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作品タイトル不明

第363話「楽観の代償」

#第363話「楽観の代償」

世界は停滞していた。いや、後退していたと言ってもいいのかもしれない。

ダンジョン対策としてドローンが効果を発揮し始めてからというもの、各国に楽観論が広がっていた。

レベル3までのモンスターの氾濫ならばドローンで容易に対応が可能。

それが共通認識になりつつあった。

量産型ドローンによる戦力比の研究も進んでいった。

・レベル1モンスターならば、戦力比はおよそ1:1~3

・レベル2モンスターなら1:5~10

・レベル3モンスターでも1:20~30

すなわち敵モンスターの数の分だけドローンの数を揃えれば単純に押し切れる。

映像で敵の状況を素早く分析し必要な数量のドローンを当てればいいだけなので簡単な話だ。

AIなどを用いた映像解析技術も進んだ。瞬時にシミュレーションが行われ必要なドローン数と戦術が算出された。

ドローンが足りない場合は近隣からの応援を求める。相互応援体制、相互監視体制を敷くことができれば、ダンジョンの氾濫は多少の変動要素があったとしても対応可能という結論になりつつあった。

その前提のもと、世界は動いていた。

まず先進国については全く問題はない。資金力があるので自力での対応が可能だ。

また資金利欲に難がある後進国であっても、先進国や国際連携の枠組みの中で対策は進んだ。先進国協調の援助で足りない国は借金をしてドローンを購入する状況となった。

A国とC国は覇権争いの構図もあり、ドローン購入に際する条件を引き下げたのが大きかった。

特別値引き、緩い返済条件、さらには資源開発権を担保にした融資。

世界全体シェアで見れば安価なドローンを大量生産できるC国が圧倒的に優勢。しかし先進国市場では同盟関係もありA国製が選ばれる傾向にあった。

さらに各国は自国生産と高性能化の実験も進めていた。

A国やC国への加園依存は危険――その判断だ。それは当然だろう。仮に何らかの形で輸入が止まったら立ち行かなくなる。

世界各国がそれぞれの思惑で自国防衛に向けた動きをしていた。

そうして、それぞれの国で独自の対応が決まっていった。

量産機による戦力比の計算も各国でそれぞれに変化していった。ドローン以外の戦力を組み合わせることで最適化させる動きも活発化していった。

日本はA国のドローン中心での対応。人的被害をできるだけ出さないようにするための研究が進んだ。

仮にダンジョンからの氾濫が100体規模でも、レベル1や2が主体ならば1000機規模の投入で容易に制圧が可能。各自衛隊基地に設置したドローンで基本的には対応する。

ただしレベル3中心のダンジョン氾濫の場合はそうもいかない。1体につき20以上のドローンが必要だからだ。仮にレベル3モンスターが100体出現したらそれだけでもドローン2000機が必要。

よってレベル3中心の氾濫の場合はまずは戦力をなるべく落とさないように留意しながら足止めしを優先。近隣の自衛隊からのドローン増援を待つという形になった。

もちろん都市が近いドローンではそのような悠長なことは言えない。状況によっては自衛隊の本格出動もある。

世界会議ではそれぞれの国の手法が紹介され、良いと思われるものは即座に世界各国で研究が進んだ。

安価で、迅速に、数で押す。

単純ではあるが、それが世界標準になりつつあった。各国が効率化を競争し自国対応のアピールにも余念がなかった。

……だが現実に行われていた対策は、そこまでだった。

確かに世界各国でドローンでの対策は進んでいるようには見えた。しかし現実には現状の問題に対する効率化、最適化が進んでいただけだ。

それだけでは停滞、後退していると言っても差し支えない。本来はその先のリスクも見なければいけないのだ。

もちろんその先のリスクに対する危惧は世界共通認識ではあった。しかし現実に出ていない脅威に対抗できないのはいつの世の中でも同じ。

実際に対峙しないと分からない。今回のレベル3までのモンスターに対するドローン対応も、実際の脅威があったから進んだのだ。

オンライン参加で、その状況を強く危惧していた者がいた。

それは日本の朝倉だ。

彼は分かっていた。仮にダンジョンからレベル4のモンスターが氾濫した時はこの均衡はあっさりと崩れると。

しかしそれを指摘したところでどうにもならない。現実問題として分からないことだらけ。

量産型ドローンの戦力比は、レベル4に対してはまだ試算すらできていない。仮に性能比が1:100ぐらいであれば何とかなるだろうがそれ以上となると厳しいかもしれない。大きく世界がゆらぐことになる。

レベル4のモンスターはスピード、パワー、そして知能が桁違い。今の単純性能のドローンでは戦力比が全く予想ができなかった。

早急にレベル4に対抗できるドローンの開発が必要だが、最先端のA国、C国でもそこまでは進んでいないように見えた。

そして――その懸念は、現実となる。翌月の世界会議。議題の中心は、レベル4モンスターの氾濫だった。楽観の代償が、世界に突きつけられたのだ。