まりするからVIP席で観れるってさっき言ってなかったか?」

「ンーとねぇ、実は初日の晩餐会で皆飲み食いし過ぎて、二日目はお昼頃まで寝てるのよねぇ。だから、飛行ショーを観戦するのは毎年ほんの数人だけなのよね」

「……よくそれが許されるな?」

シャーリィの話に、ラウルが呆れ果てたような顔をしている。

確かに公国生誕祭二日目に昼まで寝ていたら、この飛行ショーを拝むことはまず無理だろう。

歓迎会を兼ねた晩餐会で飲み食いし過ぎて翌日起きられない、というのもアレだが、翌日昼までだらしなく寝転けるのを許す方も相当寛大である。

そうして鷲獅子騎士団の飛行ショーが十分程続いた後、鷲獅子と入れ替わりで竜騎士団の飛竜が登場してきた。

鷲獅子騎士と双璧をなす竜騎士の登場に、ラグナ宮殿で見物している民達はもちろんのことライト達も思わず歓声を上げた。

「わぁッ!今度は竜騎士団だ!」

「おお、あれが飛竜を駆るという竜騎士団か!」

「人族と飛竜が一心同体となって空を駆る……俄には信じ難いことでしたが、本当の話だったんですね……」

「鷲獅子も格好良かったけど、飛竜は存在感がすごいわね!まさに格別だわ!」

マキシやウルス、そしてシャーリィとシャーリィに抱っこされているケリオンも勇ましい飛竜の姿に感動している。

もちろんライトやラウルも最初のうちは「おお!」と感動していたのだが、何故か次第に彼らの動きが止まっていく。

「な、なぁ、ライト……去年の公国生誕祭の時より、何だか飛竜の動きがすご過ぎやしねぇか……?」

「ぁー、ぇー、ぁー、うん……多分シュマルリ山脈での竜族相手の猛特訓が、すっごく効いてるんだと思う……」

「ぁー、ご主人様が付き添って指導したという、例のアレか……確か竜の女王直々に扱かれたんだったっけ?」

「うん……竜の女王の白銀さんや獄炎竜さん、鋼鉄竜さん、氷牙竜さんに迅雷竜さんとずーっと特訓してたからね……」

「そりゃああなるのも当然か……」

半ば呆然としながら、空を見上げるライトとラウル。

二人の視線のはるか先には、キレッキレに飛び回る竜騎士がいた。

しかもその数は一見鷲獅子騎士団の十五頭に見えるが、時折別の飛竜と入れ替わっていて明らかに参加者が多い。

ライト達にはその正確な数までは把握できなかったが、実は三十頭の飛竜が交代しながら飛んでいた。

一糸乱れぬ動きで機敏に飛び回る飛竜達は、時折絶妙なタイミングで炎や水柱を吐き、豪勢な演出をこれでもか!というくらいに民衆に見せつける。

その度に民達は熱狂的な歓声を上げ続けていた。

思わぬところで竜騎士団の実力が向上していることを知ったライト。

もともとは邪竜の島の討滅戦の戦力強化のためのシュマルリ研修だったが、竜騎士達の実力がこれだけ上がったなら討滅戦当日の働きにもかなり期待できそうだ。

レオニス達が計画している、邪竜の島の討滅戦という重大任務。その決戦日がもうすぐそこまで近づいてきている。

空を駆る竜騎士達の頼もしい姿を眺めながら、ライトは来たるべき日に向けて思いを馳せていた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

午前中の鷲獅子団&竜騎士団飛行ショーを見た後、すぐに全員でラグナロッツァの屋敷を出た。

翼竜牧場の『翼竜わくわくふれあい広場』に出かけるためである。

翼竜牧場には、今でもラウルがライトの代わりにビッグワームの大顎の骨を引き取りに定期的に通っている。

ビッグワームの大顎の骨は、ビッグワームが主食の翼竜達が唯一食べ残す廃棄部分だ。

しかし、翼竜牧場にとっては単なる産廃物でしかない大顎の骨も、ライトにかかれば宝の山となる。何故ならビッグワームの大顎の骨はBCOでは『地虫の大顎』という素材であり、これがイノセントポーションの原料の一つとなっているからだ。

ライトがこの翼竜牧場を一番最近訪ねたのは、昨年の夏休み直前頃。

それ以後何だかんだと忙しくていて、実に半年ぶりくらいの翼竜牧場だ。

久しぶりに尋ねる翼竜牧場に、ライトはワクワクしていた。

そうして翼竜牧場に到着したライト達一行。

いつもは何の変哲もない、若干殺風景気味な翼竜牧場の建物に、デデーン!と掲げられた『ようこそ!翼竜わくわくふれあい広場』というポップなカラーのド派手な看板がライト達観客を出迎える。

ターミナルの入口の扉の左右にも、手描きの可愛らしいデフォルメ翼竜の立て看板が置かれていて、去年と全く同じの手作り感溢れるアットホームさが温かくも懐かしい。

一方、ライトのおかげで翼竜牧場の面々とすっかり顔馴染みとなっていたラウル。

建物入口で受付をしているナディアにも、ラウル自ら気軽に声をかけていた。

「よう、ナディア。お仕事お疲れさん」

「あ、ラウルさんだー!ようこそいらっしゃーい!……あ、ライト君もお久しぶりですねぇ!」

「ナディアさん、こんにちは!ご無沙汰してます!」

猫耳娘のナディアの笑顔の出迎えに、ライトも思わずほっこりしながら挨拶をする。

そしてナディアはライト達の人数を確認しながら、ライトに声をかけた。

「ライト君、今年も翼竜達の餌やり体験をしていきますか?」

「はい!是非ともやりたいです!」

「そしたら餌は、四人分でいいですか?」

「はい、それでお願いします!」

普段は牧場関係者以外が翼竜に近づくのは危険ということで、ライト達部外者はほとんど翼竜の近くに行けない。部外者が翼竜に近づけるのは、翼竜籠を利用する時くらいのものだ。

そんな部外者でも翼竜の近くに行ける唯一のチャンス、それがこの公国生誕祭期間中に催される『翼竜わくわくふれあい広場』である。

そしてこの『翼竜わくわくふれあい広場』の目玉企画が、翼竜への餌やり。

これを一度もやらないという選択肢は、ライトの中には絶対にあり得ない。

シュマルリ山脈で会う竜族や、竜騎士団が飼育している飛竜ともまた違う魅力が翼竜にもあるのだ。

ラウルが四人分の餌代80Gを支払い、四個分の餌入りの樽をナディアから受け取る。

樽を運ぶための台車を借り、ラウルが餌入りの樽を次々と台車に載せて押して運ぶ。

そして四人はいそいそと牧場に出た。

牧場では、主に親子連れが翼竜達と文字通り触れ合っている。

その中にライト達も混ざろうとした、その瞬間。

何と翼竜達が一斉にライト達の方を見た。

「「「「!?!?」」」」

牧場にいる全ての翼竜達の視線を一斉に浴びたライト達。

あまりにも突然の出来事に、ラウルですらびっくりしている。

そして数瞬の沈黙の後、翼竜達はその長い首をライト達に向けて垂れて平伏した。

「「「「!!!!!」」」」

それはまるで土下座のような平伏し方で、翼竜達が完全に服従していることを意味していると思われる。

あまりのことに、ラウルやマキシ、シャーリィも全く意味が分からず固まっている。

だが、ライトだけはこの翼竜達の謎の行動に心当たりがあった。

『あー、もしかして……あの称号のせい?』

ライトが思い浮かんだ心当たり、それは『竜族の友人』に『竜の女王の背に乗りし者』という称号であった。

ライトは去年の夏休み中に、竜王樹ユグドラグスや白銀の君、中位ドラゴン達と知己を得た。

その結果、上記の二種の称号も得ていた。

これらの背景を翼竜達は敏感に察知し、竜族と竜の女王の友であるライトに恭順の意を示したのだ。

しかし、翼竜達の謎行動の理由は推察できても、それを皆にバカ正直に説明する訳にもいかない。ライトの持つ称号はBCO由来のものだからだ。

ここは適当にぼかしつつ、何とか誤魔化すことにしたライト。

ゴニョゴニョと呟きながら言い訳をし始めた。

「ぁー……ぼくもレオ兄ちゃんといっしょに何度かシュマルリ山脈に行ったし、白銀さんや竜王樹のラグスさんとも仲良くしてもらってるから……それで、翼竜達が頭を下げた、のかな……?」

「ああ、そういうことか。翼竜にしてみたら、白銀の君なんて雲の上の存在だろうしな」

「うん。でも……翼竜達もそんなこと気にしないで、今まで通りぼくと仲良くしてくれると嬉しいんだけどな……」

称号のことを伏せて説明したライトの推察に、ラウルも大きく頷いている。

そしてライトはライトで、翼竜達が畏怖してしまったことを寂しく感じてるようだ。

実際『わくわくふれあい広場』と銘打ったイベント会場で、触れ合うどころか畏れられて遠巻きにされるなんて、これ程悲しくて寂しいことはない。

しょんぼりとしてしまったライトに代わり、普段からビッグワームの大顎回収で翼竜達ともそこそこ顔見知りになっていたラウルが翼竜達に声をかけた。

「なぁ、お前達。うちの小さなご主人様は、別に怖い人族じゃないぞ? そりゃまぁ、竜の女王やシュマルリの竜族達の友達ではあるが……」

「それでも一応ちゃんとした人族の子供で、お前達に害を与えたり何かを命令することなど絶対にない」

「だから……お前達も警戒を解いて、うちの小さなご主人様とも仲良くしてやってくれるか?」

一番手近にいた翼竜の鱗をそっと撫でながら、優しい口調で翼竜達に語りかけるラウル。

そんなラウルの言葉に一頭、また一頭と翼竜達が垂れていた頭を上げていく。

どうやらラウルの言葉や気持ちが、翼竜達にもちゃんと伝わったようだ。

そしてライトに最も近かった一頭の翼竜が、その嘴をライトの頬にちょん、とくっつけた。

これは巨大な翼竜の頬ずり代わりの親愛の証であった。

それまで平伏していた翼竜達が、再び自分に近づいてきてくれた。

このことに、ライトが歓喜する。

「……ありがとう!今日は皆にたくさんのビッグワームをごちそうするからね!」

嬉しさのあまり、翼竜の嘴にガバッ!と抱きつくライト。

嘴に抱きつかれた翼竜からしてみればびっくり仰天だが、それでも嫌がって暴れたり振りほどこうとはしない。

この翼竜牧場で飼育されている翼竜は、翼竜籠の運び手だけあって人族への嫌悪感や忌避感はもともとかなり薄い方なのだ。

ラウルの執り成しにより、機嫌も翼竜との仲も直ったライト。

その後翼竜への餌をありったけ自腹購入し、ラウルやマキシ、シャーリィとともに翼竜牧場にいる全ての翼竜達にニコニコ笑顔で振る舞い続けていた。