軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1138話 ライトの飛行能力

右側からレオニス、ライト、ラウルの順に横並びになり、コルルカ高原の上空を飛ぶライト達。

今は一月中旬、真冬とあって空気が冷たく寒い。だが、遮るもの一つない晴れ渡る空の下、ただひたすらに真っ直ぐに飛ぶのは実に気持ちがいい。

とりあえずライトは、先程レオニスに言われたように半分くらいの出力のつもりで飛んでいる。

その速度は、現代日本で例えると自動車の時速30kmくらいの速さだ。

ライトやレオニスが地面を全速力で駆ける時よりも遅いが、もし全力で飛んだら時速60km近くになることを考えると、これはかなり驚異的なことだった。

思っていた以上にライトの飛行速度が早いことに、レオニスもラウルも驚いている。

三人でそのまま飛行を続けながら、レオニスがライトに問うた。

「ライト、この速度が半分の力なのか?」

「うん、そのつもりで飛んでるよー」

「結構っつーか、思ってたよりかなり早いな……魔力がガンガン減っていくような感覚はあるか?」

「うん、魔力が減る感じは一応するねー。でも、魔力回復の飴玉を舐めていれば全然平気ー」

「そりゃいいな……後で俺も青龍の鱗の欠片を飲むか……」

レオニスの矢継ぎ早な質問に、ライトが飄々と答える。

空を飛ぶからには何らかの燃料が必要であり、この場合は飛行者本人の魔力を消費して飛ぶ仕様?のようだ。

そしてその魔力消費は、レオニスが想像するよりもかなり軽微なものらしい。

魔力回復効果がある飴玉一つで今の飛行速度が維持できるなら、コストパフォーマンスとしては最上級の出来。低燃費高コスパの新たな飛行手段に、早速レオニスが導入検討を始めたくらいだ。

ちなみにレオニスは埒内の人間で、レベルやステータスなどの詳細なデータを自身で確認することができない。

なので、体力や魔力の増減は感覚的及び経験則として捉えるのが原則だが、ライトは違う。

マイページで自身のステータスを見ることができるので、朝のルーティンワーク時や他の飛行訓練時にMPの減り具合をこまめにチェックしては把握していた。

それによると、半分以下の力でゆっくりめに飛ぶと一秒間にMP1が消費される。これは、一分でMP60、一時間でMP3600を消費する計算である。

一方、全速力で飛んだ時には一秒間にMP3を消費した。全速力で飛ぶと一分でMP180、一時間でMP10800の消費になる。

ここら辺は自動車の運転と同じで、アクセルを踏み込む方がガソリンを食って燃費が悪くなるようなものか。

そしてラウルはもともと飛行能力のある妖精なので、レオニスほど強い興味は示していない。

ただし、今よりもっと速く飛ぶことができるようになるなら、俺も青龍の鱗が欲しいなー……などと密かに考えていたりする。

相変わらず実利主義の、ちゃっかりとした妖精である。

そんなラウルだが、ライトの飛び方に一つだけ疑問があった。

ラウルはその疑問を、ライトに率直にぶつけた。

「つーか、ライト、何でそんなに飛ぶのが上手いんだ? 人間は飛行種族じゃねぇから、飛ぶこと自体慣れていないはずだが」

「あー、確かにそれは俺も不思議だわ。俺だってこのジャケットにつけてもらった飛行魔法に慣れるのに、かなり時間かかったし」

ラウルの質問に、レオニスも同意しながら頷く。

確かにラウルが疑問に思うのも尤もで、人族とは本来飛行能力を持たない種族だ。

地面を歩いたり走ったりする普段の歩行と違って、地に足がつかない分空中でバランスを取るのはそれなりにコツがいるはず。

ライトが青龍の鱗を入手してからまだ日も浅いはずなのに、どうしてこんなにも上手に飛べるのか。

その答えは、すぐにライトの口から明かされた。

「そりゃもちろん、鱗を飲み込んで飛べるようになってからカタポレンの森で毎日訓練してたもん。毎朝の魔石回収作業の時にも、木の間を縫うようにして飛びながら回収してたし」

「森の中で、木々を相手に飛行訓練してたんか……」

「うん!最初のうちはなかなか木を避けきれなくて、あちこちぶつかりまくってたんだけどさ。十日目くらいにはもうかなり慣れてきたよ!」

「「…………」」

ライトの自己流スパルタ特訓ぶりに、レオニスもラウルも言葉が出ない。

しかし、ライトが語った『習うより慣れろ!大作戦』は実際かなり有効だ。例えばそれは自転車に乗れるようになるための特訓のように、一度コツを掴んでしまえば後は楽々こなせるようになる。

その上ライトは成長真っ盛りの子供。新たな技術や技能を吸収して覚えるのも、大人より何倍も早いのだ。

ライトの飛行能力の凡そを聞き終えたところで、レオニスがライトに話しかけた。

「そしたらライト、今から一分ほど全力で飛んでみてくれ。全力飛行時の魔力の消耗速度なんかも把握しておいた方がいいからな」

「うん、いいよー」

「ラウルもちゃんとついてこいよ?」

「当然だ。つーか、俺は妖精だぞ? いくらご主人様達が規格外だからって、人族相手に空中戦で置いてけぼりを食う訳ねぇだろう」

「上等だ。じゃ、行くぞ」

「うん!」「おう」

レオニスの掛け声に、ライトとラウルが気勢を上げる。

次の瞬間、ライトがギュン!と急加速した。

レオニスもラウルも同時に急加速し、ライトの後を追っていった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

そうしてライト達がコルルカ高原を飛び始めてから、一時間弱が経過した頃。

三人はフラクタル峡谷の上に到着した。

途中魔力回復のためのアークエーテル服用休憩も挟んだので、実際に飛んだ時間は五十分もかかっていない。

前回の初訪問時には二時間かかったことを思えば、その時の半分以下なのだからかなり時間短縮できたと言えよう。

三人は一旦フラクタル峡谷の脇の崖の上に降り立った。

フラクタル峡谷の崖の上で、休憩がてら各々回復剤を飲むライト達。

ライトはぬるぬるドリンク紫、レオニスはエクスポーション、ラウルはアークエーテルを飲んでいる。

三人とも体力的には全然余裕だが、それでも冒険者として探索している最中は常に万全を期しておかねばならない。

これこそが、冒険者として長生きするための秘訣なのである。

「ご主人様達よ、この下に風の女王と青龍がいるのか?」

「ああ。二週間前にもここに来たから間違いない。この崖の下に、風の女王と青龍が住まう辻風神殿がある」

「ほう、辻風神殿という名前なのか。つーか、この谷、深過ぎて下まで見えんな……」

アークエーテルを飲み終えたラウルが、興味津々でフラクタル峡谷の中を覗き込んでいる。

カタポレンの森にはここまで深い峡谷はないので、初めて見る大峡谷がとても珍しく思えるのだろう。

前回は風の女王の拒絶を受けて、仕方なくレオニスが重力魔法を用いて力技で降下した。

だが今回は、そうした拒絶や抵抗は起こらないだろう。何故ならライトもレオニスも、マントやジャケットの内ポケットに青龍の鱗を忍ばせているから。

青龍の鱗は、青龍が認めた者のみに与えられる親愛の証。これがあれば、風の女王も抵抗することなくライト達を受け入れるはずだ。

体力や魔力を全回復させた三人は、再びふわりと宙に浮きフラクタル峡谷の真上に立つ。

案の定、前回のような激しい逆風は吹いてこない。これなら重力魔法を使わずとも普通に下りていけるだろう。

それでもここから先は、慎重に進んでいかなければならない。

ライトを中心にして、右手はレオニス、左手はラウルと手を繋ぐ。

そして三人はゆっくりと下に下降していった。