軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第321話「遠くても頑張る」

#第321話「遠くても頑張る」

ロマーニ首相、ジュリア、ステラはI国へ帰国した。

その後、俺たちは専用端末とアプリを受け取った。テレビ電話のような形式で、直接I国と連絡できるらしい。

暗号化された専用回線らしく傍受不可能な形にしているらしい。

この端末を渡された理由は単純なことだった。

「たまにはジュリアとステラの愚痴を聞いてやってほしい」

I国側からの要請だった。彼女たちは特別ということで友達が少ない。また、その数少ない友達も秘密保持のために気軽に話ができない。

そのためにたまには話してあげて欲しいとのことだった。

そして、1~2週間に一度。ジュリアとステラから連絡が入る。

画面越しの二人は、思っていたより明るい。特にジュリアの表情は大きく変わったように思う。前回、来日した時には悲壮感が漂っていたが今は笑顔だ。

話を聞く限り、まずまず順調らしい。

日本に来る前よりも目的意識がはっきりし、迷いが減ったという。

I国でも高レベルハンターの武術の達人に師事し基礎鍛錬を始めたらしく、その鍛錬を中心にダンジョン攻略も進めているとのことだ。

ジュリアが笑顔で報告してきた。

「(日々、強くなっている実感があります)」

「(それは良かった。どんどん強くなって欲しい)」

ジュリアやステラはまた日本に行きたい。俺たちにI国にも来て欲しいという話もする。

俺たちも本当に行きたいところではあるのだけどね。

だがそれは簡単ではない。

両国の“秘密戦力”という立場がある。

軽々しく移動できる存在ではない。移動中にダンジョン氾濫が起きたら大変だからね。

行くとすれば――順番的に俺たちの方かな?

だが全員で動くのは現実的ではない。リスクを考えて、半数だけ派遣する。そんな運用になるだろう。

今はまだ具体的な話はない。だけど、いずれそういう日が来るかもしれないな。

とにかく。

彼女たちには、早く“本物のレベル5”になってほしいところだ。レベリングで届いたレベル5と、実力で積み上げたレベル5はまるで違うからね。

後者なら、同じレベル5の敵に対しても一対一で対応できる可能性がある。

将来的にダンジョンの氾濫がレベル4、レベル5帯まで広がるかもしれない。そうなった時のためにもしっかりと鍛えてもらいたい。

そうして今回も既定の時間がやってきた。そろそろ会話を切る必要がある。

「(また2週間後ぐらいに連絡させてもらっていいですか?)」とジュリア。

「(もちろんだよ。緊急の連絡があるならもっと早くでもいいし)」

「(ジュリアもステラも頑張ってね)」とひより。

「(今度来るまでには更に強くなっていることを期待するよ)」とルナ。

俺たちが言うとジュリアは微笑んだ。かわいい笑顔だ。頑張って欲しいと思う。

通話が終わると何故かひよりとルナからジト目で見られたような気がする。俺何かした?

「どうした、ひより、ルナ、何かあったのか?」

「別に、レンには困ったものだね」とルナ。

「鈍感すぎるよ」とひより。

どういうこと?使役モンスター達に聞いて更に混乱した。

「まさか、分かっていないのですか?」とラム。

「それはひどいですです」とリン。

「えー、僕でも分かるけどね」とロア。

「さすが、レンさんですね」とルフ。

「レンさんはそのままでいいよ」とクー。

なんだろう。みんな何かに気が付いているらしい。俺だけ何か分かっていない?何故かみんな教えてくれないので悶々とした。

***

(I国にて)

その日、ダンジョン活動を終えたジュリアとステラ。拠点で軽くじゃれ合っていた。

「ジュリア、またレンさんのこと考えているでしょ?」

「だ、だって仕方ないじゃない」

ステラが呆れたように笑った。まあダンジョンから外に出てからだから、それでも別にいいのだが。

「ダンジョン内では集中してるからいいけどね」

「もちろんよ。中で他のことを考えたら命取りだもの」

ステラはその後、少しだけ真顔になった。レンのことを考えるのはいいが、それは現時点で確実に実らない恋だ。

「でも、レンさんにはひよりさんがいるよ?」

ジュリアは少しだけ視線を落とした。

「うん。分かってる。初恋と失恋を一気にした感じかな」

ジュリアは自嘲気味に笑った。レンにはひよりがいる。そしてレンの様子を見る限りひよりに頼り切っているのが分かる。

もう一人の女性ルナの気持ちは分からないけど、彼女もレンのことをそれなりに想っているようにも見えた。そして、そんな彼女でさえもレンとひよりの間に入り込む余地は無さそうだ。

そんな状況でさすがに自分は厳しい。

「でも……憧れくらいは、持っていてもいいでしょ?」

「それはいいけど、つらくないの?」

「つらいこともあるよ。でも割り切ってる。今はそれよりも――」

ジュリアは拳を握った。

「彼に認められるくらいに強くなりたいの。いつになるかは分からないけど、私も隣に立って一緒に戦いたい」

ステラは頷いた。まあそれならば大丈夫だろう。気が散るだけならば問題だが、その気持ちがプラスに働いているならば何も言うことはない。

「うん。それなら応援する。一緒に頑張ろう」

「うん」

ジュリアからみてレンは遠く離れている存在だ。それは距離もそうだが実力もあまりにも遠い。

しかしながら、目標だけは確かにそこにある。そして今は強くなることが楽しい。そして強くなりたい。

特にレンに認められたい、そんな気持ちがジュリアを強く突き動かしていた。