作品タイトル不明
第368話「日本戦力の限界」
#第368話「日本戦力の限界」
レンたちの定期報告に合わせ、ダンジョン対策会議が開かれた。
もちろん参加者は限られている。自ずとレンたちの秘密を知っているメンバーに絞られるからだ。
今回の出席者は高泉首相、大泉防衛大臣、自衛隊トップ・高倉、自衛隊ダンジョン特殊部隊の10人。朝倉、エリナ、黒澤。
そしてレンたち8人(レン、ひより、ルナ、ラム、リン、ロア、ルフ、クー)となっている。
会議前、レンたちは朝倉へ簡単な近況報告を行った。現在は安全第一で六階層の討伐を進めていること。
レベル7到達はまだまだ先だが、確実に近づいていること。最近はほぼ同じ報告内容になっている。
「焦らず、着実に進んでいます」
「ああ、この調子で頼む」
朝倉は静かに頷いた。おおまかな状況は既に電話にて済ませていたので簡単な話のみで十分だった。
いつものように朝倉の想定していた状況よりも早く、満足のいく報告でもあった。
やがて全体会議が始まった。
スクリーンに映し出されたのは、A国とC国でのレベル4モンスター討伐映像だった。
空気が一気に重くなった。特に報告に立った高倉の表情が暗い。
「映像で見ていただいたように、A国、C国ともに既存ドローンではレベル4モンスターに全く太刀打ちできないことが判明しました。A国では戦力比は1:200以上と見積もっています。すなわち運が良ければドローン200機で倒せますが、現実にはそれ以上が必要で上限を確定することが出来ていません。更には戦車や装甲車を含めた軍隊との連携、共同戦線も必須です」
映像ではドローンによる一斉攻撃を受けても倒れないレベル4モンスターが映っていた。
レベル4モンスターはレベル3と比較して、スピード、パワー、耐久力のすべてが上だったのだ。
そして、それ以上にやっかいな問題だったのは……知能の上昇だった。
まずはレベル3以下の個体を前線に出し相手の戦力を測る動きが見られた。そしてモンスターたちは相手の戦力に応じて配置を変えていった。おそらくレベル4モンスターからの指示が出ていると思われた。
更には自らを守るために味方モンスターを盾にする行動、ドローン同士の同士討ちを誘うような動きも見られた。
完全に囲まれて避けられないと見るや、急所を防御する構えまで確認された。そのため、追い詰めてもなかなか致命傷を与えることができない。
明らかに知能が高くて戦術的だ。これまでのモンスターには見られなかった状況の数々。
「レベル4モンスターは非常に知能が高い。もはや野生動物のレベルではありません。知能の高さ……それがもっともやっかいな特徴と言われています」
高倉の声は重かった。レベル4モンスターに対しては現状のドローン戦略はすでに限界と言えたのだ。
そして、その後はC国が新しく採用した携行型誘導弾での対策も紹介された。
レベル4モンスターがいくらスピードが速くて知能が高くとも、追尾性能があり更には数発で戦車をも破壊する威力を持つ誘導弾ならば、数発もあれば軽く致命傷を与えることができると考えられたのだ。
「C国はA国での事例を参考に、ドローンと並行して携行型誘導弾を採用しました。当初の見積もりでは戦力比は1:5です。すなわちレベル4モンスター1体を倒すのに携行型誘導弾は5と見積もったのです」
「しかし、実践では1:20という結果になっています」
携行型誘導弾はその性能からレベル4でも確実に通用すると思われていた。
しかし、それも完璧とは言えなかった。その戦力比は1:20、携行型誘導弾は3000万円相当と言われているので、レベル4モンスター1体につき6億ものお金がかかったのだ。
もちろん氾濫となれば1体だけではない。おそらくは10体以上のレベル4モンスターが出てくることだろう。
となれば1回の氾濫で数十億の金が軽く飛ぶ計算になる。かなり厳しい数字だ。戦争並と言っても過言ではない。
しかも金額だけの問題ではない。日本にある携行型誘導弾の備蓄そのものが足りない。
同盟国のA国も自国で手一杯と判断して輸出を止めている。もちろんC国に頼ることも不可能。当然のように断られることだろう。
もちろん、日本でも携行型誘導弾の開発は進んでいるが、とても量産が間に合う状況ではない。
高倉は話を続けた。
「レベル4モンスターに対して、現状の最適解と考えられている携行型誘導弾は金額もさることながら量産することが困難。現状では運用自体が難しい状況です」
「よって、今後はダンジョン特殊部隊およびレンたちの出動要請が増加する可能性が高い」
そう結論付けた後に高倉は深く頭を下げた。
「今後、レベル4のモンスターが出てきたら君たちに頼るしかない状況だ。宜しく頼む」
すでに日本の自衛隊の現状装備ではレベル4のモンスターは止められないと思われた。
すなわち、レンたち以外には止めることは無理。
その厳しい状況であることがレンたちに告げられたのであった。