軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1142話 負けず嫌いな大人達とエヴィパ肉の実食

フラクタル峡谷の辻風神殿を後にしたライト達。

ケセドの街に帰るべく、横並びに飛んでいく。

飛ぶ列は行きと同じくライトを真ん中にして、右にレオニス左にラウルの順で横並びに。

そしてその途中で、レオニスが休憩がてら早速青龍の鱗を空間魔法陣から取り出した。

「あ、レオ兄ちゃん、早速青龍の鱗の欠片を飲むの?」

「おう、もちろんだ。俺はな、パワーアップできるチャンスは逃さん主義なんだ」

「おお、なら俺もさっきもらったばかりの鱗を摂取してみるか」

「二人とも、ホンットそういうところは積極的だよね……」

レオニスに倣い、ラウルも自身の空間魔法陣を開いて先程入手したばかりの青龍の鱗を取り出す。

そして鱗を左手で持ち、根元の方を右手親指と人差し指で摘んでパキッ!折り取った。

それは非常に小さな欠片で、粗挽き胡椒の大きさ程度しかない。

飲み込む欠片の大きさが取り込む力の大きさを左右するかどうかは分からないが、最初のうちは極小サイズで挑むのが無難ではある。

鱗を折り取った指先を、パクッ!と口に含んで欠片を舐め取るレオニスとラウル。

その後ライトが二人に渡したエクスポーションを、欠片とともにゴクン、と飲み込んだ。

その後しばらく無言になるレオニスとラウル。青龍の力が取り込めたのかどうかを確認しているようだ。

そしてどちらからともなく、ふわり、と宙に浮いた。

かと思うと、ヒュン!と勢いよく高度を上げたり、上空からスッ……と降りてきたりしている。

しばし飛行実験をしていた二人の顔が、次第に明るくなっていった。

「おお……こりゃ確かに飛ぶのが今までより少し楽になった気がするわ!」

「ご主人様もか、俺もこれまでになく身体が軽く感じるわ」

二人とも青龍の力を感じ取れたようで、ものすごくご機嫌で周囲を飛び回っている。

それはまるで、新しい玩具を手に入れて大はしゃぎする子供のようだ。

するとここで、空中を飛び回っていたレオニスがライトに声をかけた。

「なぁ、ライト、お前は鱗を四回飲んだんだっけ?」

「うん、四回飲んでようやくそれなりの速度が出せるようになったよー」

「そっか、そしたら俺もあと二回くらい飲んでみるか」

「えッ!?」

「ン? ご主人様が追加で二回飲むなら、俺はあと三回飲まなきゃならんな」

「えッ!?!? 二人とも、何でそんなところで張り合ってんの!?」

レオニスの主張に、ラウルが即時追随する。

何気に負けず嫌いな大人達に、ライトが二人の顔をキョロキョロと何往復もしながら見ている。

そしてレオニス達の顔を見ている間に、ライトの頬がぷくーッ……とどんどん膨れていった。

「ンもー、もともと飛べるレオ兄ちゃんやラウルがそんなに鱗を何度も飲んだら、ぼくが追いつけなくなって置いてけぼりになっちゃうじゃん!」

「いやいや、そこはちゃんと速度調整するから大丈夫だぞ?」

「そうそう、そもそも俺達が小さなご主人様を置いてけぼりになんぞする訳ないだろう?」

「うぐッ……そ、そりゃそうだけどさ……?」

ライトがふくれっ面になったのは、もとから飛べるレオニス達がもっと早く飛べるようになったら自分が置いていかれる!と思ったからだった。

しかしそこら辺はラウルの言う通りで、この二人がどんなに強大な力を得ようとも絶対にライトを置いていく訳がない。

そう言われればライトもそうだと思うので、思わず言葉に詰まる。

そしてそんな会話をしながらも、レオニスもラウルも青龍の鱗をパキッ☆と折り取ってはエクスポーションで流し込む。

ライトの相手をしつつちゃちゃっと鱗を飲み込むあたり、二人とも何気に強かである。

結局レオニスは三回、ラウルは四回、青龍の鱗の欠片を飲み込んだ。

そうなると、ライトも黙って見てるばかりではいられない。

慌ててアイテムリュックから青龍の鱗を取り出し、極小の欠片を折り取ってパクッ!と口に含んだ。

レオニスが三回、ラウルが四回飲んだのなら、自分は五回飲んでおかなきゃ追いつかんでしょう!という訳である。

「……さて、そろそろ行くか」

「うん!……って、レオ兄ちゃん達、早く飛び過ぎてぼくを置いてかないでね? 絶対に絶対だよ?」

「もちろんだとも。早く皆でケセドに帰って、エヴィパ肉の昼飯にしようぜ」

「うん!」

飛び立つ前に、魔力回復の飴玉を口に含むライト達。

そうして青龍の新たな力を得た三人は、再びコルルカ高原の空を飛んでいった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

コルルカ高原からケセドの街に戻ったライト達。

フラクタル峡谷の辻風神殿を出てから、約四十分程度で到着してしまった。

休憩は最初の一回のみで、鱗を飲んだ後は一度も休憩をしなかった。休憩から飛び立つ直前に口に含んだ、魔力回復飴だけで十分だったようだ。

行きよりもさらに時間短縮できたことにライト達、特にレオニスは終始ご機嫌であった。

そうしてケセドの街に入ったライト達。

時間は正午を少し回った頃。まさしくお昼時である。

ライト達はフラクタル峡谷に向かう前に、冒険者ギルドケセド支部のクレスから聞いておいた、オススメの店を一直線に目指した。

その店の名は『迷える小カエル亭』。

昨今の青龍ブームのおかげか、店の外から中を覗き込むとかなり繁盛しているのが分かる。

とりあえず三人で店の中に入り、何とか空席に座ってメニューを見た。

「ほう、エヴィパ丼にエヴィパラーメン、エヴィパの炒めものにエヴィパステーキなんてものもあんのか」

「ぼくはエヴィパ定食!」

「そしたら俺は丼とラーメン、それと卵とじ餡かけにするかな」

「じゃあ俺は、エヴィパステーキとエヴィパカレーにするか」

各自食べたいメニューが決まったところで、レオニスが店員を呼び止めて注文をした。

そうして待つこと約二十分。三人の頼んだものが届けられたところで、一斉に食べ始めた。

「濃いめの味付けだけど、もともとのエヴィパ肉がかなりあっさりめだからご飯に合ってちょうどいいー」

「この丼、鰻丼みたいで濃厚な旨味がたっぷりだな」

「カレーに入っているのはぷりぷりの脂肉っぽい。トロットロに煮込まれた脂肉が 美味(うめ) ぇー!」

それぞれに注文した品々に舌鼓を打つライト達。

ちなみにライトは定食一人前、ラウルは三品各一人前づつの三人前、レオニスはステーキ五人前とカレー五人前の計十人前の注文である。

そしてそれらの中で干し肉が使われているのは、ラーメンと卵とじ餡かけの二品で、それ以外は生肉からの調理だ。

計十四人前をペロリ☆と平らげ、ライト達は会計を終えて次の店に向かう。

次の目的地は肉屋。もちろんそれは主にラウルがエヴィパ肉を購入するためである。

エヴィパ肉屋には、生肉干し肉問わず様々な品が並んでいた。

「ほう、尻尾の方になるにつれてコラーゲン成分が増えるのか」

「そうなんだよ。エヴィパ肉は全体的にあっさり味なんだがね、尻尾の方はコラーゲンのぷりぷり感が強いから煮込み料理やカレーなんかによく合うんだ」

「そしたら胸肉と尻尾肉を20kgづつと、肩肉と首肉と腰肉を10kgづつくれ」

「毎度ありー!」

おじさん店主と雑談がてら、エヴィパ肉の知識の薀蓄を聞いていたラウル。早速エヴィパ肉の各部位を爆買いし始めた。

豪快に買っていくラウルの注文に、店主の顔はホクホクである。

もちろんエヴィパ肉を購入したラウルも超ご機嫌だ。

鼻歌交じりで店を出たラウルに、ライトも嬉しそうに声をかける。

「ラウル、念願のエヴィパ肉が買えて良かったね!」

「おう、蛇肉なんてラグナロッツァではまずお目にかかれないからな。これでまた俺の料理のラインナップが増やせるかと思うと、今から腕が鳴るぜ」

ライトの言葉に、ラウルも微笑みながら応える。

新しい食材には滅法目がないラウル、今日も70kg以上のお買上げで大満足のようだ。

するとここで、ラウルがはたとした顔でレオニスに話しかけた。

「……あ、ご主人様よ、今日の買い物もエヴィパ肉研究費の一環として半額負担よろしくな」

「ン? そんな研究費支給の話なんてあったか?」

「そこはまぁ、ほら、干し肉研究の延長線ってことで、な?」

「ンーーー……ま、いっか。昼に食ったエヴィパ肉メニュー、どれも全部美味かったしな」

先程のエヴィパ肉の代金半額負担を、シレッとレオニスに持ちかけるラウル。

肉の研究費支給云々は、そもそも干し肉での話だったはず。

そして、ラウルが先程の肉屋で買ったのはどれも生肉。肉屋に干し肉もあったのだが、生肉を先に大量購入したので干し肉はまた次回、ということにしたのだ。

レオニスの方は一瞬『ン???』という顔をしていたが、結局はラウルの要求を承諾した。

実はレオニスとしても『迷える小カエル亭』で食べたエヴィパ肉メニューがかなり気に入ったので、それがラウルの得意料理になるのなら研究費支給してもいいか、と思ったのだ。

一見図々しく思えるラウルの要請も、レオニスの食欲を満たせて両者Win-Winの円満解決なのである。

「さ、そしたらそろそろラグナロッツァに帰るか」

「うん!」

「おう」

今日の主な目的を全て達成したライト達。

意気揚々と冒険者ギルドケセド支部に向かって歩いていった。