作品タイトル不明
第371話「試される国々」
#第371話「試される国々」
A国、C国でのレベル4モンスター氾濫は世界に衝撃を与えた。だが、その後の数か月の氾濫は様相が違った。
各国でダンジョンからモンスターがあふれ出したものの、出現したのはレベル3までだったのだ。
しばらくはレベル4のモンスター氾濫が続く可能性が高いと思われていたので、それは助かる結果ではあった。全て従来型ドローンで何とか対処可能な範囲だったのだ。
「やはりレベル4は特殊だったのではないか。当面は大丈夫なのでは?」
そんな安堵の声も広がった。もちろん油断できる状況ではない。次にいつレベル4が出るか分からないからだ。
だが、少なくとも“連続発生”はしなかった。それは間違いのない事実だ。もちろん今後は分からない。
それでも、当面はレベル4の氾濫が当たり前ではない。それが一時的な安心を生んだ。
しかし、疑問は残った。なぜA国とC国だけがレベル4モンスターの氾濫が起きたのか?そのために様々な議論や憶測が広がった。
まるで世界最強と呼ばれる二国の戦力を試したかのようだ。
「戦力増強ばかり考えるA国、C国に神の罰が当たったのです」
A国、C国にのみレベル4モンスターの氾濫が起きたことで平和論者、新興宗教関係者などがが勢いづいた。しかしそれも根拠あってのことではない。一定の広がりしか見せなかった。
それ以外にもダンジョンについての言説が広がった。
「ダンジョンに意思があるのではないか」
そんな意見まで出始めた。
だが、仮に意思があるとして、その目的は何だ?人類を滅ぼすのか。選別するのか。それとも、ただ試して人類のあがきを楽しんでいるだけなのか。
答えはない。しかしじわじわと被害は広がっている。いつ何時、その被害が爆発的に広がるかは分からない。
他にも様々なダンジョン関連の言説が広がった。
「ダンジョンは実は神なのかもしれない。自分勝手すぎる人類に裁きを与えている」
「いや、ダンジョンは宇宙人が操っているのでは? 移住出来る星かどうか確認しているのかもしれない」
それらはオカルトかもしれない。だが、ダンジョンを科学的に解析できたものは誰もいない。どのような意見が出たとしても確実に否定できる材料もなかった。
現実として、人類は間違いなくダンジョンに追い詰められている。レベル4がいつ出るか分からない。現時点ではほとんどの国でレベル4モンスターは対応が不可能だ。
レベル4モンスターが出現すればそのまま国が滅亡してしまう可能性すらある。
現状、様々な国で急ピッチで対策が進められている。しかしレベル4モンスターへの対応準備が整っている国は、ほとんど存在しない。
確かに試されている、遊ばれているという状況がぴったりなのかもしれない。
一方、レベル4モンスターの氾濫が収まったことで、これ幸いにとA国とC国は軍備増強を加速させた。その動きに対し、こんな声も出てきた。
「軍事力の高い国ほどダンジョンが試しているのではないか」
確かにレベル4モンスターの氾濫が起きたのはA国、C国のみ。だがレベル3以下で考えれば、軍事力の低い国でも氾濫は起きている。特段の傾向はない。
基本的にランダム。よってA国、C国に偏っているわけでもない。そう結論付けるしかなかった。
次はどこのダンジョンが氾濫するのか?予想サイトなども乱立した。
「次はこの国だ」
「この地域が危ない」
未来予知を名乗る人物も現れた。だが結果は散々だった。確かに当たる時もある。でも普通に外れる時もある。外れたときには宇宙からの電波が一時的におかしくなったなどの言い訳を重ねた。しかし、それでは単なる予想屋だ。
過去の情報を後付けで分析しただけの“結果論”を利用するものも多かった。それを予知能力者として信じる者もそれなりにいたが、現実には科学的根拠は皆無。
そうして世界は、迷走していた。科学的検証も、非科学的議論も尽くされた。だがどの方向を見ても決定打はない。
今後、レベル4は頻発するのか。それとも一過性なのか。それすら誰にも分からない。
日本も世界とほぼ同様だった。オカルトなどの怪情報がSNSなどを中心に飛び交っていた。混沌としながらもかろうじてまともな議論が続いた。
現実的な議論としては、A国、C国と連続でレベル4の脅威があったことで、日本の世論は武器開発について容認する意見が多くなった。しかし反対する意見も根強かった。
「日本はレベル4に対抗する武器の開発を急ピッチで急ぐべきだ」
「いや、いまさら間に合わない。A国だけでなくC国に援助を求めるべきでは?」
「日本は死の商人になるつもりか?殺傷力のある武器の開発は許されない」
日本は世界に比べるとまだ有利な立場。レンたちという秘密の戦力があるからだ。だが、それも紙一重。秘密の戦力の情報がばれれば世界からその戦力の融通を求められるのは目に見えている。
その声に答えると日本の防衛力は間違いなく下がる、レンたちが他国に行けば日本の対応がおろそかになるからだ。しかしながら、他国からの戦力融通の声を無視して世界を敵に回してしまうのも難しい。鎖国するわけにもいかない。
今後、都市部でレベル4以上のモンスターの氾濫が起これば、秘密は隠しきれないだろう。
戦力に余裕がある日本とて秘密の戦力がバレたら大変なことになるのは明白。とても安堵できる状況ではなかった。
そうして日本を含め世界では不毛な議論が続いていた。そしてとうとう、世界で三度目のレベル4氾濫が発生した。
それは日本だった。
今度こそ日本の“秘密の戦力”は、世界に知られることになるのかもしれない。