作品タイトル不明
第377話「世界が疑う日本」
#第377話「世界が疑う日本」
日本で初のレベル4モンスターの2か所氾濫。その状況説明がほぼ終了した。
そこで朝倉が口を開いた。今回の問題はハンター協会のミスでもあったからだ。
「申し訳ありません……恩方ダンジョンに常時監視員がいなかった点は、想定が甘かったと言わざるを得ません。まさかレンたちが出動した後、すぐにダンジョンが氾濫するとは思いもよりませんでした」
そこで大泉防衛大臣が首を振った。
「いや、四階層を守るハンターは圧倒的に不足している。レンたちがいる恩方ダンジョンに余分な人員を配備できないのは仕方がないだろう。もちろん反省材料、今後の検討課題にはすべきだがな」
そもそもレベル4モンスターを含む二か所同時氾濫は前例がない。世界的にも珍しい。仕方ない部分もあるのだ。
そこで高倉は静かに言った。
「それについては自衛隊特殊部隊側としても想定不足は否定できません。レンたちを分散させる案も検討すべきでした。例えば半分の4人は出動して、半分は待機するといった形も考えるべきでした」
「いえ、今回は世界でも前例が少ないレベル4モンスターの氾濫。しかも初の二か所同時。それを予測するのは不可能でしょう。だから、今回は良しとしましょう。ただし今後も起こり得るということ。対応策は必ずまとめてください」
高泉はそう締めた後、視線を高倉に向けた。
「それにしても、クアンを投入する決断は大胆だったわね。まさか私の誘拐を狙った犯人を投入するなんて思いも寄らなかったわよ」
「すみません。それは私の独断です。処分が必要なら受けます」
それは高泉首相の冗談めいた指摘だった。しかし話を受けた高倉としては真面目に受けざるを得ない。本来ならば、日本のトップである首相の誘拐を試みた人間を投入するなどあり得ない判断だからだ。
とは言えおかしな判断でもない。場の雰囲気を和らげるために大泉防衛大臣が苦笑した。
「いや、あの判断は最善だったとしか言えんだろう。処罰などありえない」
そして高倉の方を見て話を続けた。
「それにしてもびっくりしたよ。慎重な高倉さんがそのような判断をするとはな。いくら最善の手段とは言え、それを即座に選ぶとはびっくりしたよ」
大泉防衛大臣に指摘され、高倉はわずかに間を置いた。
「そうですね。普段の私ならばそのような判断はしないでしょうね。でもあの時は……何故か、レンの言葉が頭に浮かんだのです。彼の「今のクアンなら信用できる」と言う言葉があったからこそです」
「なるほど。そういうことだったのか」
大泉は納得した。なぜ、レンの言葉が高倉の頭に浮かんだのかは分からない。しかし高倉にとっては大きな判断材料になったのは間違いない。
そして高泉は小さく笑った。
「また日本は彼に救われた、というわけね」
「そういうことになります」と高倉。
その後は、話題は情報統制関連に移り、再び高倉が説明を始めた。
今回は、八王子市の恩方ダンジョンから氾濫したレベル4モンスターとクアンとの戦闘が撮影されてしまっていたのだ。
動画の出所など詳細は確認中だが恩方ダンジョン方面から八王子市に避難に向けて動いていた民間人の撮影と思われた。
その辺りについてはレンたちに少し遅れて到着したダンジョン特殊部隊が対応。
まずは付近の防犯カメラをジャックして情報を遮断。更には民間やメディア関係者の有無を調べ妨害を始めた。
更にすでにネットに出回っていたクアンの戦闘映像の削除対応、そしてクアンの戦闘映像に少し似せた偽のAI映像をいくつか作成しネットに大量拡散した。
現時点でネットにおいて本物の動画は確認できない。逆に偽のAI映像は大量に出回っている状況。そしてその偽映像がAI処理されたものだという情報も流している。
映像を解析する一般人も参加し、完全に偽物と断定。結果的に一般人は偽情報だと信じて疑わない状況になっている。
だがこれまで以上の疑念が残っているのも間違いない事実であった。これまでレベル3モンスターの氾濫についてはレンたちが絡んでない限り討伐映像を公開してきた。
だが今回は出せないのだ。
そして対外的には「レベル3までの氾濫が二回発生」と発表した。すなわち公式発表において、日本ではレベル4モンスターの氾濫は起きていないことにしたのだ。
これは仕方がない。仮にレベル4モンスターの氾濫が起きて日本が鎮圧したならばその方法を世界中から求められるのは必須なのだ。
そして動画非公開の理由は「残忍な映像が含まれるため」とした。日本の討伐方法については従来の動画を参照するようにと案内が出ていた。
だが一部の国では違和感を抱いていた。北海道駒ヶ岳ダンジョンの短時間の討伐ですでに疑いは芽生えていた状況だったからだ。
ネットに出回っていたAI偽映像についても疑念を抱いた。そこに出ていたのがレベル4モンスターだったからだ。全体としては間違いなくフェイクである。しかし、そのモンスター単体は実物の可能性があるのでは?
そうして世界各国で日本のダンジョン氾濫討伐についての議論が活発となった。
日本政府の対応も疑惑を深める結果となった。ほぼ同時二か所での氾濫。短時間での討伐。更には映像非公開。どう考えてもおかしい。何かを日本が隠している。
これまで以上に疑念は確実に強まった。
もちろん、現時点で決定的証拠はない。日本に秘密があるとは断言ができない状況。
だが……そう遠くない将来、真実が露見する可能性は高いだろう。
世界の多くの国が、これまで以上に日本を注目するようになっていた。