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第376話「首相と防衛大臣への状況説明」
#第376話「首相と防衛大臣への状況説明」
日本で初となる二か所同時のダンジョン氾濫……それは関係各所に大きな波紋を投げかけた。
世界的に見ても、同一時間帯に二か所で氾濫が起きる事例は極めて少ない。それが日本国内、しかも東京と山梨という比較的近距離で発生したのだ。
偶然と言い切るには、あまりにも出来過ぎている。ダンジョンには何らかの意思があるのではないか。
そう考えざるを得ない状況だった。
そもそもレベル4モンスターの氾濫は、世界でまだ二例しかなかった。その後はレベル3までに留まっている。
だが今回、日本で立て続けにレベル4モンスターが氾濫。世界全体で見ればA国、C国に続いての三例目、四例目が一気に発生した。
すなわち、世界のレベル4モンスターの氾濫の半数が日本ということになる。これは確率的に見ても異常だ。
秘密戦力を抱える日本を、ダンジョンが狙ったのではないか。
そう疑われてもおかしくない事件だった。
情報の共有並びに対策のために首相官邸で緊急会議が開かれた。出席者は四名だ。
高泉首相、大泉防衛大臣、自衛隊トップの高倉、そしてハンター協会の朝倉。
この四人はレンたちの存在を知る、限られたメンバーでもある。
日本の軍事関連のトップ会議だ。本来ならば他にも参加すべき人間はいる。
だがこれ以上、レンの秘密を漏らすわけにはいかない。追加のメンバーは呼ばず、会議は非公開で行われた。
まず朝倉が今回の二か所ダンジョンの氾濫について概要を説明した。
「今回は異例で、二つのダンジョンの氾濫が立て続きに起きました。日本でも氾濫が起きたのはまだ七例目。うち二例が今回の氾濫になります。また特徴的だったのはその二例いずれもが日本初のレベル4モンスターの氾濫だったということです。それぞれのダンジョン氾濫について説明させていただきます」
朝倉の説明によれば、最初の氾濫は山梨県の富士山麓、青木ヶ原樹海ダンジョン。
レベル4モンスター約20体を含む、総勢約300体の氾濫だった。
現地の自衛隊を富士吉田市方面ならびにアルプス市方面に展開、二か所にバリケードを作って備えた。
幸い、モンスターはダンジョン周辺から大きくは移動しなかった。そのうちにレンたちが間に合い、討伐に成功した形だ。
大きな問題はない。だが日本で初のレベル4モンスターの氾濫であり、自衛隊とドローンという従来戦力だけならおそらくはバリケードを突破されたことだろう。そのまま大惨事を避けられなかった可能性が高い。
現にアメリカと中国では同規模の氾濫で苦戦している。日本よりも戦力が充実しているにも関わらずだ。
本来ならば携行型誘導弾が必要だが日本にはまだまだ数が足りない。日本中から集めても厳しい状況と思われた。
「自衛隊特殊部隊を含む、レンたちの活躍で青木ヶ原樹海ダンジョンの氾濫は大きな問題もなく鎮圧できました。ただし彼らがいなかったら大変なことになっていた可能性が高い。今後もレベル4以上の氾濫についてはレンたちの出動が必須と言えるでしょう」
レベル4モンスターの氾濫が日本でも起きた。とんでもない問題だ。
しかし、今回の問題はそれだけではなかった。青木ヶ原樹海ダンジョンの氾濫から少し遅れて八王子市、恩方ダンジョンの氾濫が起きたのだ。
こちらについては陣頭指揮を取った自衛隊トップの高倉が説明を始めた。
「レンたちが青木ヶ原樹海ダンジョンでの討伐を開始した頃に八王子市の恩方ダンジョンにてレベル4モンスターを含む氾濫がありました。二か所同時の氾濫は世界的に見ても異例中の異例です。当然ですが……レベル4モンスターの氾濫の二か所同時は初のケースです」
高倉の説明によると八王子市の恩方ダンジョンでもレベル4を含む氾濫。こちらはレベル4が約15体。総数約200体。
そしていくつかの選択肢がある中で、高倉は独断でクアンを投入を決定した。更に八王子市街地から5km地点にドローン部隊。さらに1km後方に自衛隊バリケード。
三段構えで足止めを図った。
クアンには無理な交戦は避け、後退可と指示。適当なところでドローン部隊、そして自衛隊に繋ぐことを想定、それでレン到着までの時間稼ぎが目的だった。
「様々な選択肢がありました。レンたちの一部部隊を青木ヶ原樹海ダンジョンに残してすぐに移動する案も考えられました。しかし、それでも大きな時間的なメリットはなく、逆にリスクの方が大きいと判断。そのまま討伐を続けてもらい、討伐終了後に自衛隊特殊部隊とレンたちに恩方ダンジョンに戻ってもらった形です」
結果、クアンは限界まで持ちこたえ、レンへ引き継いだ。ドローンや自衛隊との本格交戦は発生せず、鎮圧に成功した形だった。
そうして説明が終わった。そこで高泉首相が静かにため息をついた。
「報告は随時聞いていたつもりでしたがそうでもなかったわね。状況は思った以上に切迫しており、危うかったのね。結果オーライですが……紙一重でしたね」
今回は大きな問題は起きなかった。
しかし今回の判断が本当に正しかったのかどうか。今後、どうするべきなのか?その議論が始まった。