軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1092話 干し肉の大試食会と押し迫る年の瀬

コルルカ高原でのミッションを無事成功させたライトとレオニス。

ラグナロッツァに帰還し、晩御飯後にお土産を渡したりフラクタル峡谷で起きたことを話して聞かせた。

まずレオニスが空間魔法陣を開き、どっさりと土産が入った紙袋四つを取り出した。

それをライトが軽く仕分けしていく。

「まずラウルには、この三つの袋ね!」

「おぉおぉ、何だ、すげー大量だな? 何かの食材か?」

「うん、ケセドはエヴィルヴァイパーっていう蛇型魔物の肉が名産品なんだって!その干し肉を百個買ってきたんだー」

「ほう、蛇型魔物の干し肉か。蛇肉は一度も食ったことがねぇな」

「売店のおばちゃんによると、癖がなくて美味しいお肉なんだって!」

ライトがエヴィルヴァイパーの干し肉をいくつかテーブルの上に出し、ラウルがそれを手に取り繁繁と眺める。

食通のラウルでも蛇肉は食べたことがないようで、興味津々といった顔をしている。

「いくつか種類があるようだが、もしかして味付けが違うのか?」

「うん。塩味と胡椒味、ピリ辛唐辛子味と激辛唐辛子味の四種類あったから、全部買ってきちゃった。激辛はあまり辛過ぎても困るから十個、他の三つは三十個づつね」

「よし、そしたら今ここで皆で味見してみるか」

ライトから味のバリエーション解説を受けたラウル。

早速空間魔法陣を開いてオリハルコン包丁を取り出し、四つの味のエヴィルヴァイパーの干し肉をそれぞれ四等分に切り分けた。

四つの皿に乗せられた干し肉を、四人は思い思いに口に含んで食べ始める。

「おお、結構塩味が強いな。そのままだとすぐに喉が乾きそうだ」

「そりゃそうだ。この手の干し肉ってのは、水といっしょに食うかスープにするのが定石だからな」

「胡椒味はそこまでしょっぱくないですねー」

「胡椒が保存の役割を果たすからな、そこまで塩味をつけなくてもいいんだ」

四人は口に含んだ干し肉を、しばしもきゅもきゅと噛み続ける。

干し肉を食べ慣れないラウルやマキシに、レオニスが都度解説している。

「このピリ辛も美味しいねー。でも、ピリ辛でもこの辛さなら、激辛はもっと辛いんだよねぇ……」

「だろうなぁ……ラウル、この一欠片を四つに分けてくれ」

「はいよー」

四人とも一番最後に残しておいた激辛唐辛子味。

その前に食べたピリ辛も結構辛さがあったので、その上をいく激辛に皆慎重になる。

ラウルが四等分した一欠片をさらに四等分し、切り分けたものをライト達に一つづつ渡していく。その間にレオニスが空間魔法陣から水筒とコップを取り出し、四人分の水を用意している。

そうして親指の爪大になった激辛唐辛子味を、四人は一斉に口に入れた。

「「「「……辛ッ!」」」」

干し肉が舌の上に乗っかった瞬間から、四人の口の中に強烈な辛さが迸る。

皆一斉にコップを手に取り、急いで水をゴクゴクと飲み続ける。

コップの水を飲み干し、水筒から継ぎ足してまた水を飲む。

しばらくして何とか口の中の辛さが収まり、はぁー……と一息つくライト達。

「こりゃ激辛なんてもんじゃねぇな……」

「だね……十個買っちゃったけど、ラウル、これ使いこなせる……?」

「そのままだと厳しいが、カレーや麻婆豆腐なんかには使えるかもしれん」

「ああ、それいいね!この干し肉自体は美味しいもんね!」

「そゆこと」

激辛唐辛子味のあまりの辛さに、ライトがその使い道を心配そうに尋ねるも、ラウルはちゃんと使いどころを見い出していた。

そう、ライトが言うように干し肉自体の味はかなり美味なのだ。

最初は噛みごたえがあるのに、噛んでいるとすぐに柔らかくなって旨味が滲み出してくる。

肉の旨味がたっぷりの割に癖がなく、鶏肉のようにさっぱりとした味はどんな料理にも合いそうだ。

「今日ご主人様達が出かけたのは、ケセドだっけ?」

「そうそう、ケセドの街からコルルカ高原に行って、コルルカ高原の中にあるフラクタル峡谷に行って、その谷底にある辻風神殿で風の女王様に会って、河原で青龍の卵を見つけて孵化させてきたんだー。この干し肉も、帰る直前にケセド支部のギルド売店で買ってきたんだ!」

「相変わらず濃い一日を過ごしてきたんだな……」

何気なく問うたラウルに、ライトは今日一日のスケジュールをさらっと披露する。

ライトは事も無げに言っているが、その過密スケジュールにラウルとマキシの頬が若干引き攣っている。

そんな二人に構うことなく、ライトは次の土産を出すべく紙袋をガサゴソと漁る。

「あ、干し肉以外にもちゃんとお土産あるんだよー。エヴィルヴァイパーの皮で作った革製品も、ケセドの名産品の一つなんだって!」

「おお、格好いい小銭入れじゃないか」

「頑丈そうな革で長持ちしそうですね!」

ラウルには小銭入れ、マキシには道具入れポーチ。

どちらもエヴィルヴァイパーの皮で作られた、赤茶色の革小物である。

土産を受け取ったラウルとマキシ、二人とも嬉しそうに蓋を開けたり中の作りを確認したりしている。

その間にライトはレオニスへの土産を渡し、自分用のペンポーチも披露する。

「レオ兄ちゃんにはこのベルトで、ぼくのはペンポーチね!」

「お、俺の分も買っといてくれたのか、ありがとうな」

「その代わり金貨一枚全部使っちゃったから、お釣りは1Gもないけどね」

「別に構わん、渡した分を有効活用できたなら十分だ」

レオニスに渡したのは黒のベルト。

鋲など一個もついていない、至って普通のシンプルな革ベルトなので普段使い用である。

皆それぞれにライトの心尽くしの土産を受け取り、改めて礼を言う。

「ライト、たくさんの土産ありがとうな。干し肉も絶対に美味しい料理にしてみせるから、楽しみにしててな」

「うん!ラウルが料理してくれたら、絶対に美味しくなるよ!」

「こんな素敵な道具入れをもらえて、すっごく嬉しいです!一日も早くこの道具入れに入れられる道具を入手しますね!」

「マキシ君もアイギスで毎日頑張ってるもんね!」

「また風の女王や青龍に会いに行こうな」

「うん!その時はケセドの街で美味しいものを食べたいな!」

最後のレオニスとライトの会話に、ラウルが早速食いつく。

「ご主人様達よ、次にケセドに行く時には俺も連れてってくれ。そのエヴィルヴァイパー?という蛇肉を買いに行きたいし、定食屋なんかで現地の料理も食ってみたい」

「フフフ、ラウルなら絶対にそう言うと思ってたよ!」

「だなwww もちろん連れてってやるから、それまでに蛇肉の購入資金を確保しとけよ」

「もちろんだ!」

予想通りケセド行きを望むラウルに、他の三人はくつくつと笑う。

ただでさえ美味しい食材には目がないラウルのこと、しかもそれが滅多にお目にかかれない蛇肉とあっては絶対に見逃すはずがないのだ。

「……よし、明日はエンデアンとネツァクとツェリザーク、全部梯子するか」

「えー、一日に三ヶ所も回るのー!?」

「こないだのセンチネルの街でも、干し肉購入で結構散財したしな。またガッツリ稼いでおかんと」

「ラウルのことだから、行った先々でまた蟹や魚介類をたくさん買っちゃうんじゃないのー?」

「何ッ!? そんなことはな……いとは言い切れん、かな……」

ケセドの蛇肉購入のために、ラウルは明日にも殻処理依頼三昧をするつもりらしい。

実際三日前にライトと出かけたセンチネルの街で、ラウルは様々な干し肉を大量購入して10万Gもの散財をしていた。

その穴埋めのためにガンガン働くのはいいが、問題はその行き先にもラウルの大好きな魚介類が名産品として売られていること。

そう、稼いだ先から食材を大量購入していては、いつまで経っても貯金などできそうにないのである。

ラウル自身にもその自覚はあるようで、マキシのツッコミに最初は否定するつもりが途中からゴニョゴニョと言い淀んでいた。

そんなラウルをライトは笑いながら見ていたが、ふとレオニスの方に向いて話しかける。

「レオ兄ちゃん、ラウルに干し肉の研究費用を少しでいいからさ、出してあげてくれる?」

「そうだなぁ、ラウルに干し肉を極めてみろって言ったのは俺だしなぁ……よし、そしたらライトの言う通り、ラウルが購入した干し肉の代金の一部を俺が負担しよう」

「ホントか!? ご主人様達、ありがとう!」

ライトの陳情に、レオニスも顎に手を当てつつ頷く。

ラウルが干し肉を研究することになったきっかけは、ライトがセンチネルの街に出かけるための口実としてラウルを釣ろうとしたのが始まりだった。

センチネルの街は干し肉が名産品と聞いても、最初は乗り気ではなかったラウル。そのラウルに『干し肉は冒険者の主食!お前も冒険者になったなら一度は食べるべき!』『何なら干し肉を極めろ!』と諭したのは、他ならぬレオニスである。

それが原因でラウルが散財しているなら、言い出しっぺである自分も少しくらいは研究費用を負担してもいいか……とレオニスも納得したのだ。

「よーし、これで正月のご馳走も豪華にできるぞ!」

「ラウルは干し肉の研究だけじゃなくて、ナヌスの結界の勉強もしなくちゃだし、これからまた忙しくなるねー」

「おう、でも全部自分がしたくてやることだからな、苦にもならんさ」

「うん、ラウルならきっと全部上手くできるよ!頑張ってね!」

今から張り切るラウルに、ライトが励ましの言葉をかける。

そしてレオニスも、ライトに続きラウルに声をかける。

「ラウル、明後日は餅拾いがあるのを覚えてるか?」

「もちろんだ。今年は近隣十二軒の邸宅で餅拾いの許可を得ているからな、明後日は明け方から一日中餅拾いする予定だ」

「十二軒か……そりゃまた随分大量に請け負ったもんだな?」

「これも皆小さなご主人様の方針、『円満なご近所付き合い』のおかげだな。そして、もらえる物は全部もらう。それが聖なる餅、食材とあればなおのことだ!ひとつ残らず全部俺がいただくぞ!」

天高く掲げた拳にグッと力を込めて握りしめながら、高らかに宣言するラウル。その姿はまるで、どこぞの覇王もしくは拳王を彷彿とさせる世紀末的オーラを感じさせる。

ラウルが楽しみにして止まない餅拾いは大晦日。その来たる日は明後日に迫っているとなれば、ラウルが燃え盛るのも当然のことだ。

しかし、それにしても貴族邸宅十二軒分の餅拾いとは、何とも欲張ったものだ。

きっと朝から夕方まで丸一日かかることだろう。

「ま、明日出かけるにしてもあまり疲れない程度にな。明後日そんだけ働き回るなら、その分の体力も温存しとけよ」

「ありがとうよ。ご主人様の忠告を胸に、今年の残り三日を全力で過ごすとしよう」

レオニスの忠告を快く受け入れるラウル。

ライト達が過ごすサイサクス世界、ラグナ暦813年も残りあと三日。

押し迫る年の瀬、夜は静かに更けていく。

そんな静かな夜の中、ラグナロッツァの屋敷はライト達四人の明るい声で満ちていた。