軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1045話 二つの宝珠

ヴィゾーヴニルとグリンカムビがラウルの野菜をたらふく食べて、それはもう超満足そうな顔になる。

そんな二羽の神鶏を見て、光の女王も雷の女王も上機嫌である。

『グリンちゃん、お腹いっぱい美味しいものを食べられて良かったわねぇ』

『ヴィーちゃんもたくさん食べたわね!もっともっと食べて、もっともっと大きくなるのよ!』

白いふわもふツヤッツヤな神鶏達の羽を撫でつつ、嬉しそうに話しかける二人の女王。

ただでさえ巨大なヴィゾーヴニル達。これ以上大きくなったら、女王達が住む神殿の建物をも上回る巨体になりそうだ。

「さて……そしたら女王達よ、ヴィーちゃん達がひと休みしてからでいいから、宝珠作りを頼めるか?」

『ええ、いいわよ』

『ン? 宝珠作り? 何のこと?』

「……ああ、雷の女王にはまだ許可をもらってなかったな。実は俺、近々大量の魔力を使う作業をしなくちゃならなくてな―――」

まだ宝珠作りの話を聞いていなかった雷の女王に、レオニスが改めてその事情を話していく。

レオニスが復元魔法を使うこと、そしてそこに至るまでの経緯。それらを二人の女王は静かに聞いていた。

『まぁ……それは大変だったわねぇ』

「まあな。だが、本当の正念場はここからだ。何としても、何が何でも聖なる聖遺物を修復しなきゃならん。そのために、女王達にも力を貸してほしいんだ」

『もちろん私達も協力するわ!』

『ええ。この天空島にまで手を出す悪逆無道の輩―――それらを倒すためなら、いくらでも手を貸しましょう』

「ありがとう!」

改めて二人の女王の協力を取り付けたレオニス、パァッ!と明るい笑顔で礼を言う。

そしてその話を食休み中の神鶏達も聞いていたのか、ヴィゾーヴニルとグリンカムビも『コケッケコ!』『クエケコケ!』と勇ましい声を上げる。

まるで『そうだそうだー!』『ワシらも協力するでー!』とでも言っているかのような神鶏達の反応に、レオニスも嬉しくなって声をかける。

「おお、そうか、ヴィーちゃんもグリンちゃんも協力してくれるのか、ありがとうな!」

『コケッ!』

『クエッ!』

嬉しそうにグリンカムビの羽を撫でるレオニスに、ヴィゾーヴニルもグリンカムビもコクコク!と頷く。

天空島の守護神達と人族の和やかな交流に、二人の女王達も微笑みながらレオニスに声をかける。

『では早速宝珠を作りましょうか』

『そうね!そしたらレオニスとラウルは、ここから少し離れてたところにいてくれる?』

「分かった」

「おう」

今から宝珠を作るという光の女王に、雷の女王がレオニス達に後ろに下がるよう要請する。

これは、宝珠作りでレオニス達の身に万が一にも害が及ばぬようにするためである。

水の女王が宝珠を作った時のことを考えると、光の女王も雷の女王も強烈な光を扱うことが予想される。特に雷の女王が出す力は、ものすごい電気量となるだろう。

そのことはレオニスにも容易に想像できるので、雷の女王の進言に従い後ろに退っていく。

というか、レオニスが後退するより先にラウルが小走りでとっとと神殿の柱の陰に隠れている。

あー、そういやこいつ、火より何より雷が苦手だって話だったな……とレオニスは思いながら、ラウルが隠れた柱の前に立つ。

ラウルが雷を苦手とするのは、木から生まれた妖精だからである。

これは目覚めの湖で貝を獲っていた時に判明したのだが、その時にライトから『雷魔法はスライムに有効』と聞き、すぐラウルも雷初級魔法を会得した。それに、雷の女王とも知己を得た今は昔程の忌避感はない。

だが、料理で毎日使う火と違って雷はなかなか身近なものではない。

なので、ラウルの雷に対する恐怖感はまだ完全に克服できていないのだろう。

ちなみにパラスは二人の女王の間に立ち、いつ何時でも手を貸せるように控えている。さすがは属性の女王達を日々支える警備隊隊長である。

そしてレオニス達が十分な距離を取ったことを確認した女王達は、それぞれの神殿守護神に優しく語りかけた。

『グリンちゃん、今から宝珠を作るから協力してね』

『コケケッ!』

『ヴィーちゃんもよろしくね。いつも美味しいお野菜を届けてくれるレオニス達のために、私達ができることをお返ししていきましょうね』

『クエケコ!』

首を下げて女王達に頬ずりする神鶏達。

二人の女王も、神鶏達を愛おしそうに撫でる。

そして女王達はそれぞれ離れるように反対側に歩いていき、かなりの距離を取ったところで力を解放し始めた。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

光の女王も雷の女王も両手を天に向けて高く掲げ、それぞれが魔力を放出して巨大な光の塊を形成していく。

光の女王の塊は真夏の白昼の太陽のように眩しく、雷の女王の塊は光の女王の塊に負けないくらいに眩しい上に、バチバチバチ!という音を立てている。

その眩しさは、かつてヴィゾーヴニルがカタポレンの森でユグドラツィの内に巣食う邪悪を討ち滅ぼした時の浄化砲を彷彿とさせる。

あまりの眩しさにレオニスは右手を目の上に翳し、ラウルは柱の陰にサッ!と隠れて光の直射を避ける。

光の塊と雷の塊、二つの膨大な魔力の塊が接触するギリギリまで大きくなったところで、神鶏達が塊に向けて『クエエエェェエエ工!』という鳴き声を浴びせた。

その声はとても力強く、夜明けでもないのにものすごい破邪の力が漲っている。これは、さっきラウルから巨大野菜をたらふくご馳走してもらった効果であろうか。

巨大な力の塊が、神鶏の鳴き声を浴びてみるみるうちに凝縮していく。そして最終的には女王達の両手にすっぽり納まるくらいの丸い球になった。

光の女王の両手には白く輝く眩い宝珠が、雷の女王の両手には白い輝きの中にもうっすらと黄色がかった宝珠が乗せられている。

それこそが【光の宝珠】と【雷の宝珠】であった。

無事出来上がった宝珠を手に、二人の女王がレオニス達を呼ぶ。

『宝珠ができたわよ』

『もうこっちに来ても大丈夫よー!』

女王達の呼ぶ声に、レオニスは普通に駆け出し、ラウルはそそくさと神殿の柱の陰から出てきた。

そして出来上がった二種の宝珠を見て感嘆の声を上げる。

「おおお……これが【光の宝珠】と【雷の宝珠】か……」

「確かにこりゃすんげー魔力量だな……これ、手で触っても大丈夫なのか?」

『もちろんよ。別に痺れたりなんかしないわ』

「ご主人様、せっかくだから俺も触らせてもらってもいいか?」

「ああ、いいぞ」

生まれて初めて見る宝珠というものに、興味津々のラウル。

レオニス達の許可をもらい、早速その手に取ってみた。

「おお、確かに痺れることはないな!」

『でしょでしょー?』

「つーか、こんな高魔力なもんがこの世に存在するとは……世界は俺の知らないことで満ち溢れているんだな」

雷の女王から宝珠を直接手に乗せられたラウル、目を見開きながらびっくりしている。

【雷の宝珠】を直接手に持っても、痺れないどころかほんのりとした温かみが感じられる。

地上に落ちれば生木をも裂き燃やす雷だが、あの苛烈な力の奔流も属性の女王が扱えばこんな風になるのか―――ラウルは目から鱗が落ちる思いだった。

ラウルが感慨に浸る中、レオニスが二人の女王に改めて礼を言う。

「光の女王、雷の女王。こんな貴重なものを快く作ってくれて、本当にありがとう」

『どういたしまして。いつも貴方達には良くしてもらっているもの、これくらいお安い御用よ』

『そうよそうよ!私達天空島に住む者達は皆、貴方達がしてくれることに感謝しているのよ!』

『ケケココ!』

『クエクエ!』

頭を下げて礼を言うレオニスに、二人の女王だけでなく神鶏達もにこやかに返事をしている。

ラウルがレオニスに【雷の宝珠】を渡し、光の女王も出来上がったばかりの【光の宝珠】を手渡す。

レオニスはすぐに空間魔法陣を開き、二つの宝珠を大事そうに仕舞い込んだ。

するとここで、光の女王がレオニスに声をかけた。

『ねぇ、レオニス。その剣の修復作業?は、いつするの?』

「あー、今から十一日後にすることが決まっている」

『それは、昼間というか日中にやるのよね?』

「もちろん」

レオニスに対し、いくつかの質問をする光の女王。

それはレオニスがいつ復元魔法を使うのかに関する質問ばかりで、光の女王に何か考えがあるようだ。

『そしたらその時に、光の精霊達に貴方に力を貸すよう伝えておきましょう』

「本当か!? そりゃありがたい!」

『空に向かって光の精霊に来るよう声をかけなさい。そうすれば、すぐに光の精霊達が貴方のもとに集うわ』

「分かった、ありがとう!」

光の女王からの思わぬ申し出に、レオニスが破顔する。

宝珠という魔力補充の最強アイテムだけでなく、光の精霊達からも直接力を貸してもらえる。レオニスにとって、これ程心強いことはない。

ちなみにラウルの横にいる雷の女王が、光の女王の提案を聞いて『なら私も雷の精霊を派遣しようかしら?』と呟いているが、横のラウルに「ご主人様が感電しちまうから、それだけはやめておいてやってくれ」と即時止められていた。

なかなか出番が回ってこない雷の女王、ラウルに諌められてしょんもりしているが、雷の持つ力は絶大過ぎるが故に使いどころが難しいのが実情だ。

だがしかし、出番がなくてしょげる雷の女王があまりにも可哀想なので、ラウルが雷の女王の耳元でこっそりと呟く。

「……そしたら今度、俺が目覚めの湖で貝採りをした時にでも、雷の精霊の力を貸してくれるか? 湖で貝を仕留めるのに、いつも雷魔法を使ってるんだ」

『え、ホント!? もちろんいいわよ!』

「その時が来たら雷の精霊を呼ぶから、よろしくな」

『任せなさーい♪』

ラウルの提案に、パァッ!と嬉しそうな顔になる雷の女王。

その花咲くような美しい笑顔に、朴念仁のラウルが射抜かれることは決してないが。もしこれがライトだったら、心臓に百本くらい矢が刺さって気絶すること間違いなしである。

こうしてレオニスは無事二つの宝珠を手に入れて、ラウルもまた雷克服の大きな一歩となった一日だった。