作品タイトル不明
第367話「理想と現実の狭間」
#第367話「理想と現実の狭間」
日本でも武器開発は加速していた。
ドローンの改良型の開発。高威力型ドローンの研究。量産体制の再構築など、進めることができるものは全て進めていた。
そしてA国、C国の事例を受け――
携行型誘導弾の本格開発と増産にも踏み切ることが決定された。現状、ドローンだけでは日本を守ることができないということが明らかになったからだ。
もちろんドローンの高性能化だけで対応できるならばいいが、それだけに頼るのは危険。レベル4モンスターの撃退に効果のあった武器の開発も同時進行するのは自然の流れだ。
それは日本にとって、大きな転換点だった。さらに議論は武器の輸出へも及んでいった。
これまで日本の武器輸出は、非戦闘目的の「5類型(救難・輸送・警戒・監視・掃海)」に限定されていた。
しかし政府は大きく方針転換を打ち出した。防衛目的を中心とした殺傷能力を持つ完成品の輸出を、原則容認へ。
ダンジョン氾濫対応を名目としつつも、実質的には軍事装備の輸出解禁に近い。
当然、反発は起きた。
特に日本国内にある数々の平和団体は強く抗議を開始した。
「日本は人を殺す武器を輸出すべきではない。それによって世界の戦争は加速する。日本は少なくとも加害者になるべきではない」
その主張は、理想としては理解できる。正論でもあろう。
だが現実はどうか。世界では多くの地域ですでに戦争が起きている。日本が武器を輸出しようとしまいと現実論としては全く関係ないのだ。日本以外の国のいずれかが武器を生産し販売するだけの話なのだ。
しかも日本は憲法上の制約もあり、他国へ兵を送ることは極めて困難だ。だからこそ、武器の供与という選択肢が浮上する。
軍事同盟という観点で見れば、軍を派遣できない日本は同盟国からの信頼はどうしても落ちる。日本を他国の軍事的な脅威から守るためにも信頼の回復は急務だった。
現実に、日本の武器輸出解禁については、同盟国からは歓迎の声が上がった。特に敵対国の脅威にさらされている国々は強く歓迎し支持した。特に小国においては武器を輸入できるかどうかは死活問題だからだ。
一方で日本の非同盟国や一部国内世論からは懸念や反対の声も上がった。それを背景に、戦争反対デモなども発生した。
日本政府としては戦争を起こさないための武器輸出の決定でもあったのだが、皮肉なことに戦争反対デモが起きるという状況になったのだ。
国会も連日紛糾した。
高泉首相は国民の理解を求めて訴えた。
「日本が兵器を輸出しないことで戦争がなくなるなら、それが理想です。しかし現実には戦争は起きている。ダンジョンの氾濫も起きています。同盟国を守るための輸出は必要です」
それに対して野党からは「死の商人になるのか」と激しい批判が巻き起こった。指名を受けた大泉防衛大臣は答弁した。
「武器を輸出せず平和を守るという理想論は結構なことです。しかし危機は現実です。他国は軍事増強をして脅威は劇的に上がっています。当然、日本も対抗する必要があります。同盟国への武器供与は、同盟国からの信頼を得ることに繋がり、ひいては日本自身を守ることにつながります」
そうして「武器を無くして戦争を無くすという理想論」と「同盟国を含めた防衛力を高めることによって戦争を無くすという現実論」、その主張は正反対であり噛み合うところは無かった。不毛な議論が続いた。
それでも日本は、静かに武器開発を進めていた。
そういった議論を見ていたレンは複雑な気持ちになった。必要なら武器の輸出は解禁すべきだろう。それが同盟国を守り、日本を守ることに繋がる。
そうは思っている。日本単独で守るより、同盟国と協力した方が抑止力は高いのは当然なのだ。
だが、ひよりは少し違った。
「でもさ……心情的に反対する人の気持ちも分かるよ」
「分かるけどな。それは理想論の延長だと思う」
「……そうなんだけどね」
二人の間に流れる沈黙。理想と現実。どちらも間違いではない。だが世界は待ってくれない。
世論は揺れながらも、日本国内では武器開発そのものには一定の理解が広がっていた。ただし武器の輸出については根強い反発の声は残っている状況となった。
やはりダンジョン氾濫という現実があるからこそ武器の開発は容認されたと言えよう。人は脅威が自分の身にふりかかりそうになったら意見を変えるのだ。
そうして日本の対ダンジョン体制、同盟国を含めた防衛体制は、遅ればせながらも確実に前へ進み始めることになった。
その後はレンたちにも招集がかかった。今後のダンジョン氾濫対策を議論するための会議。もちろん、出席者はごく少数の上層部のみ。
国家の中枢がレンたちを頼るのは当然だ。しかしながら単純に頼るだけでは情報漏洩の可能性はどうしても広がる。
少なくとも現在のドローン戦略と一緒にすることは困難。映像からすぐにバレてしまうからだ。
今後、レベル4のモンスターが氾濫した場合にどのような戦略で日本を守っていくのか?
世界が揺れる中、日本もまた覚悟と戦略を迫られていたのだった。
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(補足)どこかで聞いたことがあるような話も多々出ているかもしれませんが、最近の世間情報をミーハーに集めただけであり完全にフィクション(創作)です。政治的な意図、主張などはまったくございませんので、何卒よろしゅうです。