軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第388話「樹海に残された痕跡」

#第388話「樹海に残された痕跡」

司とエリは、A国スパイを案内していた。

目的地は二つ。八王子市の恩方ダンジョン、そして山梨県富士山麓にある青木ヶ原樹海ダンジョンだ。

そして、一日目は恩方ダンジョン周辺を案内。そして二日目の今日は、青木ヶ原樹海ダンジョン側の調査となっていた。

一日目の恩方ダンジョンの時はダンジョン内に入れなかった。そのため周辺の確認からであったが、今回の青木ヶ原樹海ダンジョンには入れる。

そのため、まずはダンジョン内へと入った。A国のスパイたちは慎重にダンジョン内の状況を確認しながら四階層まで降り、内部の様子を確認していった。

司も一応、レベル5なので四階層はぎりぎり案内できる。そのため同行していた。

しかし、ダンジョン内部については特に変わった点は見当たらなかった。

「(特に異常はないな)」

「(ああ、普通の四階層だ。その途中も特に変わった点はない)」

そんな会話を交わしながら、スパイたちは内部を確認していった。特に異常がなくてもどこかにヒントがあるかもしれないと考えていた。

しかし特に何も見つからず、その後、一行は地上へ戻った。

そして次は、氾濫したモンスターたちが徘徊したとされる樹海エリアの確認へ向かった。

そこは凄惨な状況だった。

青木ヶ原樹海ダンジョン周辺は、それなりに人通りのある恩方ダンジョン周辺と違い修繕作業がほとんど行われていない。さすがに樹海内の損傷までを修繕するほどの余裕がないからだ。

そのため、モンスターたちが暴れた痕跡がほぼそのまま残されていた。

巨大な木々がなぎ倒され、地面はえぐれている。一部には野生動物の死骸らしきものまで転がっていた。

異様な光景だった。

「(……これはかなり酷いな)」

「(ああ。本当にレベル3までだったのか?)」

スパイたちは周囲を慎重に調査していく。モンスターの死骸も探したが、それは見つからなかった。さすがにモンスターについては回収作業が済んでいたらしい。

それでもスパイたちは周辺の土壌、折れた木片、岩石など、サンプルになりそうなものを細かく回収していった。

一方で、司とエリと言えば――

「やだー、樹海の中は暗いよぉ。司くん、怖い~」

「大丈夫だ。俺が守ってやる」

などと言いながら、イチャイチャしていた。エリが腕に絡みつけば、当然ながらエリの大きく柔らかなおっぱいの感触が司の肘に伝わる。

司は完全に鼻の下を伸ばしていた。ここで頼もしい姿を見せれば今日こそはやれるのではないか? よこしまなことばかりを考えていた。

そんな二人の様子を見て、スパイたちは完全に警戒を解いていた。そのために会話も徐々に雑になっていった。

「(もしかすると、恩方ダンジョンだけでなくこちらでもレベル4モンスターの氾濫が起きていたのではないか?)」

「(断定はできん。しかしその可能性はありそうだ。被害規模が大きい)」

日本政府の公式発表では、青木ヶ原樹海ダンジョンも恩方ダンジョンも“レベル3までのモンスターの小規模氾濫”という扱いだった。

だが、このスパイたちは違う見方をしている。両方ともレベル4モンスターの氾濫だったのではないか。そう疑っているのだ。

(ふーん、この人たちは日本政府の発表を疑っているということね。それで再調査をしているのか。最近、やたらと世界各国の情報確認が増えているらしいけど、その理由がはっきりしたわね)

エリは心の中でこれまでの情報を整理していた。政府が嘘をついているのか。そこまでは分からない。

だが少なくとも、各国が日本にレベル4モンスターをも凌駕する秘密の戦力があると疑っているのは間違いない。

そしてその情報は、エリを通じて裏組織にも伝わっていった。裏組織も、日本に何らかの秘密戦力が存在する可能性については把握していた。

だが、レベル4モンスターの氾濫に対応できるレベルだとは、まだ考えていなかった。

裏組織の認識が、少しずつ変わり始めていた。そして疑っているのはA国だけではない。

他国からも同様の依頼が次々と裏組織へ届いている。もちろん直接的に、日本の秘密戦力を教えて欲しいという依頼ではない。それを隠しての依頼だ。

どうやって日本はモンスターの氾濫を抑えているのか?大きな戦闘の形跡がないのに氾濫を抑えることができているのは何故なのか? というやや曖昧な質問などになる。

その意図が完全に分かった裏組織は適当な焼きまわしレポートを世界各国に売りつけたり、司とエリにスパイの案内をさせて大儲けしていった。

しかしそれだけで満足するわけにはいかない。裏組織としてもなんとしても日本の秘密の戦力を暴きたい。それができれば裏だけでなく、表も完全に牛耳ることができる可能性すらある。

そうして世界各国だけでなく日本の裏組織もスパイからの情報などを中心に日本の秘密戦力であるレンたちへの道筋を必死で探していった。

そして司という存在がすでにヒントを出してしまっている。

裏組織がレンたちへ辿り着くのか。それとも途中で止まるのか。

現時点では、まだ誰にも分からなかった。