軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第1044話 新たなる決意と闘志

レオニスがパラスのために描いた空間魔法陣の図を渡した後、三人はログハウスの外に出た。

外の畑では、様々な野菜が栽培されている。カブ、白菜、大根など、今ラウルがカタポレンの畑で育てているものと似たようなラインナップである。

ちなみにねぎ類、ニラ、にんにくなど、犬猫等の動物にも禁忌とされる品目は、ニワトリにも禁忌とされているので、神鶏達にも出していない。

いや、神鶏とそこら辺のニワトリをいっしょくたにするのも甚だ失礼かとは思うのだが。サイズと役割以外の見た目や姿形だけで言えば、神鶏達はほぼほぼニワトリに違いない。

万が一にも神鶏達がお腹を壊したり体調を崩してはいけないので、忌避品目は最初から与えないのが最善なのである。

外の畑を眺めながら、レオニスが感心している。

「おおー、この島の畑ももうすっかり軌道に乗ったようだな」

「ああ。これはひとえにラウルの指導の賜物ではあるが、我ら天使達もものすごーく頑張ったのだぞ? ヴィー様やグリン様に、美味しい野菜を食べていただきたい一心でな!」

「そりゃ良いことだ」

「だな。努力して良い成果を得るというのは、何にも勝る経験値だ」

パラスがラウルを持ち上げつつ、自分達の頑張りもちゃんと主張する。

フッフーン☆とドヤ顔で功績を自慢するパラス。それはまるで一所懸命お手伝いをした後に、喜び勇んで「褒めて褒めてー♪」と駆け寄ってくる幼子のようだ。

天使達を束ねる警備隊隊長パラスの、何とも可愛らしい一面にレオニスもラウルも和みつつ微笑む。

「それにな……ヴィー様やグリン様が美味しそうに野菜を食べる姿を、女王様方もとても嬉しそうに眺めながら見守っておられるのだ。ヴィー様達だけでなく、女王様方にも喜んでいただける……我ら天使にとって、これ程喜ばしいことはない」

「皆が喜んでくれているなら、それが一番良いよな」

「畑仕事が天使達の鍛錬にもなってるようだし、万々歳だな」

パラスの包み隠さぬ心情の吐露に、レオニス達も大いに頷く。

ラウルが神鶏達への礼として持ち込んだ巨大野菜類が、大地を離れて天空島にまで多大な影響を及ぼすとは。

全く考えもしなかった展開だが、天空樹やドライアド、パラス達天使や二人の女王との出会いはレオニス達に大いなる恩恵をもたらしてくれた。

この得難い出会いに感謝の意を表すべく、レオニス達もまた動く。

「さて、そしたら俺達も光の女王と雷の女王のところに行くか」

「ああ、俺達もヴィーちゃんとグリンに美味しい野菜をご馳走してこなくちゃな」

「おお、女王様方のところに行くのか? ならば私もついていこう」

「ン? パラスもついてくるのか?」

「もちろんだとも!ヴィー様達のお食事の様子を見守るのも、我ら天空島警備隊の務めだからな!」

レオニス達が神殿の島に行くと伝えると、パラスもそれについていくと言う。

もちろんそれは、レオニスやラウルを監視するといった警戒ではない。ただ単に、パラスが神鶏達の食事を見たい!というだけのことである。

そしてレオニスにも、パラスが警戒心から言っているのではないことは分かるので、快く受け入れる。

「そしたら今から三人で、女王達のところに行くか」

「おう、サクッと飛んで行くか」

「よし、では私は一足先にヴィー様とグリン様のもとに行き、神殿に連れてこよう!」

「おう、頼むぜ、パラス」

「じゃ、また後でな」

「うむ!」

パラスが真っ先にふわりと宙に浮き、神鶏達がいる天空樹のもとに飛んでいく。

その姿を見送った後、レオニスとラウルは神殿の島に向かって飛んでいった。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆

天空神殿と雷光神殿のある島に向かうレオニスとラウル。

二人が島に降り立つ前に島に目を遣ると、二人の女王が神殿の外にいてテーブルについて座っている。

そしてレオニス達の姿に気づくと、二人して席を立ち手を振りだした。

光の女王は嫋かに右手をそっと振り、雷の女王は同じく右手を高く掲げて腕ごとブンブンと元気に振っている。

女王達の歓迎に導かれるように、レオニスとラウルが女王達の前に降り立った。

『二人とも、いらっしゃい!』

『ようこそいらっしゃい』

「よう、光の女王に雷の女王。久しぶりだな」

「俺は時々ヴィーちゃん達に野菜を届けに来るから、然程久しぶりでもないがな」

『そうね、ラウルはいつもグリンちゃんとヴィーちゃんに美味しいお野菜を食べさせに来てくれてるわね!』

レオニス達を歓迎する二人の女王。

早速雷の女王がレオニス達の来訪理由を尋ねる。

『今日もヴィーちゃん達にお野菜を届けに来てくれたの?』

「ああ。ここに来る前に畑の方にも寄ったんだが、今パラスがヴィーちゃん達を呼びに行ってくれている」

『そうなのね、じゃあ皆でここで待ってましょうか!』

「じゃあ俺は今のうちに野菜を出しておくとしよう」

雷の女王と話をしながら、神鶏達にあげるための野菜の準備を始めるラウル。

空間魔法陣を開き、トウモロコシやサツマイモ、大根葉や白菜などを次々と取り出しては地面に置いていく。

トウモロコシはその場で皮とヒゲを毟り取り、白菜は一枚一枚葉を剥いていき重ねていく。

ラウルの作る白菜は、その長さがラウルの身長程もある巨大さだ。これを一枚一枚手早く剥いていき、山のように積み重ねる。

これはヴィゾーヴニル達が食べやすいように、というラウルの細やかな心遣いである。

ラウルが野菜の準備をしている間、レオニスは光の女王に宝珠の話を持ちかけていた。

「今日は光の女王と雷の女王に頼みがあって来たんだが」

『何かしら?』

「二人は宝珠というものを作れるか? もし作れたら、一個づつ作ってもらいたいんだ」

『宝珠? ええ、いいわよ。一個づつだけでいいの?』

「ああ。水の女王にも一個作ってもらったんだが、光の女王と雷の女王にも作ってもらえれば三個あることになるからな。三個もありゃ十分だ」

レオニスの問いかけに、光の女王は特にその使用目的を聞くでもなく即時快諾する。

それは、レオニスに対する絶大な信頼があってこそ。レオニスならば宝珠を悪用することなどない、と光の女王も信用しているのだ。

そんな話をしているうちに、パラスとともに二羽の神鶏達がやってきた。

『クエエェェッ!』

『コケケコーッ!』

「ラウル、レオニス、ヴィー様達を連れてきたぞー!」

バッサバッサと羽ばたきながら、天使とともに神殿の島に降り立つヴィゾーヴニルとグリンカムビ。

レオニス達の前にデデーン!と現れた神鶏達は、以前にも増して大きくなっていた。

「おおお……ヴィーちゃんもグリンちゃんも、また大きくなったなぁ」

「それは当然だ。何故ならヴィー様達は、我らが丹精込めて作った野菜を毎日食べておられるのだからな!」

『クエケココ!』

『コケケココ!』

首を真上に向けながら、一層大きくなったヴィゾーヴニルとグリンカムビを見上げるレオニス。

体格だけでなく、羽や嘴など全身の色艶も素晴らしく輝いていて、その神々しさを増している。

神鶏達はもちろんのこと、パラスまでもが誇らしげに胸を張る。

そんなドヤ顔の三者に、ラウルが早速声をかける。

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、今日も美味しい野菜をたくさん持ってきたぞ。さあ、存分に食べてくれ」

『クエエェェ♪』

『コケーッココ♪』

ラウルの言葉に、ヴィゾーヴニルもグリンカムビも目をギラン!と輝かせる。

そしてラウルの横に置かれていた野菜目がけて、一直線に嘴を突進させた。

もっしゃもっしゃと一心不乱に野菜を食べる神鶏達を、二人の女王が嬉しそうに眺めている。

『あらあら、グリンちゃんは今日も食欲旺盛ねぇ』

『うちのヴィーちゃんも、ラウルが持ってきてくれる野菜は本当に目がないのよね!』

ニコニコとしながら、神鶏達の食欲旺盛さを肯定的に受け取っている二人の女王。

ヴィゾーヴニルとグリンカムビ、光の女王と雷の女王、皆が喜んでいる様子を、レオニスとラウルもまた嬉しそうな笑顔で眺めている。

だがそんな中、しかめっ面で難しい顔をしている者が一人。

「うぬぅ……ヴィー様もグリン様も、我らの作る野菜を食べる時より明らかに喜んでおられる……食いつきっぷりもすごいし、食べる速度も段違いだ」

「これは、我らの精進がまだまだ足らんということだな……野菜栽培の腕をもっともっと磨かなくては!」

険しい顔をしつつも、グッ!と拳を握りしめて決意も新たに闘志を燃やすパラス。

その険しい顔は決して他者に向けられているものではない。己の未熟さを痛感するが故の猛省である。

とはいっても、野菜栽培の腕を磨くというのは、警備隊隊長が目指すにしてはかなり方向性がおかしいのだが。

しかし、他にももっと頑張ることがあるでしょ?と思うことなかれ。

畑仕事はパラス達天使の鍛錬にもなっているのだから、畑仕事により一層励むのは天使達の修練にも繋がることなのである。

「ラウル、さっき出した野菜がもうすぐ食べ尽くされちまうぞ」

「ヴィーちゃん、グリンちゃん、おかわりは要るか?」

『コケッ!』

『クエッ!』

「そうか、じゃあもっと出すか」

おかわりの要不要を問うラウルに、二羽はコクコク!と力強く頷く。

まだまだ満腹には程遠そうな二羽の表情に、ラウルも小さく微笑みながら追加の野菜を空間魔法陣から取り出す。

ラウルは次々と巨大野菜を取り出しながら、レオニスとパラスに手伝いを要請する。

「そしたらパラス、白菜の葉を剥く手伝いを頼めるか?」

「任せろ!」

「ご主人様はサツマイモを細かく切ってくれ。ヴィーちゃん達の一口サイズでな」

「了解ー」

ラウルから手伝いを頼まれた二人はこれを快諾し、早速白菜を剥いたりサツマイモを小口に切っていく。

パラスは白菜の葉を剥いては神鶏達の前に運び、レオニスは得物の大剣でサツマイモをスパスパと切っている。

本来というか、普段ならレオニスの大剣はこのような使い方はしないのだが。たまにはこんな平和的な使い方をしてもいいだろう。

天空島の神殿の島には、今日も平和なひと時が流れていた。