軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1091話 ケセドの名産品

フラクタル峡谷を後にしたライト達は、そのままコルルカ高原を抜けてケセドの街に戻った。

帰りはもうめんどい&かなり疲れた!とライトが主張し、おんぶでの空中一直線帰還をおねだりしたので、行き程時間はかからなかった。

ケセドの街に入り、冒険者ギルドに向かう道すがら二人はのんびりと会話をしている。

「俺はケセド支部で、風の女王の様子や青龍誕生の報告をしなきゃならん。ライト、お前はどうする?」

「ンー、そうだねー……レオ兄ちゃんがお話終わるまで、ギルド売店や依頼掲示板でも見てるよ!」

「そうだな、そうしてもらえると助かる。そしたらこれで何か土産になりそうなもんでも買っててくれ。確かこのケセドは何だかの肉が名物だったはずだから、ラウルが好きそうな食材だったらたくさん買ってやってな」

「はーい♪」

レオニスは深紅のロングジャケットの内側から小銭入れを取り出して、ライトに金貨一枚を渡した。

土産資金に約十万円とは太っ腹だが、ラウル用の土産の食材資金と思えば納得だ。それは土産としてだけでなく、今回も役に立ってくれた聖なる餅約一万個の譲渡への礼も含まれているのだから。

そして、金貨を受け取ったライトが非常にご機嫌なのは、土産資金ゲットの喜びだけではない。

レオニスが取り出した小銭入れが、以前自分が渡したお土産だったからである。

黄金週間の時に、同級生達と観に行ったシリウス大サーカス団。その興行のグッズ売り場で買ったレオニスへのお土産、グラトニーエイプの毛でできた小銭入れ。

あの時に渡した小銭入れ、ちゃんと使ってくれてるんだなぁ……と思うと、ライトは無性に嬉しくなった。

そして冒険者ギルドケセド支部に到着し、二人して建物の中に入っていく。

レオニスはまず受付窓口に向かう。

ライトは別についていく必要はないのだが、クレスの顔見たさにホイホイとついていく。

「よう、クレス。ただいま」

「あっ、レオニスさん!おかえりなさい!」

「朝に話した通り、フラクタル峡谷で風の女王に会ってきた」

「ホントですか!?」

「ああ。他にも報告したいことがあるから、奥の方で話していいか?」

「もちろんですぅ!ささ、奥の会議室に移動しましょう!」

レオニスの報告に、クレスは喜色満面の笑みで椅子から立ち上がる。

そしてレオニスはライトに向かって声をかけた。

「じゃ、ライトは売店見てきな。ちょっと時間がかかるかもしれんが、建物の外には出るなよ」

「分かってるよ!レオ兄ちゃんもいってらっしゃーい!」

ライトに向けて手をひらひらさせながら、クレスの後を追うレオニス。

そんなレオニスをライトは見送りつつ、レオニスが角を曲がり姿が見えなくなると早速売店探しに動き出していった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

ケセド支部の一階内を歩いて回るライト。

広間自体そこまで大きなものではないので、その横にある売店もすぐに見つけることができた。

売店の面積もあまり広くはないが、それでも商品棚には数々の品が所狭しと陳列されている。

早速ライトは売店に入り、品定めを始めた。

「ンー、ここにはご当地ぬるぬるドリンクはないのか……ちょっと残念ー」

「ほほう、『エヴィルヴァイパーの干し肉』とな……エヴィルヴァイパーてアレだよな、あのデカい蛇型魔物のことだよな……」

「蛇肉を売っているところってなかなか見ないし、ラウルも干し肉の研究を始めたばかりだからこれにしようっと!」

ライトは商品棚に並べられていた『エヴィルヴァイパーの干し肉』を発見し、早速購入を決める。

大きさはレオニスの手を広げたくらいあり、お値段は一個50G。一個あたり500円と考えれば妥当か。

味は『塩味』『胡椒味』『ピリ辛唐辛子味』『激辛唐辛子味』の四種類。

百個買っても5000G、金貨一枚の半分で済む。残りの5000Gで何か他のものも買えるとあれば、ライトが即決するのも当然である。

まずは売店備え付けの買い物カゴを二つ持ってきて、ドサドサとエヴィルヴァイパーの干し肉を入れていく。

一つ目のカゴに五十個入れたところで、二つ目のカゴにも同じくドサドサと五十個入れたライト。

激辛唐辛子味は非常に危険な香りがするので、ひとまず十個だけ買うことにして、他の三種類を各三十個で計百個。

カゴいっぱいに入れた干し肉を会計所に運んでいった。

カウンターにドン!と乗せられた山盛りのカゴを見て、会計のおばちゃんがびっくりした顔をしている。

「あらあらまぁまぁ、こんなに買っていってくれるのかい? 坊やはここら辺じゃ見かけない顔だけど、誰かといっしょにここに来たの?」

「はい!いつもはラグナロッツァに住んでいて、今日は冒険者をしているお兄ちゃんといっしょに来たんです!」

「まぁ、そうなのー。道理で干し肉を爆買いする訳だわねぇ。そのお兄さんは、このエヴィパの干し肉が好きなのかい?」

「レオ兄ちゃんが好きかどうかは分からないけど、干し肉を欲しがる別の冒険者の知り合いがいるんですー」

「その知り合いさん、エヴィパの肉を気に入ってくれるといいねぇ。癖がなくて美味しい肉なんだよ」

気さくに話しかけてくる会計所のおばちゃんに、ライトも愛想よく受け答えしている。

おばちゃんの話からすると、エヴィルヴァイパーの略称は『エヴィパ』らしい。

干し肉の個数を数えながら紙袋に入れていき、なおかつ 買い物客(ライト) とも気軽に雑談できるおばちゃんは実に器用かつ有能だ。

おばちゃんが紙袋に干し肉を入れている間に、ライトはおばちゃんに相談を始めた。

「この干し肉以外にも、何かお土産に良さそうなものはありますか?」

「そうだねぇ、現役で冒険者をしているお兄さん相手なら、エヴィパの革製品なんかどうだい? 手袋なんかはいくつもサイズがあるから、できることなら使う本人が試着するのが一番なんだけど」

「革製品ですか……手袋以外にも何かあるんですか?」

「革で作れる小物なら一通りあるよ。小銭入れにポシェット、大きめのカバンとかね」

「へー、いいですね。ちょっと見てきますねー」

「どうぞどうぞ♪」

会計のおばちゃんイチオシのオススメ土産は、エヴィルヴァイパーの皮を 鞣(なめ) した革製品だという。

ライトはおばちゃんの勧めに従い、干し肉以外のものがある棚を見に行く。

小物なら一通りある、というくらいなので、いろんな品があるのだろう。

ちなみにこのエヴィルヴァイパーという蛇型魔物、BCOでも出てくる。

口がものすごく大きくて、ワニ並みに縦に大きく口を開けて獲物に襲いかかる。長くて鋭い牙を持ち、体表は赤茶けて罅割れたような鱗に覆われている。

スマホの画面の中の絵だけでは、その大きさは分からなかったが。成人男性の手程の大きさもある干し肉になるくらいなら、実物はかなりの巨体なのだろう。

そしてライトの前に並ぶ、数々のエヴィルヴァイパーの革製品。

おばちゃんが言っていたように、革手袋やカバン類に財布類、ベルトやコースター、眼鏡ケースにペンポーチなどもある。いわゆる革小物というやつだ。

色は基本的に赤茶色だが、黒や緑、青や赤など色付きのものもある。脱色加工などもなされているようだ。

思った以上にたくさんの種類があり、目移りしてしまう。

あれもいいな、あ、これもカッコイイ!等々あれこれ悩んだ挙句、ライトはいくつかの品を手に持って会計所に戻った。

「さっきの干し肉とお会計はいっしょで、袋は別々にお願いします!」

「はーい、たくさんのお買上げありがとうね!」

干し肉百個に加えてさらに買い物をしてくれるライトに、会計のおばちゃんはますます愛想よく返事をする。

ライトが追加したのは、レオニスに革ベルト一本(800G)、ラウルに小銭入れ一個(500G)、マキシに革製道具ポーチ(500G)、クレア十二姉妹用に眼鏡ケース十二個(250G×12=3000G)、そして自分用のペンポーチ一個(200G)。

エヴィルヴァイパーの干し肉百個5000Gと合わせて、締めてジャスト10000G。金貨一枚分ぴったりのお買上げである。

「全部合わせてちょうど10000Gだよ」

「これでお願いします」

「お釣りはなしね。私もこの売店で長らく働いてるけど、ここで金貨を受け取るなんて初めてだよ!」

代金の金貨をカウンター越しにおばちゃんに渡すライト。

おばちゃんはおばちゃんで、滅多に見ることのない金貨を受け取り繁繁と眺めてから引出し内の金庫にササッ、と仕舞う。

そしておばちゃんは、ライトに心配そうに声をかけた。

「……って、たくさん買ってくれたのはいいけど、こんなに大量の荷物を坊や一人で持てるかい?」

「大丈夫です!お兄ちゃんのお仕事が終わったらここに来てくれるし、そしたらお兄ちゃんに持ってもらいますから!」

「ああ、そうか、今日は冒険者のお兄さんといっしょに来たって言ってたものね」

たくさんの買い物をすれば、必然的にたくさんの荷物を持つことになる。

爆買いの結果発生した大量の荷物に、会計のおばちゃんが心配するのも無理はない。

ライトとしても、本当ならとっととアイテムリュックに仕舞い込みたいところだが、会計のおばちゃんのいる前で収納することはできない。

だが、レオニスが話を終えてライトを迎えにここに来れば全て解決する。

レオニスが人前で空間魔法陣を使う分には、何の問題もないのだから。

そしてライトはレオニスの仕事上がりを待ちがてら、会計のおばちゃんと雑談で盛り上がる。

話す内容は、主にエヴィルヴァイパーの干し肉の使い方だ。

干し肉は冷暗所で保存すれば一年は保つとか、水に一晩浸けて戻すとより美味しく食べられるなどの基本情報に加えて、カレーの具や戻した肉をミンチにしてハンバーグにしても美味しいなどの料理情報も聞かせてくれた。

途中二度程他の買い物客が会計に来たが、それ以外はライトと話をしてくれる会計のおばちゃん。とても気の良い人である。

そんな風にライトと会計のおばちゃんが過ごしていると、仕事を終えたレオニスがライトを探して売店を覗きに来た。

ライトの姿を見つけたレオニスが、会計所に進み寄り合流する。

「お、ライト、こっちにいたか」

「あッ、レオ兄ちゃん!おかえりー!」

「何か良い土産はあったか?」

「うん!ラウル用にエヴィルヴァイパーの干し肉百個と、他にもいくつか皆にお土産を買ったよ!」

「おおそうか、そりゃ良かったな」

良い土産を買えたことを嬉しそうに話すライトに、レオニスもニッコリと微笑みながらライトの頭を撫でる。

そして、会計のおばちゃんはと言うと―――

「……あ、あなた、金剛級冒険者の、レオニスさん……?」

「ン? 確かに俺はレオニスだが……」

「キャーーーッ!あの有名人さんの本物に会っちゃったーーー!握手してくださーーーい!」

「「!?!?!?」」

会計のおばちゃんの突然の変貌に、ライトもレオニスもびっくり仰天する。

売店のおばちゃんといっても、冒険者ギルドに務めている以上冒険者のことは一般人よりも詳しい。

そして、ここはラグナロッツァではなくケセド。小さな街で世に名を馳せるような人物は滅多にいない。

故に会計のおばちゃんがミーハーと化すのも無理はなかった。

会計のカウンターから飛び出して、レオニスの手を両手で握りしめる会計のおばちゃん。ブンブン、ブブブン!と勢いよく縦に振りながら存分に握手する。

いきなり持て囃されたレオニスは若干引き気味だが、ほんのりと頬を染めながら満面の笑みで嬉しそうに握手するおばちゃんの顔を見ると、突き放すのも躊躇われる。

そのうちレオニスの方もおばちゃんの笑顔に絆されて、苦笑いしながらも握手に応じ続ける。

そんなレオニスをさり気なく助けるべく、ライトがおばちゃんに向かって話しかけた。

「おばちゃん、さっきの買い物はレオ兄ちゃんが持ってくれるので、ここに持ってきてもらえますか?」

「ン? あ、ああ、そうだったね!まだお買い物の途中だったね!」

ライトに促されたおばちゃん、レオニスの手を離してすぐさま会計カウンター内に置いてあった複数の紙袋を取り出して持ってきた。

「はい、この四つね!」

「レオ兄ちゃん、会計はもう済ませてあるからよろしくね」

「はいよー」

おばちゃんが持ってきた四つの紙袋。そのうち三つはエヴィルヴァイパーの干し肉で、もう一つには干し肉以外の革小物が入っている。

ライトに持ち帰りを頼まれたレオニスは、早速その場で空間魔法陣を開いてササッと仕舞い込んだ。

大きな紙袋四つをあっという間に仕舞い込んだレオニスを、おばちゃんは呆気にとられた顔で見ていた。

「はぁー……これが空間魔法陣……おばちゃん、こんなの初めて見たわぁー……」

呆けたような声で感嘆するおばちゃんに、ライトが明るい声で話しかける。

「おばちゃん、ありがとう!さ、レオ兄ちゃん、行こ!」

「おう」

「坊や、たくさん買ってくれてありがとうねー!よかったらまた買い物しに来てねー!」

最後までニコニコ笑顔で接客してくれたおばちゃんに、ライトも嬉しそうに頭をペコリと下げる。

そして二人はケセドの街からラグナロッツァに帰っていった。